“いま”のfox capture planサウンド
が届けられた『CAPTURISM TOUR』ファ
イナル公演をレポート

CAPTURISM TOUR

2018.11.4 東京・EX THEATER ROPPONGI
7枚目のオリジナルアルバム『CAPTURISM』を掲げ、全国ツアーを行なったfox capture plan。9月に京都と東京で開催された『KICK OFF LIVE』を含め、全10公演となった本公演のツアーファイナルが、11月4日、東京・EX THEATER ROPPONGIにて行なわれた。なお、この日のステージは3人だけでなく、ストリングスカルテットを迎えた編成でのパフォーマンスとなり、極上のアンサンブルで客席を大いに酔わせ、熱狂させていた。
fox capture plan
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ステージ後方のスクリーンに幻想的な映像が映し出される中、まずはストリングスカルテット・SUPREME ENSEMBLESの4人が、それに続いて岸本 亮、カワイヒデヒロ、井上 司がステージに登場。「We Are Confidence Man」のMVで着用していたスーツに身を包んだ3人が持ち場につくと、軽やかに「Greatest Blue」を奏で始めた。ストリングスのピチカートも心地よく、瑞々しいサウンドが広がっていったのだが、徐々にそれが熱を帯びていく。岸本はカオスパッドを、カワイは弓を使って飛び道具的な音を出せば、井上のドラムも鋭さと破壊力をどんどん増していき、最後には7人が凄まじい熱量で音を畳み掛けていくと、客席からは大きな拍手が送られた。
続けざまに井上のドラムから「Cross View」、さらには岸本のピアノから「行雲流水」に繋げていったのだが、3人が繰り広げるパワフルな演奏や、美しいストリングスの音色だけでなく、ステージ上に多数設置された棒状のLEDライト、スピーディーに切り替わっていくスタイリッシュな映像など、さまざまなものが一体となって作り出されたその空間はなんとも美しかった。そして、カワイのベースから「We Are Confidence Man」へ。アドリブ満載のソロパートも大迫力で、岸本はソロを決めた後に両腕をあげて客席へアピールするなど、前半戦にも関わらず、全員がキレキレの演奏で魅了していた。
fox capture plan

fox capture plan
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ここで一旦ストリングスカルテットが席を離れ、3人で曲を披露して行くことに。変拍子が絡み合うポストロック的な「衝動の粒子」を皮切りに、エレクトロなシーケンスから始まった「Mad Sympathy」では、クールな印象を与えつつも、ラストで井上のアグレッシヴなドラムソロが飛び出す。その勢いのままだなだれ込んだ「Liberation」では、1曲の中で緩急をつけた構成──とはいえ、「緩」といっても、彼らにしては音数が少ないだけで、調和とアドリブがせめぎ合う緊張感のあるものではあったが──で魅せると、立て続けに「疾走する閃光」へ。まさにその曲題の如く、白色の照明が素早く瞬く中で、3人の音が凄まじい勢いで転がっていく。その勢いをさらに加速させるように、井上が16ビートを猛然と打ち鳴らし始めて突入したのは、Arctic Monkeysの「Brianstorm」! ただでさえ比較的速めな原曲のBPMよりもさらに速いテンポで、スリリングかつダーティーに突撃していく3人の音と姿は、とにかく壮絶。その凄まじさは、演奏後に客席から送られる拍手がまったく鳴り止まなかったことが物語っていた。

fox capture plan
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とにかく尋常じゃないほどの熱量と興奮が場内に渦巻いていたが、MCになると、途端に緩い空気になるのがfox capture plan。とりとめのない話を繰り広げる「名物MC」(と話す岸本に対して、「自分で名物って言うな(笑)」とカワイがすぐさまツッコみ、それを笑顔で見守りながらも、たまに「早くやろうよ(笑)」と流れを戻す井上という構図も含めて、名物)を交えた後、NE-YOの「Because of You」を披露。軽やかで心地よいメロディーを響かせ、温かな空気で会場を包み込むと、岸本のピアノソロへ。流麗なフレーズが徐々に緊張感を増していき、そのまま「Capturism」に突入。圧巻の高速ナンバーで客席を沸かせた。再びストリングスカルテットをステージに呼び込むと、7人は「Paradigm Shift」「Butterfly Effect」を続けて披露。彼らの楽曲の中でも壮大な広がりを持つ楽曲で客席を魅了すると、本編の最後を飾ったのは「RISING」。7人が力強く音を響き渡らせると、客席からは手拍子が自然と起こり、何度も拍手が巻き起こっていた。
fox capture plan

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アンコールでは、fox capture planが劇伴を務めたドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』のメインテーマ「LIFE」を、ストリングスカルテットを交えた7人編成で披露。どこかセンチメンタルな響きのあるメロディーを奏でる岸本のピアノを、情熱的で躍動感のあるプレイで支えるカワイと井上、ストリングスにはどこか悲哀や切実さ、そして力強さがあり、なんともドラマティックな名演となった。その余韻に浸る間もなく、バスドラムをキックし始める井上と、マイクを持ってステージ前に歩き出す岸本。「なんかボーカリストみたいな動きになってますけど!」と客席を煽った後、定位置に戻り「今日はありがとうございました!」と、「エイジアン・ダンサー」へ。客席から再びクラップが沸き起こり、大団円でツアーの幕を下ろした。

fox capture plan

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振り返ってみると、この日のセットリストは『CAPTURISM』の収録曲を中心に、これまで発表してきた各アルバムから満遍なく楽曲をセレクトしたものになっていた。そもそも『CAPTURISM』は、彼らがこれまで辿ってきた音楽的変遷を踏まえつつ、結成時のポストロックやコンテンポラリージャズを融合させたスタイルで、今の彼らを提示した作品である。それゆえに過去曲との馴染みもよく、様々な要素を取り込みながら築き上げてきたfox capture planサウンドの、ひとつの集大成を提示するにふさわしい内容だった。そして、ひとつの完成型ができあがった今、ここから彼らはどんな地平を切り開いていくのか。とにかく楽しみで仕方がない。

文=山口哲生 撮影=Takahiro Takinami
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