ロイ-RöE-初ライブ 新たな才能がウ
カ(羽化)するとき

ロイ-RöE-の初ワンマンライブをレポー
ト。

シンガーソングライターのロイ-RöE-が12月6日、東京・渋谷CIRCUS TOKYOにて、初のワンマンライブとなる『ロイ-RöE- presents first ONEMANSHOW at CIRCUS -ウカ*-』を開催した。本記事では当日の模様をレポートする。

Photography_Takahiro Kugino
Text_Sotaro Yamada


ロイ-RöE-とは?

ロイ-RöE-は、福岡出身、21歳(2018年12月時点)のシンガーソングライター。中学卒業後から独学で楽曲制作を開始。2018年10月19日に1st Digital EP『ウカ*』をリリースし、あいみょんきゃりーぱみゅぱみゅtofubeatsyonigeWANIMAなどが所属するワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル・unBORDEよりメジャーデビューを果たした。


ロイ-RöE-の「ö」は「歌っている人」の記号であり、その記号を挟む「RE」はラテン語の「〜について」という意味。このアーティスト名は「私は私について歌っていく」という意思表示でもある。また、すべての楽曲タイトルに注釈としてのアスタリスク(*)が付いており、「各々の解釈で楽曲を楽しんでほしい」というロイ-RöE-の想いが込められている。


フレンチ・ポップやジャズと昭和歌謡を織り交ぜたような楽曲と、近代文学に影響を受けた歌詞が特徴。『ドラゴンボールZ』の登場人物である人造人間18号に憧れた金髪もトレードマーク。


デビューEPのサウンドプロデュースはゲスの極み乙女。のちゃんMARI(Key.)がつとめており、ちゃんMARIにとってはこれがプロデューサーデビュー作となる。


意表をつく登場に、釘付けになるオーデ
ィエンス

この日の会場となった渋谷CIRCUS TOKYOはライブハウスではなくクラブ。ミラーボールが壁や床に細かい光を乱反射させる空間でロイ-RöE-の初ライブは行われた。

未発表曲の『脱獄計画*』からライブはスタート。しかし、ステージ上には誰も現れない。それでも音楽は流れ、ロイ-RöE-の歌声が聴こえる。どういうことなのか? 

実は彼女、ステージではなくフロア最後方に登場して歌い始めていたのだった。意表をつく登場の仕方に、多くのオーディエンスがしばらくロイ-RöE-の存在に気付かず、気付いても彼女に釘付けになっていた。
間奏部でフロアからステージへ駆け上がると、MPCを叩き出す。ハードなMPCプレイには歌声やヴィジュアルとのギャップがあった。オリエンタルなムードから、続いて爽快なジャズ+ロックの『そそらるる*』へ。力強い歌声と軽やかなリズム、心地よいメロディ。Yogge New Wavesやnever young beachMONO NO AWAREなどにも通じるグッドミュージック寄りのロックンロールに、オーディエンスは身体を揺らしはじめる。

ロイ-RöE-としての初めての曲『泡と鎖*』も早々に披露。「泡ただしい毎日よ、おわらないで」というフレーズに代表される言葉選びのセンスが、暖かいメロディと伸びやかな歌声に乗ることによって、聴き手の心に深く染み込む。

骨太なMPCプレイ、幅広い音楽性、Wiki
pedia的なトーク

序盤の終わりには、手元をスクリーンに映しながらMPCだけの演奏も披露した。骨太なMPCプレイに会場は騒然。この日の公演がライブハウスではなくクラブで開催されたのは、このMPCが弾き出す音の効果を最大限に活かすためだったのかもしれない。無表情でMPCを演奏する様と衣装の雰囲気もあいまって、クラフトワークを彷彿とさせる近未来感が醸し出されていた。

その後はシュールレアリスティックなコラージュ映像をスクリーンに映し出す『ピエロ・シティ*』、アコギとMPCプレイを織り交ぜながら歌う『-10℃*』、ポップかつキュートな『ビスクドール*』やジャジーな『Mederö*』などを披露し、幅広い音楽性を次々と見せつけた。
終盤ではエレアコの音が出なくなる機材トラブルが発生したが、とっさのWikipedia的なトークで場をつなぐ。4月4日生まれ(細木数子と同じ)の21歳であることや、前述したように人造人間18号に憧れて金髪にしたこと、ジャルジャルの単独公演を観に行くほどのお笑いファンであること、ご飯も炊けないほど料理が苦手なことなど、自己紹介を続けると会場は和やかなムードに。
やがて機材が復旧すると、弾き語りで菅野よう子の『奇跡と退屈』をカバー。ロイ-RöE-がアコギの弾き語りを人前で披露するのはオーディション以来だという。美しい演奏にオーディエンスはため息をもらすことになった。

「聴いてもらうまでが“つくる”の過程

ロイ-RöE-『Heart Beat*』MV

「“つくる”という行為は、人に見てもらって初めて成立するもの。聴いてもらうまでが“つくる”の過程だと思う」

本質をついた言葉とともに、ロイ-RöE-はすべての関係者に向けて丁寧な感謝を述べる。ヴィジュアルやインタビュー記事、本人のInstagramなどからは彼女の個性の強さがうかがえるが、このような誠実さにこそファンは心打たれる。会場には大きな拍手が起きた。
最後に披露されたのは『Heart Beat*』。この曲のMVは、偶然にもこの日の会場付近で撮影されたという(他に新宿や浅草など)。そして撮影時、ここでトイレを借りることになったエピソードを明かす。

「CIRCUS TOKYOのスタッフの方々、トイレを求めて三千里。あの時、トイレを借りた者です。こんなに大人になりました!」

フロアが沸くなか、都会の夜にぴったりのジャジーな楽曲で初ライブの締めを飾る。

ロイ-RöE-はステージを降りると、歌いながらフロア後方へ駆け抜け、曲の終わりとともにそのまま消えて行った。彼女はこのライブで、後ろから登場して後ろへ消えて行ったわけだ。ステージを横に広く使うアーティストはたくさんいるが、フロアの前後をこれほど大胆に使うアーティストは珍しいのではないだろうか。もっと大きなハコでライブをやるようになった時、どんな演出をするのか期待が高まる。
新しい才能がウカ(羽化)し、日本の音楽シーンへと羽ばたいていく瞬間だった。


〈セットリスト〉
『ロイ-RöE- presents first ONEMANSHOW at CIRCUS -ウカ*-』

1.脱獄計画*
2.そそらるる*
3.泡と鎖*
4.ピエロ・シティ*
5.-10℃*
6.ビスクドール*
7.Mederö*
8.スリル*
9.奇跡と退屈(カバー)
10.Heart Beat*


〈リリース情報〉
1st Digital EP『ウカ』
1.泡と鎖*
2.Heart Beat*
3.そそらるる*

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〈ロイ-RöE-〉
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ロイ-RöE-初ライブ 新たな才能がウカ(羽化)するときはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

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「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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