L→R 小川真司 (Gu&Cho)、森 良太(Vo&Gu)、白山治輝(Ba&Cho)、田中駿汰(Dr&Cho)

L→R 小川真司 (Gu&Cho)、森 良太(Vo&Gu)、白山治輝(Ba&Cho)、田中駿汰(Dr&Cho)

【Brian the Sun インタビュー】
諦観の向こうに見出した
原点回帰と新たな覚悟

今のバンドっぽくない感じが
どの曲にもある

そういう歌詞ももちろんいいのですが、やはりそうじゃない、さっき田中さんが言ったように素の森さんが感じられる歌詞のほうが個人的には好きかな(笑)。結構赤裸々に書きました?

うーん、頭に浮かんだことを、誰に遠慮することなく書いていますね。
白山
自分だけの話でもないし、人のこともあるし、いろいろあるからね。
小川
赤裸々というよりは剥き出し感がありますね、今回は。
白山
作品を通して、そう思っていただいたほうがいいと思います。レコーディングも今回初めて1クールで録ったんですよ。
これまでアルバムは何回かに分けて録ってたんですけど。
白山
3カ月ぐらいかけてたんですけど、今回は2日間でベーシックを全曲録って、そのまま合宿に入って、10日間でバーって録り切ったんです。だから、テンポも違ういろいろな曲が入っているんですけど、温度感が一定に保たれている。それは一回で録ったことが大きかった。そういう意味でも統一感が出ていると思います。

今回、なぜそういう録り方をしたんですか?

単純に時間がなかったからです(笑)。
小川
方向性が定まるのが後ろのほうだったからな。

方向性っていうのは?

白山
前回みたいに、いろいろな音を入れながらポップなアルバムを作るのか、バンド感が強いものを作るのか。そういう話し合いを12月にした時、“4人だけの音で作りたい”という話が良太からあって、4人でスタジオにいっぱい入って、そこで曲もガンガン作っていきたいってことになったんです。去年11月、12月ってそんなにライブもなかったので、めちゃめちゃスタジオに入って、いっぱい曲を作って、曲ができたらみっちりプリプロして、レコーディングに臨むみたいなやりかたでしたね。だから、12月はほぼ毎日顔を合わせてましたね。その後、合宿したので、そこでもずっと一緒で。
白山
合宿して良かったのは、毎日、レコーディングが終わると晩酌しながら、その日に録ったものを全員で聴けたんですよ。同じスピーカーで聴きながら思ったことを話せたのが良かった。各々が自宅の環境で聴くと印象が違ったりするんですよ。でも、同じ音で聴きながら、“じゃあ、明日はこうしよう”ってその場で決めて、次の日にそれをやるっていうのを続けられたから。

バンドサウンドという意味では、90年代のグランジ/オルタナ感がすごく出ていますよね。

自然に出ましたね、ルーツなので。ルーツがそのまま出ました。それこそ何も考えずに好きなことをやったら、こうなったっていう(笑)。今までは“これは分かりにくいな”っていうのが自分の中にあって、ボツにしたこともあったんですけど、今回は“別に、分かりやすさを求めないしな”ってやっていったら結構分かりやすくなって。
白山
それはプロデューサーの江口 亮さんの力によるところもあると思います。広がるようにしてくれたから。アレンジを変えるわけではないんですけど、ほんと1個だけ上げてくれるというか。
“ここブレイクしてみよう”ってぐらいのことなんですけど、急に変わってくるんですよね、曲の印象が。もう一段、加速できる。勉強になりましたね。
白山
料理をしながら、最後に隠し味をポンと入れてくれるみたいな。“めちゃ美味くなったやん! これ、どういうこと!?”みたいな。それぐらいのことなんですけど。
小川
それが効いてくる。

90年代のグランジは全員通ってきているのですか?

治輝と僕は。駿汰は日本のポップスが好きだし、真司はもっとアメリカンというか、Green Dayとかの重たさはないアメリカンロックだから。
白山
良太と僕の濃い部分って、00年代のUKロックだと思ってたんですけど。

「夢の国」のギターサウンドとか、歌詞のテーマとか、もろにグランジで。

ベースとドラムの音もNirvanaを参考にして。
小川
この曲、“ギターを上手く弾くな”って言われて、めっちゃ困った(笑)。“もっと事故を起こせ”って。
白山
それが90年代のグランジの感じだよね。
小川
俺は通ってないから。普通にちゃんと弾いたら、そういう感じは出えへんやん。

じゃあ、小川さんは自分のバックグランドにないものに挑戦したわけですね。

小川
新たにチャレンジしたことが多かったですね。でも、それを経て“こうやったらこういう音が出るんや”とか、“こういうふうに聴こえるんや”とか、江口さんにも教えてもらいながら表現方法は広がったと思います。

そういう意味では、バンドの演奏もアルバムの聴きどころですね。

白山
今回、ベーシックは大きな部屋で録ったので、4人で“せーの”で鳴らしたんですよ。その中でも「グリーンアルバム」は途中でテンポが変わるんですけど、クリックを聴かずに全員でライヴしているみたいに顔を見合わせながら演奏して、そのオーケーテイクの集中力はすごかったですね。
ちょっとゾーン入ってたよな。僕は「ファストワルツ」が好きですね。こういう曲、今の人らはやらないだろうし。でも、全曲そうなんですけどね。今のバンドっぽくない感じがどの曲にもある。全曲好きなんですけど。

「ファストワルツ」はすごく面白い曲ですけど、どうやったらこうなるのですか?(笑)

とにかくややこしいこととか、頑張らなきゃできんこととかやりたくて作ったんですけど、思っていた以上に頑張らなきゃいけなくなってしまいました(笑)。だから、大変なんですけど、この曲がちゃんと演奏できてたら今度のツアーはいいツアーになると思います。

田中さんのドラムの手数が…。

白山
これでも、ちょっと減らしたよね。
小川
“物理的に無理だ!って言ってたもんな(笑)。
田中
今回、ドラムテックさんに入ってもらったので、わりとサウンドのことも相談できて、中でも「忘れていたこと」と「夢の国」は今まで自分の中になかった…自分やったらこういう音にしてたやろなっていうのじゃない音を提示してもらって、“うわ、カッコ良い! この音でも合うんや”っていう気付きがありました。

「MINT」と「MILK」も面白い曲ですね。

「MINT」はスティービーなワンダー感が出ていますね(笑)。

その2曲のギターは小川さんのもともとの持ち味が生かされているんじゃないでしょうか?

白山
「MINT」はそうなんちゃう?
小川
どうやろ? 「MILK」は良太がメインのフレーズを持ってきてくれて、それを一番カッコ良くしたいという感じでは弾いてます。「MINT」はフレーズに表情が出せるように頑張って弾かなきゃってずっと思ってましたね。ミドルテンポのこういう曲って僕ら少ないんで、その中でどういい音を鳴らせるんだろって。
「MINT」の演奏は跳ねが大事なんで苦戦してましたね。「MILK」のデモはもっとヒップホップだったんですよ。
小川
ゴリゴリに打ち込んだ感じだったからな。ドラムも打ち込みでやろうって初めは言ってたもんな。
でも、いい感じのドラムが録れたんで、生がいいなってなりました。チューニング次第では音色にすごく幅が出るから、別に打ち込まなくても雰囲気が出るよなって。

あと、さっき話しそびれたのですが、「死」の歌詞もいいですね。

嬉しいです。その曲、めっちゃ好きなんです。タイトルがどぎついですけど、タイトル込みってところもあるんで。“タイトル、変えたら?”って言われたんですけど、“タイトル込みなんです”“だよね”って(笑)。
白山
先行シングルだった「Lonely Go!」のインストアライヴの時、急に“アルバムから新曲1曲やります。聴いてください。「死」です”ってやったら、みんなびっくりしてたよな(笑)。

確かに(笑)。でも、曲を聴くと“死”というタイトルがどぎつく感じられない。

返ってゆくんだな、人は…ってことを思いながら書いた曲ですね。去年、じいちゃんが亡くなって、その時に書いたんです。“帰らなあかんわ”って言いながら、翌日、じいちゃんは亡くなったんですけど、“どこ帰るん? ここ家やで”って言ったら、“違う。あそこの家に帰るんや”って言うから、なるほどなって。“返ってゆくんやな、人は。ふーん”と思いながら書きました。

帰る場所があると思えると、ちょっと安心できるというか。さて、“MEME”というちょっと不思議なタイトルなのですが、どんなところから付けたのでしょうか?

遺伝子学者の人が作った造語なんですけど、文化とか情報とかが人を介して自然淘汰されたり、適応していったりする働きが遺伝子の働きに似ているっていう。遺伝子も環境に適応したものが残って、適応していないものは淘汰されていく。それを分かりやすく説明するために作った言葉だそうなんですよ。音楽も文化だし、情報だし、音楽自体も淘汰されたり、適応したりしながら進化していくわけじゃないですか。

なるほど。

世の中は弱肉強食じゃないんですよ。強い奴が勝つんじゃなくて、その環境に適応した奴が強いんですよ、結果的に。環境なんて自分らで変えられるものじゃない。今、僕らがいるこの場所で自分たちがどれだけ適応しているかって言ったら、一番適応しているとは言えないかもしれない。けど、多様性って何のためにあるかって言うと、環境が変わった時のために生き残る可能性が増えることが大事だからじゃないですか。それを考えると、今、こんだけ世の中の変動が激しい中で、大きなものに飲まれるかたちで音楽をやっていたところで、一生繁栄し続けるものではないんだから、そんなところで生存競争を続けるくらいなら、自分らの足場を固めていくほうが何も考えずに楽しめるし、自分たちにとっては幸せなんじゃないかって。

進化っていうのは、本当に偶然起こるものらしいですね。

だから、何があるか分からない。そういう意味で、こうすれば生き残れるかもしれないって考えは捨てたんですよ。それで無理やったら無理やし、潔く淘汰されるしかない。でもまぁ、少なくともここまで僕たちが残ってこられたのは、強いからだし、共鳴する人は絶対にいるってことだから、自分らのことを他と比べること自体がナンセンスというか、犬が鳥を見て“いいな”って思うようなことかもしれない。そういう意味で、今、僕らは地に足が着いていますね。

“MEME”というタイトルは、バンドのそんな心境を表しているわけですね。最後に3月16日から始まるリリースツアーの意気込みを聞かせてください。

目下、準備中なんですけど、最近、ライヴも手応えがあるんですよ。それも勢いまかせではなくて、しっかり音楽をやっている実感がめちゃめちゃあるから全然怖くないし、しっかりとやることをやろうと思っているので、いいライヴになるやろなって。4人がちゃんと鳴らしたい音を鳴らせるライヴをしていこうと思ってます。

取材:山口智男

アルバム『MEME』2019年3月13日発売 EPIC Records Japan
    • 【DVD付初回限定盤】
    • ESCL-5188~9 ¥3,600(税抜)
    • ※紙ジャケ仕様
    •  
    • 【通常盤】
    • ESCL-5190 ¥2,700(税抜)

『Brian the Sun TOUR 2019 「Lonely Go!」』

3/16(土) 京都・KYOTO MUSE
3/21(木) 福岡・Early Believers
3/24(日) 愛知・名古屋SPADE BOX
3/27(水) 宮城・仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
3/30(土) 大阪・umeda TRAD
4/07(日) 北海道・札幌BESSIE HALL
4/13(土) 東京・渋谷CLUB QUATTRO

Brian the Sun プロフィール

ブライアン・ザ・サン:2007年、大阪で結成。『閃光ライオット2008』で準グランプリを獲得。メンバーチェンジを経て11年4月より現在の編成となる。コンスタントな制作、ライヴ活動で全国に名を広め、16年6月にテレビアニメ『僕のヒーローアカデミア』のエンディングテーマとなったシングル「HEROES」でメジャーデビュー。19年3月にはメジャー3作目となるアルバム『MEME』をリリースし、同年6月にはアメリカの3大アニメ・コンベンションのひとつである『A-kon2019』へ出演、ヘッドライナーとして約3000人を動員して初のアメリカ公演を成功させた。Brian the Sun オフィシャルHP

「Lonely Go!」MV

OKMusic編集部

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