L→R モナ、ヒナ

L→R モナ、ヒナ

【Kitri インタビュー】
“心は熱く、頭は冷静に”が
演奏のイメージ

2015年より活動を開始したピアノ連弾ユニットのKitri。姉妹でもあるふたりが大ファンだと公言する大橋トリオのプロデュースによる、美しいコーラスワークとともに劇的な旋律を奏でるEP『Primo』でメジャーデビューを果たす。

幼い頃からクラシックピアノを学んでいたおふたりですが、まずはユニットを組んだきっかけを教えてください。

モナ
私が高校生でヒナが中学生だった時に、当時習っていたピアノの先生に“アンサンブルの勉強にもなるから、ふたりで連弾をやってみたらどう?”と提案していただき、連弾のパートナーとしてふたりで弾いてみたらとても楽しくて。ステージにも立ちましたが、ひとりの時とは比べものにならないくらい安心感が強く、音楽を感じる喜びも2倍になると感じました。その記憶がずっとどこかにあり、姉妹で連弾を活かして音楽活動ができたらいいなと思うようになったんです。

ユニット名の由来は?

ヒナ
もともと“キトリイフ”というユニット名で活動していましたが、もっと覚えてもらいやすい名前にしたくて“キトリ”が誕生しました。『ドン・キホーテ』というバレエの物語に出てくる空想の中の少女の名前でもあって、私たちが空想好きだということにも関連しています。あとは、今回プロデュースしていただいた大橋トリオさんの“トリ”をリスペクトの意味を込めて勝手に入れていたり、フランス語で“キトリ(Quitterie)”は“いくじなし”という意味があったりと、さまざまな由来からなっているんです。

これまでに影響を受けたアーティストはいますか?

ヒナ
ユニット名の由来にもなっている大橋トリオさんの音楽がすごく好きで、今でも大ファンです。大橋トリオさんの音楽に出会ったのは中学生の頃だったので、本当に私の青春時代を彩ってくださったアーティストですね。あとは、ミュージカルの音楽もとても好きで、よく聴いていました。小さい頃から人と人の声が重なることを心地良く感じていて、それはコーラスが好きという現在の感覚にもつながっているのではないかと思います。
モナ
私も大橋トリオさんの大ファンで、もっとも音源を聴いたりライヴに行ったりしたことのあるアーティストです。オリジナリティーにあふれている音楽性、心地良い歌声、さまざまな楽器演奏…到底ソロプロジェクトとは信じられず、初めて聴いた時には衝撃を受けました。自分が持っていないものを全て持っていらっしゃる方で、真似できないからこそ“いつか自分たちの音楽を見つけたい”と思わせてくれる方です。他には4歳からピアノを習っていたこともあってクラシック音楽の特にピアノ曲に親しんできたので、Kitriのメロディーや曲の構成、ピアノのフレーズなどで影響を受けている部分があるかと思います。

作詞作曲はモナさんが担当されていますが、どのように制作していますか?

モナ
詞先で曲を作っていましたが、最近はメロディーから考えることが多いので、まずピアノの前に座り、何も書いていない五線紙を目の前に置いて、良いメロディーができるまで何度も歌ったりピアノを弾いたりして音符を書きながら試行錯誤しています。“こういうピアノの曲を作りたい!”と何かテーマがある時は、先にピアノのフレーズを作っていくこともありますね。

小説の一節のようなドラマチックな歌詞がどのように生まれるのかも気になりました。

モナ
昔から作ることと空想することが好きで、よく物語を書いたり、クラシックのピアノ曲に合わせて物語を付けたりしていました。歌詞を書くことは好きなことの延長線上にあるので、楽しんで創作しています。
ヒナ
姉は物語や絵本を作ってそれをよく私にも見せてくれていました。そういう頭の中で作るようなものが、物語のような不思議な歌詞にもつながっているのではないかと思います。

今作だと「細胞のダンス」など、ヒナさんも作詞を手掛けた楽曲もありますね。

ヒナ
はい。私も最近作詞を始めました。自分が読んだ好きな小説や詩からヒントを得ることもあって、小説では特にファンタジーやミステリー、サスペンスが好きなので、Kitriの詞世界も空想物語のようであり、少しミステリアスでドキッとするような言葉を紡いでいけたらいいなと思っています。

パーカッションやギターはヒナさんが演奏していますが、アレンジはどのように決めているんですか?

モナ
Kitriにとってコーラスはヴォーカルと同じくらい重要だと思っているので、ヴォーカルに寄り添い、ハーモニーが心地良くなるように考えつつ、曲によってはコーラス単体で聴いても楽しめるようなメロディーラインを目指しています。パーカッションは耳と感覚に頼ってアレンジします。
ヒナ
私は姉にアレンジしてもらったものを忠実に演奏できるように心掛けていて、ここはどのような想いで作られたのか、どのように表現したら良いのかということを常に考えるようにしています。姉妹ならではのハーモニーを大切にしているので、独特のコーラスもヴォーカルと並んで楽しんでもらえればと思いながら歌っています。

『Primo』は過去音源を再録したアルバム『Opus 0』に引き続き、ご自身も尊敬する大橋トリオさんのプロデュース作品ですね。どんなお気持ちで制作に臨みましたか?

ヒナ
大橋トリオさんはご自身の活動もお忙しい中、Kitriの音楽のことも本当に真剣に考えてくださり、心から感謝の気持ちを持って制作に臨みました。大橋さんとの出会いで、私もひとつひとつの音に対して丁寧に向き合いながら楽しむという姿勢を大切にしようと思うようになりました。
モナ
もっと音を聴いて良い音を探そうという、音に対するこだわりが増えました。大橋さんはひとつひとつの音に対してとても真摯に向き合われる方なので、それに感銘と刺激を受けたことが大きいです。たった1のBPM、1音、ひとつのコードの少しの違いや選び方で音楽がまるで変わるというのを何度も感じるようになりましたね。自分のそれまでの聴き方、音の作り方では足りないと気付き、意識が変わりました。

1曲目の「羅針鳥」は他の3曲と違ってユーフォニアムやフリューゲルホルン、効果音も取り入れていて、これまでのKitriを知っている方にとっても新鮮な幕開けになると思います。

モナ
1曲目は「羅針鳥」しかないかなと思いました。その通りKitriを知っている方はピアノ連弾のイメージを持っているかと思いますが、楽器演奏とアレンジによってこれまでの世界観をさらに広げていただいたので、まず先に新しいKitriをお届けしたいという気持ちがあったんです。サビに《ここからはじめまして》とあるのですが、これからデビューする自分たちとも重ね、新たな気持ちで歩み出すための決意の一曲になったと思います。失敗することや上手くいかないことがあっても、そこからどのようにまた歩き出すのか。私自身もそこを大切にしていきたいです。

間奏にはドボルザーク作曲の「交響曲第9番 新世界より」を思わせるフレーズがあったり。

モナ
デビューに相応しい曲をと思って「羅針鳥」を作っている時にドボルザークの「交響曲第9番 新世界より」が浮かびました。力強いメロディーと“新世界より”というタイトルが新しい世界へ飛び込む私たちと曲想にぴったり合うのではないかと思ったんです。クラシック音楽へのリスペクトがあり、ユニットの自己紹介にもなるようにと取り入れてみました。

「細胞のダンス」はドラマチックな連弾と、抑揚を付けたヴォーカルが魅惑的な雰囲気を醸し出していますが、歌い方やピアノのリズムなどで工夫した点はありますか?

モナ
低音でドラムのキック代わりになるようなピアノを弾きたいと思っていたので、左手で力強く刻む音をベースにして、リズムが明瞭に浮き上がるように意識しながら、あとのパートは比較的軽やかになるように作りました。歌い方に関しては激しさのあるピアノとの対比があると面白いと思ったので、なるべく声も気持ちも脱力して歌おうと心掛けています。

頭で考えるよりも心の動きや細胞が騒ぐ感覚で、誰かを想う気持ちが表現されていると思いました。

モナ
“心は熱く、頭は冷静に”が私たちの演奏のイメージに近いです。一心不乱に集中して演奏している時でも、どこか冷静に音を聴いている自分がいて、曲の中でも心が動いている自分を違う角度から冷静に見ている自分がいるという感覚があります。
ヒナ
ピアノは姉と異なるリズムで弾く箇所が多いので、お互いのリズムを主張することでその面白さを引き出しつつ、息の合った演奏になるように意識しました。サビのコーラスの歌い方は、姉のヴォーカルに寄り添うように冷静な気持ちで声を乗せています。

「sion」はリスナーそれぞれが思い出の情景を浮かべて聴けるノスタルジックな一曲で、上京や卒業などいろいろな別れに寄り添ってくれそうですね。

モナ
さまざまな出会いや別れがありますが、その時々に自分が感じてきた気持ちをもとに書きました。タイトルは花の紫苑から来ていて、“追憶”“遠方の人を想う”といった花言葉があるので、それぞれの“会いたい”“寂しい”という想いと重ねて聴いてもらえたら嬉しいです。

肩の力を抜いたような軽やかな伴奏がかわいらしい「一新」は、歌詞にある“君”を自分自身にも置き換えることができて、今作の中でもふたりの繊細なハーモニーが一番主役になる曲だと思いますが、いつ頃完成した楽曲なのでしょうか?

モナ
このEPに入っている曲の中では一番新しくて、2018年の春にできた曲です。“一新”する機会がもっとも多い季節ですね。もともとは“一進歌”という造語でタイトルを付けていたので、この“進”という意味も含まれています。誰かに対してでも、自分に対してでも、いろいろな“君”がいたらいいなと思います。

“胸の中の音”を頼りに動き出す「羅針鳥」、「細胞のダンス」では理性を手放していて、故郷に別れを告げる「Sion」、大切な存在から離れて行く「一新」と、4曲共通して“手放す”ことがキーになっているように感じました。

モナ
『Primo』はメジャーデビュー第一弾として、まず最初に多くの方に聴いてほしいと思う4曲を選びました。偶然かもしれませんが、確かに“手放す”ということは各曲に共通しているかもしれません。もしかしたらKitriの世界観の中でいつもどこかにあるテーマなのかもしれないです。全てを手に入れることを目指していないので、何かを失ったり、どこか欠けていたり、劣っていたりする中で、自分だけの小さな喜びや輝きを見付けて十分に感じていたいと思います。

タイトルの“Primo”は“最初”という意味もありますが、デビュー作という意味だけではなくて“気持ちを新たに”という意味合いもあるかなと思いました。

モナ
そうですね。デビュー作という意味の他には連弾で高音部が“プリモ”、低音部が“セコンド”といった呼び方があるので、連弾ユニットであるという自己紹介の意味もあります。そして、どの曲も新しい世界へ飛び出そうとしているので、そんな意味でもしっくりくるタイトルになったかなと。

そんな今作の最後に「羅針鳥」の連弾バージョン「羅針鳥-naked-」を収録した理由というのは?

ヒナ
私たちが最初に作っていた楽曲の元の姿です。それにさまざまな楽器を入れて重厚感のあるものになったのが1曲目の「羅針鳥」で。やはり私たちの特徴である連弾という部分を、より素顔に近いかたちでお届けしたいということと、ハーモニーとピアノの音色をじっくりと聴いてほしいという想いから最後に収録しました。

では、EP『Primo』はどんな作品になったのか手応えを聞かせてください。

ヒナ
大橋さんプロデュースのもと、多くの方に関わっていただき、デビュー作として“ピアノ連弾姉妹”を色濃くお見せできる作品になったと思います。
モナ
私たちにとって前向きに背中を押してくれる作品になったと思います。特にリード曲の「羅針鳥」ではKitriらしいピアノ連弾と歌は変わらず、 大橋トリオさんとゴンドウトモヒコさんとの素晴らしい演奏、そして神谷洵平さんの見事なアレンジによって個性的で瑞々しい一曲になりました。今作を引っ張ってくれる「羅針鳥」に対して他の4曲もそれぞれの世界観で、時に挫けながらも前へ進もうとしていて、EP全体を通してひとつの物語になっているような作品になったと思います。素晴らしいものができました。

アーティスト写真は自画像ですが、今作のジャケットはどなたが手掛けたものなんですか?

ヒナ
自画像は姉が描き、SNSに載せている写真や絵もふたりで制作したものですが、今回のジャケットはイラストレーターの奥原しんこさんに描いていただきました。自分たちの作品を想像力の膨らむようなストーリー性のある素敵な絵にしてもらってとても嬉しいです。自分の意志で脱いだと見える靴からは“解放”や“自由”が表されているのではないかなと感じました。色合いや構図が美しくも少し奇妙な世界観で、私たちの楽曲を絶妙に表現してくれていると思います。
モナ
この物語を知りたくなってしまうような、期待が膨らむ素敵なイラストがお気に入りです。描いてもらう前に奥原さんとお話させていただいて、「羅針鳥」のイメージや好きな色、私たちの性格など、その時の発言もイラストに取り入れてもらっています。

Kitriは知的で掴みどころのないような不思議なオーラもありますが、どの楽曲にも揺らぎのない信念が根本にあって、それこそがリスナーを心強くする要素なんだなと感じました。音楽活動をする中で一番大事にしていることは何ですか?

モナ
なるべく一喜一憂しないことです。嬉しい時は心の中では喜びますが、どれもゴールではなく音楽活動の過程の中のひとつの出来事ととらえ、自分たちの活動を冷静に客観的にとらえるようにしています。自分の性格かもしれませんが、刺激的なことがたくさん起こる中で、一喜一憂しない方が気持ちに負担が掛からずに楽しめて、長く続けられるのではないかなと。音楽的な面で言うと、人と同じことをしないということですかね。いろいろな方の才能に憧れることは多々あるので、素晴らしいと思った部分は自分の中に取り入れようとしつつ、自分は自分で何かを発見したい。少しでも新鮮な歌やピアノ、ハーモニーや世界観を作りたいという気持ちがあります。

メジャーというフィールドに活動の場が移りますが、どんなアーティストになりたいですか?

モナ
壮大なことはできなくても、聴いてくれる方の小さな居場所になるような音楽を作れる人になりたいです。あとは、全国各地でライヴができるようになりたいですね。いつか“Kitri”というジャンルになってしまうような、唯一無二な存在になれたらと思います。
ヒナ
今後さらに多くの楽器を習得して、音楽の幅を広げられたらと考えています。ふたりで今までなかったような新しい世界観と音楽を多くの方にお届けしていきたいです。

取材:千々和香苗

EP『Primo』2019年1月23日発売 BETTER DAYS/日本コロムビア
    • COCB-54280 
    • ¥1,800(税抜)

『Kitri Debut Live Tour 2019「キトリの音楽会#1」』

1/25(金) 大阪・Soap opera classics-Umeda-
2/01(金) 東京・JZ Brat SOUND OF TOKYO
2/02(土) 福岡・ROOMS
2/03(日) 熊本・tsukimi

Kitri プロフィール

キトリ:幼い頃よりクラシックピアノを学んでいた姉のMona(モナ)とHina(ヒナ)によるによるピアノ連弾ユニット。ふたりが大ファンだと公言する大橋トリオの手に自主制作音源が渡ったことをきっかけに、大橋が手掛ける2016年公開映画『PとJK』の劇伴音楽に参加。2019年1月に大橋がプロデュースしたEP『Primo』でメジャーデビューし、初のワンマンツアーは全4会場がソールドアウト。7月24日には2nd EP『Secondo』をリリースする。Kitri オフィシャルHP

L→R モナ、ヒナ
EP『Primo』

「羅針鳥」MV

OKMusic編集部

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