「ブルーマンは傾奇者」最新作に向け
て松本幸四郎とパフォーマーのアダム
が語る

現在、世界を回っている『ブルーマングループ ワールドツアー』が来年5〜6月、ついに日本初上陸する!
アート、音楽、コメディー、テクノロジーを、参加型エンターテインメントに昇華したブルーマングループの日本公演は、約6年ぶり。前回の公演を見て感銘を受けた歌舞伎俳優・松本幸四郎と、12年間ブルーマングループのパフォーマーを務めているアダム・エドッシーが対談。進化するエンターテインメントに挑戦し続ける二人が、エールを交わし、またアダムが久々となる公演への意気込みを語った。
ーー幸四郎さんはブルーマングループのパフォーマンスを観た時、どのように感じられましたか。
松本:見て体験するところが大きなインパクトでした。一つひとつのパフォーマンスが半端なくて凄い、面白い、楽しいの連続ですが、最終的に残るのは感動です。ブルーマンの皆さんは本当にプロフェッショナルだと強く感じました。
ーーアダムさんは日本の文化に詳しく、歌舞伎もご覧になったことがあるとか。歌舞伎にはどのような印象をお持ちですか。
アダム:僕は以前、歌舞伎座に近い勝どきに住んでいたので、時折ふらりと訪れて歌舞伎を見ていました。初めて歌舞伎を見た時、それまで劇場で感じたことのない強烈な体験でした。劇場のどの空間にいても、パフォーマンスがパワフルに伝わってくる。俳優と観客に壁が全くないのは、ブルーマンとの共通点でもありますが、とても独特で日本独自の文化だと思いました。所作も面白く、時代をタイムスリップしたような感覚になり、伝統が現代に息づいていることも感じました。のちに歌舞伎座で全幕物を見た時には、公演時間の長さに驚きました。それでもパワフルさは変わらず、物語も身体表現も面白い。俳優と音楽、観客がつながることに魅了されました。
(左から)松本幸四郎、アダム・エドッシー
ーー変化への挑戦と気持ちをお伺いします。幸四郎さんは今年、ご襲名になられて、心境に変化はありましたか。
松本:僕の家は曽祖父から歌舞伎役者をやっています。曽祖父から代々、大事にしている役があり、今年襲名させていただくにあたり、その役をやらせていただきました。すると、お客さまには「君のひいおじいさんのこの役を見たことがあるよ」とおっしゃる方もいるし、もちろん歌舞伎を初めてご覧になる方もいる。様々な年齢、性別、職種の方が同じ空間に集まるのは、珍しいことではないかと思います。
昔から歌舞伎を見ている方々に教えていただきながら、代々伝わるものをしっかりと守るのが自分の役目。一方で、歌舞伎にはまだまだ可能性があると思っているので、古典で培ったものを土台に、新しい可能性を探り挑戦していくことも大事かと。新しいことにも取り組んでいます。
ーーアダムさんは今回、以前の来日公演とどのように変えていくのか、またどのように引き継ごうと思っていますか。
アダム:僕が初来日した11年前には、日本の観客の皆さんからどんな反応が返ってくるのか、全く想像がつきませんでした。アメリカと比べて、日本のお客さんは静かで反応がないのではないかと懸念したり。ところが実際、蓋を開けてみるとアメリカの観客同様の熱い反応で、触れ合いも多く、皆さんとてもエキサイトしていましたね。同時に、ショーの後のミート&グリートでは僕たちをとてもリスペクトしてくださって。僕はアメリカ以外での公演が初めてで、ブルーマンのキャラクターが世界共通で受け入れられるのだと実感できたのです。
本当にブルーマンは普遍的なキャラクターで、アメリカでもヨーロッバでもどこでも、同じような反応が返ってきます。老若男女の子供心をくすぐることで普段は守られている内面が外に出て、誰もが子供みたいに無邪気になる。同時に、周りの人々と心が通じ合い、一体となる体験を分かち合える。
世界中のいろんな土地、様々な文化のもとで上演してきましたが、人と人がつながる感覚はどこも共通しています。このショーは初演から26年が経ちますが、常に進化し続けています。次の日本公演では今まで通りのクラシックな要素もあれば、新たな要素も入っています。人々がまたショーを見たくなるよう、新しいものと古いものを組み合わせて、初めての方、リピーターの方両方にアピールできるようにと努めています。
(左から)松本幸四郎、アダム・エドッシー
ーー新しいことへのチャレンジとして、幸四郎さんはラスベガスのベラージオで歌舞伎の『鯉つかみ』『獅子王』を上演なさいましたね。
松本:アメリカ本土に行くのはその時が初めて。ラスベガスで新作歌舞伎を作ることになり、何をしようと考えて、最終的には歌舞伎をしっかりお見せしたいと思いました。歌舞伎でイメージするものといえば、着物、白塗り、女方、音楽的な台詞、立ち回り、邦楽などで、それらをしっかりとお見せする。特に最初に人物が登場するシーンを大事に、作らせていただきました。
ラスベガスのスケールの大きさにはびっくりしました。僕が初舞台を踏んだのは歌舞伎座で、いつも基準となる劇場なんです。ベラージオの池に舞台を作ったのですが、図面では小さな池に小さな舞台が書いてあり、仮設だから舞台も小さいなと思っていたのですが、歌舞伎座と同じ寸法の舞台と言われて、池の大きさに驚きました。全てにおいてスケールが大きいのは、さすがアメリカだな、と。
また歌舞伎は毎月、違う演目を上演します。つまり、限られた時間で何ができるのか、この劇場で何ができるのかを考えて作ります。しかしラスベガスのスケールの大きさを味わったら、何がしたいか、夢に向かって突っ走るから、とてつもないスケールのものが可能になる気がしました。何ができるか? ではなく、何がしたいのか? 目標や憧れ、大きな夢を持つのはとても大事なことだと感じました。
アダム:映像でそのラスベガス公演を拝見しました。歌舞伎は歌舞伎座の中だけのミステリアスなものだと思っていましたが、屋外で上演するのを見て、そうか! 歌舞伎はこんなことも可能なんだと思わせてくれたショーでした。歌舞伎を始めて見る方も多かったでしょうが、何千人の人々が、噴水の中で鯉が泳ぐのを見て歓声が上がる様子はとても感動的で、素晴らしかったです。
松本:歌舞伎は400年以上の歴史があり、今尚残る傑作を傑作としてお見せできるように、これからも心身を鍛えていきたいと思っています。まだまだエンターテインメントとして新しい部分が生まれ続けると思うので、アンテナを研ぎ覚ませて歌舞伎に取り組み、可能性に挑戦していきたいです。
アダム:ブルーマングループのショーは歌舞伎ほどの歴史や文化はありませんが、観客の皆さんに新しい経験をもたらすものです。少しの間、日常から飛び出して、周りの人々とコミュニケーションを取りながら、いつもと違うやり方を発見する。ブルーマンは非言語である音楽、ドラムやリズムに乗せて、新たな世界にお客さんを誘い、アイコンタクトで人と人をつなげます。英語に「目に魂が宿る」と言う表現がありますが、ブルーマンのメイクも肌を青く塗り、目を強調し、目で訴える。その辺りは歌舞伎と似ていますね。
ショーのハイライトは、ブルーマンを通してその瞬間に人と人がつながること。ブルーマンである僕にとっても観客とつながれることは最高の喜びです。
ーーお互いにエールを送っていただけますか。
アダム:今日の対談を通して、インスピレーションをいただきました。また日本で歌舞伎を見ることが楽しみですし、ブルーマンもぜひご覧いだきたいです。
松本:歌舞伎役者から見ても、ブルーマンは“傾いている”と思います。エンターテイメントであり、とてつもないテクニックをもち、メッセージがあることに感動します。ブルーマンは傾奇者です!
(左から)松本幸四郎、アダム・エドッシー
取材・文=三浦真紀

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