レキシ・イズム健在なままアリーナを
くまなく笑顔にした驚愕のステージ、
ビッグ門左衛門(三浦大知)も駆けつ
けた横浜アリーナ公演を振り返る

レキシTOUR 2018-2019 まんま日本ムキシばなし

2019.1.23 横浜アリーナ
11月初旬の北海道を皮切りに“行脚”してきた『レキシTOUR2018-2019まんま日本ムキシばなし』。2月6日の大阪城ホールをもって旅は成し遂げられたが、今回はレキシ史上最大キャパとなった横浜アリーナ2日間公演の2日目を駆け足で振り返る。
“ムキシばなし”にちなんだオープニング映像は、飢饉に見舞われた村を救うために何をすべきか?をロバートの秋山竜次扮する神様に相談するというもの。シニカルな神様を喚起させなければ村の復興もありえないという映像自体がすでに長いーーその間に位置についたメンバーが鳴らしたイントロは「SEGODON」。上段の奥から救いの神チックにレキシ登場、である。80年代産業ハードロック調のこの曲。♪愛がすべてさ〜♪他、この曲のコード進行に乗る他人様のメロディの多いこと。アウトロに乗せて「ありがとう! レキシでした!」とステージを後にしようとするが、まぁそれぐらい情報量が多い。続くぶっといファンクチューン「なごん」では、時代劇の決定的場面で鳴らされる“カーッ!”でお馴染みの打楽器(ヴィブラスラップというらしい)の“カーッ!”に沸く観客たちを愛をこめて小馬鹿にする。そこからすかさずグッズ紹介に入り、まさかの完売商品「俵ポーチ」や「俵クッション」(こちらはまだあるようだった)を紹介、俵を抱えてラップしながらステージ左右の袖まで足を運んで、スタンドのファンに近づき、俵を進呈。その間、アリーナとスタンドで起こるハンドウェーヴが壮観だった。
レキシ 撮影=田中聖太郎
横浜アリーナ2日公演が完売するという事態に「「きらきら武士」ぐらいしか知らないんでしょ?」と、初期曲「Let’ s 忍者」を投入。会場の広さゆえに「(ステージと後部席の)時差がすごい」と言いつつ、ステージから最も遠いスタンドに向けて「時差を恐れないで〜」とコール&レスポンスを促す。続いても初期曲「ペリーダンシング」では大小のミラーボールとムービングライトで横アリが巨大ディスコ化した。そしてアッパーな「KMTR645」のイントロと同時にステージ上段にイルカ(の浮き輪)が投げ入れられるはずが、落下。「こんなとこで失敗するなんて。インフルエンザも流行ってるしもうやめようか」と提案するもファンの大ブーイングで却下(当然だが)。大量のイルカがアリーナに投入され、それを観客たちがトスし続ける光景は、スタンドから見ると何か遺伝子状のものが躍動するようでおかしかった。しかも「一番の衝撃はこれがイルカじゃないこと。家帰って“ホエールライドオン”で検索してみて」という真実も明かされた。蘇我入鹿ならぬ“蘇我鯨”だったとは……。
レキシ 撮影=田中聖太郎
6曲演奏したところで、「来年からは30分の休憩タイムが欲しい」と言いながら、ステージ上で休憩。サングラスをおでこにあげたアップがビジョンに映し出されると歓声があがり、「こんな態度で横アリをやった人間がいるだろうか。こんなことやってますけど45(歳)ですから」とハードなステージに本音を吐露していた。
さらに、元気出せ!遣唐使(渡和久from 風味堂)のピアノが印象的なビートルズライクな「墾田永年私財法」、♪シキシキブンブン〜♪のシンガロングが横アリクラスともなるとシュールですらある「SHIKIBU」。おもむろに目玉のおやじを被り(目玉の被り物をするというより)、哀感漂うモダンロック「GET A NOTE」をタオルを回しながら、歌い、練り歩く。
“ゲッ! ゲッ! ゲッ! GET A NOTE!”のレゲエ調とヘヴィロックを行き来するような展開を消化する健介さん格さん(奥田健介from NONA REEVES)はじめ、メンバーの懐の深さがすごい。
レキシ 撮影=田中聖太郎
再び挟まれた映像は「鶴の恩返し」を想起させる物語で、登場人物は全員レキシ。鶴つながりなのか、衣装替えした歴史の頭部には小林幸子も宝塚歌劇団も顔負けのビッグな羽飾りが。グッとブルースやジャズのこってり成分を増した「SAKOKU」ライブバージョンはTAKE島流し(武嶋聡)のサックス・ソロも火に油を注ぐ。そしてパーラメント的なファンクネス強めアレンジで「奈良に大きな仏像」では伊藤に行くならヒロブミ(伊藤大地)のドラムソロに一瞬ぽかんとしてしまった。レキシのパフォーマンスに目が行きがちだが、MCをしている間もバンドは演奏しているわけで、ツアーを経てきたバンドの底力を思い知る。
バンドがアウトロを演奏している間に再度、衣装替えして戻ったレキシの頭部は明らかに元のアフロとは違う。曰く、羽飾りで潰れたアフロは復元できないことが今回わかったという。バンドはノンストップで80年代風アメリカンロック「KATOKU」をプレイ。何度聴いてもキャッチーである。さらに横アリ全体がダンスに突入する「きらきら武士」ではあらゆる武士の名前をコール&レスポンスしながら(中には真田だが「これは俳優さんの名前だった」などオチもありつつ)、すでに優に2時間半以上経過したにも関わらず、スタンド最後尾まで踊るファンの気力体力にも圧倒される。アリーナの四方から発射された金テープを振るファンに負けじと、シンセを弾き、ラストは階段状になったステージ中央の4段目から大ジャンプで着地。この時点で胸いっぱいお腹いっぱいのレキシ・エンターテイメントの本編は終了したのだが、あらかじめアンコールの存在を知る客席は“まだここからがお楽しみだ”とでも言わんばかりのテンションを持続している。
アンコール映像には、冒頭の“神様は満足したのか?”が怪しくなり、代わりと言ってはなんだがやついいちろうとレキシによる小芝居映像が。
ビッグ門左衛門(三浦大知)、レキシ 撮影=田中聖太郎
そこへ歌舞伎役者の衣装で大見得を切りながらステージに登場したレキシ。これは「GOEMON」の衣装じゃないか?という会場の期待値がマックスに盛り上がったところへビッグ門左衛門こと三浦大知が登場。悲鳴にも似た歓声が上がり、「今までのはなんだったったんだ?」とレキシが呆然として倒れる(笑)。が、気を取り直して二人で「GOEMON」を歌い踊る。三浦がキレッキレのダンスを見せるのももちろん感動だが、レキシも負けじと踊る。しかも振り付けにアレンジを加えて笑わせる。興が乗った風に見せつつ(半分以上は本気だろうが)、ビッグ門左衛門が高音のロングトーンで叫び、“なんとかオリジナルを一節”という会場全体の嘆願が叶い、「EXCITE」が披露される一幕も。さらにレキシの大団円と言えばこの曲を欠かすことはできない「狩りから稲作へ」にもビッグ門左衛門はステージに残り、稲穂を献上されお馴染みのフロアの光景も、若き首長を得た村人集団のごとき一体感を得て、笑いながらも非常に感動的な場面となった。三浦大知という人間の誠実さと舞台への献身はどこにいても変わらないように映る。

ビッグ門左衛門(三浦大知) 撮影=田中聖太郎
レキシ 撮影=田中聖太郎
しかしそこで終わらないのが今回のレキシ。「人間っていいな」を動物に扮して歌うレキシややついらの映像が、カラフルな「INA」(DA PUMPの「USA」オマージュ)に変わると、ISSAを意識した衣装に早替えしたレキシが登場。メンバーもDA PUMP仕様で登場してステージ最前で渾身のダンスを披露したとき、レキシのバンドメンバーでいることの凄まじさを知った。世界でも類を見ないバンドである。レキシがレキシである所以を見た思いだ。
ラストの「マイ会津」がヒップホップ・アクトに見えてしまう、いや、実際の演奏も相当カッティングエッジだった。
レキシ 撮影=田中聖太郎
ステージ演出やセットの物量より、人間力が際立つ、そんな3時間超えのライブを実現したレキシ。細かいギャグや愚痴(!?)めいたものも共有するファンの理解度と貪欲に音楽を楽しむ気力・体力。何が欠けてもこの前代未聞のショーは成し遂げられなかっただろう。あの日、横浜アリーナにいた全員に感服。まさに“人間っていいな”であった。
取材・文=石角友香 撮影=田中聖太郎
レキシ 撮影=田中聖太郎

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