【レポート】<こころの歌人たち>阿
木燿子特集で、郷ひろみ、由紀さおり
、ジュディ・オング、林部智史らの熱
唱と珠玉トーク

1月20日、武蔵野市民会館 大ホール で、日本音楽著作権協会が主催する<第2回 こころの歌人たち>が開催された。<こころの歌人たち>は、日本の音楽史に大きな足跡を残した作家達に焦点をあてたコンサートシリーズ<昭和の歌人たち>(2006年~2018年)の続編となるコンサート。第2回となる今回は、作詞家でプロデューサーの阿木子をクローズアップ。郷ひろみ宇崎竜童ジュディ・オングシシド・カフカ、林部智史、藤あや子三浦祐太朗Ray Yamadaといった豪華出演者たちが、“栗田信生とJ’sバンド”の演奏で、阿木燿子作品を歌い上げる。司会は、由紀さおり中川晃教のコンビが務めた。
由紀さおりが、「トップバッターは郷ひろみさん」と紹介すると、大きな歓声が上がり、ステージ中央のせりから上がってくる郷に、一層大きな歓声と拍手が贈られた。郷は代表曲の1つ「ハリウッド・スキャンダル」(1978年 作曲:都倉俊一)を伸びのある声で歌い上げた。
郷ひろみ


ここで、出演者達と阿木燿子が登場し、トークタイムとなる。郷は阿木の詞に、「女性ならではの目線で見ていく物の見方っていうのが本当に素晴らしいと思って歌っています」と語った。ジュディ・オングに提供した詞について、阿木が「ジュディさんは比較的年が私と近いので、女の本音で書かせていただきました」と振り返ると、ジュディ・オングは「魅せられて」(1979年 作曲:筒美京平)の歌詞について、「『好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る』……、どうしようかな?って最初思ったんですけど、阿木さんが『いいのよ、しゃあしゃあと歌えば』って仰って(笑)、そのようにさせていただきました」と明かした。由紀が「私も今そこをお話ししていただこうと思って。こういう情景描写の詞は、ジュディさんの歌が最初のような気がする」と続けると、ジュディは「ちょうど、自立する女性が話題になっていた時代ですね。女性が自分の本音を言うっていうか」、阿木は「男性からすごい不評だったんです」と返答。ジュディの「ガッツ石松さんに怒られたんです(笑)」という話にも笑いが起こった。「魅せられて」はオリコンチャートの1位を9周連続で獲得、123.5万枚の売上げを記録した。『第21回日本レコード大賞』大賞、『第12回日本作詩大賞』大賞を受賞。歌謡界の歴史に残る傑作をジュディ・オングが煌びやかな衣装で披露し、観客を魅了した。
ジュディ・オング


続いて、(「カリフォルニア・コネクション」(1979年 歌:水谷豊 作曲:平尾昌晃)を中川晃教が、「夢一夜」(1978年 歌:南こうせつ 作曲:南こうせつ)を林部智史が、「DESIRE -情熱-」(1986年 歌:中森明菜 曲:鈴木キサブロー)をシシド・カフカが歌唱。阿木のヒットナンバーが続き、客席は大いに沸いた。
中川晃教
ここで、阿木の作詞家デビューのきっかけとなった 「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(1975年 歌:ダウンタウン・ブギウギ・バンド 作曲:宇崎竜童)についてのトークとなった。阿木は、作詞家になることは「全く人生の選択肢になかったんです。たまたま主人がバンドを作ってLPを出せるかもしれないという時に、曲が足りないから何か書いて、と言われまして」と振り返ると、阿木の夫・宇崎竜童が登場。宇崎は「新聞の間に挟まっている広告が当時は両面印刷ではなくて裏が白かったんですけど、そこに鉛筆で書いて、こたつの上に置いてあったんです。ほとんど台詞ですよね。どうやってもメロディーがあてられない。乗っけると『スーダラ節』になってしまうんです(笑)」と語った。「これがビッグヒットになって、この後、作詞家としてやっていこうとは?」という由紀の質問への、「それも本当になくって、気が付いたら、肩書に“作詞家”とついていたという感じです」という阿木の返答にも驚きだ。“アンタ あの娘のなんなのさ”というフレーズが当時、流行語にもなった「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」と、宇崎&阿木コンビによる「想い出ぼろぼろ」(1976年 歌:内藤やす子)を宇崎が大人の男の格好良さを滲みだして歌い上げた。
宇崎竜童


ここからは、山口百恵特集のコーナー。阿木は山口百恵にはアルバムの曲も入れると全78曲を提供している。きっかけは、山口百恵が宇崎と阿木を指名したことだそうで、宇崎は、「当時、アイドルが作家を指名するという時代ではないですから、すごいですよね」と振り返った。そのヒット曲の中から、「横須賀ストーリー」(1976年)をシシド・カフカがドラムを演奏しながら歌い、「プレイバックPart2」(1978年)を藤あや子が、「夢先案内人」(1977年)と「しなやかに歌って」(1979年)を由紀さおりが、「曼珠沙華」(1979年)を藤あや子が歌うという貴重なステージとなった。
シシド・カフカ
藤あや子
由紀さおり


阿木がプロデュースを、宇崎が音楽監督を務める舞台「Ay曽根崎心中」の一幕が演じられたのもこのコンサートならでは。「Ay曽根崎心中」は、阿木が大好きなフラメンコと「曽根崎心中」を組み合わせ、18年続けているという。この日は、フラメンコ舞踏家の鍵田真由美と佐藤浩希の踊りと共に、三浦祐太朗とRay Yamadaの歌唱で、「Ay曽根崎心中」の挿入歌の「道行華」と「菩提樹」が特別に披露された。ちなみに、「菩提樹」は、三浦祐太朗の母・山口百恵の「さよならの向こう側」(1980年 作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童)のアンサーソングとして作られたという。続いて、阿木が近年、主宰して力を注いでいるコーラスグループ・ひふみレインボーも登場し、「想い出がいっぱい」(1983年 作曲:鈴木キサブロー)を美しいコーラスワークで歌い上げた。阿木の作る世界のバリエーションの広さに圧倒させられる。
三浦祐太朗
三浦祐太朗、Ray Yamada
Ray Yamada
ひふみレインボー


コンサート終盤は、林部智史が2018年6月にリリースした4枚目のシングル「恋衣」(作詞:阿木燿子 作曲:来生たかお)を、「How many いい顔」(1980年 作曲:網倉一也)を郷ひろみが、「麗華の夢」(1980年 作曲:筒美京平)をジュディ・オングが歌い、会場もヒートアップ。最後は、歌手のラストソングをイメージ付けた曲の中から、山口百恵の「さよならの向う側」を、宇崎竜童と三浦祐太朗という奇跡のコンビが歌い、最後はキャンディーズの「微笑みがえし」を出演者皆で合唱し、締めくくった。阿木の「皆様に歌っていただいて、歌は生きるんだなと、もう、胸がいっぱいです」、宇崎の「あと200曲位は書いてほしい」という言葉も印象的である。阿木のミラクルワールドが堪能できる、贅沢なコンサートとなった。
林部智史
三浦祐太朗、宇崎竜童
このコンサートの模様は、3月17日(日)NHK BSプレミアムにて、19時30分より放送予定。なお、<こころの歌人たち>の観覧は応募招待制で、日本音楽著作権協会のホームページにて、不定期で告知している。

<こころの歌人たち 〜第2回 阿木燿子
〜>

2019年3月1日(金) @東京・武蔵野市民会館 大ホール 
[ セットリスト ]
01. 「ハリウッド・スキャンダル」郷ひろみ
02. 「魅せられて」ジュディ・オング
03. 「カリフォルニア・コネクション」中川晃教
04. 「夢一夜」林部智史
05. 「DESIRE -情熱-」シシド・カフカ
06. 「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」宇崎竜童
07. 「想い出ぼろぼろ」宇崎竜童
08. 「横須賀ストーリー」シシド・カフカ
09. 「プレイバックPart2」藤あや子
10. 「夢先案内人」由紀さおり
11. 「しなやかに歌って」由紀さおり
12. 「曼珠沙華」藤あや子
13. 「道行華」三浦祐太朗、Ray Yamada
14. 「菩提樹」三浦祐太朗、Ray Yamada
15. 「想い出がいっぱい」ひふみレインボー
16. 「恋衣」林部智史
17. 「How many いい顔」郷ひろみ
18. 「麗華の夢」ジュディ・オング
19. 「さよならの向う側」宇崎竜童、三浦祐太朗
20. 「微笑がえし」郷ひろみ、シシド・カフカ、ジュディ・オング、中川晃教、林部智史、藤あや子、三浦祐太朗、由紀さおり、Ray Yamada

■阿木燿子(作詞家・プロデューサー)
神奈川県横浜市出身。宇崎竜童と結婚後、宇崎の率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドに書いた「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家デビュー。その後、宇崎とのコンビで、「横須賀ストーリー」、「プレイバックPart2」をはじめ、山口百恵の曲を多く手掛け、大ヒットを連発。沢山のアーティストに詞を提供し、膨大な数のヒットを飛ばす。1979年の「魅せられて」と1986年の「DESIRE -情熱-」で『日本レコード大賞』の大賞を受賞。女優、小説家、エッセイストとしても活躍する。近年は、近松門左衛門の曽根崎心中とフラメンコを融合させた作品「Ay曽根崎心中」のプロデュースや、コーラスグループ・ひふみレインボーの主宰などの活動を行っている。2006年に紫綬褒章を、2018年に旭日小綬章を受章。

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