ハルカトミユキ インタビュー 新章
突入へ――ニューシングル「17才」が
予感させる、さらなる飛躍

怒りをダイレクトに吐露し、同調圧力や集団心理にある怖さや虚しさを浮き彫りにして、マイノリティに希望の光を照らす――。ハルカトミユキがデビュー5周年イヤーである2017年にリリースしたアルバム、『溜息の断面図』が描き出す、生々しいサウンドと言葉に溢れた唯一の世界は、あまりにも強烈だった。そして迎えた2018年。まさにそんなイメージに応える濃厚なライブのなかで異彩を放っていた新曲が、今回リリースするシングル「17才」だ。まず、これまでリリースした曲のなかでも飛び抜けて明朗で、怒りやドロドロとした感情めいた何かがない。聞けば、アニメ「色づく世界の明日から」の主題歌だという。確かにいい曲だ。しかし、いわゆる“タイアップ”としてこれまでとは異なるタイプの曲を作った、となると若干のネガティブな疑問も浮かんだ。しかし、筆者のそういった印象は、実際に「17才」が、アニメの放送から流れた瞬間、見事に消えた。これは、まぎれもなくハルカトミユキのなかから出てきたエモーショナルな曲。タイアップという“条件”は“制約”ではなく、自分たちらしい進化を求める二人のポテンシャルを、大きく引き出したものであったのだ。

――今回のシングル「17才」の話をする前に、2017年~2018年の『種を蒔く』と、先日ファイナルを迎えた『解体新章』、二つのツアーについて話を聞きたいです。まず『種を蒔く』は、どんなツアーでしたか?
ハルカ:『種を蒔く』というツアータイトルは、その前に出した『溜息の断面図』というアルバムに入っていた「種を蒔く人」という曲から思いついたタイトルで。だから、私たちが二人だけで、ハルカトミユキを結成したばかりの頃のことまで掘り下げて、二人でいろんな土地を回る“種”編をまず開催しました。そこからサポートメンバーを加えた5人のバンドとしての姿を披露する“花”編を通して、ハルカトミユキの持つ二面性をみなさんに見せられたらいいな、と思ってたんです。私たちにしてはわりと真面目に(笑)、コンセプチュアルな意味を持たせたツアーでしたね。
――それが2018年の2月に終わってから2カ月のスパンで、また次のツアー『解体新章』が始まりました。
ハルカ:『解体新章』も『種を蒔く』と同様、まずは二人で、そのあとサポートメンバーを加えたバンド編成でツアーを行ないました。『種を蒔く』を経て、これまでやってきたことをいったん“解体”、すなわちぶっ壊して“新章”に入る、実験的なことをどんどんやっていこうという、意味がありました。
――具体的には、どんなことをやったのでしょう。
ハルカ:それこそ、最初はすべて新曲でもいいくらいに思ってたんです。だから、二人で回ったときは書き下ろした新曲を何曲かやったり、エレキを使ったりルーパー使ってみたり、二人でやれることのなかで、新たに何ができるかを考えてました。もしかしたら、お客さんが置いてけぼりになるかもしれないけど、「そういうものです」って振り切って。
――そこからのバンドセットでは、お客さんの心もえぐって解体してやろう、という意識も強く感じたのですか、いかがでしょう。
ハルカ:二人のときは、どんどん楽器を減らしていってアカペラにまで辿り着くといったように、『解体新章』というツアータイトルを物理的に体現するような部分もあって、そういう意味では、とてもパーソナルなものだったのかもしれません。そこから、バンドになったときには、聴いている人たちも解体するつもりで、私自身も聴いている人たちから解体されるつもりでやりました。そこで考えたのが歌について。今まで以上に大事というわけではないですけど、もっともっと、自分をさらけ出すべく考えて、作ったライブでした。
――『銀河鉄道999』~GALAXYOPERA~でメーテル役を演じたことや、劇団マハロでの女優活動を経て、変わったことはありますか?
ハルカ:『解体新章』のバンドツアーは、『銀河鉄道999』の舞台を終えて初めてのライブで。そのリハーサルで、久々に自分たちのバンドの歌を歌ったときに気がついたんですけど、自分で思っていた以上に、歌に変化が起っていました。歌い方が違うとか、上手くなったとか、そういうことではなくて、表現に対する考え方が深くなったというか。
――どう深くなったのでしょう。
ハルカ:振り返ると、今まではただ必死で書いた言葉を歌って伝えていたように思います。無自覚とは言わないけど、そんなに考えずともやれてると思ってたし、それがその時点でのやりたいことだったんです。でも、もっと自由な気持ちになれて、それが深みに繋がったような気がします。
――バンドのライブの場合、もし歌詞を間違えてもなんとかなる。でも、ミュージカルやオペラは、歌詞が抜けると物語が止まってしまう。
ハルカ:そこの責任感ですよね。はっきりと明確に物語がわかるように歌わなければいけない。そのためのオペラ調であるとか、歌い方で持っていくっていうイメージだったのが、そうじゃなくて、ポップスとかよりよっぽど歌詞に重点を置いていたというか。一つひとつの言葉に意味があって繋がっていくんです。「これは歌詞の意味がこうだから、この歌い方」とか、「なんでこういう歌詞なのかって、この後にこういう話になるから」とか。
ミュージシャンとして歌詞を書くことや歌を歌う上では、どちからというと線より点で考えてたので、そういうことは今まで考えたことはなかったんです。舞台を通して得たことが、自然とライブに応用されていたことは、新鮮だったし面白かったし、意味があることに縛られたというより、むしろ自由な表現に繋がりました。
ハルカトミユキ 撮影=大橋祐希
――ミユキさんは、『解体新章』を振り返られて、いかがでしたか?
ミユキ:『解体新章』の二人で回ったツアーについて、私はこれまでのように“アコースティック”という言い方はしませんでした。ハルカが言ったように、二人でできるいろんな演奏形態にチャレンジしたし、アカペラの曲も作って披露しましたし。それがテーマでもあり私たちのやりたいことでもあった。なのに、いろいろ考えてやっていくなかで、「自分たちって結局何なんだろう……」って悩んだこともあって。でも、お客さんは私たちがやったことを、ちゃんと受け入れてくれて、「あそこはカッコよかった」とか「新しい一面が見られてよかった」とかって感想を言ってくれたんです。
――変わっていくこと自体は拒まれない。すなわち、良くも悪くもやったらやっただけの結果がフラットに出るというのは、とてもいい環境ですね。
ミユキ:だから、私たちのアイデンティティとか、そんなことを考えてた自分がバカみたいだなって。そういう意味で、『解体新章』の二人での演奏は、私に自信を与えてくれたんです。だから、続くバンドツアーも、とても充実していました。
――『解体新章』というタイトルは、『解体新書』(江戸時代の医学書)をもじったものだと思いますが、バンドでのライブはそれに倣って人体模型を置くなどの趣向も凝らされていました。そのなかでマネキンを振り回して5年前の曲「マネキン」を歌ってからの、群集心理を深くえぐる、ここ1年のライブにおけるハイライト曲のひとつ「近眼のゾンビ」への流れが素晴らしかった。今のモードをもって過去の曲に新しい光が当たった瞬間。
ハルカ:そこは自分でも面白いと思いました。『解体新章』とか謳っている以上、「近眼のゾンビ」はやりたいと思ってて、そこで、「そう言えば私、昔から“はらわた”とか“血がどうたら”とか、歌ってるわ」って思い出して「マネキン」をその前に持ってきて。根本的には、ずっと「近眼のゾンビ」に近い想いを歌詞や音にしてた。その象徴である過去の曲の一つが、今またこういう形で、新たな流れに組み込まれるっていう。変わってる部分と変わってない部分が共存して、一つのステージになったことにびっくりしたし、すごく良かったです。
――そんなライブのなかで、大きなポイントになっていたのが、今回リリースするシングル「17才」と、カップリングの「朝焼けはエンドロールのように」と「そんな海はどこにもない」だったと思うんです。ここでの新しい試みとなるとまず作曲について。デビューから長い間、作曲のほぼ100パーセントをハルカさんが担っていたのが、アルバム『LOVELESS/ARTLESS』からミユキさんも本格的に加わるようになった。そして、今回は3曲とはいえ、初めてひとつのパッケージ全ての曲をミユキさんが作曲したということ。まさに、新章に突入したのかなと。
ミユキ:ぜんぶ自分がやろうと思ったわけでも、ハルカからそういう話があったわけでもなく、たまたまそうなっただけなんですけど、『LOVELESS/ARTLESS』と『溜息の断面図』を通して、私も作曲をするということが、だんだんと定着していくなかで、今は「ミユキも作曲するんだ」みたいな話にすらならないようにって、思ってます。
――ハルカさんは、自分がイニシアチブを持つ領域には、基本的に誰も踏み込ませないイメージでした。それがだんだんと解けてきて、確かに今やミユキさんが作曲に関わることに違和感もないとはいえ、まさかすべてミユキさんが手掛けるとは。
ミユキ:おっしゃったように、ハルカは誰にも踏み込ませたくないっていう気持ちはありつつ、私だったら何やってもいいみたいな、感じになってきたのかな? 今回も、結果的にとはいえ、自分が全部作曲することになっても何も言わないし、そこは信頼関係が増してきたのかなって……思いたいですね(笑)。
ハルカ:思いたい(笑)。まず一つは、私が舞台以外に動くことがなかなか難しかった中で、楽曲制作もしなきゃいけないという物理的な状況がありました。そこでミユキがすごく頑張ってくれたし、安心して任せられましたね。あと、「17才」に絞って言うと、アニメ『色づく世界の明日から』のテーマソングとして作った曲で、そういう、いわゆるタイアップに対応できるというのは、私にはないミユキの強さだと思うんです。私はその時の自分、というベクトルでしか曲が書けないから。
ハルカトミユキ 撮影=大橋祐希
――「17才」をライブで聴いたときは、今までのハルカトミユキにはなかった、すごく明るくていい曲だという印象でした。別にそれ以上、他には何もいらないしそれだけで充分なんですけど、アニメのタイアップと聞いて、なぜ他者の依頼を受けて、今までとは異なるタイプの曲を書いたんだろう?って、ちょっと思ったんです。でも、アニメの放送を観た瞬間、すべてが腑に落ちました。
ミユキ:もちろん、いい曲を作ったつもりだったんですけど、それがアニメの世界にはまっているのかどうかは、正直不安もあって。でも放送を観たときに、この曲を書いて本当に良かったって、思いました。「めちゃめちゃイカしてる」って、ドキドキしましたもん。
――魔法使いの家系に生まれながら魔法が使えず、また、幼い頃に色覚を失ってしまった主人公の少女・瞳美が感じる孤独は、大学の頃に4人や5人組のバンドに憧れつつ、周囲に馴染めず組めなかったという、ハルカトミユキのエピソードとも少し被る部分があるんですけど、いかがでしょう。
ハルカ:あらすじを読んだときに、自分たちの持っているものにすごく近いなって、思いました。単に雰囲気が合うとかではなく、ここまで運良く物語とアーティスト性がシンクロするものってないじゃないですか。丁寧に作られた、詩的で哲学的な要素もある物語。これは私自身を投影して歌詞が書けるかもって、思いましたね。
――歌詞について。ハルカさんの持ち味で、特に前作『溜息の断面図』には強く出ていた、辛辣なキラーフレーズがない。そこは意識しましたか?
ハルカ:いえ、私はさっきも言ったように、外からの力を意識して何かを生むことが、上手くできないんで、結果的にそうなっただけです。ただ、アニメの主題歌だし、私たちをまったく知らない人の耳にも届くことが多くなる可能性は、全体的な意識としてはありました。そこで、私自身が主人公の瞳美と近いものを持っていたから、自然にこれまで歌ってきたことを入れることができたし、タイトルや映像の鮮やかな色彩感や手触りも好きだったんで、そこもイメージしながら書いていったら、いい感じにはまったかと思います。
――ハルカトミユキのサウンドといえば、エモーショナルな生々しさが特徴でダークな曲のイメージが強い。しかし「17才」は、おっしゃった色彩感や手触りと呼応するようにサウンドも明るい。確かに、今までも「世界」や「HATE YOU」といった、曲調は明るくてカッコいい曲はありましたけど、それらともベクトルが違うような気がして。
ミユキ:今回は意識的に明るい曲を作った、というのはあります。そこで、私が今までに作曲したりアレンジに関わった明るめの曲と違うのは、自分が好きな洋楽のテイストとか、80年代のキラキラした感じとか、そういうことをあまり考えなかった点ですね。コードの展開とか、歌だとサビで転調させるとか、わりとそういうことに重点を置きました。
――サビ前のブレイクでアコースティック・ギターの印象的なフレーズが一つあって、サビでの転調。ここで一気に景色が開ける。
ミユキ:「こうやったら景色が開けるんだ」とか、どうやったらどうなるかという手法を、よりしっかりと実践できるようになりました。
――ベースの手数が極めて少ないことはどうでしょう。
ミユキ:そのほうがこの曲の世界観を引き立てられるし、なおかつ人を惹きつけやすいんじゃないかと思います。
ハルカトミユキ 撮影=大橋祐希
――そして、アコースティックギターの音色とエレクトロニックの融合。
ミユキ:アコギとシンセとか、エレキとピアノ。電子的なものと生っぽいものが一緒にある感じは、ハルカトミユキらしさなのかなって。
――そして、これは「朝焼けはエンドロールのように」や、前の配信シングル「手紙」にも言えることなんですけど、ミユキさんのコーラスが強調されていることも特徴ですよね。ミユキさんのコーラスには、独特の浄化作用があって、とても効いていると思います。
ミユキ:ツアーで鍛えられた気はします。二人のツアーでは、ハルカの歌う主旋律に対して、単に「ウ~、ア~」みたいにハモるんじゃなくて、どっちもメインみたいな、そのくらいの気持ちでコーラスを入れて、歌の存在感を出そうとしてたんです。で、それを実際に作品にも入れたいと思って。「朝焼けはエンドロールのように」の、Bメロでの掛け合いとかも、そうですね。
――ミユキさんはご自身の声を、どう評価されてるんですか?
ミユキ:ハルカの声は芯が強いんですけど、私はそうじゃない。でも、その対比を最大限に活かせるコーラスを意識しました。
――「私はそうじゃない」と言いますと?
ミユキ:何て言うんだろう、私は空気成分が多いというか……(笑)。
ハルカ:シュワシュワしてる(笑)。
――もしリードボーカルをとるならシューゲイズっぽいものとかが合うような?
ミユキ:ポジティブに言うと、まさにそんな感じ。でも、昔はそこが嫌だったから、歌いたくなかったし苦手意識もあったんですけど、今はそんなことないです。
――「朝焼けはエンドロールのように」は、どういうイメージで作曲されたんですか?
ミユキ:どっちかと言うと、熱く光る曲というより、「ドライアイス」とか「Vanilla」とか、初期の曲をバージョンアップしたようなものにしたいと思ってたんです。でも、そこでがんじがらめになっちゃって。そんなときにアニメの話がきて、核は一緒なんだけど曲の方向性としては真逆にある明るい「17才」ができて、自分が勝手に考えてとらわれていたハルカトミユキらしさみたいなものが、バカらしくなって、そこからまた完成に向けて動くことができました。
――この曲のダイナミズムやダークネスって、ハルカさんが書いた「ドライアイス」とか「Vanilla」の世界観というよりは、すごくミユキさんらしい、ハルカトミユキの新機軸だと感じたんですけど、どうでしょう。
ミユキ:聴いてくれた人はそんな感じで「新しいね」って言ってくれるんで、いろいろ考えてたのは自分だけだったのかなって。で、制作過程の話に戻ると、一応曲は出来たんだけど、歌詞がはまらないままハルカの舞台が始まって、でもどうしても出したかったから、その間の数カ月間、練りに練って完成させたんで、個人的にはとても想い入れの強い曲です。
「17才」が開けた明るい曲なので、そこと対極にある世界を示すことができました。光と影、両方があってのハルカトミユキ。今回はアニメが入り口にあって、たくさんの方々に聴いていただける機会なので、そこであらためて、2曲合わせて私たちの自己紹介になっていると思います。でも、人からは「そんなに暗い曲じゃないよ」とも言われたり(笑)。
――「17才」も、私自身“明るい”とは言ってますが、世の中のポップ音楽として相対的にみたら、そこまで底抜けに明るいわけじゃない。
ミユキ:だからいろいろ自分で勝手に思ってるだけなんだって(笑)
――要するに、もう昔の人気曲を引きずらなくてもいい、そういうフェーズに入ったのかなと。
ミユキ:「17才」が出来て放送を見たときに、私もそう思いました。自分が解放された感覚というか。だから今は割と自由に、好き勝手直感的にやるモードに入ってるんですけど、まあ、そこも波みたいに、これからも、いろんな気持ちが寄せては返すんでしょうね。
――ハルカさんはどう思いますか?「ドライアイス」や「Vanilla」、ライブで最も盛り上がる「ニュートンの林檎」といった過去の人気曲と今のモードについて。
ハルカ:私の場合はさっきも話しましたが、出てくる曲とそのときの自分が密接なんです。「Vanilla」も「ドライアイス」もそう。だから、そういう曲とかそうじゃない曲とかっていうことを意識した時点で、何も書けなくなるので、やっぱり私はシンガーソング・ライターなんだろうなって、思います。作家ではなく。そこはきっと一生変われないから、もしかしたらいきなり「Vanilla」みたいな曲が出てくるかもしれないし、もっと他の、とんでもない何かが生まれるかもしれない。で、ミユキは、先にイメージがあって曲を書ける。でもミユキには「Vanilla」や「ドライアイス」みたいな曲は書けない。それは私自身だから。
ミユキ:うん、そうだね。
ハルカ:だから、私がミユキみたいなやり方で作っても、なんとなく“それっぽい”ものにしかならない。その2種類のソングライティングが、今のハルカトミユキらしさなのかなって思います。
ハルカトミユキ 撮影=大橋祐希
――そして、今作の新しい試みのひとつであり、ハルカトミユキ史上最大のトピックとも言っていいのが、「そんな海はどこにもない」で、ハルカさんが作詞を他人に委ねたということ。でも、もし誰かに依頼するならこの方しかいないかなという、ハルカさんが歌詞を書くうえで最も影響を受けたと公言されている、穂村弘さん。しかし穂村さんは短歌の歌人であって、ミュージシャンではありませんよね。
ハルカ:穂村さんは、今まで歌詞を書いた経験は1回だけ。高校の合唱曲か何かで。「これは高校生だとわからないだろうな」という内容で、ご本人も、実際あまりいい評価はなかったって、おっしゃってました。でも、私は穂村さんのそういうところが好きなんです。
――ハルカさんの思う穂村さんの魅力とは?
ハルカ:すごく普通の感覚を持った人。でも、社会的な利便性とかでは掬いきれない、そんなことにいちいち躓いていたら、生きてくだけで大変になるような事象に、センサーが向いちゃって疲れちゃうような人なんです。そこがすごく好きで信用できるんですよね。
――歌詞を書いてもらうにあたって、穂村さんとはどんな話をしたんですか?
ハルカ:幼少期のこととか好きな食べ物とか、コンビニに行ったら何を買うかとか、些細な日常についてたくさん質問されました。そんなことを聞いて何を書くんだろうて思ったら、普段誰もが使うありふれた固有名詞を使いつつ、いきなり本質を突くようなことを言う、みたいな。そのやり方には、ハッとさせられましたね。
私は、どうしても歌詞だけですべてを完結させようとして話が難しくなる傾向があるんですけど、穂村さんは、メロディとか映像とか、そういうことに委ねられる余裕があるのかもしれません。その方が、かえって言いたいことは伝わりやすいんじゃないかとも思いました。またひとつ、新たな刺激を受けることができたので、これからはもっと自由に表現できるような気もしています。
ミユキ:私の立場から見ると、穂村さんは自分が歌うわけじゃないから、そこで生まれる言葉の使い方とかも、面白かったです。
――ミユキさんは、この曲のメロディーをどういうイメージ作ったんですか?
ミユキ:穂村さんの歌詞より前に出来てたんですけど、アカペラの曲だってことは決まってたので、楽器は使わず、家の周りや公園を歩きながら、鼻歌で作りました。
――鼻歌で作ってこのスリルは、とても興味深いです。
ハルカ:うん、確かに。
――そしてまた、2018年末から2019年を跨いで、二人でのツアーが始まりますね。
ハルカ:『解体新章』は、人体模型を置いたり血糊を吐いたり、そこを除いても事件性のあるライブだったって言われるんです。私もそういうものが好きだし、もう血糊は吐かないですけど(笑)、何かしら、ハルカトミユキとして、媚びない姿勢はみせていきたいと思います。

取材・文=TAISHI IWAMI 撮影=大橋祐希
ハルカトミユキ 撮影=大橋祐希

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