【インタビュー】Apes From Nine、1
stアルバム完成「ピュアなメタルフリ
ークが眉をひそめる存在に」

Apes From Nineが11月7日、1stアルバム『METAL LULLABY』をリリースした。メタル、スラッシュ、エモ、スクリーム、コア……4人が描くバンドスタイルは刺激的ながら普遍的な匂いを併せ持ち、“ヘヴィメタル”と“子守歌”という相反するアルバムタイトル通りの振り幅広いエクストリームサウンドが爆音と轟音のうちに全12曲を駆け抜ける。
結成は2017年。JURASSICの耕史朗(Vo&G)、KING RYOのサポート等を務める糀谷 拓也(B)、SIAM SHADE遠藤一馬や大村孝佳BANDなど数々のサポートで知られる岡本唯史(Dr)の3人で始動したApes From Nineは、2018年7月に新ギタリスト蝶名が加入して現在の4人編成へ。そして完成した1stアルバム『METAL LULLABY』は現体制での初音源となる。

BARKSではメンバー全員に、結成の経緯やバンドのサウンドスタイル、『METAL LULLABY』に収められた個々のこだわりについて話を訊いた。それぞれがキャリアを持つ強者4人のトークセッションは濃いが、1stアルバムならではの初期衝動は瑞々しくもある。

   ◆   ◆   ◆

■この1年間の集大成
■全曲シングルになり得る

──初登場インタビューですので、まずはバンドのプロフィールからお聞きしたいと思います。Apes From Nineは、どんなふうに結成されたのでしょう?

岡本:僕と耕史朗は昔からの付き合いで、「ソロ活動を手伝ってほしい」という話が耕史朗からあったんです。そのときは僕もバンド活動をしてなかったので、「だったらソロを手伝うんじゃなくて、一緒にやらないか」という話をしたんです。それがApes From Nineの始まり。

耕史朗:「ソロを手伝ってくれ」って誘ったとき、彼はその場で返事をしないで、「一度飲みにいこうよ」と言ってきたんですよ(笑)。飲みにいったら、「バンドをやろう」という話になって。その頃の僕は、ソロという形で活動していたけど、どちらかというとバンドをやりたかったので、新バンドを立ち上げるために、すぐに曲作りを始めました。
▲耕史朗 (Vo&G)

──ということは、その時点でやりたい音楽の方向性などもあったんですね?

岡本:ありました。ソロのサポートの話が直接くる前から、「耕史朗がドラムを叩いてほしいと言っている」ということは人づてに聞いてたんです。だから、彼とバンドをやるならこういうものというイメージは、僕の中で固まっていたんです。

耕史朗:1人で突っ走っていた岡本が言っていたのは、「激しい音楽をやりたい」と。僕もそれがいいんじゃないかなと思いましたね。それからしばらくの間、2人で曲作りをしたり、スタジオに入ったりしていたら、僕のソロのサポートをしたがっているベーシストがいるという話を聞いたんですよ。それが、糀谷だった。

糀谷:その頃の僕はサポートをいろいろやっていて、耕史朗さんの昔のバンドも知っていたから、ずっと興味を持っていたんです。で、とりあえず耕史朗さんに会いに行ったら、ちょうど新しいバンドを始めたところで、「一回弾いてみない?」と言われ(笑)。「やりますやります!」とスタジオに入って、そのままメンバーになったという。

耕史朗:この3人揃った時点でApes From Nineとして本格的に活動をスタートさせ、2018年7月に蝶名(G)が加入して4人編成になったんです。

蝶名:岡本さんがEins:Vierのサポートドラムをしていたときに、一緒に全国ツアーを廻ったりしたので、話をする機会が多かったんですよ。

岡本:蝶名とは歳が1つしか違わないこともあったから、Eins:Vierの現場では話しやすかったんですよね。「ギタリストだ」って言うので「どんなギターを使ってるの?」と訊いたら、「フライングV」ってことでますます気になって(笑)。音楽的な趣向は自分達とは毛色が違っていたんですけど、そういう味がApes From Nineにほしいなと思っていたので誘ってみたんです。

蝶名:「毛色が違う」といってもルーツは岡本さんと一緒なので、なんの違和感もなく。でも、実際に加入してみたら、思ったよりも曲が難しい(笑)。
バンドをやりたかったので、新バンドを立ち上げるために、すぐに曲作りを始めました。
▲耕史朗 (Vo&G)

──では、その音楽的ルーツを交えつつ、1stアルバム『METAL LULUBY』についてうかがいます。まず、今作を作るにあたって、テーマやコンセプトはありましたか?

耕史朗:特になかったです。“こういうジャンルで、こういう音楽性で”といったことを深く考えたというより、ライブを始めて1年くらいの間にやりたい曲、思いつくものをどんどん作っていったから。それを集めたアルバムなので、ある意味この1年間の集大成といえますね。

──『METAL LULUBY』というタイトルやアーティスト写真の印象からゴリゴリのメタルサウンドをイメージしましたが、キャッチーな曲が並んでいて、いい意味での意外さがありました。

岡本:実際、いろんなイベントとかに出演して、ゴリゴリのデスメタルとかスラッシュメタルとかを対バンすると、“俺らって、ポップなのかな?”と思うんですよ。全曲シングルになり得る曲が揃ってしまったんです(笑)。

──アグレッシヴながら爽快感に溢れたアルバムになっています。メタルテイストを軸としつつ幅広さも見せていますね。

岡本:「OPENCAFE PCMAN」のような、いわゆる“外しの曲”も入っているし。この楽曲タイトルの“PCMAN”はほぼ造語なんですよ、辞書で調べても出てこない。“これってどういう意味だろう”と考えずに語感で想像できるものを一つ作りたいなと思って。それで、メタルと真逆の“オープンカフェ”という言葉を使うことにしたんです。なんとなくオシャレなタイトルだけど、楽曲自体は激しいメタルチューンじゃないですか。そんなふうに、ちょっとニヤッとさせるものになったんじゃないかな。アルバムはキャッチーだったり、前向きだったり、ダークだったりしているけど、基本的にプッシュなものが多い中で、「OPENCAFE PCMAN」の歌詞はプッシュしないニュートラルなものになっているんです。そんなふうに、パッケージとして面白い曲になったなと思います。

──なるほど。

岡本:『METAL LULUBY』というアルバムタイトルも然り。“メタル”と“ララバイ”という相容れないものをミックスしたものです。
■インタビューで話したくない裏話ですが
■“左足始まり”なんです

──それぞれ、思い入れ深い曲を挙げるとすると?

糀谷:僕が今回のアルバムで個人的に好きなのは、ラストに収録した「Discharge」です。いつもライブで最後にやっているんですけど、すごくアグレッシヴな曲だし、ライブでは自分もシャウトをしているんですよ。楽曲自体が好きだし、ライブ感をパッケージできたという意味でも気に入っている。レコーディングでも“出し切った!”みたいな(笑)。とにかく勢いに溢れているので、この曲はぜひ聴いてほしいです。

耕史朗:僕は「GUILTY」かな。ちょうど1年前にリリースした曲ですけど、このバンドで一番最初に完成した曲でもあるんですよ。それを一発目にリリースできたことが嬉しかった。それに、初期衝動が詰まっていると同時にバランスがすごくいいし、Apes From Nineのサウンド的な基盤になっているんです。アルバムの中心に「GUILTY」があって、その周りにいろんな曲があるというイメージ。バンドにとって大きな1曲で、今回アルバムに収録するにあたってアレンジやミックスを少し変えたので、そこも含めて聴いてもらいたいです。
▲蝶名 (G)

蝶名:僕も「GUILTY」だったんですけど、耕史朗さんに言われてしまいました(笑)。

耕史朗:別にいいじゃん、被っても(笑)。

蝶名:ははは。「GUILTY」は初めてApes From Nineのライブを観たときに特に印象深かったし、僕がこのバンドに加入して一番最初にスタジオで合わせた曲でもあるので思い入れがあります。あと、最後に僕が加入したからかもしれないけど、さっき岡本さんが言った「全曲シングル」みたいな感じがすごくあるんですよ。そのなかで強いて言えば「END OF WORLD」が速くて重くて、でもサビはキャッチーという曲で。アルバムの1曲目にふさわしい爆発力を持っていますよね。いつ聴いてもスカッとした気持ちになるし、ライブでも盛り上がる、いい曲だなと思っています。

岡本:絶対に「END OF WORLD」をアルバムの1曲目にしたかったんです。たとえば、僕の中には“昭和の正しいメタルキッズな生活”っていうものがあって(笑)。昔はコンポを目覚まし時計代わりに、ハードな曲をタイマーセットしておいたじゃないですか。「END OF WORLD」はまさにそれ。ギターリフから始まって、バンドインしてくるまでに音を止めないと大変なことになるんですよ(一同笑)。

耕史朗:すげぇ近所迷惑になる(笑)!

岡本:そうそう。いきなり“ドカーン!”とくるから、それまでに止めないといけない(笑)。そういう曲なので、耕史朗から「アルバムの1曲目はどれにしようか」と聞かれたときに、「「END OF WORLD」が1曲目なら他はもうなんでもいい」と言いました(笑)。
▲蝶名 (G)

──いいですね(笑)。みなさんが挙げてくださった曲以外にも、サウンドやプレイ的には注目すべき曲が多いですよね。たとえば「RISING DOWN」はメタルとテクノを融合させたような味わいです。

耕史朗:僕の地声が低いこともあって、ライブでもう少しパッとした印象がほしいなと。「GUILTY」もそういう感じがあるんですけど、そこだけを本当に狙った曲が「RISING DOWN」です。おっしゃられたとおり、この曲はテクノっぽさをちょっと意識してまして。僕は意外と打ち込みとかも好きで、今後はそういう曲を増やしてもいいかなと思っているんです。そういうところで、「RISING DOWN」はまた一つApes From Nineの扉を開けた曲という印象です。

──懐の深さや柔軟性を感じます。他にも、ヨーロッパの民謡っぽさが香る間奏を活かした「UNDERGROUND BLUE SKY」や、’80sメタル感覚の「Break it」なども要チェックです。

耕史朗:「UNDERGROUND BLUE SKY」は、僕が以前やっていたバンドの楽曲なんですよ。自分の中でずっと好きな曲なだし、バンドがなくなったからといって二度とやらないというのはもったいない。前のバンドでは日本語詞だったんですけど、今回英詞に書き替えたり、でも間奏のアレンジとかは当時のままだったり。イレギュラーな手法だけど、キャッチーというか激しいだけだとつまらなくなってしまう。僕はそういうところが自分の売りだと思っているので、らしさが出ている曲かなと思いますね。

岡本:もう1曲の「Break it」は、’80sメタルというか、青春パンクに近いイメージもあって、僕らはこういうものも好きなんです。

耕史朗:ちょっと恥ずかしくなるようなところがあるけど、嫌いではないという(笑)。たとえば、「UNDERGROUND BLUE SKY」の仮歌を最初に入れたとき、“これは恥ずかしいかな”と思ったんですよ。でも、“この恥ずかしさがいいんだ”と自分に言い聞かせて、みんなに聴かせたら「すごくいいじゃん」と言ってもらえました。
▲1stアルバム『METAL LULLABY』

─いろいろなジャンルの要素を採り入れることで、『METAL LULUBY』はメタルフリークに限らず、幅広い層にアピールするアルバムになりましたね。では、続いて、それぞれのプレイに関する話をしましょう。今作をレコーディングするにあたって、それぞれプレイ面で大事にしたことは?

岡本:ドラムはオーソドックスというか、メタルの教科書によくあるものを採用するようにしました。そういう中でも「Good day to die」は特殊というか。ものすごくテンポが遅い曲って、プレイヤーとしてはどこかでテンポを上げたくなるんですよ。中間に速いセクションがあったり、エンディングで速くなったり。それをしない強さというか。ここまで遅いテンポで、スネアの2拍4拍の場所は変えずに1曲通すというのは、やりたくてもやれない人が多いんじゃないかなと思って、ニヤニヤしながら叩きました(笑)。

──プレイしている側はストイックなわけですが、聴く側としてはこのスケール感は本当に気持ちいいです。ドラムに関しては、アルバム全編を通してテクニカルなプレイが満載になっていますね。

岡本:耕史朗はドラムが相当好きみたいで、デモの段階で細かく作り込んでくるんですよ。いつもそれに虐められています(笑)。

──な、なるほど(笑)。2バスの多用も特徴の一つになっていて、高速連打やそれを絡めたものや、遅い2バスなどを使い分けていて、耳を惹かれました。

岡本:「遅い2バスは難しいでしょう」とよく言われるんですよ。でも、僕は'90年代のメタルドラマー……たとえば、トミー・リー (モトリー・クルー)とかスコット・トラヴィス (レーサーX / ジューダス・プリースト)とかを通っているから身体に染みこんでいるんです。それに、シングルの8分踏みと2バスを曲調によって使い分けています。「UNDERGROUND BLUE SKY」とかはシングルで、「GUILTY」は2バスですね。

──えっ? 「GUILTY」は2バスを踏むには遅くないですか?

岡本:大丈夫です、「GUILTY」は左足始まりなので。僕は、速い曲は右足始まりで、遅い曲は左始まりにしているんですよ。BPM 120辺りで使い分けていて、左足始まりにすると、右足でシンコペできるから安定するんですよね。これ、本当はインタビューとかで話したくない裏話なんですけどね(笑)。

──若いドラマーには、ぜひ参考にしてほしいです。それに「GUILTY」のBメロでは3連を2バスで踏んでいませんか?

岡本:はい。最初は16分だったんですけど、耕史朗が3連を弾いているので“これは3連にしないと”と(笑)。難易度は高くなるけど、やってやれないことはないのでギターに合わせました(笑)。「END OF WORLD」も腕がちぎれるかと思ったし。でも、その甲斐あってじゃないけど、今回のアルバムは自分でも気に入っているドラムが多いです。
■セオリーがないことが
■バンドのセオリーに

──ベースプレイに関してはいかがでしょう。

糀谷:僕はこういう見た目ですけど(笑)、Apes From Nineの前は普通にギターロックバンドをやっていたし、メタルは好きだけど本格的にやったことはなかったんですよ。このバンドを始めて、メタルって“こんなにユニゾンするものなのか”と(笑)。リフをユニゾンするならわかるけど、「GASMASK」や「Sensation」みたいにハイポジションのフレーズをユニゾンすることが多々あって。あと、「OPENCAFE PCMAN」のようにピック弾きの速い曲は、最初は簡易式で弾きつつも、レコーディングではちゃんと弾くためにメッチャ練習しました(笑)。

耕史朗:もう長く活動しているのに、今でも練習するという(笑)。
▲糀谷拓也 (B)

糀谷:だから今回のレコーディングは家で1人、ひたすら練習したという思い出があります(笑)。でも、今までやらなかったことをするのは、すごく楽しいんですよ。この歳でもまだ成長できるという喜びが詰まったアルバムになりましたね。

──今作のベースの押し引きは絶妙です。基本的にボトムを支えつつテクニカルなユニゾンを決めていますし、「Good day to die」や「UNDERGROUND BLUE SKY」のウネりのあるフレージングや「Break it」のスラップなど聴きどころは多いです。

糀谷:スラップもそんなにやったことがないので、ドキドキしながらレコーディングに臨んだんですけどね(笑)。

蝶名:ギターは基本的に耕史朗さんがベーシックで、僕が上ものっぽいことを弾くという役割分担です。さっきも言いましたけど、このバンドは曲に入り込んで弾くのが、なかなか難しいんですよ。メタルはずっと好きだったけど、僕がやってきたこととは全然違うので。激しい楽曲なのに、頭を真っ白にして勢い任せで弾くわけにはいかない。だからフィジカルにいくよりも、トム・モレロ (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)みたいに、いろんな飛び道具を使う方向でいくことにしました。ギターのアプローチで印象が強い曲は、やっぱり「GUILTY」ですね。僕が加入する前にシングルリリースされていた曲ですけど、アレンジを少し変えようと。サビに入っていたシンセをギターに置き換えて弾いたりしています。

──「GUILTY」のサビは、ギターが煌びやかさを醸し出していることが印象的です。ギターに関しては、まずはカッコいいリフが多いことが魅力になっています。

耕史朗:僕は、すごくリフにこだわっていた時期があったんです。以前はヴィジュアル系のバンドをやっていたんですけど、普段はラウドやメタルばかり聴いていて、そのバンドの中でどう自分の個性を主張したらいいかを考えた結果、リフに行き着いたんです。そういう時期があったから、今は印象的なリフを作ることが自分の中でメインになったし、それが自然とできているんじゃないかな。
▲糀谷拓也 (B)

──ギターリフも楽曲のキャッチーさの大きな要因になっていますね。バッキングはユニゾンを活かした曲とステレオ感を押し出した曲がありますが、その辺りはどういうふうに決めているのでしょう?

耕史朗:サウンドメイクも含めて、楽曲重視です。このメンバーで、“こういう音楽性のバンドだから、こういうアプローチ”ではなくて、楽曲に合うものを考える。つまり、バンドとしてのセオリーがないことがセオリーになっています。

──そこも個性といえますね。ギターソロは、どんなふうに捉えていますか?

蝶名:耕史朗さんが結構アグレッシヴなソロを弾くので、僕はシンプルに歌心を感じてもらえるようなソロを弾こうと思っています。今回僕がソロを弾いているのは「OPENCAFE PCMAN」と……。

耕史朗:ランディー・ローズ (クワイエット・ライオット / オジー・オズボーン)っぽいソロ(笑)。

蝶名:いや、イングヴェイ (・マルムスティーン)です(笑)。誰にも気づかれないように、こっそり入れてみました(笑)。あと、「RISING DOWN」は前半が耕史朗さんで、後半が僕という形で、2人で交互にソロを弾いています。

耕史朗:メタルのソロというと、タッピングとかスウィープとかを使ったメカニカルなもののイメージがあると思うんですよ。そういうプレイも素晴らしいけど、僕はギターの良さはチョーキングとかヴィブラートにあると思っているので。タッピングとかばかりだと、ギターを弾かない人は“キーボードでもいいじゃん”と思ってしまうんじゃないかと。そうではないギターらしいソロを弾きたいというのはありますね。
▲Apes From Nine

──お2人のタイプは異なりますが、ニュアンスを大事にしているところは共通していますね。『METAL LULUBY』のヴォーカルについても話していただけますか。

耕史朗:岡本が結構歌に厳しいというか注文が多いんです(笑)。特にシャウトは、本当はもっと低いほうがラクにいけるんですけど、「高く歌ってほしい」と言われるんですよ。

岡本:僕の中には“ポピュラリティーのあるシャウトとポピュラリティーのないシャウト”の線引きがあって、世界で受けるためにはポピュラリティーのあるシャウトであるべきだと思うんですよ。高いところでシャウトしてもらっているのはそのためです。

──シャウトっぽい歌い方でメロディーを歌っている曲もありますね。

岡本:そう。かなり挑戦してくれたみたいです(笑)。

耕史朗:シャウトでも音程感をつけるというのは、今でも研究中で。ファットに叫ぶのはインパクトがあるけど、そればかりだとリスナーは飽きると思うので、そうならないようにということは意識しました。

──二重人格者のように、エモーショナルな歌と強力なシャウトと使い分けていることにも圧倒されました。

耕史朗:シャウトも好きですけど、歌だけでいうと普通のポップスというか、T-BOLANとかWANDSとかからすごく影響を受けているんです。だから普通に歌うパートではそういう部分が出ていると思います。
■はみ出していけるバンドだから
■いろんな場所へ突っ込んでいきたい

──独自のスタイルを確立されているんですね。メタルは進化していく過程で、より激しい方向やテクニカルな方向、ポップな方向というように細分化していったわけですが、Apes From Nineはすべての要素をバランス良く持っているといえます。

耕史朗:一言で言うとすれば、僕はメタルが好きな人がちょっと嫌がるようなバンドになりたいと思っているんです。ピュアなメタルフリークが、「えっ、Apes From Nineとか聴いてるの?」と眉をひそめるような存在になりたい。僕は自分がやりたいことをやるのがロックだと思っているんですよ。自分が本当にやりたいこととは違っているのに、“こうじゃなきゃいけない”という固定観念に縛られて、テンプレートに則った音楽をやるのは違う。そういう意味も含めてApes From Nineというバンドは個性的で、唯一無二でありたいと思っています。自分達のスタンスを貫いたうえで、大きい場所でも勝負できるバンドになりたい。そこまでいかないと意味がないので、より高いステージを目指していこうと思っています。
▲岡本唯史 (Dr)

蝶名:たしかに今のメタルは細分化しているうえに、飽和してしまっている印象があって。そういう中で自分たちは他にはない感じで進めていきたい。目標としては、まずこの4人でフェスに出たいですね。Apes From Nineのライブは初めて観る人にも楽しんでもらえる自信があるんですよ。さっき言っていただいたように、メタルのいいところをミックスした音楽性だし、ダンスチューン的なものもあるから、若い子がきっと盛り上がると思う。フェスに出ることも含めて、自分たちの音楽を1人でも多くの人に聴いてもらえるようにがんばろうと思っています。

糀谷:僕は、もっと仲間を増やしたいですね。Apes From Nineはラウド系界隈でも全然やっていけると思うので、強者の彼らと同じステージに立って、自分たちも成長して、その先にあるフェスとかを彼らと一緒に実現させるという流れを作りたい。いい意味ではみ出していけるバンドなので、ジャンルにこだわらず、いろんなところに突っ込んでいきたいです。
岡本:Apes From Nineというバンド名は“九州から来た猿”という意味でつけたんですよ、僕と耕史朗が九州出身なので。要は、結局人間は欲の塊というか、みんな猿でしょうと。だから、自分に正直に、やりたい音楽をやっていこうと。ニーズに合わせた音楽性という方向にはいきたくない。それに、ワールドワイドな活動をしていきたいから、全編英詞にしているというのもあるんです。

──Apes From Nineの音楽性を考えても英詞はベストマッチです。

岡本:はい。いろんなところから「日本語で歌詞を書きなよ」と言われるけど、それも初期衝動のひとつではあるので、こだわり続けたいですね。自分が刺激や影響を受けた洋楽アーティストに会いにいきたいし、それは夢物語ではないと思っているんですよ。この間、ポーランドの19歳の女の子に「GUILTY」を聴かせたら、「無難ね」と言ったんです。無難ということはワールドスタンダードなものという意味で。そういう確信を得たので、自分たちを信じて、突き進んでいこうと思っています。

取材・文◎村上孝之
■1stアルバム『METAL LULLABY』
2​018年11月7日(水)発売
LZLN-009 / ¥3,000(tax out)
01. END OF WORLD
02. GASMASK
03. Good day to die
04. RISING DOWN
05. UNDERGROUND BLUE SKY
06. Break it
07. LOST CHILD
08. Sensation
09. M.A.T.P
10. GUILTY
11. OPENCAFE PCMAN
12. Discharge


■ライブ/イベント出演情報

11月26日(月) WildSide Tokyo
12月20日(木) 池袋手刀
12月30日(日) 沼袋アミューズメントプレイスSEL

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