『チープ・スリル』(左)&『チープ・スリル(50周年記念エディション)』(右)

『チープ・スリル』(左)&『チープ・スリル(50周年記念エディション)』(右)

ジャニス・ジョプリンの
デビュー作『チープ・スリル』が、
完全復刻版としてリリース

ジャニス・ジョプリンのメジャー・デビュー作『チープ・スリル』が、幻のオリジナル・タイトルに加え25曲に及ぶ未発表音源を満載し、完全復刻版となって12月5日に発売を予定している(輸入CDとLPは11月30日)。


半世紀前は過激すぎるという理由でレコード会社から却下された幻のオリジナルタイトル“Sex, Dope & Cheap Thrills”が表記された『チープ・スリル(50周年記念エディション)』には、バンドのビジョンや意図が伝わる、神話化された1968年のスタジオセッションから29曲(内25曲は未発表)のスタジオアウトテイクを含む、30曲ものレアな演奏が収められる。ジャニス・ジョプリンの名を世界に知らしめたビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールティング・カンパニーのアルバム『チープ・スリル』が生まれたセッションだ。また、1968年4月12日にウィンターランド・ボールルームで録音された「ボールとチェーン」の未発表ライヴ音源も追加となる。

今作には、再発に向けてジェファーソン・エアプレインのグレイス・スリックおよびビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールティング・カンパニーのドラマーのデヴィッド・ゲッツによるライナーノートも収められる。その中でグレイス・スリックは“あの歌声を聴いた瞬間、なんて凄い、止め処なく溢れるままのあらゆる感情の爆発…と思った。ジャニスはエプロン姿が女性の象徴だった50年代からノーブラに象徴される女性解放の60年代へと難なく適応した。私たちはみんな新しく得た自由を思い切り謳歌したし、音楽にも反映されたわ。このアルバムの世界的成功のお陰で、それまでサンフランシスコのベイエリアだけで起きていた現象を世界中の人々が聴くことが可能になった。そして今、新しい世代がこの『チープ・スリル』体験を楽しむことができる”と綴っている。

このリリースの発表前、ジャニス・ジョプリンの『グレイテスト・ヒッツ』は2018年7月31日にアメリカレコード協会より、800万枚を売り上げたプラチナディスクに認定された。また、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールティング・カンパニーのオリジナル盤『チープ・スリル』はアメリカレコード協会から、200万枚の売上を超えたプラチナディスクに認定されている。

1968年8月12日に発売された『チープ・スリル』は即座に大ヒットとなり、チャート1位を記録する。1967年の『モンタレー・ポップ・フェスティバル』での評判もあり、ジャニス・ジョプリンはロック初のサイケデリックソウルシンガーという地位を確固たるものとし、今もなお後世に影響を与え続ける、ロックミュージックのアイコンとなった。『チープ・スリル(50周年記念エディション)』はそんな1968年のスタジオセッションに立ち返り、ジャニス・ジョプリンという天才と、そんな彼女がビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールティング・カンパニーのメンバーたちと共有した、途轍もない歴史的瞬間に新しい光を当てている。

『チープ・スリル(50周年記念エディション)』に収録されている30曲のうち、これまで世に出ているのは以下の5曲のみ。「サマータイム(テイク2)」(1993年発売コンピ『ジャニス』に収録)、「通行止め」(1999年『チープ・スリル』再発版に収録)、「イッツ・ア・ディール(テイク1)」「イージー・ワンス・ユー・ノウ・ハウ(テイク1)」(2曲とも1999年発売ボックスセット『Box of Pearls』の“レア・パールズ”ディスクに収録)、「マジック・オブ・ラヴ(テイク1)」(レコード・ストア・デイ特別盤『Move Over!』に収録)。

オリジナル盤『チープ・スリル』はライヴアルバムの雰囲気を持たせるために歓声が足されていたが、「ボールとチェーン」だけは実際にコンサートでライヴ録音された。『チープ・スリル(50周年記念エディション)』には、1968年4月12日にサンフランシスコのウィンターランド・ボールルームで録音した同曲の別ライヴバージョンを収録。リードヴォーカルのジャニス・ジョプリン、ギターのサム・アンドリューとジェイムス・ガーリー、ベースのピーター・アルビン、ドラムのデヴィッド・ゲッツの5人編成のサイケデリックバンドは、本作ができるまで数年もの下積み時代を重ねていた。ジャニスを迎えてから1年が経過した1967年に彼らはセルフタイトルのアルバムをリリースし、地元サンフランシスコと周辺地域で熱心なファンを獲得していった。

1967年の『モンタレー・ポップ・フェスティバル』での演奏により、ビッグ・ブラザーはその名を全国に轟かせる。ジャニスのとどまることを知らない全力の歌声に観客は総立ちとなった。その場にいたCBSレコード社長のクライヴ・デイヴィスはビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールティング・カンパニーをColumbiaレコードとの契約に漕ぎ着ける。ジョン・サイモンをプロデューサーに迎えた『チープ・スリル』はバンドのむき出しの才能と最前線の演奏力をそのまま抽出し、「愛する人が欲しい」「ふたりだけで」といった魅力溢れるオリジナル曲の他に、ジョージとアイラ・ガーシュウィンの「サマ-タイム」、ビッグ・ママ・ソーントンの「ボールとチェーン」、そしてジェリー・ラゴヴォイとバート・バーンズによるソウルバラードの名曲「心のかけら」といったジャズやブルースの人気曲のカバーを収録。「心のかけら」はジャニスの代表曲となり、彼女の存命中チャート最上位を記録したシングルとなった。

『チープ・スリル』は1968年10月から12月にかけて、2度にわたって累計8週間ビルボード200アルバムチャートの1位に輝いた。“『チープ・スリル』は時代を超えて生き残る作品となったようだ”とデヴィッド・ゲッツは『チープ・スリル(50周年記念エディション)』のライナーノーツに綴っている。

“それはこれがジャニス・ジョプリンという偉大なアーティストの最高傑作と言えるからなのかもしれない。間違いなくブラザー・アンド・ザ・ホールティング・カンパニーというバンドを最も忠実に表した作品であることは確かだ。さらに、ビッグ・ブラザー/ジャニスは1960年代のサンフランシスコ、サイケデリック、カウンター・カルチャーを体現したバンドであり、サウンドであったと付け加えておこう。そして、例えるとするなら、また50年という歳月によって生まれた見解から言わせて貰うなら、『チープ・スリル』は私にとって1968年という年のタイム・カプセルである。あの年はビッグ・ブラザー、ジャニス、そして1960年代のアシッドにどっぷり浸かって燃え尽きたカウンター・カルチャー世代が転機を迎えた瞬間だったのかもしれない”。
アルバム『チープ・スリル(50周年記念エディション)』2018年12月5日発売
    • SICP-5935~6/¥3,600+税
    • ※解説・歌詞・対訳付き
    • <収録曲>
    • ■DISC 1
    • 01.ふたりだけで(テイク3)
    • 02.愛する人が欲しい(テイク4)
    • 03.サマ-タイム *(テイク2)
    • 04.心のかけら(テイク6)
    • 05.ハリー(テイク10)
    • 06.タートル・ブルース(テイク4)
    • 07.オー、スウィート・マリー
    • 08.ボールとチェーン(ライヴ、ウィンターランド・ボールルーム、4月12日、1968年)
    • 09.通行止め *(テイク1)
    • 10.キャッチ・ミー・ダディ(テイク1)
    • 11.イッツ・ア・ディール *(テイク1)
    • 12.イージー・ワンス・ユー・ノウ・ハウ *(テイク1)
    • 13.ハウ・メニー・タイムズ・ブルース・ジャム
    • 14.フェアウェル・ソング(テイク7)
    • ■DISC 2
    • 01.フラワー・イン・ザ・サン(テイク3)
    • 02.オー、スウィート・マリー
    • 03.サマ-タイム(テイク1)
    • 04.心のかけら(テイク4)
    • 05.キャッチ・ミー・ダディ(テイク9)
    • 06.キャッチ・ミー・ダディ(テイク10)
    • 07.愛する人が欲しい(テイク3)
    • 08.ハリー(テイク9)
    • 09.フェアウェル・ソング(テイク4)
    • 10.ミズリー(テイク2&3)
    • 11.ミズリー(テイク4)
    • 12.マジック・オブ・ラヴ *(テイク1)
    • 13.タートル・ブルース(テイク9)
    • 14.タートル・ブルー(ラスト・ヴァーステイク1-3)
    • 15.心のかけら(テイク3)
    • 16.フェアウェル・ソング(テイク5)
    • *の5曲を除き全て未発表
アルバム『チープ・スリル(50周年記念エディション)』
アルバム『チープ・スリル』

OKMusic編集部

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