【みねこ美根 インタビュー】
野心も欲望も誰にも負けない気持ちも
全てひっくるめて“心火”
今はまだはっきりとした輪郭が見えているわけではない。だが、“核”となるものはすでに揺るぎなく、それが放つ蒼い光は自在に広がり始めている。最新作『心火を従えて愈々』は彼女の才能と存在意義を認識できる作品集だ。
深淵から立ち昇ってくるようなメロディー。危うさを滲ませながらも芯の通った意思を感じさせる歌声。そして、絵画的であったり、短編映画のようであったり、豆本の向こう側に広がる果てしない世界にも感じられる紡がれた言葉たち。初配信作品『心火を従えて愈々』は斬新でありながら現風景の匂いも内包した楽曲が鳴り響いている。
「今の自分の世界を感じてもらえて、その世界がもっと広がっていく未来に向けてわくわくしてもらえるということをポイントに、この6曲を選びました。「線路」は自分にとって新たな段階のスタート地点であり決意の曲で、「黒髪のワルツ」は名刺として迷わずに出せる曲です。「昨日の終わり」は自主盤『avant-title』とはまた違いよりロックに叙情的に、「こころ」は他の曲にないテンポ感の中で切なさと立体感がより深まっています。「太陽」は曲・詩ともに私の世界を新たに広げた出発点。そして、「おもちゃのきもち」は新たにチャレンジしたサウンドの世界への導入となる曲で、次へのつながりも聴かせてくれると思います」
2018年の年が暮れ始めた寒い夜、六本木の地下にあるライヴハウスで初めて観た彼女のライヴは、自身のピアノとギターにドラムスを加えた特殊な編成のものだった。空間を活かしたそのスタイルもとても興味深いものだったが、『心火を従えて愈々』ではアグレッシブなバンドサウンドを主軸とした音世界が構築されている。楽曲のアレンジにおいて、彼女はサウンドプロデューサーである小名川高弘に幾つか希望を伝えたという。
「お願いしたのは“バンド感”です。演奏している自分やプレイヤーが見えてくるような音にしたいとお伝えしました。これまでは弾き語りでライヴをやっていましたが、自分が作るデモ音源は基本的にバンドサウンドをイメージして作っていて、何よりバンドサウンドが好きなので、自分がカッコ良いとイメージするものは“キラキラするようなかわいい音・飾る音”ではなく、ロックで武骨なもの。歪むギター、動きうねるベース、必要最小限だけど感情的で胸に迫り響くドラムです。「太陽」ではイントロのオルゴールっぽい感じやピアノの編曲、全体の抑揚を、「おもちゃのきもち」はおもちゃのカチャカチャした音やパーカッション、アコーディオンといったバンドとはまた違う郷愁を感じるイメージを、希望としてお伝えしました。ライヴに関して今一番やりたいスタイルはドラム、ベース、ギターと自分(ピアノ、ギター)の4人編成ですが、さらに自分の世界をちゃんと表現できて、かつ、楽しんでもらえる編成を、これからもいろいろチャレンジしたいです」
みねこ美根のメロディーには、言葉には、音世界には、未来が開かれていく“希望”が存在する。その“希望”は今作の“心火を従えて愈々”というタイトルにも表れているようだ。
「このタイトルには“新しい一歩を踏み出したのだ、ここからなのだ”という気持ちを込めました。“心火”は文字の並びやさしいですが、意味は激しい感情を指します。“野心を含め強い感情を抱き、ここから行くのだ”と、満を持しての一歩という想いを込めました。2019年は凄まじい年にします。もっとたくさんの人に聴いてほしいし、知ってほしいし、私の世界を楽しんでほしいです。そして、今応援してくれている人に“あなたが応援しているみねこ美根は本当にカッコ良いので、間違ってないです”と裏付けて、もっとわくわくしてもらいたいです。野心も欲望も誰にも負けない気持ちも全てひっくるめて“心火”。間違いなくこの強い気持ちは私のものです。一歩を踏み出しました。目を離さずに見ていてほしいですし、目を離せなくさせるべく、行き先を照らして見せて進みます。見ていてください」
確信ある自信と、堂々たる意思表示。ライヴのMCではすごく人見知りだと言っていたけれど、こと音楽、自分の作品に関しては語り尽くせないほどの想いがあふれているのが感じられる。“凄まじい年”の始まり、まずはこの作品集から。そして、ここから野心と欲望をどのように結実させていくのかーーそれがとても楽しみでならない。そう、目が離せなくなるような未来を約束してくれたのだから。
文:竹内美保
『心火を従えて愈々』全曲紹介
「線路」MV
「黒髪のワルツ」MV
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