岸田教団&THE明星ロケッツ・岸田が
語るツアーに込めた「本当の意味での
REBOOT」とは

岸田教団&THE明星ロケッツが打ち出した渾身の4thアルバム『REBOOT』。“再起動”という言葉と共に放たれた12曲はこれまでの岸田教団通りの図り力を持ちながら、どこか新しい一面を打ち出していた。
そして10周年を超えた彼らがこのアルバムを引っさげてのツアーを敢行する。アルバムリリースツアーとしてだけではなく、初日である2月28日川崎CLUB CITTA'は『弾幕祭/再起動 ~Re:boot and Carnival Bullet Time.』と銘打ち、原点である東方楽曲のみのスペシャルライブも行われる。アルバム制作と同じ、下手すればそれ以上に気合いを入れてツアーに向かおうとしている彼らは、このツアーで何を見せようとしているのか?その真意が知りたくてリーダーである岸田に話を聞きに行った。

――岸田教団&THE明星ロケッツのニュー・アルバムにして傑作『REBOOT』がリリースされまして……。
僕的には始まりであって、今はちょっと直したいなというところはあるんですよね。
――バンドとしてはタイトル通りあらたな局面に入った作品ですが、これはまだ始まりでしかないと。
お客さんの手に渡って、その当時ではここまでが精一杯でしたというのはあるので。本当の理想としているところのリブートからはまだまだなので頑張らないとなという。
――となると、その『REBOOT』を引っさげてのライブ・ツアーがその第一歩となるわけですが、『REBOOT』リリース控えていたころのライブとしては、シンガポールで行われた“C3AFASG”がありましたね。
AFA良かったですねー。もうライブモードに入っています。『REBOOT』後のライブとしてはAFAと、実はこっそりと“大九州東方祭”という同人イベントで出させていただいたんですけど、すごく良かったです。
――『REBOOT』の効果はすでにライブ出てきていると。
『REBOOT』の意図としては、バンド内の立ち位置を変えることによってポテンシャルを高めることなんですね。このアルバムで表に出ていること以外にも、まだ出てない部分が大量にあるんです。その見えない良さがライブでは確実に出ていると感じています。
――それはパフォーマンス面において?
パフォーマンスもそうだし。今までは各人が勝手におもいのままやっていたのがやらなくなりました(笑)。
――勝手にやらなくなった! 岸田教団を知る人には衝撃かもしれません(笑)。
今までは各々に任せておもいのままやってもらっていたんです。自分以外のことを気にしないというか、普通はどんなバンドでも同じ曲をアンサンブルで弾くとなったら、「ちょっと俺はここをこうしているんだけど、そこは揃えない?」ってっていうでしょ? それがない、ゼロ(笑)。というのをスタイルとしていた。
――ゼロですか(笑)。
例えば、誰かがジャンプするところを揃ってジャンプしないとか。むしろ揃って見えるときは奇跡です。
――偶然揃っていたと。
同じ楽曲を弾いているがゆえに同じ感覚を持ったに過ぎない。
ichigo
――もちろん以前からライブをより向上したいという意識はあったわけですよね?
そこも勝手に各々にという。お互いの領域に踏み込まないことでバンドをやれているという現実がまずそこにあるわけですよ。我の強いメンバーへ誰が言うんだと。これを突き合わせると間違いなく解散するでしょう?(笑)
――そこはノーコメントです(笑)。 ある種それぞれの領域に踏み込むことができない状況を、今回刷新しようと。
『REBOOT』をきっかけに、このままずっと代わり映えしないままで行くよりは、一度整えてみましょうと。で、一度整えようとしたら本当に解散しそうになって(笑)。
――やはり踏み込むべきではなかった。
触れちゃいけなかったんですよ、本当に。それで何度か話し合った結果、なんとかこの配置ならいけるという配置が発見されたんですよ。具体的にhayapiさんやみっちゃん、ichigoさんそれぞれのいちばんこだわるポイントを、その責任者に任命する。そうすれば、こだわりがある分、面倒くさい者を主導者にできる。
――なるほど、これまでとは逆転の発想になるわけですね。
ひとりが全部を統括していると、そこに必ず地雷があるわけですよ。この曲では自分がいちばん得意だから、それを人から指摘されたくないじゃないですか。それを率直に言って、ここはこの人がやるのが望ましいだろうって振っていくように調整しました。
――そうすることでステージ上の統率が取れていったと。
ガチガチに揃えているわけではないんですが、少なくともこの楽曲を表現するにはどうしたらいいかという話し合いのテーブルにつくことができたんですよ(笑)。
――これまではそうした話し合いの場につくことすらなかったわけですか!
はい、全員の曲に対する解釈がバラバラであることを防ぐためのテーブルに、全員をつかせることに初めて成功しました(笑)。 テーブルにつくことによって私はこう思うって一回言うことができるようになったんですよ。もちろん、最終決定権が個人に残っていることは変わりないんですけど。造反することは簡単なんです。そこまでの強い強制力を持っていないので。でも話し合いのテーブルについて、そんなことも考えていたんだって思うことは大きいじゃないですか。
――なるほど。
もちろん単純に気持ち良かったところは個人の能力に起因することが多くて、究極でいうとみっちゃんがドラムを叩けば誰でも気持ちよくなるよねっていうのがある。そういう部分はライブのやり方は関係なくて、ただの個人技なので(笑)。 本来掛け算とかケミストリーというのはないんですよ、このバンドには。
――純粋な足し算であると。
足し算です! これはバンド結成時にある程度わかっていたし、このバンドのコンセプトそのものです。バンドはケミストリーや掛け算であるというものに僕は反旗を翻したわけですよ。でかいものを足し算するのと、小さいものを掛け算するのは一緒なんですよ。3✕3✕3✕3は確かに大きい数字になりますよ。でも100+100+100+100のほうが大きいじゃないですか(笑)
――たしかに!(笑)
だってバンドを掛け算で作って大きい数字を出す確率なんて数%ぐらいじゃないですか? でも足し算は計算できますから。
――世に言うケミストリーは計算して作られるものじゃないですしね。
そう、奇跡なんですよ。でもその奇跡を待つために自分の貴重な人生を浪費するわけにはいかない(笑)
岸田
――そこは個々の能力に頼るような、大きな足し算をすることが岸田教団本来のコンセプトであったわけですね。
本来の発想と反するんですけど、それを今回話し合って今まで足し算だったものを、限定的に掛け算にならんものかと。場所場所によって100✕100+100✕100みたいな。10年もやっていれば足し算のネタは尽きていくわけですよ。
――足し切ったということですよね。そこに掛け算を用いたのが『REBOOT』であったと。
そうですね。まず『REBOOT』をやろうという発想を持ったのは2年前ぐらいなんですよ。本当は10周年の時にやりたかった。でも結果的に話し合いのテーブルにつくまでに2年かかった(笑)
――そうした結果、アルバムとしてもリブートできた作品が完成しました。
ただバンドとしてリブートするんだったらここまで楽曲を変える必要はなかったんですけどね。リブートっていうんだからちょっとは革新的なことをしないとって思っちゃったんです。本質的にはやりたいことはそこじゃなかったんですよね。
――ああ、本来的なリブートとはまた意味合いが違いますよね。
今回話し合いをして思った以上に内実的にはリブートできたので、曲が変わらないほうがわかりやすかったのかなと、今となっては思います。僕らとしても自分たちのことを舐めていたなというがちょっとあって(笑)
――もしかしたらそれは、ライブを見るといちばんわかりやすいかもしれない。
そうなんです。だから『REBOOT』ツアーはCD以上に僕らも気合が入っている。
hayapi
――その皮切りが、2月28日のCLUB CITTA’ 公演となりますが、それが全曲東方アレンジとなります。
今話した通り、リブートした今だからこそ古い曲からやりたい。いちばん最初からやりたいんです。東方の曲と最新の曲だと、作ったのが10年ぐらい前のものだから、今の曲よりだいぶシンプルだし、楽曲的にも今と比べると若干モダンさには欠けている。でもそういう曲だからこそ、話し合って、表現としてこの曲はこういう曲だからこうしようとを詰めることによって得られる良さがある。あと演出ひとつとってもこういう演出がしたいというみんなが思っている
ことをするによって、より良くなるんじゃないかというのを、ツアーのいちばん最初にやりたかったんです。
――たしかに既存の曲こそが、ライブでの変化に気づきやすいですよね。するとチッタでは『REBOOT』の曲は……。
やらないですよ!REBOOT TOURといのは、曲のことだけではなくて、本当に変わったところはこれなんだと表現すること、その手応えは近々のライブで感じていますし、ライブは確実に良くなっています。
――ツアー初日で、岸田教団がどう変わったのかがわかると。
ファンから見てこうであってほしかったという理想の姿の半分ぐらいは含まれていると思います。前はカッコよかったのにってところが元に戻っているかもしれない。昔に戻っている部分も逆にあります。それは話し合ったことによってできたことです。
――変わったと言いますが、もちろんライブにおける岸田教団本来の魅力としては……。
変わらないでしょうね。変えようと思っても無理だと思うんです(笑)。やってもらおうにも限度がありますから。あのメンバーですよ(笑)
――解き放たれた野獣を調教することなど無理だと(笑)
でもね、ライオンたちがお手するかもっていうことがあるかもしれない。
――なるほど! バンドとしてどう進化しているか見るツアーになりますね。まずは初日の全曲東方アレンジがあり、その後はもちろん『REBOOT』を中心としたライブが始まります。リハーサルはどうですか?
まだ本当にやり始めたばっかりですけど、どうでしょうねえ。今は実際どういうふうに見えるか動画を撮って、それをみんなで逐一確認しながらここはこうしたらいいのではないかという話し合いをですね。
みっちゃん
――いやあ、岸田教団がそんな打ち合わせをしているなんて、前までは考えられなかったですね。
ちょっと前なら危ないですよ。マジの喧嘩になったことなんかいっぱいありますもん。
――これだけ岸田さんが熱っぽく話すということは、バンドのリブートそのものにそれほど手応えを感じているのかなと。
それぐらい、今はライブを観てほしいって強く思うんですよね。単純にライブ・ツアーとして今までより高いクオリティーのライブをやりたいと思うのがまずあります。クオリティーとしては随分上がっていると思いますし、AFAとかですでに上がっているのを実感していますし。それこそAFAはお客さんの反応としても違いました。
――慣れない海外でそれが実感できるのは大きいですよね。機材は持ち込みではなく現地のものですか?
ある程度はレンタルで。でもそれもあまり気にならないぐらい良かったです。『REBOOT』を作っているときにこれならライブももっと発展していけるんじゃないかと思って、じゃあと話し合った結果がAFAなので。
――ツアーの追加公演で台湾公演も決まっていますし、海外と岸田教団の相性がいいのもあるかもしれないですね。
意外と合うんですよ。評判がいいかどうかわからないですけど、呼ばれます。アニメと同人で、ひと粒で二度おいしいからですかね(笑)
――しかし今回、岸田さんにこうやって話を聞いて思ったのは、つくづく話合いって大事なんだなと(笑)
以前から全員がそう思っていたことだったんだけど、お互いの人間性に踏み込めなかったんですよね。仲が悪いわけじゃないんですけどねえ。嫌いじゃないんですよ。
――だからこそバンドとして人間性ではなく機能性を追求してきた末に、今こうしてお互いがコミュニケーションをとることでバンドのあらたな姿が見えてきているわけですよね。
今は、人間らしさはだいぶ出てきていると思います。ただ、その人間性の出方も、もっと上手な出し方はあると思うんですよね。どこで誰の人間性を出していくか、それでまだまだ変わっていくと思います。そう言えばAFAでおそらく初めてみんなで打ち上げしましたからね。
――えっ、本当ですか?
僕は基本打ち上げにあまり出ないことが多いですし、ライブ終わってもメンバーそれぞれで打ち上げしてましたから(笑)。 そう考えると変わりましたよ。
――うーん、だんだん岸田教団が真っ当なバンドに変わってきていますね。
バンドらしいバンドについになってきたと(笑)。変わったといってもいい部分もあれ悪い部分もあるし、そこもお客さんの反応を見て変えていくこともあるから、ぜひ来ていただいて意見を出してください。ライブをやってみんなの反応を見てもわかるし、あといいか悪いか言っていただければよしなにやるので。ただ詳細な感想はいらない(笑)
――長文はNGと(笑)。 リブートした岸田教団のステージ、楽しみにしています!
とにかく頑張りますのでよろしくお願いします。
インタビュー・文:澄川龍一

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