【Yellow Studs・山人音楽祭 2018】
「また帰って来るからな!」故郷の群
馬で錦を飾った

山人音楽祭 2018【妙義ステージ】 Yellow Studs
広い空や遠くに臨む山々が、綺麗なオレンジに染まった夕暮れ時の妙義ステージ。この美しい光景にぴったりなジャジーでブルースなライブを、アコースティックでみせたYellow Studs。ピアノサウンドを弾ませながら、ロックスピリッツを燃やすように歌い上げていく野村太一(Key/Vo)のしゃがれた声は、どこか並々ならぬ熱を帯びていた。群馬県出身の野村太一と野村良平(Gt/Cho) は、ここが地元、群馬県出身。だからこそ、故郷に錦を飾らんとばかりの気迫が、ヒシヒシと伝わってきたのだろう。緊張感を感じさせつつも、絶妙に抜けた温かみのあるサウンドがとにかく心地いい。
Yellow Studs
野村太一が18歳で上京してからのエピソードを聞いてから、再びこの群馬の地で聴く「ライブハウス」は一層に胸に染みる。「これぐらいの秋晴れの空の下で、うちのばあちゃんが死にました。そっから東京に出てって、親孝行もろくにせず、音楽ばっかりやってきました。ただ今日ここに立てたことで、両親に少し恩返しできたと思っています」と、十数年前を振り返るMCから「汚い虹」を披露。
Yellow Studs
Yellow Studs

さらに、高野玲(Dr)がキックでリズムを刻みながらヴァイオリンを奏でる驚きのスペシャル編成で届けられた「アブラゼミ」は、秋になった今、哀愁が一層増していてグッとくる。群馬を発ち、東京で何度も秋を迎えた彼らだからこそ鳴らせる音があり、届けられる歌がある。繰り返される毎日には、喜んだり楽しんだりする明るい感情だけが湧いてくるわけじゃなく、苛立ったり先行きに不安を感じたり、些細なことに心擦り減らしたりする時もあるじゃないかと、そんなリアルな人生が丸ごと擦り込まれたかのような楽曲はどれも、凄まじい説得力があった。
Yellow Studs

Yellow Studs

バンドにとって、特別な意味合いを持った妙義ステージのラストナンバーは「サラバ」。そしてアンコールでは、奥平隆之(Gt)のバンジョーと植田大輔(Ba/Cho)のベースラインが際立つ「ヘイママ」で、鮮かな余韻を残してステージを後にし、去り際には「また来るからな!」と笑顔で手を振っていたのも印象的だった。来年か、再来年か、もっと先のことかは誰もまだ分からないが、バンドが積み重ねた月日の分、より胸に訴えかけるような心地よくもパワフルなライブをみせてくれることだろう。そんな清々しい期待感が心を満たすような、堂々たるステージで妙義の幕を閉じた。

文=大西健斗 撮影=タマイシンゴ

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