みやかわくん 1曲のカバー動画投稿
からメジャーデビューへ、そのサクセ
スストーリーと将来の野望とは?

2017年3月に公開したflumpool「君に届け」のカバー動画が現在(2018年10月)までに約1,200万回再生を記録、その後発表したカバー動画4作品の総再生回数が約2,000万回を記録し、今年2018年6月27日にミニアルバム『STAR LAND』でメジャーデビューを果たした男性ソロシンガー、みやかわくん。1stシングル「イダテンドリーマー」のリリースを10月17日に控え、素朴な人柄の中にも表現者としての芯の強さを感じさせる彼に、いま注目のシンガー・ソングライターになる道程、そして将来の野望を訊いた。
――10月17日に1stシングル「イダテンドリーマー」のリリースを控えている中ではありますが、SPICEへの登場は今回が初なので、まずは“みやかわくん”というアーティストが歩んできたここまでの道程について教えてください。そもそも、音楽に興味を持つことになったのは何がきっかけだったのでしょう。
小さい頃から、音楽はずっと好きでしたね。TVで流れているCMの曲が気になると、それをすぐYouTubeで調べたりしてました。だから、そのうち自然と“何時かバンドをやってみたいな”という気持ちも持つようになっていきました。
――歌を歌うようになったのは、いつが最初でしたか?
今も別に上手いわけじゃないですけど、昔はもうびっくりするくらいヘタだったんですよ(笑)。
――本当ですか? なんだか、にわかには信じ難いお話です。
ホントなんです。音楽の時間の歌もそうだし、友だちとカラオケに行ったりしても全く歌えてなかったですから。それに、とにかく自分の歌声が大っキライでした。多分、そこは自分の性格もかなり影響していたんじゃないかと思います。
――といいますと?
完璧主義なところがあるんですよ。何かを始める以上はちゃんと出来なきゃイヤだし、歌に関してもたとえカラオケでも完璧に歌いたいという気持ちが強かったから、それが最初なかなか上手く出来ないことがイヤでしょうがなかったんです。自分で自分のことが、もどかしいし凄く悔しくて。それで、なんとか“歌えるようになってやる!”と心に決めて、そこからは式根島の海岸で毎晩ひとりで歌の練習をしてました。
――そういえば、みやかわくんは東京都の式根島で生まれ育ったそうですね。
そうなんです。夜な夜な誰もいない真っ暗な式根島の海岸で、歌うというよりは叫ぶのに近い感じで必死に歌っていたので、もしあの姿を誰かに観られていたら……怪しく思われてた可能性もありますね(苦笑)。
――とはいえ、式根島だと夜の星空はとても美しそうですね。
あぁ、それはもう。式根の星は、海岸から見上げるとバーッて拡がってます(笑)。そこで僕は、携帯で曲を聴きながらひたすらノドをいじめてました。
――セルフスパルタ方式をとられていたと。
ノドから血が出るくらいまで、全力で歌ってましたね。毎晩、「もうこれ以上は声が出ない」ってなるまで。
――あまりに熾烈過ぎはしませんか。
そのくらい、ストイックなところがある性格なんです。もちろん、ノドのことを考えたら本当は絶対にやっちゃいけない練習法ですけどね。でも当時の僕は、“根性で鍛えればなんとかなるはず”って考えていたんですよ。皆さん、絶対に僕のマネはしないでください(苦笑)。
――ちなみに、その諸刃の刃的なセルフスパルタ方式によって、歌はどのくらい歌えるようになったのですか?
声量は出るようになりました。自分の感覚としては、前と比べたら段違いで出るようになったんです。話を端折りますけど、そこから家でもこっそり練習をするようになったりして、だんだん歌うことに自信を持てるようになってきたんですよ。
――ということは、そこで次の展開が始まって行くことになったのでしょうね。
はい。“誰かに聴いてもらいたい”という欲求が出てくるようになりました。それで始めたのが、YouTubeでの動画投稿だったんです。式根島のような小さな村にいたとしても、都会にいたとしても、何処にいても皆と同じ空間を共有出来るっていう点で、インターネットはとても便利で面白いものだなと僕は感じていました。
――そういうことでしたか。リアルな観客の前で歌うことよりも先に、webでの活動を始められたのですね。せっかくですから、当時初投稿をした楽曲が何だったのかもぜひ知りたいです。
flumpoolさんの「君に届け」でした。
――その際には、どのようなリアクションが返ってきましたか。
あれは(視聴数が)想像をはるかに超える伸び方をしたので、驚きましたね。投稿する前は、ちょっとでも聴いてもらえたらいいなというくらいの軽い気持ちでいたのに、なんかいきなり1千万回再生くらいいっちゃったんですよ(笑)。
――初めての投稿で、それは凄いです。
コメントの内容とかも、「良かったよ」っていう意見をたくさんいただけたので、そこで歌を人に聴いてもらうって楽しいなぁ、と強く感じるようになりました。
――ある意味では、そこがみやかわくんにとっての表現者としてのスタートだったのかもしれませんね。
多分、曲を作る人にしても、歌う人にしても、何かを発信する側が何を一番欲しているかといったら、別にそれは名誉でもおカネでもなんでもなく、受け手の人たちからのリアクションだと思うんですよ。
――なるほど。それは一理ありますね。
あなたの生み出す世界観が好きですとか、あなたの歌声が好きですと言ってもらえるその言葉が嬉しいわけですし。まぁ、そこは人によって多少の違いがあるとしても、少なくとも僕は皆さんからもらえるリアクションの為だけにやっている、と言っても過言ではないです。それがあるからこそやり甲斐を感じるし、もっと良い歌を歌おう、また聴いてもらいたいという気持ちになるんです。
――かくして、みやかわくんはそこからボーカリストとしての活動を一気に加速させていくことになったわけですが、一方ではこのところ曲作りも手掛けるようになったそうですね。それを始めた動機が、どのようなものであったのかも気になります。
そこについては、やや特殊な事情がありました。僕には恩師というか、プロデューサーとして何かと面倒をみてくれている方がいまして、これまでその方とずっと一緒にやってきていたんですが、少し前にその方が病気を患われてしまったんですね。時期的にいうと、それが今年6月に出したファーストアルバム『STAR LAND』の制作をしていた時期で、その頃は状況的にリード曲だけが出来ていない状態だったんですよ。
――なるほど。あと1曲ではあるけれども、肝心な1曲がまだ決まっていない状態であった、ということですね。
状況的に言うと、発売目前というか“今ちゃんと曲が出来ていないとアルバムを出せなくなる”というところまで来ていたので、もう僕も周りも“大事なリード曲がない!”って大パニック状態になってしまって……。
――想像を絶するシチュエーションです。
リード曲がないということは、当然アルバムのタイトルも決められないし、皆して“どうする?” “どうしよう!”となってしまって、ホントに大慌てでした。そして、そうこうしているうちにその方の病気がストレス性のものであるということがわかったんですけど、僕はそこで思い切ったんです。それまで曲を書いたことなんて1度もなかったとはいえ、“これは自分で何とかしなきゃ!”という風に。
――なんとまぁ。ずいぶんと潔く、勇気ある決断をされましたね。
なんとかその方を助けたい、という一心からだったんですよ。出来るか・出来ないかもまだ全然わからないのに(笑)、思わず「僕が自分で書きます! なんとかします!!」って言っちゃったんです。
みやかわくん 撮影=鈴木恵
YouTuberがアーティストだっていいし、アーティストがYouTuberだっていい。僕はこれからも純粋に“自分”っていうジャンルを追求していきたいです。
――強い心意気を感じるお言葉ですが、実際には半ば見切り発車的なところから、どのようにして曲を作って行くことに?
いざ冷静になって、家に帰ってから曲を作り始めなきゃとなった段階では、正直“どうしよう……”って悩むところからスタートました(苦笑)。どうやって良いのかも全くわからないから、Googleで“作曲・方法”とか検索したりして(笑)。
――よくその段階からスタートして、初の作曲をやり遂げましたね。
いろいろ情報は見ましたけど、専門用語とかは分からなかったし、とにかく時間が無かったから今そこを勉強しているわけにはいかないなと思ったので、とりあえずは自分の感覚だけを信じて作って行きました。要は、鼻歌でなんとかキャッチーなメロディを作って行こうと始めて、3日間くらい寝ないで完成させたのが『STAR LAND』の「スターランド」だったんです。
――その「スターランド」を作って行く際に、みやかわくんが意識していたのはどのようなヴィジョンでしたか。
そこはこの曲タイトルにもよくあらわれていて、イメージしていたのは自分にとっての地元である式根島の星空でした。式根は海も自然も綺麗なんですけど、僕はあの星空が一番好きなんです。実は小学生の時、社会科見学でこっち(東京23区内)に来てプラネタリウムに行く機会があったんですよね。でも、式根でいつも見ている星空と比べたら“え? こんなもんなの!?”と思ってしまったことがありまして(笑)。
――本物とフェイクでは、感動に違いがあって当然ですよ。
たくさんの星を見ながら育ってきた僕としては、初の作詞・作曲をするならやっぱり故郷の式根島やそこで見られる星をテーマにしたかったんです。タイトルも満天の星とアイランドという意味をかけて、「スターランド」としました。
――なお、その「スターランド」をリード曲として据えたアルバム『STAR LAND』は、みやかわくんにとってのメジャー進出第1段作品でもあったわけですが、いよいよメジャーデビューを果たした際には、どのような心境でしたか。
メジャーデビューをすることが決まってからしばらくは、全く実感がなかったんですよ。デビューして何が変わるのかも全然予想ついていなかったんですけど、いざアルバムをメジャーで出してみたら,たまたま行きつけの喫茶店で自分の曲が有線から流れてきたり、これまで経験してこなかったことが起きたりして、そこでようやく“メジャーデビューしたんだな”って感じました(笑)。どうやら、そのタイミングではリクエストチャートの9位くらいに入っていたみたいです。
――素晴らしい。
昔は自分がTVや有線から流れてくる曲について、調べながら聴いている側だったので、今度は自分がその逆の立場になったんだなということを、そこで実感しましたね。“よし、ここからもっと頑張ろう!“って思いました!
――そんな中、このたび10月17日にはメジャーでの1stシングル「イダテンドリーマー」がリリースされることになっております。この作品は、みやかわくんにとってどのような意味を持つ作品でしょうか。
今回の「イダテンドリーマー」については、僕が作詞を担当させてもらっているんですけど、自分が動画投稿の世界から音楽の世界での活動を始めた時に、誹謗中傷とは少し違うにせよ、“ムリでしょ、そんなの”みたいな意見をもらった時のことがひとつのモチーフになってます。というのも、この曲は凄く力強さを持ったものになっているので、いろんなことを言われながらもなんとかここまでやって来た中、自分としては“猛スピードで夢をつかんで行こうぜ!”という気持ちでやってきたこともあり、そこが音と詞の面でちょうどぴったり重なったんです。
――韋駄天とは、速く走る神を意味する言葉ですものね。
そうなんですよ。イダテンという言葉そのものは、小学生の時に学芸会でやった『ガンバの冒険』の登場キャラクターからとったんですが(笑)、曲の持っている疾走感を言葉で表すとしたら、“絶対これはイダテンしかない!”ってなったんです(笑)。人がどう言おうと、本気で全力疾走すれば夢は必ずつかめるものだよ、っていうことを聴いてくれる人たちに伝えたくてこの詞を書きました。
――その表題曲「イダテンドリーマー」をはじめとして、今回のシングルはカップリング曲たちの並びも絶妙で、実に内容の濃いものに仕上がっていますね。
『STAR LAND』も似ている曲が全くない作品になっていたんですが、今回もそれぞれカラーの違う曲を入れることが出来ました。僕からすると、聴く側としてもいろんな音楽を楽しみたいし、歌う側としてもいろんな曲を歌えるって本当に面白いです。
――と同時に、 このシングルを発売した直後からはツアー『ORION~星の詩~』が始まります。今回は【DJ Edition】と【BAND Edition】の2パターンを用意しているとのことですが、みやかわくんとしては各地にてどのような空間を生み出していきたいとお考えでしょう。
今度のツアーは僕にとって2度目になるんですが、次は歌だけじゃなくダンスにも挑戦します! そして、『ORION~星の詩~』というツアータイトルは、「STAR LAND」の歌詞からフレーズを組み合わせてつけたものなので、皆さんに夜空の雰囲気を感じてもらえるようなものにしたいと思ってます。
――わかりました。最後に、みやかわくんが将来に向けてどのような野望を持っているのかも教えてください。
そうだなぁ。僕はジャンルにとらわれるのはキライだし苦手なんですよ。いろんなことをやってきたし、それだけに“みやかわくんって、何の人なの? よくわかんない”みたいなことも言われて来たんですけど(笑)、自分はそれでいいと今も思っているし、それが勝ちくらいの感覚でやってきました。まぁ、皆からしたらアーティストはアーティスト、YouTuberはYouTuberみたいな捉え方があるのかな。でも、別にYouTuberがアーティストだっていいし、アーティストがYouTuberだっていいじゃないですか。だから、僕はこれからも純粋に“自分”っていうジャンルを追求していきたいです。音楽的にもロックだろうと、ジャズだろうと、なんでも好きなことを好きなようにやっていきたいし、何処までも自由でいたいです(笑)。

取材・文=杉江由紀 撮影=鈴木恵
みやかわくん 撮影=鈴木恵

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