【インタビュー】アズサ「形而上学的
な意味を探索したい」

元ザ・ディリンジャー・エスケイプ・プラン+エクストルのメンバーという、テクニカルなエクストリーム・ミュージック好きにはたまらない組み合わせのバンド、アズサがついにデビューを果たす。複雑怪奇なバックに変幻自在の女性ヴォーカルという、まったく新しいスタイルを提示してみせるアズサについて、ディリンジャーではベースを弾いていたリアム・ウィルソンと、エクストルのドラマー、デイヴィッド・フスヴィックに話を聞いた。
──アズサというバンドがどのように結成されたのかを教えてもらえますか?誰が発案者なのか、どのように音楽性を決めていったのか。

リアム:バンドの始まりは、エクストルが『Synergy』を書いている時に始まったと言えるのだと思う。その時のセッションで未使用になったアイデアが元にして、デイヴィッド(Dr)とクリスター(G)が発展させたんだ。俺が関わるようになったのは少々変な経緯なんだけど、デイヴィッドがFacebookで俺にコンタクトしてきたのさ。「こういう曲があるのだけど、一緒にやらないか」って。俺のインタビューを読んで、俺がエクストルのファンであることを知っていたようなんだ。それでデモを送ってもらって聞いてみて、それからシンガーはどうしようかという話し合いを始めた。一歩引いて、この音楽が必要としているものは何だろうと客観的に考えてみた。それがデス・メタル・ヴォーカルでないことは確かだった。俺は、必要なのはメロディだと思ったんだ。ディリンジャーでの経験もあって、ヘヴィな音楽にメロディを加えることを恐れるべきでないということはわかっていたからね。というわけで、チャレンジというほどではないけれど、客観的にこのバンドのフロントを務められる女性ヴォーカリストはいないかと考え始めたんだ。それでまったく新しい可能性、ダイナミックさが広がっていった。ちょうどそのころ俺はMyrkurのヘルプをやって、俺もヘルプで何回かのショウに参加したんだけど、それがとてもダイナミックでエキサイティングだったんだ。俺はディリンジャーのショウや多くのファンから感じられる男性的なカタルシスが大好きなのだけど、女性と一緒にステージに上がるフィーリングもとても気に入ったんだ。それでデイヴィッドが、このバンドにふさわしい女性を知っているということで、エレーニが加わった。実際彼女が入ってみると、驚くほどしっくりきた。

──エレーニはベルギーのSea + Airという実験的なデュオのヴォーカリストとのことですが、まったくジャンルの違う彼女をどのように見つけたのでしょう。

デイヴィッド:実を言うと、エレーニのことは10~15年くらい前から知ってるんだ。彼女はJumbo Jetというドイツのパンク/ハードコア・バンドで歌っていた。当時ライヴを見て、彼女の素晴らしいスクリームや奇妙なステージ・パフォーマンスに圧倒されたんだよ。アズサのヴィジョンを満たせるヴォーカリストは間違いなく彼女しかいないと思った。今は、エレーニはSea + Airに専念している。夫であるDaniel Benjaminと2人でやっているんだ。彼女たちはヨーロッパではわりと成功していて、単独のツアーや他のアーティストとのコラボレーション、映画やミュージカルなどの音楽もやっていて、とても忙しいんだよ。

──アズサというのはどういう意味なのでしょう。非常に日本的に思えるのですが。

デイヴィッド:アズサというのは日本人の女性の名前でもあるんだろう?だけど俺たちのバンド名の由来は別なんだ。18世紀の後半、ロサンジェルスにヒーリング・パワーを持っているネイティヴ・アメリカンの女性がいたんだ。彼女は断食して祈祷することで、彼女の部族の人々の治療をしていた。部族の長の治療をしたときに、長が彼女に「AZUSA」という名前を授けたんだよ。彼女が起こした奇跡に敬意を表してね。この話と「アズサ」という名前が気に入ったので、バンド名にしたんだ。

──歌詞は主に誰が書いたのですか。

リアム:基本的に俺以外全員だよ(笑)。クリスターとエレーニが多く書いて、デイヴィッドも一部書いたんじゃないかな。

──歌詞をすべて読みましたが、ほぼ何のことなのかわかりませんでした。ポジティヴなものなのか、それともネガティヴなものなのか。社会的なものなのか、オカルト的なものなのかすら判別できなかったのですが。

デイヴィッド:生命の存在の謎について深く考えるような内容さ。追い立ちの違いによる認識の不一致、神秘主義、信仰、裏切りとかを思索しているんだ。

──アズサの音楽にはCeltic Frostっぽい要素を感じる部分もあるのですが。

デイヴィッド:いや、俺たちはCeltic Frostは聴かないんだ。確かに俺は、Celtic Frostでギターも弾いていたAnders Oddenと一緒にバンドをやっていたけどね。俺たちがインスピレーションを受けたのは、1970年代初期のLarry Coryell 、Believer、Anette Peacock、Brand X、Death、ノルウェーのVirus、それからもちろんSlayerだよ。

──アズサとういのはプロジェクトなのでしょうか。それともフルタイムのバンドと考えて良いのですか?

リアム:まだはっきりしていない部分もあるので何とも言えないな。だけど俺は、このバンドが可能な限りフルタイムのものになってほしいと思っている。スペシャルな音楽をやっていると思わなければ、俺は決して参加しなかったからね。このバンドのことを誇りに思っているし、このバンドのメンバーとアーティスティックなプレイをすることをとても楽しんでいる。俺たちが一緒にプレイするように導いてくれた、何か形而上学的なものがあると思っているから、ぜひそれを探索したいと思っている。だからツアーをやって、ファンのリアクションを見てみたい。あらゆる意味で、俺はこれをフルタイムのバンドにしたいんだ。ただのプロジェクトではなくて。ただ俺たちはまだ新しいバンドで、やっている音楽も現代的なユニークなものであって、メンバーは別々の大陸・別々のタイムゾーンにいるわけで、ガレージで一緒にリハーサルをしたわけじゃない。もちろんレコーディグ前に少し一緒にプレイはしたけれど、ツアーに出るためにリハーサルするのは全く別の話だからね。だけどツアーはぜひやりたい。ディリンジャーでツアーをやるのもとても楽しかったし、ぜひまた日本にも行きたいしね。俺だけじゃなくて、メンバーみんな同じ気持ちさ。メンバーともとてもうまくやっているしね。この先どうなるか楽しみだよ。

──具体的なツアーの話も出ているのでしょうか。

リアム:すでに色々なところにコンタクトして、来年ツアーにやれるよう準備をしているよ。アルバムが出たら、もちろんそれをサポートしたいしね。来年の早い段階ではツアーに出たいね。ツアーに出て、新しいバンドとしてやるべきことをやるのさ。

昨年末のザ・ディリンジャー・エスケイプ・プランの解散にガッカリした人も多いことだろう。そんな人こそ、ぜひアズサをチェックしてみよう。今まで聴いたこともないような、複雑だが神秘的で美しい、まったく新しい世界が体験できること請け合いである。

取材・文 川嶋未来

アズサ『ヘヴィ・ヨーク』

2018年11月14日日本先行発売
【50セット通販 限定直筆サインカード付きCD】 WRDZZ-795 / ¥3,500+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.インターステラー・アイランズ
2.ハート・オブ・ストーン
3.ヘヴィ・ヨーク
4.ファイン・ラインズ
5.ロスト・イン・ジ・エーテル
6.スペルバインダー
7.プログラムド・トゥ・ディストレス
8.エターナル・エコー
9.イニクイタス・スピリチュアル・プラクシス
10.サカム・トゥ・ソロウ
11.ディスタント・コール
12.スカル・チェンバー ※日本盤限定ボーナストラック

【メンバー】
リアム・ウィルソン(ベース)
エレーニ・ザフィリアドウ(ヴォーカル、ピアノ)
クリスター・エスペヴォル(ギター)
デイヴィッド・フスヴィック(ドラムス)

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