THE PINBALLSが2019年のロックシーン
を席巻する

2017年末、とあるロックバンドがメジャーデビューを果たした。その名はTHE PINBALLS(ザ・ピンボールズ)。デビューまでに10年のキャリアを持ち、「本物のロックをかき鳴らす」「ロックシーンのカウンターパンチとなる」と言われ、一部で話題になった。

このバンド、端的に言って、2019年以降のバンドシーンにおいて中心的なプレイヤーとなる可能性がある。代表曲『蝙蝠と聖レオンハルト』を聴きながら、以下の文章を読んでほしい。
THE PINBALLS『蝙蝠と聖レオンハルト』MV)

THE PINBALLSとは?

THE PINBALLSは、2006年に結成されたロックバンド。略称はPINS(ピンズ)。メンバーは古川貴之(ふるかわ・たかゆき Vo.)、中屋智裕(なかや・ともひろ Gt.)、森下拓貴(もりした・ひろたか Ba.)、石原天(いしはら・たかし Dr.)の4人。

バンド名はBLANKY JET CITY『死神のサングラス』とThe Who『Pinball Wizard』の歌詞に由来している。

音楽的なルーツはBLANKY JET CITYのほかに、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTthe pillowsTheピーズNUMBER GIRLTHE HIGH-LOWS、あるいはL’Arc-en-Ciel、ピチカート・ファイブ、さらには夏木マリ山口百恵などの昭和歌謡、ボブ・ディランやビートルズ、ジミ・ヘンドリックスといった洋楽など、幅広いジャンルの影響を受けている。

泥臭いライブパフォーマンスとメロディアスでノれる楽曲、中毒性のあるしゃがれたハイトーンボイス、物語のような歌詞が特徴。

2017年12月にミニアルバム『NUMBER SEVEN』でメジャーデビュー。収録曲の『蝙蝠と聖レオンハルト』がテレビ東京系『JAPAN COUNTDOWN』12月度エンディングテーマに、『七転八倒のブルース』がTOKYO MX他『伊藤潤二『コレクション』』のオープニングテーマとなった。2018年4月にはメジャー1stシングル『Primal Three』をリリース。

キャッチーでポップな楽曲たち

(THE PINBALLS『Lightning strikes』MV)

THE PINBALLSの楽曲はガレージロックを基礎としており、その硬派なヴィジュアルやザクザクとしたギターサウンド、弾けるベースなどからは、クラシカルなロックンロールの印象を受けるかもしれない。それはたしかにTHE PINBALLSのひとつの面ではあるが、彼らの特徴はむしろ、キャッチーで勢いがあり、ポップで聴きやすい、という点にある。

THE PINBALLSのメロディーメイカーとしての素質はこれから評価されていくに違いないが、その点においては、現在のロックフェスでトップレベルの人気を博しているバンド、たとえば[ALEXANDROS](アレクサンドロス)やTHE ORAL CIGARETTES(ジ・オーラル・シガレッツ)などとくらべても遜色ないし、近しさを感じさせる。

あるいはここに、ELLEGARDEN(エルレガーデン)やBUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン)の名前を加えてもいいかもしれない。こうしたバンドのリスナーは、THE PINBALLSにハマる可能性が高い。

2018年にリリースしたメジャー1stシングル『Primal Three』には、THE PINBALLSというバンドが持つ楽曲の幅広さが端的に現れている。

リード曲『Lightning strikes』はアップテンポのロックナンバー。雷に打たれて燃え上がるような初期衝動をそのまま表現したような楽曲で、夏のロックフェスでオーディエンスが飛び跳ねているさまが容易に想像できる。

一方で、『Voo Doo』のようなグルーヴィーな曲も得意。特に中盤のベースラインなどはお酒との相性も良さそう。『GREEN ROOM FESTIVAL』などの都市型フェスに行く層もハマるのではないか。夜風に吹かれながらビール片手に聴ける曲もある。

そして3曲目の『花いづる森』はがらっと印象の変わるスローバラードでぐっと聴かせる。

詩、映画、小説といった文化的素養

THE PINBALLSの特徴を語る際によく使われるのは、「物語のようなファンタジックな詞世界」というフレーズだ。冒頭に紹介した『蝙蝠と聖レオンハルト』などはその最たるものだろう。

物語という側面のほかに、「同じ言葉の繰り返しによりうまれるリズム」という特徴もある。古川の歌詞は、明らかに、その世界観を説明することよりも言葉の美しさや響きを重視している。たとえば『Lightning strikes』などの楽曲にその傾向は顕著だ。

細胞と細胞と細胞が脳 感情と感情と感情が脳 雷鳴よ雷鳴よ雷鳴よ行こう (『Lightning strikes』より)

もっとも聴かせたい部分=サビで同じ単語を執拗に繰り返す効果はいくつかある。楽曲自体の印象を強めること、言葉が独特の心地よいリズムをうむこと、言葉が本来の意味を越えて聴こえてくること、など。

こうした詩的な技法を得意とする日本の代表的なロックバンドは、現在ならばクリープハイプがその筆頭にあがるだろう(たとえば『百八円の恋』における「痛い」と「居たい」の繰り返しなど)。

また、古川の歌詞からは、さまざまなカルチャーからの影響を見てとることもできる。『片目のウィリー』という曲は、映画『グーニーズ』のキャラクターに着想を得ている。
(THE PINBALLS『片目のウィリー』MV)

『神は天にいまし』はイギリスの詩人ロバート・ブラウニングの言葉だし、『重さのない虹』はアメリカの小説家トマス・ピンチョンの超大作『重力の虹』を思い起こさせる。このように、THE PINBALLSの楽曲の歌詞は、映画や詩、小説をモチーフにして書かれることが多い。

そして、こうしたさまざまなモチーフを取り込むことによって、楽曲は多層的な意味を持ち、複数の解釈が可能となる。

実際、THE PINBALLSには、歌詞の続きの物語を自分で創作したり歌詞の世界の地図を描いたりするファンが一定数いる。THE PINBALLSの楽曲は二次創作を生みやすいということだ。

楽曲はもちろんそれ自体で完結しているのだが、受け手のなかでさらにあらたな物語をうみだす。これはTHE PINBALLSというバンドの大きな特徴だろう。

メジャー1stフルアルバム『時の肋骨』

(THE PINBALLS『アダムの肋骨』MV)

さて、そんなTHE PINBALLSが、2018年11月14日にメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』をリリースする。MVが先行公開された『アダムの肋骨』をふくむ12曲はすべて新曲。しかもどの曲もリード曲になりうるほどのキャッチーさとエッジイさを兼ね備えている。

荒々しさと洗練された楽曲構成、メリハリのある演奏と耳に残るメロディ。そして想像力をひきたてる歌詞。

「大河をわたっていく 一すじの風(DAWN)」は、渦となって猛スピードで日本のロックシーンを席巻しようとしている。

リリース情報

『時の肋骨』
発売日:2018年11月14日

〈初回盤CD+DVD〉
特殊パッケージ仕様
「Document of Leap with Lightnings tour」映像収録
COZP-1481/1482 ¥3,200(税抜)


〈通常盤〉
COCP-40538 ¥2,600(税抜)


1. アダムの肋骨
2. 水兵と黒い犬
3. DAWN
4. 失われた宇宙
5. BEAUTIFUL DAY
6. CRACK
7. ヤンシュヴァイクマイエルの午後
8. 風見鶏の髪飾り
9. 回転する宇宙の卵
10. DUSK
11. COME ON
12. 銀河の風

初回プレス(初回盤・通常盤共通)に「end of the days tour」先行応募ID封入


THE PINBALLS
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ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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