【インタビュー】MINAMI NiNE、キャ
ッチーなメロディーや洗練されたアレ
ンジ、良質なプレイなどが詰め込まれ
たEP『LINKS』

宮崎発の新たなメロディック・パンク・バンドの旗手として、注目を集めているMINAMI NiNE。彼らの最新作であると同時に、メジャー・リリース第一弾となるEP『LINKS』が10月10日にリリースされる。キャッチーなメロディーや洗練されたアレンジ、良質なプレイなどが詰め込まれた同作は、パンクという枠を超えた独自の魅力を湛えていることが印象的だ。『LINKS』のリリースを機にさらなるスケールアップを果たすことを予感させるMINAMI NiNEのメンバー3人に、それぞれの音楽的な背景やMINAMI NiNEの音楽性、『LINKS』についてじっくりと話を聞いた。

■感謝すべきは家族や友達、自分達を応援してくれる人、バンドのスタッフ
■縁や絆、つながりをテーマにしようと決めて制作に取りかかりました

――まずはMINAMI NiNE結成のいきさつを話していただければと思います。

ヒロキ:元々は僕とギターのワラビノは地元の高校の同級生で、一緒にバンドをやっていたんです。そのバンドで上京して25歳まで活動していたんですけど、解散することになってしまって。でもバンドをやりたいなという気持ちがあったので、ワラビノと新しいバンドを作ることにして、暇そうにしていた地元の先輩のスケロクを誘って(笑)、2011年にMINAMI NiNEを結成しました。

――近くに同郷のスケロクさんがいて良かったですね。皆さんの音楽的な背景なども教えていただけますか。

ヒロキ:最初に音楽に興味を持ったのは、中学の頃でした。物心ついた頃から僕の家には親父が昔弾いていたギターがあって、親父は酔っぱらうとそのギターを弾くんですよ(笑)。それを、子供の頃からずっと見ていて、自分もギターを弾いてみたいと思うようになって、親父に教えてもらいながら、親父が持っていたスコアを見てフォークソングを練習するというところから入りました。

――なるほど。フォークの弾き語りから始められたんですね。

ヒロキ:いや、その頃は歌いたいという気持ちはなくて、ギターの練習をしていました。そのあと、すぐにベースをやることになるんです。クラスメイトでバンドをやろうという話になって、ベースがいなかったんですよ(笑)。ただ、ベースは持っていなかったので、お年玉が入るまでずっとフォークギターでベースの練習をしていました(笑)。その年の正月にベースを買って、ちゃんとベースをやるようになりました。そのバンドはBLANKEY JET CITYさんのコピーバンドだったんです。彼らと出会って、そこからロックとかバンド・サウンドに入っていった感じでしたね。

ワラビノ:僕は、中学生だった頃に僕の姉がつき合っていた彼氏がギターを弾いていたんです。それで、僕もギターを弾きたくなって、その人に習ってギターを始めました。その後、高校生になったときが青春パンクやGOING STEADYさんが流行っていた頃で、そういう音楽を知ってバンドに興味を持つようになって。で、高校1年のときヒロキと出会うんですけど、その時点で彼はもうオリジナルを作っていたんですよ。それで、一緒にバンドをやるようになるんですけど、その頃はまだ歌っていなくてベースだったよね?

ヒロキ:うん。

ワラビノ:そのバンドのボーカルが脱けて、いつの間にかヒロキがボーカル&ベースになっていました(笑)。

ヒロキ:ライブが決まっている中でボーカルがやめてしまったので、もう自分が歌うしかないと思って。自分の中では結構大きな決断だったけど、今となっては歌うようになって良かったと思います。

ワラビノ:俺も、そう思う。
▲『LINKS』[初回限定盤]
▲『LINKS』[通常盤]

――同感です。ヒロキさんは、すごくいい歌を歌われますからね。ワラビノさんは、どんなギタリストに影響を受けたのでしょう?

ワラビノ:始めた頃はGLAYさんやLUNA SEAさんが好きだったけど、今はガラッと変わってしまいました。今は、ジョン・フルシアンテが好きです。ジョン・フルシアンテみたいなギタリストは、いいなと思いますね。

スケロク:僕も音楽に目覚めたのは、姉の彼氏がきっかけでした。僕が中1のときの姉の彼氏がギターを弾いていて、もう弾かないからあげるよといってギターをくれたんです。それで、GLAYさんを弾き語ろうと思ったんですよ。でも、いきなりアルペジオだったので弾けなくて(笑)。それで、ギターはほったらかしていたら、うちの父親が実は俺はドラムが叩きたかったんだと言い始めて。家族バンドをやりたいと言って、安いドラムセットを通販で買ったんです。そのドラムを、僕が横取りしたんです(笑)。僕はずっとスポーツをやっていて身体を動かすのが好きだったので、ギターよりもドラムのほうが性に合っていたんですよね。それで中学の友達と一緒にバンドをやろうという話になって。BLANKEY JET CITYさんやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTさんから入って、Hi-STANDARDさんも好きになって…という感じでした。

――メンバーが影響を受けたアーティストやベース&ボーカルという編成などからMINAMI NiNEをパンクバンドだと思う人が多いかもしれませんが、パンクという一言では括れないバンドといえますね。少しパンクが香るメロディアス&エモーショナルな音楽性という個性が印象的です。

ヒロキ:今の自分達がやっていることは、僕が高校生の頃にオリジナルを作り始めた当時から、それほど変わらないんですよ。僕はパンクとかロックの“ガァーッ!”というノリが大好きけど、伝えたいことやメロディーという面ではフォークソングや歌謡曲が大好きなんです。その自分が好きなものを組み合わせたら、こんなふうになっちゃったという感じです(笑)。

ワラビノ:僕は昔から、その時々で好きな音楽が結構変わるんですよ。さっきも話したようにGLAYさんから入って、青春パンク、J-POP、洋楽ロックというふうに、いろんな音楽を聴いてきたんです。だから、こういうものしかやりたくないという人間ではないんですよね。それに、ヒロキが作る曲はどの年代の人でも、それこそあまり音楽に興味がない人とかでも聴けるなというのがあって、そこがMINAMI NiNEの強みだと思っているんです。だから、パンクだと思う人はそう思ってくれればいいし、J-POPだと感じるならそれでも構わない。僕は、そういうスタンスです。

スケロク:元々MINAMI NiNEを始めるというときに三人で話したのが、若い子はもちろん、お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お祖母ちゃんも聴けるものや認めてもらえるような曲をやっていこうということだったんです。結成してから7年くらい活動しているけど、どんどんそこに近づいていけているんじゃないかな。特に今回の『LINKS』を完成させて、それを強く感じています。

――MINAMI NiNEの音楽性を掘り下げていきましょう。同作を作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?

ヒロキ:今作はメジャー一発目の作品なんですよね。そういうチャンスを貰えることになったときに、何に一番感謝すべきかなと思ったんですよ。そう考えたときに浮かんできたのは家族や友達、自分達を応援してくれる人、バンドのスタッフといった人達だったんです。なので、そういった人達に向けた作品にしたいと思って。それで、“縁”や“絆”、“つながり”といったものをテーマにしようと決めて、制作に取りかかりました。
▲ヒロキ(Vo&Ba)

――感謝の気持ちを込めることで、柔らかみや、包み込むような温かみを持った作品になりましたね。曲を揃えていく中で、キーになった曲などはありましたか?

ヒロキ:1曲目の「Over and over」かな。これは5~6年前に作った曲で、そのときも今と同じように自分は一人で生きているわけじゃないよなということを思っていて、家族や友達に向けた感謝を込めたんです。5~6前にこの曲を作ってから、ずっと“感謝”ということがバンドとして伝えたいテーマのひとつとしてあるというところで、「Over and over」は僕の中で大きな意味を持った1曲です。

ワラビノ:それは、僕も同じですね。「Over and over」は古い曲ですけど、昔から僕らのことを知っているお客さんにしても、最近応援してくれるようになった人にしても、ライブでやってほしいという声がすごく多いんですよ。でも、ずっとやり続けるのはどうかというのがあって、最近はあまりやらなくなっていたんです。でも、今回“感謝”というテーマのアルバムということで、「Over and over」を入れることになって。で、昔は3ピースだから、こういう音を入れるとライブで再現できないなということを考えていたけど、最近はそういうことに関係なく、楽曲に必要なものは入れていこうというスタンスになっているんですよ。そのほうが、曲が良くなるから。それは「Over and over」にも活かされていて、今回新たに録り直したことで、より多くの人にちゃんと届けられるものになったんじゃないかなと思います。

スケロク:「Over and over」リ・アレンジするにあたって、バランスは考えました。昔から僕らのことを知っている人達も、今回のタイミングで初めて聴く人達もいいなと感じてもらえるものにしたいというのがあって。昔の曲を新録したりすると、前のほうが良かったという意見が出ますよね。そうじゃなくて、聴いた人に「やっぱり、いいものはいいね」と言ってもらえるような曲にしたかったんです。僕らの中では、それが結構うまくできたんじゃないかなと思います。
▲スケロク(Dr&Cho)

――「Over and over」は5~6年前に作った曲という感じはしませんので、話を聞いてちょっと驚きました。

ワラビノ:そう感じてもらえたなら良かったです。『LINKS』のキーになったという意味で「Over and over」は大きな曲だし、僕の中では最後に入っている「Links」も思い入れが強いです。ヒロキがコードと歌だけの状態で持ってきたときから、すごくいい曲だと思っていたんですよ。なぜ、そう感じるんだろうと考えてみたら、ちょっとメンバーのことも歌詞に入っていて、それが響いたというのもあるかもしれない(笑)。そこも含めて、この曲はすごく好きです。

――“南風に吹かれてあてもなく歩いた日のことや 酒のアテは夢物語 今も鮮明に覚えてる”という歌詞は“グッ”ときました。「Links」の歌詞はメンバーも含めて自分と関わりのあるすべての人に向けた感謝の思いが綴られていて、アルバムを象徴する曲といえますね。

ヒロキ:「Links」は、今回のレコーディングが始まってから作ったんです。「Over and over」とか「Niar」を録った後に作って、“Links”というアルバム・タイトルをつけた曲にしようと思った。ここ数年でメンバーも家族や友達との出会いや別れといったいろんなことがあって、もう傍にいないかもしれないけど、あの人がいなかったら今の自分達はないなという人がいっぱいいて。歌でそういう思いを届けられたらいいなと純粋に思って書いた曲です。

――レゲェやスカのテイストを活かしつつ、サビはキャッチーという成り立ちも魅力的です。

スケロク:曲を作るときはいつもヒロキ君が根本のメロディーや歌詞を持ってくるんですけど、「Links」は元々はこういう曲にする予定ではなかったというか、違う曲調をイメージしていたんです。でも、ヒロキ君がこれを「Links」という曲にしようかなと言い始めたときに、だったら今まで自分達が7年間やってきたものを詰め込んでみたらどうだろうと思って。それで、スカとか、レゲェとかを入れてみたんです。そうやって形にした後に歌詞を見て、めちゃくちゃハマったなと思いました。

ヒロキ:そうだね。僕の中で印象が強いのは、5曲目の「恋」かな。この曲は恋愛バラエティ番組『恋んトス season8』の主題歌なんですけど、今までの自分達にありそうでなかった曲なんですよね。結構ロックで、“パーン!”と突き抜けるような曲で、歌詞も今までに書いたことがないくらいストレートなものになっていて。「恋」を作ったときは『恋んトス』を実際に観て、恋のことを歌わないといけないし、わかりづらいことを歌ってもしょうがないなと思ったんです。それで、もうストレートな歌詞を書きました。サウンド面では、今まで三人でやってきたコーラス……僕がメインを歌って二人がハモるというパターンにプラスαで、40本くらいコーラスを重ねたんです。

――40本! すごいことになっていますねぇ(笑)。実際、この曲のゴスペルっぽいコーラスには耳を惹かれましたし、サビの洒落た味わいは本当に魅力的です。

ヒロキ:僕は今までこういうコーラスを聴いたことがなくて、すごく面白いなと思って。それに、この曲はもっといけるんじゃないかということをずっと繰り返して、形をめちゃめちゃ変えていったんです。最初に作ったときの良さも残しつつ、よりいい曲にするために練り続けた。今回の中で一番戦った曲ですね。その結果、またひとつ新しいところに行けて満足しています。

ワラビノ:「恋」の原曲ができたのは今年の4月頃だったんですけど、楽曲も歌詞も含めてよりいいものにしたくて、事務所の人やレコード会社の人などいろんな人と話をしたんですよ。たぶん僕ら三人だけでは、今の形にはできなかったと思う。なので、これも“縁”が作らせてくれた曲という印象がありますね。そういう中で、自分達もこれまでにないくらいの早さで成長した気もしますし。ただ、これをライブではどうやっていくかというのがあって(笑)。

ヒロキ:そうなんだよな(笑)。

スケロク:課題ができた(笑)。

ワラビノ:そう(笑)。わりと大きな課題が残っていますけど、クリアしたいです(笑)。

スケロク:「恋」はヒロキ君も言ったように、自分達の可能性を広げられた曲だと感じています。なんだかんだ言いつつ僕ら自身はロックバンド、パンクバンドという意識が強くて、今回歌をダブルにしたり、コーラスを何10本も入れたりして、最初は“ええーっ?”と思ったんですよ。正直なところ抵抗があった。でも、できあがったものを聴いて、“すげぇー!”ってなったんです(笑)。こんなこと、できるんだ…みたいな。そうやって自分達の固定観念をぶち壊させられて、もっといろんなことができるだろうし、やってみたいと思うようになった。そういう意味で、「恋」はMINAMI NiNEのターニング・ポイントになったと思います。
■どういう歌を歌って人にどういうふうに聴いてもらって
■どういうことを感じてほしいのかを考えながら歌った

――柔軟な頭で挑戦したことが、いい結果につながりましたね。スケロクさんも印象の強い曲をあげていただけますか。

スケロク:僕はですね……アルバムができてから感じたことですけど、「帰り道」という曲があって。僕らがライブとかで求められるのは“ワァーッ!”とアガる曲だったりするけど、僕らにはもうひとつの顔があるというか。今までに出した作品でもバラードを必ず入れているんですよ。そういう中でも今回の「帰り道」は、冒頭に話したお父さんや、お母さんにも本当に楽しんでもらえる曲が、ようやくガチッとできたという印象がある。この曲はドラムがサビのケツまで入っていないんですけど、どこから入るかということも熟考したんですよ。なんだったら、この曲はドラムはなくてもいいんじゃないか…みたいな(笑)。それくらい、この曲はしっかり聴かせるということを重視して、納得のいくものに仕上げた。なので、途中までドラムが入っていないというようなことはどうでも良くて、「帰り道」はすごく好きな曲です。

ヒロキ:「帰り道」は、三人で深夜にスタジオに入ったことがあって、そのときにワラビノが、なんとなくアルペジオを弾きだしたんですよ。彼は曲を作るでもなく、本当に無意識に弾いていた。それを聴いて、「ちょっと待って。それ、ずっと繰り返して」と言って、それに合わせてアドリブで歌を歌ったんです。で、「これ、いい感じじゃない?」という(笑)。そこから始まったんだよね?

ワラビノ:そう。本当に、なにも考えずに弾いたアルペジオだったんですよ。だから、ヒロキに「今のもう1回弾いて」と言われたときも「えっ? 俺、なに弾いてた?」みたいな(笑)。

一同:そうそう(笑)。

ヒロキ:そこから入って、曲に仕上げました。「帰り道」の歌詞は、この歳になっても自分の中身は小学生や中学生の頃と変わっていないんですよ。なのに、歳をとって大人になってしまったために変わらないといけないことがいっぱいあって。周りの目やプレッシャーも感じるようになったし。幼なじみや昔の同級生と飲んだりすると、みんな大人になっていて、自分だけが取り残されているように感じることがあるんですよね。それで、自分も変わらないといけないのかなと思ったりもする。でも、自分に嘘をつくというか、自分の心を騙してでも大人のフリをしないといけないのかということも思ってしまう。ただ、そうはいっても来年になれば自然と一つ歳をとっているわけだし、10年経てば10年歳をとる。それと自分はどう向き合っていけばいいのか…みたいなことを考えているときに書いたのが「帰り道」の歌詞です。

ワラビノ:「帰り道」のアレンジに関して話すと、僕らはこれまでいくつか音源を作ってきたんですけど、さっきも話したように今回はエレクトリック・ピアノを入れたり、ギターを重ねたりしていて。そういう中で、「帰り道」は本当にメロディーや歌詞の世界観を考えて、入れるべきものを入れていったので、個人的にですけど、ライブのときも重ねた音一つでも欠けてほしくないんですよ。全部必要なものなので、それこそアコギもスタンドに立てようかな…みたいな。今まではライブのことを考えて音を重ねることを躊躇する部分があったけど、今回はライブのことは後回しにしようという気持ちになれた。「帰り道」はそれが色濃く出ていて、バンドとしてそこに行けたのは良かったなと思います。
▲『LINKS』[初回限定盤]
▲『LINKS』[通常盤]

――MINAMI NiNEの音楽性を考えると、今回のアプローチは正解だったと思います。続いて、『LINKS』をレコーディングするにあたって、それぞれプレイや音作りなどの面で大事にしたことなども話していただけますか。

スケロク:今回心がけていたことがあって。ドラムを始めた頃の叩いて楽しかったという感覚を大事にしたいと思ったんです。それで、今回は高校の頃からずっと使っているドラムセットを使いました。そんなに高くない普通のセットで、扱いもすごく雑だったんですけど(笑)。そのセットのヘッドを張り替えて、チューニングして、アプローチ的にもいい意味でなにも考えずに、自分の中から自然に出てきたものを、そのまま叩くようにしました。それがちゃんと表れているかはわからないけど、自分の中ではいつもと気持ちが違っていましたね。僕はレコーディングのときにハマってしまうことが多いんですけど、今回はそういうことがほとんどなくて。ちょっとミスったり、詰まったりしても、特になにも考えずに、“よし、じゃあもう1回やろう”という気持ちで叩けた。そういうスタンスで録るというのが自分の中のテーマとしてあって、それを実践できたということがプレイ面では一番大きいです。

――一度原点に還ったことが、いい結果を呼びましたね。それに、スケロクさんのドラムのビートの心地好さは絶品です。

スケロク:ありがとうございます。僕の中には歌の邪魔をしたくないという気持ちがある。うちの楽曲はメロディックだからフィルとかを入れたほうがいいのはわかっているけど、できるだけ要らないものは省きたいんですよ。自分はテクニシャンではないので難しいことはできないというのもありますけど、僕が目指しているのはビートを刻んでいるだけなのにすごく心地好くて、ビートでこの人は職人だと思わせるようなドラマーなんです。だから、ビートが心地好いと言っていただけて、すごく嬉しいです。

ワラビノ:今回は“リンク”という言葉がテーマで、1曲ずついろんな人をイメージできるようになっていると思うんですよ。僕もそれに合わせる形で、それぞれの曲でいろんな人を想像できるようなギターを入れることを意識しました。なので、曲に合わせて音を細かく変えたり、ステレオでコードを鳴らしたうえで必要な場所では上物フレーズを重ねたりというように結構いろいろやっています。

――幅広さを見せつつロックを感じさせるところが、いいなと思います。それに、歪み過ぎてもいないし、ペケペケでもないというゲイン感も絶妙です。

ワラビノ:僕はいろんなギターが好きですけど、やっぱりロック・サウンドの音が一番気持ちいいというのがあって。そこを幹にしたうえで幅広さを出していくことが、これからは大事かなと思っています。どれだけ新鮮なこととか、新しい表現ができるかが勝負だなと。アルバムを作ったばかりで気が早いけど、今後はそこを追求していきたいですね。ゲイン感に関しては、僕は“ズクズク”が好きなんですよ(笑)。気持ち良く“ズクズク”できるということが、ゲイン感の基本になっていたりするんです。それに、今回はテクニシャンと音作りをしたので、今まで以上にいい音を出せて、レコーディングしているときもギターの音で気持ち良くなったりしました(笑)。
▲ワラビノ(Gt&Cho)

――ギタリストの場合、音に乗せられるというのはありますよね。それに、アコギを多用していることも特色になっています。

ワラビノ:それも今回いろんな人と一緒に作るという環境の中で、今までもアコギは使っていたけど、もっと押し出してもいいんじゃないかということになったんです。録っているときはちょっと入れ過ぎかなという気もしたけど、仕上がったのを聴いて良かったなと思いました。アコギの音が楽曲の煌びやかさを増幅している曲が結構多いから。

――同感です。エモーショナルなギター・ソロも聴きどころで、特に「帰り道」のボトルネックを使った“泣きソロ”は要チェックです。

ワラビノ:あれは、ただやりたかっただけです(笑)。

一同:ハハハッ!

ワラビノ:「帰り道」で使うというよりは、アルバムのどこかで使いたいと思っていたんですよ。ボトルネックというとブルージーなテイストをイメージするとかもしれないけど、「帰り道」はちょっと違っていて。ソロのメロディーが浮かんできたときに、このメロディーはボトルネックの滑らかな音で弾くと一層映えるんじゃないかなと思ったんです。ちょっとアナログシンセっぽいニュアンスというか。そこまでのレコーディングでボトルネックをやりたいと思いつつやれる曲がないなと思っていて、最後の最後に“ここだ!”というのが出てきたので嬉しかったです(笑)。

ヒロキ:でも、スライドバーに指が入ってなかったじゃん(笑)。

ワラビノ:そう(笑)。僕は手が大きくて、指が太いんですよ。なので、薬指にはめるスライドバーを小指にはめて使いました(笑)。

ヒロキ:アハハ(笑)。ベースに関しては、ベース&ボーカルのわりには結構ベースを弾いているんですよね。ワラビノと最初に組んだバンドのボーカルが抜けて自分がベースを弾きながら歌うとなったときに、ちょうどその頃はSNAIL RAMPさんやMONGOL800さんが“ブワーッ!”と来ていた時期だったんですよ。彼らは歌いながらでもただシンプルなベースを弾くだけじゃなくて、結構すごいことをしていて。こんなフレーズが弾けるんだと思ってコピーするところから入ったので、歌いながら弾くのは結構得意なんです。今回も自分の歌を殺さないようにしつつ、ウネりや気持ちいい場所でラインが動いたりとか、ドラムとギターとの絡みとかを意識してフレーズを考えました。昔からやっている曲も、ちょっとベースラインを付け加えたりしたし。なので、どの曲のベースも気に入っています。
――「Niar」のサビのフレージングや「帰り道」のハイ・ポジションを使ったメロウなメロディー、「Links」のウォーキング・パターンなど、ベースの聴きどころも多いです。

ヒロキ:「帰り道」はさっき話したように、三人とも寝ぼけながら作ったんですけど(笑)、その時点でイントロのフレーズは出てきていました。「これ、いいな」といって、何回もやったことを覚えています。「Links」のウォーキング・パターンはちょっと難しいけど、ぜひコピーしてほしいですね。あのフレーズを弾きながら歌えると、めちゃくちゃ楽しいから。歌に関しては、今回は全曲ダブリングになっています。今までやったことがなくて、歌をダブリングする3ピース・バンドっているのかな…くらいに思っていたんですけど、実際にやって聴いてみたときに自分の中でハマりました。すごく気持ちいいんですよね。今まではパンクということに締め付けられていて、自分はこうじゃないとダメだ、歌も“グワァーッ!”というところがないとダメだと思っていたけど、歌っている内容からして“ガッ!”といく必要のない曲もあるんですよ。だから、今回はどういう歌を歌って、人にどういうふうに聴いてもらって、どういうことを感じてほしいのかということを考えながら歌ったんです。そうしたら、どの曲も優しい歌になった。全部の曲で本来の自分らしい声で、自分らしい歌い方をできて良かったなと思います。

――温かみと男っぽさを併せ持った歌になっていますし、声も美声で、ヒロキさんの歌は本当に聴き応えがあります。パンク・スピリットを持ったうえで新しいことに挑戦することで、『LINKS』はMINAMI NiNEならではの魅力を堪能できる一作になりましたね。本作のリリースに伴って10月から始まる全国ツアーは、どんなものになりますか?

ヒロキ:僕達のライブはおとなしく聴いてもらう感じのライブではなくて、みんなで創っていくライブというか。みんなに歌ってほしいし、今回の『LINKS』はみんなで歌える曲ばかり入れたと思っているんですよ。だから、もう大声で歌ってほしいです。それに、僕ら三人はジッとしていないから、来てくれる人にも好きなように身体を動かしてほしい。ノリ方がわからないという人も、僕らが手を上げたときに手を上げてくれれば間違いないので(笑)。MCも僕らはこういう感じなのでカッコいいことは何も言えないですけど、楽しんでもらえると思うし、お客さんが喋りたくなったら話しかけてもらって全然いいですし。僕は、自分達が高校生の頃とかに地元の公民館でライブをしていた頃と同じような感覚で全国をまわりたいんです。“細かいところまで作り込みました”みたいなライブはしたくない。そのときそのときの空気感だったり、気持ちだったりを反映させたリアルなライブをしたいという思いがあって、そういうところを楽しんでもらえればと思います。

ワラビノ:今回『LINKS』がユニバーサル・ミュージックからリリースということで、昔からMINAMI NiNEを見てくれている人もいれば、このタイミングで初めてライブに来てくれる人もいると思うんですよ。その両方の人に響くライブをしたいというのがあって、そのためにはライブの仕方も今までどおりではいけない。空気感はヒロキが言ったように変えずにいたいけど、楽曲を表現するにあたって、これからは困難や課題もあると思うんですよ。それを乗り超えて、一番いい形で『LINKS』をライブで伝えられるようにしたいと思っています。

スケロク:音源は本当にいいものができたと思っているので、それをいかにライブで表現できるかというのが自分達の次のやるべきことですよね。僕らは三人しかいないので、CDを完全に再現するのは物理的に難しい部分があるんですよ。でも、いわゆるライブ・バージョンというか、音源とはまた違う良さを楽しんでもらいたいという気持ちがあって、そうできるようにがんばります。あとは、ファイナルが宮崎なので、各地でライブを観ていいなと思った人はぜひ宮崎にも来てほしい。ファイナルに来てもらって、宮崎の良さを肌で感じてもらいたいです。

取材・文●村上孝之
リリース情報

『LINKS』
発売日 2018-10-10
[初回限定盤]
UPCH-7458 \2,200 (税込)
[通常盤]
UPCH-2174 \1,680 (税込)
CD
1.Over and over
2.Start
3.Niar
4.帰り道
5.恋
6.Links
初回限定盤DVD
Documentary of“LINKS”

ライブ・イベント情報

<MINAMI NiNE pre.“LINKS TOUR”>
2018.10.13(土)神奈川県F.A.D YOKOHAMA
 w/ MINAMI NiNE,EVERLONG,FOOL THE PUBLIC,kiseki
2018.10.27(土)兵庫県Music Zoo 太陽と虎
 w/ MINAMI NiNE,SABOTEN,SCUMGAMES,and more...
2018.10.28(日)広島県広島BACK BEAT
 w/ MINAMI NiNE,SABOTEN,OVER LIMIT,YAMABIKO,and more...
2018.11.02(金)香川県高松TOONICE
 w/ MINAMI NiNE,SHACHI,and more...
2018.11.03(土)大阪府心斎橋アメリカ村DROP
 w/ MINAMI NiNE,SHACHI,AT-FIELD,BUDDY TANDEN
2018.11.04(日)愛知県名古屋ell.FITS ALL
 w/ MINAMI NiNE,STUNNER,MISTY,THE BOOGIE JACK
2018.11.11(日)東京都渋谷O-WEST
 w/ MINAMI NiNE,S.M.N,and more...
2018.11.16(金)宮城県仙台BIRDLAND
 w/ MINAMI NiNE,NUBO,ONE'S TRUTH,Relents,kiseki
2018.11.17(土)青森県青森ROXX
 w/ MINAMI NiNE,NUBO,Interloper,kiseki,3SET-BOB
2018.11.22(木)新潟県新潟CLUB RIVERST
 w/ MINAMI NiNE,Noah,SKALAPPER,SPACE BOYS,SECRET 7 LINE
2018.11.30(金)茨城県水戸LIGHT HOUSE
 w/ MINAMI NiNE,ユタ州,STANCE PUNKS,XANADU YOUTHZ,SABANNAMAN
2018.12.02(日)北海道札幌COLONY
 w/ MINAMI NiNE,STUNNER,Cell The Rough Butch,花男と小池隼人,Milestone for 10 years
2018.12.07(金)福岡県福岡Queclick
 w/ MINAMI NiNE,and more...
2018.12.08(土)宮崎県宮崎SR BOX
 w/ MINAMI NiNE,and more...

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