L'Arc~en~Cielの歴史にまた一つ大
きく輝くエピソードが刻まれた、ラル
クリ第二夜レポート

L’ Arc~en~Ciel『LIVE 2018 L'ArChristmas』

2018.12.20 東京ドーム
12月20日、東京ドームでL’ Arc~en~Ciel 『LIVE 2018 L'ArChristmas』を観た。4人が揃うのは1年8か月ぶりで、しかもデビュー以降初のクリスマスライヴ。客席はこの日を待ちわびた超満員5万5千人で埋め尽くされ、ステージには巨大な氷柱を模したオブジェや樹木、ツリー型のセットが並ぶ。雄大で幻想的なステージアートだ。
巨大な二面スクリーンを使ったドラマチックなオープニングに、湧き上がる地鳴りのような大歓声。yukihiro(Dr)とken(G)はスーツを基調に、tetsuya(B)は赤いロングジャケット、hyde(Vo)は全身を茶白のファーで覆い、美しくしなやかに。1曲目「winter fall」でゆったりと演奏を始めると、「Caress of Venus」で一気にスピードアップ。観客全員に配布されたL'edバンド(リストバンド)が光を放つ壮麗な景色の中、tetsuyaとhydeが左右の両ウィングへと駆け出して観客を煽る。「snow drop」では、トーキングモジュレーターを使ったkenのギターソロが冴えわたる。わずか3曲で広い東京ドームをホームグラウンドにしてしまう、電光石火のオープニングだ。
「こんな師走の平日に来てくれるみなさんは、かなりマニアな人たちだとお見受けしてるのでね。久しぶりの曲もいくつか用意してるんで、最後まで一緒に楽しもうぜ!」
L’Arc~en~Ciel/hyde 2018.12.20 東京ドーム 撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子
hydeのMCに続いて歌われた「BLESS」は、2010年バンクーバー五輪のNHKテーマソングになった透明感あふれるバラード。一転して「接吻」は妖しく激しく、hydeは帽子を脱いで編み込みの長髪を見せながら観客を挑発する。「fate」はさらにヘヴィにダンサブルに、yukihiroの正確なビートとtetsuyaのメロディックな重低音ベース、kenのディストーションギターの絡みは圧巻のひとこと。喉も裂けよといわんばかりのhydeのシャウトもすさまじい。神聖なムードに包まれる「Dearest Love」を経て、kenの幽玄なギターソロから一気にアップテンポに転じる「MY HEART DRAWS A DREAM」では、hydeがアリーナ中央へと長く伸びた花道へ。5万5千人の<夢を描くよ>というフレーズの大合唱が胸を揺さぶる。ホールやアリーナでは味わえない、ドームならではの壮大なスケール感だ。
クリスマスの定番曲「Hurry Xmas」は、伸びやかな4ビートに乗って明るく朗らかに。コーラスするtetsuyaの肩をhydeが抱いて一緒に歌うシーンがスクリーンに大映しになる。いいシーンだ。盛大なエンジン音と共に幕を開ける「Driver's High」では、燃える火柱がステージを赤く染め、レーザービームがひっきりなしに飛び交う。kenが花道の先端へ飛び出し、hydeが「限界まで振り切ってくれ東京!」と叫ぶ。最高のテンションをキープしたまま飛び込んだ「DIVE TO BLUE」では、アリーナに投入された巨大な風船を転がし客席は大はしゃぎ。ステージ上ではkenがふざけてhydeに体当たりするも、hydeはひらりと身をかわしながら歌い続ける。ステージの上も下もみんな笑顔のハッピーなパーティー、これがL'ArChristmasだ。
L’Arc~en~Ciel/ken 2018.12.20 東京ドーム 撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子
セットチェンジの間には、赤い服と白いヒゲのサンタクロースたちが大活躍。総勢10名がアリーナ通路で飛んだり跳ねたりプレゼントを投げ込んだり、にぎやかなパフォーマンスで飽きさせない。メンバーが再登場して花道に作られたセンターステージへ移動すると、まずはkenのMCからスタート。が、「クリスマスの思い出」というごく普通のテーマが思わぬ方向へ脱線し、最後は場内大爆笑でジ エンド。kenの名誉のために内容は秘しておくが、どこにいてもkenの魅力は自然体だ。がらりとムードを変えて「未来世界」はアダルトにジャジーに、「静かの海で」は幻想的な青いライトに包まれて荘厳に。美しい地球の映像をバックに、hydeの神がかった歌と、観客全員の<feel heavenly>の大合唱が聴けた「静かの海で」は、間違いなくこの日のハイライト。その時ドームは宇宙空間になった。
L’Arc~en~Ciel/tetsuya 2018.12.20 東京ドーム 撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子
再びシーンが変わり、L’ Arc~en~Cielの楽曲の中でも特に攻撃的なエレクトロロックチューン「trick」。全員がエレクトリックギターを持ち、激しいビートに乗ってリードボヴォーカルを歌い継ぐ。4人が乗ったスライディングステージがメインステージへと移動してゆく演出に、アリーナの観客から大歓声が飛ぶ。yukihiroの叩き出すマシーナリーなダンスビートが最高にクールな「X X X」から「Wings Flap」、「Link」では金色と赤色のテープが盛大にドームの空間に打ち上がる。満を持してtetsuyaが花道に進み出る。会場のボルテージが一段と上がる。
「White Feathers」はミドルテンポの雄大な曲調で、曲の後半にはまさしく白い羽がアリーナに降り注ぐ美しい演出が見られた。5万5千人と共に作る、1年8か月ぶりの出会いをみんなが心から楽しんでいる。バンドが一旦ステージを降りると再びサンタクロースタイムが始まり、今度は観客全員を巻き込んでのウェーブ大会。楽しいインターミッションのあと、衣装替えを済ませたメンバーがステージに戻り、レーザービームが派手に飛び交う「Don’ t be Afraid」を経ていよいよライヴも終盤へ。tetsuyaが高らかに雄たけびを上げる。
「ラルク初のクリスマスライヴということで、平日にも関わらずみなさんありがとう! おおきに!  まだ聴きたい? 行くでー!」
L’Arc~en~Ciel/yukihiro 2018.12.20 東京ドーム 撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子
明るくダンサブルな「twinkle, twinkle」は、80'sポップを思わせるキャッチーさと力強いバンドサウンドのバランスが絶妙。「I Wish」はhydeのアカペラから始まり、kenのアコースティックギターから一転して明るくポップなハッピーソングへとへと発展する、ドラマチックな演奏が聴けた。L'Arc~en~Cielの楽曲のバリエーションの多さにあらためて驚かされ、様々な色を完璧に表現するスキルに舌を巻く。久々だろうとクリスマスライヴだろうと、L'Arc~en~CielはやはりL'Arc~en~Cielだった。
「みんなが笑顔になるのが楽しいから、サンタクロースの気持ちがわかりました。僕たちからのプレゼントはみんなにちゃんと届いたかなと思います」
hydeの問いかけに湧き上がった拍手と大歓声が、5万5千人からの回答だ。朝から喉の不調で声が出ず、メンバーやスタッフの力を借りてここまで歌い切ったという衝撃の事実をここで明かし、「みんなの笑顔を見て最初から泣きそうでした」とhyde。
「クリスマスって言う事で、神様っているのかなって考えてみました。でもね神がいなかったとしても、クリスマスってたくさんの人に夢を与えることができてるじゃないですか? 信じるとか信じないじゃなくて、今日僕たちがこうやって出会えた奇跡、そして愛し合った時間。これはたしかに存在してた。とても重要なことだと思います。導いてくれたこの日に感謝します」。
そう語る声が揺れている。目に何かが光るように見えたのは、光の加減のせいだっただろうか?
L’Arc~en~Ciel 2018.12.20 東京ドーム 撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子
3時間に及ぶライヴを締めくくるラストチューンは「雪の足跡」だった。雪のように降り注ぐ紙吹雪の中で、最後の力を振り絞り歌うhydeと、それを支えるtetsuya、ken、yukihiro、そして5万5千人の仲間たち。明るい「メリークリスマス!」の掛け声と共に、L'Arc~en~Ciel 『LIVE 2018 L'ArChristmas』は幕を閉じた。hydeがMCで言ったように、“トランプならかなり強い手”という4人が久々に集まり、“クリスマスの奇跡”を起こした特別な一夜。L'Arc~en~Cielの歴史にまた一つ、大きく輝くエピソードが刻まれた。

取材・文=宮本英夫
撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子
L’Arc~en~Ciel 2018.12.20 東京ドーム 撮影=今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

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