KENZI & THE TRIPSの傑作
『Kangaroo』に見る
奇跡的タイミングで生まれた
絶妙なバランス感覚
レジェンドにも影響を与えた
パンクバンド
こんな話を聞いた。結成間もないTHE BLUE HEARTSがKENZIと対バンをした時、甲本ヒロト(Vo)はKENZI(Vo)の履いている破れたジーンズを見て、“何でそんな破れたジーンズを履いて…”と言ったとか。しかし、その後、ヒロトはKENZIを真似て破れたジーンズを着用するようになったという。本人たちに直接聞いたわけでもないので真偽のほどは定かではないし、仮にそうだとしてもこれが即ちKENZIがヒロトに多大な影響を与えたミュージシャンだ…ということにはならないだろうが、当時のKENZIの人気を知る人には“さもありなん”と思わせるだけの話ではあろう。
また、筋肉少女帯の大槻ケンヂ(Vo)の名前は、KENZIのカタカナ表記である“ケンヂ”を真似たものだという。オーケンは1966年生まれ、KENZIは1964年生まれとほぼ同世代で、オーケンのほうがインディーズでのデビューが若干早いにもかかわらず…である。これも噂話のひとつなのかもしれないが、KENZIが1980年代半ばのロックシーンにおけるインフルエンサーであったことを示すエピソードだと思う。
1987年にはKENZI & THE TRIPSを結成して(ていうか、それ以前からバンドスタイルではあったので、名称変更と言ったほうがいいか)、Paul Ankaのカバー曲であるシングル「DIANA」、アルバム『FROM RABBIT HOUSE』でメジャーデビュー。その人気と知名度を拡大させていく中、『SWEET DREAMS,BABY!』(1988年)を経て辿り着いた作品が『Kangaroo』(1989年)である。