【レポート】岡林信康の50周年記念コ
ンサート「まだ見知らぬ岡林信康に出
会い続けていきたい」

シンガーソングライターの岡林信康が、12月19日、20日に、東京・EXシアター六本木にて、デビュー50周年記念コンサートを開催した。

岡林信康は、1968年に山谷の日雇い労働者の心情を歌った「山谷ブルース」でレコードデビュー。弾き語りのスタイルで熱狂的な人気を集め、“フォークの神様”、“反戦フォークの旗手”と呼ばれる。その後、蒸発を経て1970年に、はっぴいえんどを従えてロッカーとしてカムバック。1971年、第3回<中津川フォークジャンボリー>を最後に再び音楽活動を休止し農耕生活に入る。1973年に音楽活動を再開。1975年、美空ひばりが岡林作品「月の夜汽車」や「風の流れに」を歌い話題となる。80年代以降は、日本の民謡や盆踊りに受け継がれた日本のリズムをベースとしたエンヤトットミュージックを展開し精力的に活動を続ける。2011年にはフジロックフェスティバルに出演。2018年は、9月5日にセルフカバーアルバム『森羅十二象』をリリース、9月13日の福岡を皮切りに、デビュー50周年コンサートを全国7都市で開催した。12月19日、20日はその最終公演である。山下洋輔カルテットが出演予定だったものの、山下が11月22日に転倒による負傷のため出演中止。岡林のギターとハーモニカに、加藤実のピアノという編成中心の演奏と歌に、今までの活動や曲への思いなどのトークも多めの公演となった。
ここでは19日の公演の模様を紹介する。会場は、1960年代後半から1970年代に青春時代を過ごしたと思われる年代のファンでいっぱいとなった。「いよいよ、神が降臨するぞ」という声も聞こえてくる。会場中が息を詰めて開演を待つ中、ギターを抱え、悠然とした足取りで岡林が登場。大きな拍手が贈られ、「どうも。沢田研二です」という挨拶でファンを和ませると、ギターとハーモニカの弾き語りによる「ロコモーション」でスタート。同曲は、1987年にカセットテープで発売された自主制作アルバム『エンヤトットでDancing!!』(長らく幻のアルバムとされていたが、2015年にCD化される)のオープニングナンバーである。

歌い終えると、「本日はわざわざお越しいただいて、ありがとうございます。サンキュー!」と笑顔で延べ、「2週間ほど前、大阪のサンケイホールブリーゼという所で演りました。今は総合ビルになっていますが、昔は同じ場所にサンケイホールというのがあったんですね。そのサンケイホールで、50年前に<あんぐら音楽祭>というのが行われました」と振り返った。<あんぐら音楽祭>は、当時、「帰ってきたヨッパライ」が大ヒットしていた、ザ・フォーク・クルセダーズを中心として行われた音楽祭である。「アンダーグラウンド音楽祭、要するに、地下に潜っている、というまともな歌手としては認めてもらえなかったゲテ者歌手達ですね。私もその他大勢の一員として、そこで歌わせていただきました。ところが、バカ受けしてしまったんですね(笑)」と、デビューのきっかけを明かした。脱力した佇まいでの軽妙なトークに、時折ユーモアのある自虐ネタが飛び出すのも楽しい。

「最近は、コンサートをやるたびに、これが最後のコンサートになるかもわからない、だから悔いのないようにやっていこう、という気持ちで歌うようになりました」というトークに続いて、「飯場 飯場と 渡ってく」という歌い出しで拍手が起こり、「流れ者」へ。歌声は深みと伸びやかさが増しているようで円熟味を感じさせる。その後はピアノの加藤実も参加し、「チューリップのアップリケ」、「今日をこえて」、「Goodby My Darling」、「ミッドナイト・トレイン」と人気曲が続き、会場は熱気に包まれた。
休憩を挟んでから後編がスタート。TV時代劇『服部半蔵影の軍団』のエンディングテーマ「Gの祈り」、孫への気持ちを歌った私小説的作品「さよならひとつ」と続き、「26ばんめの秋」が始まるとひときわ大きな拍手が起こり、同曲の人気の高さが伺えた。終盤は「君に捧げるラブ・ソング」、父親と祖父の風変りな人生についての話から、「同じような遺伝子が動かして、こういう変わった歌手人生を歩ませたんじゃないかなと思っております。売れるとか売れないとか、受けるとか受けないは抜きにして、私は音楽を通していろんな色の岡林信康に出会えた、本当に幸せな恵まれた歌手人生であったのではないかと思っております。思っておりますと言ったら、なんかもう人生終わったみたいですが(笑)。これからもまだ見知らぬ岡林信康に出会い続けていきたいと思っております」と語ると、「山辺に向いて」をしみじみと歌い上げた。
アンコールではエンヤトットバンド・社中 御歌囃子が登場。太鼓、お囃子、三味線の演奏による「今夜は朝まで踊りましょう」は、踊りだしたくなるようなリズムに客席の手拍子も一体となって大いに盛り上がった。その後は加藤のピアノで、「自由への長い旅」を披露。同曲は、早川義夫がディレクターを、デビュー前のはっぴいえんどが演奏を務めた、音楽史に残るセカンドアルバム『見る前に跳べ』(1970年発売)の収録曲で、ライブの定番曲としても親しまれている。公演の最後に選んだこの曲の歌詞を噛み締めるように歌う岡林に、覚悟のようなものが感じられた。「信じたいために疑いつづける 自由への長い旅を一人 自由への長い旅を今日も」。
撮影:岩本健吾
取材・文:仲村 瞳

<岡林信康デビュー50周年記念コンサー
トツアー>

2018年12月19日(水) @東京・EXシアター六本木
[ セットリスト ]
01. ロコモーション
02. 流れ者
03. チューリップのアップリケ
04. 今日をこえて
05. Goodby My Darling
06. ミッドナイト・トレイン
07. 山谷ブルース
08. Gの祈り
09. さよならひとつ
10. 26ばんめの秋
11. 君に捧げるラブ・ソング
12. 山辺に向いて
アンコール
1. 今夜は朝まで踊りましょう
2. 自由への長い旅

デビュー50周年記念セルフカバーアルバ
ム『森羅十二象』

2018年9月5日(水)発売
CD:ONL11 / 3,000円+税
限定アナログ盤2枚組Wジャケット:ONLR11 / 4,500円+税
[ 収録楽曲 ]
1.「虹の舟唄」(1992)
 歌:岡林信康
 指揮:井村誠貴
 演奏:京都フィルハーモニー室内合奏団

2.「ミッドナイト・トレイン」(1978)
 歌:岡林信康
 指揮:井村誠貴
 演奏:京都フィルハーモニー室内合奏団

3.「モンゴル草原」(1992)
 歌:岡林信康
 指揮:井村誠貴
 演奏:京都フィルハーモニー室内合奏団

4.「26 ばんめの秋」(1973)
 歌・ギター・ハーモニカ:岡林信康
 アコースティックギター・ドラムヘッド:坂崎幸之助

5.「さよならひとつ」(2012)
 歌・ギター・ハーモニカ:岡林信康
 アコースティックギター・12弦ギター:坂崎幸之助

6.「チューリップのアップリケ」(1969)
 歌・ギター:岡林信康
 ピアノ・コーラス:矢野顕子

7.「君に捧げるラブ・ソング」(1979)
 歌・ギター:岡林信康
 ピアノ:矢野顕子

8.「今日をこえて」(1969)
 歌:岡林信康
 演奏:サンボマスター

9.「それで自由になったのかい」(1969)
 歌:岡林信康
 演奏:サンボマスター

10.「自由への長い旅」(1970)
 歌:岡林信康
 ピアノ:山下洋輔
 ウッドベース:坂井紅介
 ドラム:本田珠也
 トランペット:類家心平

11.「山谷ブルース」(1968)
 歌:岡林信康
 ピアノ:山下洋輔
 ウッドベース:坂井紅介
 ドラム:本田珠也

12.「山辺に向いて」(1979)
 歌:岡林信康
 ピアノ:山下洋輔
 ウッドベース:坂井紅介
 ドラム:本田珠也

『岡林信康withはっぴいえんど7インチ
BOX』

2018年7月25日(水)発売
限定盤 国内プレス アナログ盤 6枚組BOX-SET:9,259円+税
監修:湯浅学 写真:川仁忍
【disc1】
A:愛する人へ
B:ラブ・ゼネレーション
 ベース:細野晴臣
 サイドギター:大滝詠一
 リードギター:鈴木茂
 ドラムス:松本隆
 オルガン:渡辺勝

【disc2】
A:だからここに来た
B:コペルニクス的回転のすすめ
 ベース、ピアノ:細野晴臣
 サイドギター:大滝詠一
 リードギター:鈴木茂
 ドラム:松本隆

【disc3】
A:家は出たけれど
B:君を待っている
 ベース:細野晴臣
 サイドギター:大滝詠一
 リードギター:鈴木茂
 ドラムス:松本隆

【disc4】
A:自由への長い旅
B:今日をこえて
 ベース:細野晴臣
 サイドギター:大滝詠一
 リードギター:鈴木茂
 ドラムス:松本隆

【disc5】
A:手紙
B:それで自由になったのかい
 ※はっぴいえんどの参加はB面のみ「それで自由になったのかい」
 1970年全日本フォークジャンボリー実況録音
 ベース:細野晴臣
 サイドギター:大滝詠一
 リードギター:鈴木茂
 ドラムス:松本隆

【disc6 ボーナス・レコード】
A:私たちの望むものは(はっぴいえんどバージョン)
 ※A面のみ収録
 ※1971年3月29日アオイスタジオにて収録岡林信康withはっぴいえんどとしては最後のスタジオ録音音源
 ベース:細野晴臣
 サイドギター:大滝詠一
 リードギター:鈴木茂
 ドラムス:松本隆

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