L→R やっち(Dr)、Tack朗(Gu&Vo)、とも(Vo)、おかっち(Ba)、$EIGO(Gu&Cho)

L→R やっち(Dr)、Tack朗(Gu&Vo)、とも(Vo)、おかっち(Ba)、$EIGO(Gu&Cho)

【ヒステリックパニック
インタビュー】
ポップでキャッチーの先にある
“カッコ良いヒスパニ”を
表現したかった

最新ミニアルバム『Hypnotic Poison』が超々々カッコ良い! バンドとしての一丸感を求めた結果、サウンドもメロディーも聴く者の本能を刺激する、文字通り、リスナーを“ロックする”(=揺らす)一枚だ。

8月に先行配信された「Venom Shock」がイントロのギターリフからして相当にカッコ良いナンバーでして、どうしてこんなに素晴らしい楽曲になったのか、率直にうかがいたいところですね。

$EIGO
“ヒスパニ史上、最強にカッコ良い曲を!”という漠然としたものがありまして。ギターリフは5人で集まって、みんなで作ろうというスタンスの中で生まれてきたもので、“めっちゃ速くて弾くのが難しい”という話はしたんだけど(苦笑)、ともとTack朗が“それがいい!”ということで生まれた曲ですね。
とも
今回のミニアルバムのコンセプトは“毒”で。それは僕が言い出したんですけど、中毒性や毒々しさというイメージが欲しいと思っていて。イントロのギターリフは“これぞ、中毒性!”というか、最初は$EIGOの手癖みたいな感じだったんですけど、耳に残るという意味でも聴いた瞬間にビビッと来たんで、そこから5人のエッセンスを要所要所に散りばめながら進めていったんです。
$EIGO
楽曲って誰かが主軸になって作っちゃうパターンが今までは多かったんですけど、「Venom Shock」は改めて5人全員で作れた意識が強いですね。初めてこの楽曲をスタジオで合わせた時、めちゃテンション上がりましたもん。“これはぜってーカッコ良いだろう!”ってニヤニヤした(笑)。その辺はなかなかお客さんには伝わらないかもしれないですけど、“これはぜってーに強い!”って確信は全員が持ったんじゃないかな。

このテンションの高さは5人全員で楽曲を創り上げたことが影響しているんですね?

Tack朗
今まではお客さんを第一に考えて作っていたんですね。特に前作EP『666(TRIPLE SICK'S)』の「Love it!」は完全にお客さんと一体となって楽しめる曲だったんですけど、それをリリースしたあとだったので、ポップでキャッチーというよりも、その先にある“カッコ良いヒスパニ”を表現したいと思ったんです。お客さんのことを考えずに、自分たちがやりたいこと、カッコ良いと思ったことをやろうと。
やっち
オケも“ストレートにカッコ良いものを!”という方向だったんで、今までドラムを付ける時は曲のセクションをきれいにつなげようとか、メロディーに対してかわいいめのフィルを乗っけようとか、いろいろとやってたんですけど、今回はそういう難しいことは考えずに“とりあえず俺がカッコ良いと思ったら、それでオーケー!”みたいな感じで。
おかっち
僕は最近そもそもあんまり考えてベースを付けてないんで、これも何も考えてなくて(苦笑)。ただ、自分がやりたいセクションは伝えたんですよ。三拍子をやりたいって。あと、Tack朗さんがBメロを歌ってそのままサビを歌うという流れが最近なかったんで、それをやりたいって言いました。だから、曲全体に注文を付けた感じですね。ベーシストとして意識したことはそうないんですけど、曲に寄り添った感じです。

『Hypnotic Poison』からの2曲目のリード楽曲「絶対×絶命」もいいですね。これもギターが鋭くて…変な意味じゃなく、ロックバンドの華はやっぱりギターだなと。

$EIGO
オールドライクなフレーズを今風に昇華するような音を選んでいる…そんなイメージで作りました。構成はともが頭の中で描いていたものをかたちにして、ライヴでやることも念頭に置きつつ、それに対する最初のインスピレーションをガガガガガッとかたちにしましたね。
Tack朗
「Venom Shock」のカウンターですね。「Venom Shock」が初見殺しだとすると、「絶対×絶命」は初めて観たお客さんでも飛びたくなるような感じ。
とも
「絶対×絶命」も初見殺しの感じはあるけど、たぶんそのレベルが下がっただけだと思う(笑)。
全員
ははははは。

ブラストビートで聴く人を前のめりにさせる感じですね。

Tack朗
まだライヴではやっていないんですけど、1曲目にやったら速攻でテンションを着火するようなイメージですよね。
とも
“始まる感”はありますよね。

「絶対×絶命」はキャッチーなサビメロも印象的ですしね。ギターリフもそうですが、キャッチーなメロディーというのもロックの大事なところだなと改めて思ったところですよ。

Tack朗
メロディーは3秒で出てきました(笑)。
おかっち
今までのTack朗さんはメロディーだけを持って来てたんですよ。それに$EIGOさんがギターを付けていたんですけど、今回はオケを先に作って、“ここにTack朗ならどんなメロディーを乗せる?”ってできた曲なんです。
Tack朗
昨年作った「Shut up」からみんなで土台を作り始めるようになって、展開を話し合った上で僕がメロディーを付けることが多くなって。だから、オケが出来上がってからサビを考えるという。今までは僕がゼロから生み出していた曲が多かったんですけど、今回それは「夢遊病」だけで、その他はみんなで話し合って、“こういうリフがいいよね”“こういう曲にしよう”ってオケが出来上がって…それこそ「絶対×絶命」はそこに鼻歌で♪フンフンフン〜って適当に歌ってたら、おかっちが“それ、いいじゃん!”って。速攻で出てきたメロディーだったから“これは安易じゃね? もっといいメロディーが出るよ”って言ったんだけど、“いや、それがいい!”って言われて。ファーストインスピレーションでスパン!と出てきたメロディーなんです。

なるほど。今回の楽曲は今まで以上に一丸感があることは間違いないようですね。一丸感がある上で、そこへ新しいものを注入するという。

Tack朗
そうですね。今までとは作り方のメソッドがちょっと変わってきたところもあって、今回は全員で作り上げた作品ですね。ある意味でポップさを抜いてるんですよ。歌詞でもメンヘラさを抜いていて。洗練されてスタイリッシュな作品になったと思います。

「ノット・イコール」はリズム隊のふたりと$EIGOさんの作曲で、Red Hot Chili Peppersへのオマージュかというミクスチャーサウンドになりましたね。

おかっち
もとは僕が作ってて、実は前の作品(EP『666 (TRIPLE SICK’S)』)の時にプレゼンしてたんですけど、“今回は合わないよね”って話になって、$EIGOさんと“いつか使えるかもしれないし、カッコ良いからこれは取っておこう”と話してた曲なんです。で、今回のミニアルバムのスタンスが“カッコ良い”だったんで、“これは使えるでしょ!”と。完成形までは難産で、ウチらには珍しく2、3回ボツになりましたけど、作り直して作り直して辿り着いた曲です。
やっち
僕はこういうオールドなミクスチャーが好きなんですよ。おかっちと$EIGO さんがリフを作ってきた時、“ミドルテンポじゃん! やった!”って思ってドラムはノリノリで付けました。あと、1年半前くらいからゴスペルドラムっていう、ちょっとテクいドラムが流行り出していて、それのもととなるビートをどこかでやりたいと思っていたところもあったので、“これはめっちゃカッコ良いじゃん!”って。
おかっち
“カッコ良いミクスチャーってこれしかないでしょ!”みたいなところはあったと思います。“ザッツ・ミクスチャー”って感じですよね(笑)。
$EIGO
分かりやすいですよね。
やっち
リフ勝負というよりもリズム勝負という感じだし。

ヒスパニも大きく分ければミクスチャーバンドなので、こういうタイプもさもありなんだといった感じすらあります。

Tack朗
この曲、僕は一切絡んでないんですよ(笑)。
全員
ははははは。
$EIGO
1ミリも絡んでないもんね(笑)。
Tack朗
前々作のミニアルバム『LIVE A LIVE』の「Head Bang!」や、前作のEP『666 (TRIPLE SICK’S)』の「Suicide Squad」もそうなんですけど、$EIGOがメインヴォーカルで僕が作らない曲って本当にカッコ良いんですよ。それはバンドの別の引き出しというか、もうひとつの武器なんで、$EIGOやおかっちから発信される曲には俺は関与しないって決めているんです。カッコ良いものができたところで、そのカウンターとして自分はどういう曲を提示しようかなっていうワクワク感もあるんで。
$EIGO
「ノット・イコール」はアルバムならではの曲って感じですね。

「ノット・イコール」も十分にカッコ良いと思います。一方、「俺は赤ちゃん」…これは最大の問題作でしょうね。

$EIGO
今回のミニアルバムの中でメロディーは一番好きだけどね、俺は。
Tack朗
メロディー、めっちゃ良くないですか? 

いいと思います。ただ、歌詞が…。

おかっち
あぁ…あの歌詞が乗ってない、ラフで歌った時のメロディーをぜひ聴いてほしかったですね(笑)。
Tack朗
うん。あれは余計な雑念が入ってなかったからね。
とも
…失礼な話だな(苦笑)。
全員
ははははは。

「俺は赤ちゃん」の歌詞はどうしてこうなったんでしょうか?

Tack朗
僕は分からないですけど、可愛いものほどぐちゃぐちゃにしたくなる衝動なんじゃないかと思いますね。
とも
それは違いますね。
全員
ははははは。
とも
今回はカッコ良いことを提示することが決まってたんで、自分の中では歌詞面でもちょけないようにしたというか。これまでTack朗はかわいらしいメロディーというか、ポップなメロディーを生むことを念頭に置いていたと思うんですけど、今回は意識を変えて、かわいくなりがちなTack朗のメロディーをメンバーが“もっとカッコ良く!”って思いながら手を加えていたんですね。歌詞もそれと一緒で、いつものノリで書くとちょけそうなところを“いやいや、今回はカッコ良くいくんだ!”と。そうした結果、全てのフラストレーションが「俺は赤ちゃん」でドン!と出たという。Tack朗はこれをリード曲にしたいと言ってましたけど。
Tack朗
リード曲クラスじゃないですか? 「ねこ地獄」を作った時に似ているんですよねぇ。インディーズでアルバム『センチメンタル・サーカス』を作った時は「ねこ地獄」ではなくて「憂&哀」をリードにしたんですけど、今や「ねこ地獄」は僕らの代表曲ですからね。バンドのロゴにも猫が入っていたりとか、バンドには必要な武器になっている。「ねこ地獄」を作っている時にはリード感はなかったんですけど、出したらめちゃめちゃ受けた…何かそれに感覚が似てて、当たるか当たらないか分からないですけど、第二の「ねこ地獄」という感じになるんじゃないかというくらい、個人的にはビビッと来るものがあったんです。
とも
2年後くらいにはバンドロゴが赤ちゃんっぽくなっています(笑)。

(笑)。実際かなり破天荒な歌詞なんですが、これもバンドの総意としてありだということでしょうか?

おかっち
バンドの総意というか、録り直しができないタイミングで歌詞がやって来るんで(苦笑)。
$EIGO
僕は歌詞が来た時…これは褒めているんですけど、Twitterに“ともはバカだ完全にイッてる”と書きました(笑)。こんなん考える奴は他にはいねぇと。
おかっち
僕は“仕事しろ!”って言いました(笑)。
全員
ははははは。
とも
仕事した結果がこれなんだよ!(笑)
やっち
ともさんは今までもこの手の犯罪をしてきてたので大概慣れていると思ってたんですけど、俺がレコーディングに顔を出した時におかっちから“あの曲はヤベーよ”って言われて、“あぁ、またいつものやつか”って思ったら、ともさんに対する理解、認識がまだ甘かったなと(笑)。
とも
犯罪の手口も年々変わってきてるからね(笑)。
やっち
狡猾になっていました(笑)。
Tack朗
俺は$EIGOから“すごい歌詞が来るから構えておいてね”って言われた(苦笑)。
$EIGO
伝えることを放棄しましたもん(笑)。良いか悪いかの判断は任せるからって。
Tack朗
歌詞を見て、俺、3秒くらい思考が停止したもん(笑)。10年間くらい一緒にバンドをやってますけど、ともは天才だなと思いました。

「俺は赤ちゃん」の歌詞の是非はリスナーに任せますが、これができるのはヒスパニしかいないと思います。

とも
そうですね。他のバンドにはできない。
やっち
“できない”じゃなくて“やらない”(笑)。
とも
「俺は赤ちゃん」以外はヒスパニにしてはストレートというか、あんまりちょけてない。それでバランスを取ったんですけど、酷いことになったという(笑)。

逆に言うと、「俺は赤ちゃん」をこの歌詞にしなければ上手くバランスを取れないほど、それ以外の歌詞は今までのヒスパニにはないモードで臨んだということでしょうか?

とも
そうなんですよ。真面目になりすぎてつまんなくなる可能性もあったんで、そこはバランスが大事だなと思って。そうしたら比重がえらいことに…9:1みたいになっちゃいましたけど(笑)。

「絶対×絶命」の歌詞とか、すごく前向きな内容だと私は受け取ったんですけど、今回はそうした前向きな部分も出さなきゃというところはあったんですか?

とも
どうなんでしょう? 正直言って前向きかどうかはっきりとした方向はなくて、さっきみんなが“あんまり考えずに出しました”と言っていたような感じに近いものがあって。自分がその時に思っていた心境とか自分から出てきたものをそのまま書いたものが多かったんです。後向きと言えば後向きだし、後向きで完結しているかと言えばそうでもないし。特別、後か前かは決めてないんですけど、その時のマインドがそのまま歌詞になっている感じですね。

個人的な感想になりますけど、『Hypnotic Poison』の歌詞には“巷は閉塞感に包まれていると言われているけど、それがどうかしたの?”みたいな強さを感じました。

とも
まぁ、閉塞感はありますよね。…でも、自分的には“だから、やるしかねぇ!”というよりは、閉塞感や後向きさを“毒”に変えて吐いてる感じですかね。小言じゃないですけど(笑)、ちょいちょいって突いている。小声で毒づいている…小さい声で“死ね、死ね”って言ってるみたいな感じです。

デスボイスも多いですから、決して小さな声という感じもしませんけど(笑)。

とも
ははは(笑)。まぁ、それが行きすぎてるのか物足りないのか分からないですけど、Tack朗から“最近のともは大人しいからもっと毒づきなよ”って言われたんで、“じゃあ、遠慮なく”ってことで書きましたね。

取材:帆苅智之

ミニアルバム『Hypnotic Poison』2018年10月31日発売 BLACK SHEEP RECORDS/ビクターエンタテインメント
    • VICL-65068
    • ¥2,268(税込)

【ライヴ情報】

『どくどくツアー』
11/28(水) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
11/30(金) 石川・金沢AZ
12/07(金) 福岡・DRUM Be-1
12/11(火) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
12/16(日) 香川・高松DIME

『ヒステリックパニックpresentsどくどくツアー -FINAL-(ワンマン)
〜あけましておめDEAD!今年もよろSICK!2019〜』
1/04(金) 愛知・Zepp Nagoya

ヒステリックパニック プロフィール

ヒステリックパニック:超絶ハイトーンのTack朗×凶悪スクリームのとも×極上コーラスの$EIGOのトリプルヴォーカルが織りなす唯一無二のハーモニーは中毒性抜群。ラウド、エモ、ハードコア、メタル、J-POPと、ジャンルの垣根を気軽に飛び超えながら音を紡ぐ、通称“ヒスパニ”が新たに生み出す、これが最新式のエクストリームなJ-POP。2015年4月にシングル「うそつき。」でメジャーデビューを果たした。ヒステリックパニック オフィシャルHP

L→R やっち(Dr)、Tack朗(Gu&Vo)、とも(Vo)、おかっち(Ba)、$EIGO(Gu&Cho)
ミニアルバム『Hypnotic Poison』

「絶対×絶命」MV

「Venom Shock」MV

「Shut up」MV

OKMusic編集部

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