31の個性が集まる国際展『World Art
Tokyo 2019』 駐日イタリア大使と
駐日オランダ大使が語る、代表作家の
魅力とは?

日本最大級のアートフェア『アートフェア東京2019』が、2019年3月7日(木)〜10日(日)にかけて東京国際フォーラムで開催される(※3月7日は招待制)。その期間中に同じ会場で催されるのが、2018年より開催された展覧会『World Art Tokyo』だ。
『World Art Tokyo』(以下、WAT)は、各国の駐日大使の推薦で選ばれたアーティストたちによる国際展で、今年は31か国が集う。主催者は、WAT開催の目的を「多様な文化的背景や世界情勢の中で活躍している各国アーティストに表現の場を提供し、未来の才能を東京から発信すること」と語る。31名の作家の中から、イタリア代表とオランダ代表のアーティストの魅力を両国の大使に聞いた。
伝統と最新技術で、現代社会に問いかけるイタリア代表作家
《孤独のプシケ》
イタリア代表アーティスト マッテオ・チェッカリーニ

イタリア代表アーティスト:マッテオ・チェッカリーニ。
1983年、イタリアのチッタ・ディ・カステッロに生まれ、現在は東京を拠点に活動。ルネサンス美術に影響され、独学で油絵を学ぶ。
駐日イタリア特命全権大使 ジョルジョ・スタラーチェ氏 撮影=塚田史香
インタビューに答えてくれたのは、駐日イタリア特命全権大使ジョルジョ・スタラーチェ氏だ。
ーーマッテオ​・チェッカリーニさんについて教えてください。
イタリア絵画の伝統を守りつつ、偉大な先人たちの影響から、豊かな隠喩を内包した写実的絵画を制作しているアーティストです。テクノロジーとその可能性にも魅了され、過去の風景やモチーフを現代に融合させる表現にも挑戦しています。彼の作品には、大衆の心を掴む魅力があります。
ーー代表アーティストは、どのような基準で選出しましたか?
日本という国とその文化に魅力を感じ、なおかつ、イタリア芸術の巨匠たちに対する熱意があること。これをアーティスト選出の基準にしました。マッテオ・チェッカリーニはイタリアの文化と芸術的遺産に強い繋がりを持ちつつ、日本を拠点に活動する、才能溢れる若手アーティストです。
ーー出展作品となる《孤独のプシケ》は、どのような作品なのでしょうか?
外観は古代ローマやギリシャ時代にはじまり、イタリアルネッサンス時期にクライマックスを迎えた古典美術を表現しています。しかし、作品に込められたメッセージは、極めて現代的です。
駐日イタリア特命全権大使 ジョルジョ・スタラーチェ氏 撮影=塚田史香
ーーたしかに古典絵画にみる美しさを感じる絵ですね。どの辺りに、現代的な要素があるのですか?
「孤独のプシケ」のテーマは、情報化社会やテクノロジーの進化、それにより孤立し途方に暮れる人々など、現代の様々な問題や情勢と密接に関わっています。
さらに「孤独のプシケ」は、絵画作品としてだけでなく、映像も含めた作品として展示されます。VR技術を活用した映像作品として、実際に絵の中の世界に入っていくような感覚を体験していただきます。空間のシミュレーションには、ハリウッド映画に用いられるのと同様の技術が使われます。過去の風景やモチーフ、現代と融合させる表現ですから、来場者は、外観から受けとる第一印象と、作品がもつメッセージとのギャップに惹きつけられるでしょう。
ーー『WAT2019』に期待することはありますか?
『WAT』は、国内外の多くのアーティストやアート愛好家を惹きつけ、華めく国際展であると認識しています。来場者の方々が、各国のアートシーンを代表する作家に興味をもつこと、そして数々の展示した作品に心を奪われることを期待します。
有田焼の街・佐賀の職人と、オランダのクリエーターがコラボレーション

オランダ代表アーティスト ヘンリ・ヤコブス
オランダ代表アーティスト:ヘンリ・ヤコブス
1957年、オランダのフェルトホーフェンで生まれ、現在はベルギーのブリュッセルを拠点に活動。 絵画、ドローイング、タペストリー、壁画から、レンガに至るまで、多種多様な作品を制作。2016年に有田クリエイティブレジデンシーにて創作活動をして以来、陶磁器を用いた作品に取り組み、日本、インド、インドネシアへの旅行の中で発見した幾何学的パターンからインスピレーションを得た様々なスタイルの作品を発表している。
駐日オランダ特命全権大使 アルト・ヤコビ氏 撮影=塚田史香
続いて、駐日オランダ特命全権大使アルト・ヤコビ氏にも話を聞いた。
ーー代表アーティストは、どのような基準で選出しましたか?
オランダ大使館は国際文化政策を実施し、本国のアーティストやデザイナー、クリエーターに活躍するチャンスを与えること、そして日本・オランダ間の文化交流の促進を目指しています。そこで私たちは、代表アーティストに、作家個人ではなく両国の文化交流のプラットフォーム「クリエイティブレジデンシーアリタ」を推薦したのです。
ーー佐賀県の有田焼の街で、日本の職人とオランダのクリエーターのコラボレーションを目指すプロジェクトですね。
「クリエイティブレジデンシーアリタ」の参加者は、彼らの国際的背景やキャリアを反映する作品を作ることで、有田、そしてセラミック製品業界に新たなインスピレーションを与えることができると信じています。それらを踏まえ、私はヘンリ・ヤコブスさんが代表アーティストに選ばれたことを喜ばしく思います。彼は2016年にレジデンシーに参加し、私も彼が有田で創った作品を何度も見ています。
駐日オランダ特命全権大使 アルト・ヤコビ氏 撮影=塚田史香
ーーヘンリ・ヤコブスの作品の魅力は?
彼が有田で作った作品を初めて見たとき、ドローイングの中の幾何学模様に目を奪われました。見覚えのある模様だったので。あとからわかったことですが、彼は、自分が有田滞在時に身の回りで見つけた模様、たとえば歩道のブロック舗装の模様などを作品に取り入れていたのです。日本の皆さんも、彼の巧みな技術や正確性、そして遊び心に魅了されるでしょう。
ーーヘンリ・ヤコブスは、母国オランダではどのようなアーティストだと認識されているのですか?
最初に評価されたのは、2003年に始めたジャーナルドローイングです。印象に残るものを描くことを日課として続けています。アジアで複数のアーティストインレジデンシーに参加したことは、彼が自身のコンセプトに忠実であることを強調しています。
今回の展示作品は、3点とも有田との繋がりを基準に選ばれており、たしかに彼の作品には、アジアの影響があるといえます。身の回りのものからインスピレーションを得る独自のスタイルとコンセプト、そしてアーティストとしての自立性を評価されています。
ーー『WAT2019』に期待することはありますか?
ヘンリ・ヤコブスさん、そして世界から実際に来場する30名近くのアーティスト達が交流することは、とても興味深いものです。この展覧会のキュレーターである三宅敦大さんとハン・イシュさんにとって、31名のアーティストの作品をひとつの展示にまとめるのは難解な仕事だったでしょう。開幕したら、ふたりがどのような選択をし、その結果どのような展示になったのかを見ること、その選択のプロセスや理由を彼等に聞くことを楽しみにしています。

『WAT2019』は、2019年3月7日(木)〜10日(日)まで開催される。会場の東京国際フォーラムでは、全国19大学の芸術を志す学生アーティスト・キュレーターが創り上げる展覧会『Future Artists Tokyo』にも注目したい。
取材・文・撮影=塚田史香

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