極楽とんぼ・山本圭壱 × PAN・川さ
ん 映画『想像だけで素晴らしいんだ
-GO TO THE FUTURE-』特別対談

大阪を拠点に全国で活動するロックバンド・PANが2015年にリリースされた楽曲「想像だけで素晴らしいんだ」を基に制作された映画『想像だけで素晴らしいんだ -GO TO THE FUTURE-』が、1月26日より公開される。本稿では、同映画の主演を務める極楽とんぼ・山本圭壱と、PANのフロントマンで同映画にも出演している川さんの対談を行った。撮影時のエピソードや感想を語り合いながら、同映画の魅力を紐解いていく。
――映画『想像だけで素晴しいんだ-GO TO THE FUTURE-』を観させてもらいました。笑いあり、涙あり、感動ありと、非常に面白かったです! もうすぐ劇場公開になりますが、今の率直な感想から教えてもらえますか?
川さん:最初はツアーを回りつつ、ライブハウスで上映してたんですけど、バンドマンもたくさん出ているので、あのバンドが出てきた! 山本さんが出てきた!という反応をもらったりして。目標は映画館で公開したいと思っていたので、決まって良かったですね。あと、映画祭での上映も決まり、長野県上田市の『うえだ城下町映画祭』で大賞をいただくという快挙もあり――
――それは本当に凄いですね!
川さん:そうなんですよ。実際に会場に行って、大賞の映画だけ上映してもらって、一般の人たちと大きなスクリーンで一緒に観たんですけど、バンドマンが出てきても知らないから、特に笑いも起きなくて。
――そうなりますよね(笑)。
川さん:バンドマンというより、普通の役者さんとして観てますからね。純粋に映画の面白い部分でクスクス笑ってました。山本さんと娘さんとのやり取りも笑っていたし、反応はライブヴハウスで上映したときと全然違ったけど、しっかり観てくれてるなと。映画が終わると、ワーッ!と拍手も起きたんですよ。その光景を見たときに映画を作って良かったと。映画そのものは4日間で撮影したから、かなり過酷だったんですけどね。映画祭のときにいろんな人と話して、「何日で撮ったんですか?」、「4日です」と言ったら驚かれましたね。それと、めっちゃ寒かったですよね?
山本:めっちゃ寒かった! 考えられないような大雪が降ったし、隣人の方から「許可は取っているのか?」と苦情をもらったりしてね。
川さん:許可はちゃんと取ってたんですけど、きちんと伝わってなかったみたいで。映画の撮影現場に行ったときに、山本さんのクライマックスのシーンだったんですよ。パジャマ姿で外を走ってるし、迫真の演技やなって。
山本:雪がどんどん降るし、早めに撮らないと雪が積もってしまって、映像が繋がらないんじゃないかと思って。これは裏話になりますけど、部屋のシーンがあったんですけど、プロデューサーの方の家が汚くて。 着替えする場所によくわからない下着もあったりしてね(笑)。正直、これはヒドイものになるんじゃないかと。
川さん:ははははは。
山本:PANの皆さんは雪の中で歌っているし、なんじゃこれ!って(笑)。それで終わってみたら、飛んだいい映画に仕上がってましたね。
――当初は短編映画の予定でしたからね。
川さん:もともと30分の映画の予定が、思ったよりも3倍以上の内容になりましたからね(笑)。撮れ高がかなりあったのかなと。
山本:しかもケツの時間が決まっていたのに遥かに超えて、18時に終わる予定が深夜1時でしたからね。
――えっ、そうなんですか?
山本:家を出るときも大雪が降ってるし、タクシーも捕まらないところで、プロデューサーの方も雪の上で急に土下座されて。「いえいえ、いいんですよ!」って。なんか、俺が悪い人みたいになっちゃって(笑)。道の真ん中まで行って、タクシーを止めようとするから「危ないですから!」って止めてね。確かメイクさんも渋谷から練馬まで来るのに4時間くらいかかったんですよ。あの日はいろいろパニックになって……遅れるのはしょうがないですからね。
川さん:それが撮影1日目ですね。僕らはその後に八王子でライブがあったんですけど、7時間かかりましたからね。で、次の日が撮影できないかもしれないという連絡をもらって、八王子の帰りにみんなで吉野家に行って、どうしようかって。そしたら深夜2時に撮影許可が出ました!って。2時間ぐらい寝て、朝から現場に行って、2日目の学校のシーンを撮り終えて。ほんまに早朝から深夜まで4日間……僕らは出るシーンだけだけど、撮影チームは大変だっただろうなと。
山本:スタッフさんは過酷そうでしたね。
川さん:でも妥協せずに、映像の角度や音にもすごいこだわってましたからね。
山本:下北のライブハウスの撮影もすごくタイトな時間しか借りられなくてね?
川さん:下北沢ERAを借りたんですけど、バンドの入り時間には出なきゃいけなくて。みんなで歌うシーンがあるんですけど、いままでシリアスだったお客さんが急に笑い始めたんですよ。なんやろうと思ったら、山本さんのズラが取れて。
――はははは。
川さん:撮影チームは「もう!」って(笑)。
山本:取れちゃいました。で、絵を決める時間も含めて、タイトな時間になぜこれだけ詰め込むんだろうと思ったけど、とにかく撮らなきゃいけないですからね。その画を決めるまでに待ち時間もあったし、その間にメシに食いに行って、現場に戻ったら、あと30分しかありません!みたいな。でもまあ、寒かったという思い出が一番ですかね。
――そこに尽きると(笑)。
山本:ほんとに寒かったんですよ! 外のシーンが多かったし。逆にそれが裏七夕というテーマと繋がっているし、いい演出になってますからね。
川さん:ほんまに雪の絵はCGでは作れないし、この映画のポイントになってますよね。雪がこれから溶けていくというイメージというか、冬から春に向かっていく雰囲気もありますからね。先に映画を観た友達からも、普通の映画やん!って驚かれました。PANの映画だから、おもろい映画かなと思ったら、普通にめっちゃいい映画で泣けた!と言われて。
山本:新宿K's cinema(1月26日~2月8日)にふらっと観に行きますよ。
川さん:大きな映画館で観ると、全然違うんですよ。映画自体は10回以上観てますけど、映画館で観ると、音も違うし、見方は変わりますね。
山本:他の映画の話になりますが、『鯉のはなシアター』って、広島カープを舞台にした短編映画も今年は登り詰めたので、それに負けないように頑張ります。
川さん:『カメラは止めるな!』もそうですよね。映画祭にその監督(上田慎一郎氏)も来てて、交流会でお話しさせてもらったから、アベラ監督のことも知ってて、昔一緒にやってたこともあるんですよって。
山本:あれ、アベラ監督は今日来る予定ですよね。雪が降ってるんですかね?
川さん:足止めを食らってるのかもしれません(笑)。この映画の主演は3人いるんですけど、一番の主演は山本さん演じる田中正ですからね。
山本:いやいや、俺は……しかし、田中正の若かりし子(遠藤真人)はよく見つけてきましたよね。
川さん:そうなんですよ! THEイナズマ戦隊の上中丈弥が演じる阿部純一の若い頃の子(木村文哉)も似ているし、しかも関西弁を喋るんですよね。設定もうまくハマッてるなと。だから、観れば観るほど発見が多くて。
山本:観れば観るほど、バンドマンがいっぱい出てるという(笑)。
川さん:そうですね。あと、効果音をうまく使ってるなと思って。その辺にも注目して観てもらえたらいいなと。それと、こないだDVD用に映画を観ながら、PANのメンバーと監督で副音声を入れたんですよ。それを聞いたら、そういうことなんや!って、さらに理解できると思います。
山本:そう言えば、俺、ひとつ思い出しましたよ。田中正のかみさん役の方――
――田中カオリ役を演じた菅井玲さんですね。
山本:そう、菅井さんを雪の中で追いかけるシーンがあるんですけど、撮影を終えた後に「私、キスしちゃいそうになりました」と言われたときに……しておけば良かったなと。
川さん:はははは!
山本:俺もそういう気持ちになったんですけど、これはそこまで行ってはいけないのかなと。今思うと、あれを作品的にも行った方が良かったのかなって。撮影初日というのもあり、照れもありましたからね。菅井さんも役作りしていただいのに、申し訳ないなと。もう一度あのシーンを撮れないものですかね、あの雪で。
川さん:もう無理ですよ!(笑)
山本:田中ミカ役のあみこさんも体当たりの演技をしてくれたしね。
川さん:ですよね。ちなみに山本さんは牛乳飲めないんでしたっけ?
山本:牛乳、あまり好きじゃないんですよ。
川さん:でも牛乳をめっちゃ飲む役なんですよね(笑)。
山本:牛乳だけの味が好きじゃなくて。カフェオレだと、カブカブ飲めるんですけど。牛乳をヤクルトに変えてくれないかな?と思いましたね。
――ははは。牛乳はこの映画におけるキーポイントになってますもんね。
川さん:そうですね。時代性を踏まえた仕掛けも多いですからね。
山本:そういう話を監督にしてもらいたかったんだけど、なぜ俺らが想像だけで喋らなきゃいけないんだ!という状況なわけですよ。
川さん:はははは。今度おごってもらいましょう。
山本:牛、一頭ぐらいね。牛を振る舞ってもらいたい(笑)。
――演技については、川さんは初めての経験ですよね?
川さん:特に登場のシーンは……一切喋らないでくださいと言われて。不気味な感じを出したかったので、ニヤニヤしてました。そこも笑えるポイントになってますからね。監督は頭の中でいろんなことをイメージしていたんだなと、映像を観ると、よくわかりますね。またどこかでやってみたい気持ちはあるし、演技するのは面白いなと思いました。PANのほかのメンバーはもっとセリフが欲しいと言ってましたね(笑)。
――山本さんは不器用な男という役柄でした。
山本:役柄に関しては普通にやればそういうものが出るのかなと。母と娘が組んで、父親はひとりぼっちみたいな。その切なさが伝わればいいなと思ってました。切ないおっさん、みたいな。
――ええ(笑)。
山本:大体、男の人は家の中ではあっちいけ!みたいな感じじゃないですか。切なさと、滑稽さを出すことによって、この人(田中正)は愛されるのかなって。どこかしら、可愛げを出す方向では考えてました。嫌われていても、可愛げさえあれば、それが魅力に変わりますからね。
――この映画はプロの俳優、女優さんよりもバンドマンが多く出ているのが特徴ですけど、その辺はどうだったんでしょう?
川さん:みんなそれなりに準備して、役作りしてくれましたからね。撮影チームの情熱を目の当たりにしたら、俺らもやらなきゃ!と思いましたから。
山本:映画には監督も出演しましたけど、俺は単純に配役がいないから、自分でやったのかなと思ってました(笑)。
川さん:監督は普通に役者もやってますからね。こんな奴おるなあ、めっちゃムカツクわあと思わされました(笑)。
――撮影中のエピソードというと?
川さん:監督がソワソワしてて、めっちゃお腹が痛かったみたいなんですよ。時間もないし、近くにトイレがなくて、終わった瞬間にどこかに走ってました(笑)。ヘンな監督やなという印象も受けたけど、いい映像を撮ろうと努力してくれているのが伝わりましたからね。
山本:カメラマンさんもその場その場で考えて、こだわってましたもんね。ただ、何度も言うようですが、よくあの部屋に何十時間もいたなと。プロデューサーと誰か同居されてる方がいて、その方の部屋で待ってるんですけど……汚いんですよ、部屋が!
川さん:ははははは。
山本:フトンは敷きっぱなしだし、そこに出入りを含めて15時間ぐらいいましたからね。どうなるんだろうと思いました。
川さん:家のシーンはわりとスタッフの家で撮ったりして、みんなに協力してもらってますからね。
山本:また画面で観ると、そこまで汚い部屋には見えないんですよね。映像ってすごいですよねえ。
川さん:はははは、広そうな家に見えますもんね。
山本:クッソ狭いところにいましたからね! まあ、楽しい思い出ですね。……ええと、まだ監督は来ないですね(笑)。
――最後にこの映画を通して、何が伝わればいいと思ってます?
川さん:僕らが作った「想像だけで素晴らしいんだ」という曲の歌詞をフィーチャーしてくれたし。それに加えて、ズルしても勝たなきゃ意味がないだろう、という解釈を入れてくれて。それに関しては、ただ生きていくというより、“生き抜くために”みたいなニュアンスを付け加えてくれたのかなと。想像するということは、何か目的を作り、そこに向かって進みながら、達成感を得るわけじゃないですか。生きていくことは何かを表現することやと思うし、そういう生き方の方が楽しいですからね。そういう思いで書いた歌詞を、こういう映像にしてもらえたのが嬉しいですね。
山本:簡潔に言うなら、腐るな、諦めるなってことですよね、人生は。
川さん:深いですね。
山本:いや、ほんとにそう思ってるんですよ。腐らずに、諦めずに進めみなさいってことですよ。「いつも上機嫌を心がける」ってことですね。
川さん:それは常にできることなんですか?
山本:まあ、無理ですよ。カッとなったときは、まあまあって感じで。
川さん:捉え方を変えると、丸くなったと思われないですか?
山本:まあ、中高生が「いつも上機嫌を心がける」と言っても、入って来ないですよね。何を言ってんだ、勉強しなさい!って感じじゃないですか(笑)。でも、ある程度の年齢に来た人から言われると、スーッと入ってくるじゃないですか。あと、「予定通り」って言葉も僕は好きなんですよ。
川さん:何ですか、いきなり(笑)。
――流れに身をまかせる気持ちも大事だと。
山本:どんなことがあっても、予定通りみたいな。そんなところでしょうかね。監督は来ないですね! これも予定通りです!
川さん:はははは、それでも上機嫌で(笑)。

取材・文=荒金良介

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