日本最大級のTOKYO CALLING 2018 SP
ICEライブレポート2日目【下北沢】T
HE冠、THEラブ人間~グッバイフジヤ
マ、超能力戦士ドリアンまで

日本最大級のライブサーキット【TOKYO CALLING 2018】 9.16 下北沢エリア
TOKYO CALLINGの2日目の会場は下北沢。この日は10会場、99組のアーティストたちが熱演。自身の音楽とアイデンティティを各会場で魅せつけ合い、ぶつけ合った。
アカシック
アカシック Photo by タマイシンゴ
本音と妄想、リアリティとシュールさを曲毎に会場のGARDENいっぱいに広げていったアカシック。ポップさとキュートさ、グルーヴィーと怒涛の混載も特徴的な彼らの音楽は、歌われる曲毎の違った主人公の気持ちの正直な機微同様、場内をブンブン振り回していった。
まずは演奏メンバーのみが先にステージに登場。グルーヴィーな演奏を開始する。少し間を置きボーカルの理姫も「イエーイ!!」の煽りと共に登場。一瞬で会場が華やぐ。そのまま「8ミリフィルム」へ。今日も理姫のボーカルは伸びやかではっきりとし直線的に届いてくる。黒川絢太のベースがリードする「邪魔」に入ると、ウェットさも加わり多少のセンチメンタルさが呼び込まれていく。同曲での聴き所は切り込んでくる奥脇達也のギターソロ。それは場面を切り裂き、歌主人公の心の内を露見させる如く炸裂した。また、「you&i」では悲しい話が歌に乗せ綴られつつも、ちょっとしたグッドナイト感や安堵も与えてくれた。
アカシック Photo by タマイシンゴ
後半は怒涛だった。「CGガール」が、持ち前のアップテンポさと勢いにてグイグイ会場を惹き込んでいけば、「LSD」では、残り少なくなったキャンディとライブが終盤に差し掛かった寂しさが重なり、それをあえてハッピーにコーティング。同曲では私同様、“まだまだこのライヴが続いてくれればいいのに…”と思った方も多かっただろう。最後は「マイラグジュアリーナイト」が、すったもんだした先に訪れた大団円感に出会わせてくれた。
「また近いうちに会いましょう」との理姫の言葉を残し5人はステージを去った。
THE冠
THE冠 Photo by 白石達也
全出演グループ中、唯一のヘヴィメタルバンドと自負しSHELTERに登場したTHE冠。加え、もしかしたら最高齢(平均年齢40代)であったかも…。重厚なメタルサウンドを基調にポップ性やコミカルさや親しみやすさ、あるあるを交えたその音楽性にて会場中を魅了していった彼ら。オリジナルコスチュームを身にまとったボーカル冠を中心にメンバーがステージに降臨し、「ほな行こうか、下北~!ヘビメタやりにやってきた!!曲知らなくても暴れてくれるか!?」(冠)と挨拶代わりに「帰ってきたヘビーメタル」を放つ。スタートからいきなりフルスロットル
ラウドでドゥームなメタリックなサウンドと、ツインペダルが地響きを立てて襲いかかってくる。フロアも呼応代わりにヘッドバンキングで対抗。冠のハイトーンのロングシャウトがこれでもかと響き渡る。続く「哀罠メタル」でも、これでも喰らえと、ラウド&サグな重いギターリフが次々にフロアに放り込まれていく。
THE冠 Photo by 白石達也
「出番を待っている間中、ほんまに大丈夫かな?と不安だったけど、安心した。嬉しい」と満場のフロアを見て愉しげそうな冠。「戦う魂を貫くのがヘヴィメタルだ!!」と告げ入った「最後のヘビーメタル」、「好きなものがあったらとことん貫いたらいい。
俺たちは倒れても何度でも何度でも立ち上がれる」と語り。それを更に信憑性高く立証した「初志冠徹」では、べっちも早弾きギターソロを魅せつけて喝采を浴びた。ラストは祭りの土着性をブレンドした「担がれた冠」が会場を一体化させ、やり続け貫き通したが故に辿り着けた独特の美学を目の当たりにした。
グッパイフジヤマ Photo by マサ
終始、甘酸っぱいポップソングを展開し、君に恋してる感を集まった者たちに寄与したCLUB 251でのグッバイフジヤマ。
「僕、中山。この前、彼女にフラれました!イェーイ!」とのヴォーカル中山卓哉の第一声からライヴはスタート。その気持ちを改めて楽曲と共に会場にぶつけるように「ぼーいふれんど」へ。いきなりキュンとした想いを会場中に広げていく。突っ込み気味で入った「ユー・ドント・ラブ・ミー・テンダー」では、彼ら特有のハーモニーも現れ、グループ全体でその想いを届けるが如く。「つまらない現状をぶち壊して行こうぜ!」と叫び入った「チェリッシュ!」では、モータウンサウンドに乗り愛しい気持ちが全開。とは言え、それをあえて明るく気丈にふるまうかのようにポップに伝えるのが彼らの特徴だったりもする。それはこの日も同様であった。
グッパイフジヤマ Photo by マサ
また、「夏はいつも好きな人をつれ去ってしまうイメージがあるから嫌い」と告げ、その真意をドライブ感のある8ビートに乗せて伝えた「あの日の僕らに会いに行く」。仲の良かったバンドマンたちが志し半ばでリタイアする。その友人に向けてエールも含め、また会おうとの気持ちを込めて歌った「ぼくらのファンファーレ」では、秘めたエモさも垣間見ることが出来た。
そして、ジャジーでウォームなアレンジの「はっぴいえんど」ではスイングさが会場いっぱいに満ち、ハッピーエンドが来ないのは分かってるけど、どうしようもない胸の内をあえて笑顔で伝えた。最後は彼らの真骨頂。手に届かなくても君がいるから生きていけるし、進んでいける。切ないけど心はなんだかハッピーな気分のナンバー「ダーリン」で締められた。
THEラブ人間 Photo by タマイシンゴ
現在の「下北バンドの代表格」と言えばやはりTHEラブ人間だろう。そんな彼らがGARDENのステージに現れる。「しんどい毎日だけど、お前たちに助けられてるよ」と伝えライヴに入った彼ら。終始、独特の情けなさややるせなさも飲み込んだ青春の機微を各曲毎に映し出していく。
登場SEもなく5人のメンバーがいきなりステージに登場するやいなや、ガツンとくるデモンストレーション音の中から「21世紀“楽勝”宣言」が現れる。スピード感とドライブ感溢れるサウンドに乗り、憤りを込めて楽勝と自分に強く言い聞かせるように響く歌が会場中の者の胸を直撃していく。疾走感溢れる8ビートに乗り、ぐらいの気概を込めて各曲をうたう歌手・金田康平の雄姿が眩しい。
THEラブ人間 Photo by タマイシンゴ
「これはもう青春じゃないか」に入ると、更に青春感がブワッと会場中に広がっていく。もうこうなると会場も大合唱大会。彼らの歌が集まった者たちへの歌へと変わる。ラテンビートの繋ぎを経て、会場も交え「一緒に踊ろうぜ!!」とばかりに南国性も混じったラテンダンスナンバー「クリームソーダ」に突入すると、陽気なコパナガーナなビートに乗せて、会場も思い思いに好き勝手に踊っていく。
「俺は君がどんな人間でも歌う。例え指名手配犯でもやはり歌う」(金田)と告げ、初期よりずっと欠かさず大切に歌われてきた「砂男」がここで現れる。相変わらず気持ちを浄化させてくれるかのように響く同曲に合わせて、会場中から大合唱が起こる。歌詞の一部をTOKYO CALLINGと変えるサービスも交え歌われた同曲。ラストは新曲「電波」を会場に残し5人はステージを去った。
Maki
Maki Photo by 白石達也
「サーキットイベントやライブは曲を通して、それを作った人の見てきたもの、感じてきたもの、得てきたものを、より分かったり、知ったり、感じたり、共有したいがために行く場所」と、自身がライヴを観に行く際の意義を、ライヴ中のMCで語ったSHELTERでのMaki。名古屋在住の3ピース・ロックバンドだ。その言葉は、そのまま彼らの紡ぎ出す歌への興味へとリンクさせるものがあった。
「今日はカッコいいところを見せに来たから」とボーカル&ベースの山本響。メロディックナンバー「生活の行方」からライヴを走り出させていく。♪寄り添って愛し合おう♪と歌を通して伝え、ステージとフロアとの距離をグッと縮めた彼ら。「下北沢に愛を込めて」の言葉と共に入った「愛」では、更にギアをアップさせていく。
Maki Photo by 白石達也
シンプルで即効性のあるパンクサウンドの上、やや文学的なリリックとのブレンドも彼らの音楽性の特徴。♪さみだれに濡れて♪等の表現を交え、秘めたエモさを炸裂させた「五月雨」もそうであった。また、新曲「秋、香る」にて、抜き差しも活かし、秋の匂いで会場をいっぱいにすれば、またこの空間でライブが出来、みんなと会えるようにとの願いを込めて放たれた「平凡の愛し方」、幾つもの♪どうかまた♪の思いを込めて歌った「シモツキ」等、再会を誓うナンバーが立て続けに鳴らされ、会場中から返答のような無数のコブシを挙げさせた。
ラストは「文才の果て」。同曲が、「なんだかんだあるだろうけど、やはりあなたの生きている日々は素晴らしいものなんだよ」と全てを肯定してくれるかのように響いた。
Hakubi
Hakubi Photo by マサ
「腕を組んで観ている音楽関係者になんか聴かせたくない!今日この時ここに集まってくれた人たちのためだけに思い切って30分間演ります!!」(ボーカル&ギター片桐)との序盤の言葉が会場をステージへとぐっと抱き寄せた、CLUB251でのHakubi。口にこそ出さないが、分かって欲しい!や、何故?を、静&激、熱&冷を交えたエモーショナルなサウンドに乗せて歌い放った彼ら。大人は分かっちゃいない感を多分な諦念と絶望の深淵を交え歌いながらも、どこかその先の、“もしかしたら…”を信じさせてくれるような歌が各曲、胸に刺さった。
感謝も込めてお辞儀をしながら一人一人ゆっくりとステージに上がっていった彼ら。ギターの爪弾きと歌い出しから緊張感とそれを打ち破るデモンストレーションへ。その中から、「辿る」の力強い生命力のあるバンドサウンドと諦念も漂わせた片桐の張りのある歌声が閃光的に現れる。消えてしまうんじゃないか?忘れられてしまうんじゃないか?のアイデンティティの不惑を歌いつつも、それを打破してくれるかのように“大丈夫だよ”と鳴り響くサウンドも頼もしい。
Hakubi Photo by マサ
そして、彼女たちの魅力の一つの、その疎外感の中でのアイデンティティをかき鳴らすようなエモーショナルなサウンドに乗せて放った「mirror」、自分が何者か疑いながらも抗えずに嫌がおうにも朝が来てしまう。そのやるせなさを感情いっぱいに吐き出した「午前四時SNS」、ドラムとの2声のコーラスも手伝い、楽曲が擁している神秘性とエモーショナルさを炸裂させた「薄藍」、“僕らはまだ終わっていないよ”と、それに同調した者のコブシを上げさせた「夢の続き」、最後は、「賽は投げられた」が、諦念の向こう側に待っている、と強く問いかけてきた。
彼女たちがステージを去ったあと、ちょっとした明日への希望と活力が体の底に蠢いて(うごめいて)いたのは、けっして私だけではなかったはずだ。
超能力戦士ドリアン Photo by マサ
この日のCLUB251のトリは能力戦士ドリアンが務めた。2本のギターとボーカル&ダンス、バックは同期という形態の彼ら。が故のサウンドの自由さやフレキシブルさ、多彩さを用い、各曲毎様々な歌場面を楽しませてくれた。
ライヴが開始され、ステージにはメンバー3人…いや、ギターの2人しかいない。そんな中、轟く雷鳴と共に恐竜の着ぐるみを着たヴォーカルおーちくんも登場。4つ打ちに乗せて、あるあるソング「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」を歌う。続いて、ハッピーさ溢れるサウンドの中、無数のダブルピースの花を咲かせた「アイウォンチューを発令中」、ラウド気味且つ上昇感のあるサウンドと共にジャンプやワイパーの壮観を作り上げた「ヤマザキセイヤと同じ性別」、カラフルなキラキラしたサウンドと愉快な歌が、いかにも楽しそうなテーマパークへと誘った「おいでよドリアンランド」、また、レゲエのナイヤビンギのリズムに乗せ、関西の有名デートスポットを歌った「天保山」では、そこに実在する「海遊館」に自身を佇ませてくれた。
超能力戦士ドリアン Photo by マサ
後半も一体感と会場中の掌握は止むことはなかった。「チャーハンパラパラパラダイス」では、ユーロビートに乗せてパラパラをみんなが嬉しそうに一緒に踊り、ラストは自身の特徴的な楽器編成を交えた自己紹介ナンバー「いきものがかりと同じ編成」が歌われた。アンコールは、「WANIMAと同じ三人組」。疾走感のあるサウンドの上、もう一つの自己紹介ナンバーで締められた。
「TOKYO CALLINGで優勝目指してます!!」と開始時に宣言した彼ら。何をして優勝なのか?は定かではないが、フロアを交えて生み出されるバイタリティと一体感、一緒感は、まさに優勝候補。既知/未知関係なく漏れなく会場全員を惹き寄せ、ノらせ、踊らせる光景には終始脱帽されっぱなしであった。
こうして、私の2日目の下北沢編は終了した。
取材・文=池田スカオ

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