自分が生きる意味は?とにかく深いボカロ曲「ドラマツルギー」を解説

自分が生きる意味は?とにかく深いボカロ曲「ドラマツルギー」を解説

自分が生きる意味は?とにかく深いボ
カロ曲「ドラマツルギー」を解説

クールなのにポップ!キラキラしたサウンドが耳に心地良い「ドラマツルギー」。

しかし歌詞は、読み込んでいくとこれでもかと深く、自分の人生について考えてしまいます。
聴く人によって感じ方、捉え方が全く違う曲と言えますね。
この記事では「ドラマツルギー」の持つ多様な魅力を、ばんばんご紹介します!
ドラマツルギーとは
「ドラマツルギー」は2017年10月10日にニコニコ動画で公開された、初音ミクを使ったボカロソングです。11日には作詞作曲者であるEveによる歌唱バージョンがYouTubeで公開。それぞれ話題になり、2018年12月現在では、合計再生回数が2280万再生以上!
歌ってみた、踊ってみた、MMDなど、ファンによる派生動画も数多く投稿されている人気曲です。
曲もさることながら、MV自体のクオリティも高く、見応えがあります!ラフなタッチの動き、踊るキャラクターたち。ぬるぬる動きますよ!これも「ドラマツルギー」の人気の理由のひとつです。

作曲者は歌い手としても人気のEve
作曲者であるEveは、2009年に歌い手としてニコニコ動画デビューし活動を開始。少年のような歌声が特徴的ですね。現在はいくつもの歌ってみた動画が100万再生回数をこえている、超人気歌い手です!
ボカロPとしては2016年12月に「sister / 初音ミク」を初投稿。代表作は「ナンセンス文学 / 初音ミク」や「アウトサイダー / 初音ミク」などが挙げられますが、もちろん「ドラマツルギー」もそのひとつです!
シンガーソングライターとしてメジャーデビューもしていて、さらにはデザイナーとしても活躍。自身のアパレルブランドも立ち上げています。
非常に幅広い活動をしている、人気クリエイターです!

どこまでもどこまでも深い歌詞
ここからは曲の魅力について書いていこうと思います!
まず、とにかくじっくり味わって頂きたいのが歌詞です。
「ドラマツルギー」は英語で書くと「Dramaturgy」という綴りになります。
意味としては演劇や戯曲についての創作方法論であり、また、社会学のひとつでもあります…と書かれても、ちょっとよく分からないですよね。
端的に言うと「生活している中で、みんながみんな、何かの役になり生きている」という考え方のことを指します。
例えばコンビニの店員さんは「コンビニ」の「店員」という役として働いています。でも「家」に帰ると「一人息子」、「学校」に行けば「男子高校生」という役になります。
すごい乱暴な説明で申し訳ないですが、そういう意味合いです。
そんな哲学的とも言える考え方が、歌詞にぎゅっと詰め込まれています。
ということで、歌詞をじっくり読み込んで、その意味、そして自分の生き方に照らし合わせてみて欲しいのです。
するともっと、この曲が好きになるはずです!

イヤホン推奨!立体的なサウンド

サウンドのこだわりもすごいですよ。スピーカーで聴くよりもイヤホンをオススメします!
掛け合いをしているような、立体的なミックスが耳に響いてきます。
曲調としてはおしゃれなダンスロックテイストですが、練り込まれた曲展開と折り重なる音像が曲に深みを生み出しています。
ディレイの効いたギターのフレーズとファンキーなドラム、ベースのバランスも良く、飽きません。
その上にクールなメロディーと初音ミクの歌声が合わさって、まるでミルフィーユのよう。
耳が…幸せ…。

MVのアニメーションがおしゃれ過ぎる

さきほども書きましたが、MVのクオリティがとても高いです。
荒く、ラフなタッチで描かれたキャラクターたちが画面中を動き回ります。中にはマスコット的な生き物(?)も登場して、動画のコメントでも「かわいい!」と評判です。
特に見て頂きたいのが、最後のサビの部分!手で形作った空間にズームアップを繰り返し、どんどん場面が変わっていきます。ダイナミックな演出とともに、曲も最高潮へ!心奪われてしまいますね。
配色センスも素晴らしい。黒、白、灰色を基調に淡い水色や赤が使われています。曲のヨーロッパ的な雰囲気、レトロな空気感を上手く表現していますね!
ボカロPとしても非常に人気のあるMahが映像制作を担当しています。

歌詞の意味は?じっくり味わって欲しい世界観
ではここからは歌詞を紹介しつつ、曲に込められたメッセージを見ていこうと思います。
まずは冒頭から。
不安や悩み、苦悩が表現されている冒頭

哲学的な始まりですね。上にも書いた通り、「ドラマツルギー」という言葉は社会学の用語のひとつです。ここの歌詞だけだとその内容までは読み取れませんが、しかし「人間の形は投げだしたんだ」というフレーズからは一種の諦めの気持ちが伺えます。社会で生きていて、言い換えると生活している中で、何か不安や悩みがあるのでしょうか。
「劇場」と歌詞には書かれていますが、ルビは「はこ」。劇場やコンサートホール、ライブハウスなど、ステージのある施設のことを「箱」と呼ぶ、専門用語のような言葉選びです。そしてそこから「出らんない」「逃げ出したい」。つまり、悩みはそのことを指しています。
「劇場」は「生活」のこと。そこから「逃げ出したい」。
でも逃げられずにみんながみんな「演じていたんだ」。ここで「ドラマツルギー」という言葉の意味合いが出てきますね。先に書いた、誰しもが何かの役柄を演じながら生きている、ということ。
生活を劇に例えて、そこから抜け出せない苦悩を表現しています。

みんなが何かしらの役柄を演じているので、傍観者、観客はいません。
しかも役を演じている、ということで、自分が自分ではないような気持ちを、この曲の主人公は感じています。「自分が何者なのか」誰しもが一度は考えたことがあることではないでしょうか。モラトリアムに似た思いですね。
生活している中では様々な人と関わり合います。そうすると、本当に色々な出来事が起きますよね。嬉しい楽しいばかりじゃなく、「言の愛憎」とあるように、憎しみなんかも生まれてしまいます。
そうやって周りと励み、ぶつかり合ううちに「何者でもない自分」の人生がドラマチックな展開にならないかな…と主人公は考えているようです。

そして、周りの人たちも同じように考えているのです。誰しもがドラマチックな人生を欲している。だから「君には無理なんだ」と人に言い、自分のことは守る。人を蹴落として自分が主役になる!というような、薄暗い気持ちが綴られています。

畳み掛けるように展開していく歌詞

そして歌詞は畳み掛けるように展開していきます。
薄暗い気持ちなんて持ちたくないですよね。馬鹿でもいいから、とにかく「前線上に立って」必死に生きていこう。そういう気持ちをみんなが持つと「ドラマチックな展開はドットヒート」していく、と書かれています。
しかし、色んなことを考えすぎて心が折れそうになっている曲の主人公。そこで現れたのが「アンタ」です。具体的に誰のことを指しているのかは、歌詞の中には出てきません。他人なのか、もしかしたら自分自身なのか。
ただそれが誰であっても「呼吸を整えて さあ さあ」というフレーズからは、決意のような気持ちが伝わってきます。
曲の主人公が演じている役柄は、今「アンタ」からどう見えているのか。しかし考えても仕方ない。嘲笑われても必死に生きるしかないんだ!こんな思いが感じられませんか?

何も同じ役柄なんてない

曲の最後の歌詞です。
前半は1番のサビから登場しているフレーズですね。「君」も一緒だ、役柄を演じているんだ。不安を抱えていて、心がざわついているはずだ。
でも必死に生きて、先に進もう。その先には「黒幕」がいるから。
ここで言う「黒幕」は、単純に悪役のことを言っているようには感じられません。
不安の原因のことではないでしょうか。
生きていく上で、自己確立をするなかで、それを阻む存在。
「その目に映るのは」で曲が締めくくられていますね。
不安の原因は人それぞれ違います。
あなたの目に映った「原因」はなんだった?という風に取れるフレーズです。
このように、読み解けば読み解くほど深い内容です。
もちろん、この歌詞を読む人によって、違った解釈も生まれるはずです。人によって解釈が変わる…それがこの曲の重要なポイントのように感じます。
「人それぞれ」って便利な言葉ですけど、何十億人もいる人間を、その言葉だけで括るのは難しいですよね。
誰もが役柄を演じていて、そして同じ役柄なんてない。
あなたもぜひ、自分の「役柄」は何なのか考えてみませんか?

▼歌詞全文はコチラから

歌ってみた動画のオススメを3つご紹介!
クセになるメロディーラインが特徴のひとつの「ドラマツルギー」は歌うと、とても気持ち良いですよ!
特に「ずっと僕は 何者にもなれないで」のところ、最高じゃないですか…?
ではここで、ぜひ聴いて欲しい「ドラマツルギー」を歌ってみた動画を3つご紹介!
ドラマツルギー 歌ってみた / りぶ

ドラマツルギー 歌ってみた / Sou

ドラマツルギー 歌ってみた / Gero

聴いての通り、男性でも歌える曲なのでぜひカラオケで挑戦してみてください!
滑舌を意識するのがポイント。発声するときはしっかり口の形を作りましょう。
曲に合わせて、少し儚げな歌い方をすると雰囲気が出るかも。
「ナンセンス文学」「アウトサイダー」との関係性を紐解くのもオススメ!
「ドラマツルギー」は、その前に作られた「ナンセンス文学 」とその後に作られた「アウトサイダー」と繋がっていると言われています。どちらの曲も哲学的で深い内容の歌詞が共通点として挙げられますね。映像の雰囲気も同じです。
なのでぜひ、3作を聴き比べながら、Eveワールドを思う存分楽しんでください!
「ナンセンス文学」の歌詞をみる

「アウトサイダー」の歌詞をみる

TEXT 荒木若干

UtaTen

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