中川晃教×加藤和樹インタビュー 仲
の良いミュージカル界のスターたちが
、新作ミュージカル『怪人と探偵』へ
の意気込みを語る

2019年秋、新しいオリジナルミュージカルが誕生する。9月14日(土)から29日(日)にかけて、KAAT神奈川芸術劇場で新作ミュージカル『怪人と探偵』の上演が決定した。森雪之丞が江戸川乱歩の小説を原案にしたオリジナルストーリーを書き下ろし、白井晃が演出を手掛ける。テーマ音楽を東京スカパラダイスオーケストラ、作曲はWEAVER杉本雄治が担当する。
注目の配役だが、大怪盗・怪人二十面相を中川晃教、名探偵・明智小五郎を加藤和樹が演じることになった。ミュージカル『フランケンシュタイン』で共演して以来とても仲が良いというミュージカル界の二人のスターが、どんな世界を作り出してくれるのか。森雪之丞が立ち合い、終始笑いが起こる和やかな雰囲気の中で取材が行われ、作品に対する意気込みを聞いた。
ーーミュージカル『フランケンシュタイン』以来、敵対する役で再度共演が決まりました。お気持ちはいかがですか?
加藤:僕としては光栄のきわみです。またアッキー(中川晃教)さんとやらせていただけるのは非常に刺激になりますし、自分を高めてくれる存在ですから。
中川:(森)雪之丞さんや白井晃さんが僕たち二人をどういうふうに導いてくださるのか。そういうことも含めて一緒にやれるのが楽しみだしうれしいです。僕のほうが年齢的には年上ですが、普段の和樹マン、和樹くんは……。
加藤:そこは和樹マンでいいです(笑)。
中川:(笑)和樹マンは、舞台に立っている時とまた違う顔を持っています。そのニュートラルな彼にすごく愛着があって、そういうプライベートも含めてこの作品に生かせる最高の相手役ですし、タッグを組むことができるのがうれしいです。
中川晃教
ーーはたから見ていても、中川さんが加藤さんのことをすごく好きなんだなと感じます。
中川:ほんと? 出てます? 僕たちの共演って本当に『フランケンシュタイン』だけ?
加藤:そうです。『フランケンシュタイン』の時、僕はガッチガチでしたからね。アッキーさんは大先輩で、憧れの存在でもありましたし。今こうやってボケとツッコミみたいなことをやっていますけど(一同爆笑)、そうできていることが僕としては奇跡的で、ありがたいことだと思います。
ーー中川さんは日本のオリジナルミュージカルを作りたいとおっしゃっていたと思います。そういう意味で今回の作品に対する思い入れもひとしおなのでは?
中川:本当にそうですよね。原案が江戸川乱歩、そこに着目した森雪乃丞さん。実は森雪乃丞さんとは過去にオリジナルミュージカル『SONG WRITERS』で一緒にやらせていただきました。その時に雪乃丞さんから「実はこんな企画をあたためているんだ」と聞いていた作品がこの『怪人と探偵』なんです。
話を聞いて面白そうだなと思ったんですけど、東京スカパラダイスオーケストラがこの作品の音楽に関わるということが構想の段階で決まっていました。そして演出が白井晃さんということで、「僕、探偵ですか? 怪人ですか?」と聞いたら「怪人」と言われ、「じゃあ、探偵は誰ですか?」となった時に和樹マンの名前があったんです。
初めてご一緒する白井晃さん、そして雪乃丞さんが作り上げた、江戸川乱歩のどこか人間の奥底にある欲望や影の部分、淫らに崩れていく様、でもそこに光が差し込む美しさがある世界観を原案にしたオリジナルミュージカルを白井晃さんがどう表現するのか。ポップな要素があるけれどちょっと面白い音楽を作るWEAVERの杉本雄治さんも含めて、それぞれがピタッとハマった時に、ワクワクドキドキするものが、お客様に届けられるんじゃないかなと期待の中にいます。
ーー加藤さんは、ミュージカルで日本人役は珍しいのではないですか?
加藤:そうですね。僕も今回はオリジナル作品というところが着目するところだと思います。海外ミュージカルが多い中で、日本を題材とするオリジナルのミュージカルを経験するということは、今後大きなものになってくるでしょうし、白井さん演出で雪乃丞さんが脚本・作詞ですから。僕は白井さんとは何度もやらせていただいていますけれど、ミュージカルに関しては初めてなので、白井さんがどういう世界を描くのだろうという楽しみは非常にあります。
(左から)加藤和樹、中川晃教
ーー中川さんが怪人役で加藤さんが探偵とのことですが、お互いの演技についてどういうところが楽しみですか?
加藤:芝居の中では歌がメインになるので、僕はアッキーさんの歌に惚れているから楽しみですね。芝居の作り方もアッキーさんは非常に考えていらっしゃるし、時にはそれを凌駕する表現を『フランケンシュタイン』でご一緒して感じたので、今回どんな姿が見られるんだろうと非常に楽しみにしています。
中川:今、急に『フランケンシュタイン』のラストシーンがパッと浮かんで、思わずプッと笑っちゃったんだけど、本当に人間じゃない役、上手だよね。(一同爆笑)
幕開きから最後のラストシーンまで一緒に走っているからこそ分かち合える熱量ってあると思うんですよ。そこが和樹マンの場合……(加藤を見て)なんかごめんね、この呼び方恥ずかしくなってきた(笑)。尊敬してるよ、ちゃんと。
僕たちはそれぞれ自分たちの持ち味とか経験してきたものがあるんだけれど、一緒になって遊んだりふざけたり、悩んでいる内容は違うかもしれないけど悩んだり、稽古も含めて作品に使っていく時間の感じ方が似ている気がします。
『フランケンシュタイン』で共演してから2年間でお互いがどんなことをやってきたのか、もちろん歳も重ねてきていますからね。白井さんが何を求めてくるか分からないけれど、人間味ある芝居をお見せするスタートラインに立った時に、一緒に芝居を描いていけるパートナーが和樹ですね。
加藤:光栄です。
加藤和樹
中川:僕は自分が思っていることを言う人と言わない人がいるんですよ。和樹マンの場合は「言ってもいいかな」と思わせてくれる人でもあるので、これから与えられる課題に向かって高め合っていけるということも含めて……好きです!(笑)
ーー今回のお話の舞台は昭和30年代です。昭和感を出すために意識しようと思っていることはありますか?
加藤:(自分の顔を指して)感じません?(一同爆笑)
中川:結構僕たち、昭和っぽいって言われない? 現場の若い子たち(平成生まれが)多いでしょ?
加藤:僕なんかずっと「昭和顔」って言われてきていますから。「今どきじゃないね」って。
中川:意識せずとも昭和感は出ていると思いますけど、でも今回の作品はもっとレトロな雰囲気がある昭和ですもんね。
加藤:端々の言葉の使い方だったり、人との関係性だったり、今の先輩後輩、上司部下と違うと思いますので、人間関係で時代感が見せられればと思いますね。
中川:街も景色も昭和の色ってあると思うんですよ。例えば銀座も今の景色と昭和30年代とは、ネオンの感じや建物の質感、活気も違う。雪乃丞さんの脚本を読んでいると、単語も含めて「おっ」って思えるところがあって、そういう一つひとつを誇張するんじゃなくて、自然に自分の中に入ってくるようになれば醸し出せるのかなと思います。
和樹マンが演じる明智小五郎がフッと影の中でたたずんでいる姿と彼の輪郭が見えただけで昭和っぽく見えるかもしれないですよね。そういう色と空気、ちょっと匂いさえするような、そういうものをみんなで作れたらいいなと。それはこの作品のオリジナリティーを出すために大切な気がします。
(左から)加藤和樹、中川晃教
ーー今日は森雪乃丞さんもいらしていますが、脚本を読んだ感想をお聞かせください。
加藤:アッキーさんが色合いや光と影、陰と陽は誰もが持っているっておっしゃいましたけど、何が正義なのか何が真実なのかが曖昧で、自分の中でも「えっ?」って思うことがたくさんあった脚本でした。面白くて読み進んでいくし、笑えるポイントもあるんですけれど、最終的に「そこに落とし込むんだ」という意外性があって、人の気持ちは表裏一体で難しいと感じました。
ーーストーリーとしては勧善懲悪ではないですけれども、演劇を見慣れない人が観ても分かりやすいですね。
加藤:分かりやすいと思いますよ。ミュージカルとしてのエンターテインメントの要素はなくさずお芝居を作っていきたいと白井さんがおっしゃっていました。その中で芯となるメイン2人の奥底にある本音や本質が見え隠れすれば、より面白いかなと思います。
中川:演出・音楽という視点、そして雪乃丞さんが江戸川乱歩の世界感のどこを切り取っているのかということ、先ほど言った昭和ということもそうですし、日本のオリジナルというところもそうだと思うんですけれど、いろいろなファクターがこの作品をどんな色にしてくれるんだろうって思えるような脚本でした。
『怪人と探偵』というタイトルで、描かれているものは明確だけれど、感じ方によってはいくらでも広がっていくような作品です。いくつもの隠し扉があって答えは一つではない展開が見えてくるような……。とても芸術性を感じる部分もあって、耽美な世界観もそうだし、白井晃さんが演出家としていらっしゃる部分もワクワクさせられるし、どれ一つとっても見逃せないよといいたくなるような思いになります。
ーー作品の見どころとファンの方へメッセージをお願いします。
加藤:演出の白井さんとは何度かご一緒して信頼していますし、また違う自分にしてもらえるのではないかという期待もあります。今回は変装やマジックじみたことだったり、見た目にも驚くような演出をきっと盛り込んでくると思いますので、新しいミュージカルの幕開けとなる『怪人と探偵』にご期待ください。
中川:2人で目の前に並んでいるものをどう取捨選択していくか、これは僕たちが与えてもらえた最高の環境だと思えるんです。そういう環境をオリジナルの作品で与えてもらえるというのはすごくありがたいことだし、そこで何ができるのか、観る側にどう伝わっていくのかはとてもライブに近い感覚だと思います。
やっぱりミュージカルって面白いとか、何を考えてこの作品を作ろうと思ったんだろうとか、あの世界に触れてみたいとか、何だろうこの懐かしさ、でも新しいとか、ミュージカルだからこそ味わってもらえるような世界にいざなう船頭のような役割が僕たちにあるのかなって思います。
気負うことなくいろいろなものを取捨選択しながら、お客様にどんな感動と喜びを届けられるのか。2人で力を合わせて、携わるカンパニーの皆さんと最高の作品に仕上がるように頑張っていきたいと思います。ぜひ応援をよろしくお願いいたします。
(左から)加藤和樹、中川晃教
取材・文=秋乃 麻桔 撮影=岩間 辰徳

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