9mm Parabellum Bullet「みんなのテ
ーマソングにしてください」というつ
もりでこの曲を書きました――結成1
5周年に放つ真新しく力強いメッセー
ジの弾丸

今年で結成15周年を迎える9mm Parabellum Bulletが、約2年ぶりとなるシングル「名もなきヒーロー」をリリース。バンドにとって初の“応援ソング”と謳われているこの曲は、新しい季節に新しい環境に身を置く人たちはもちろん、それぞれの立場で日々を生きているすべての名もなき戦士たちにさりげなく熱い励ましを贈る楽曲になっている。たとえば、「明るい未来じゃなくたって 投げ出すわけにはいかないだろ」、「正しい答えじゃなくたって 間違いだとは限らないんだろ」のフレーズには、もがきながらも前へ進もうとする人の背中を見守る温かさや、「頑張れ」のひとこととはまた違った奥行きがにじみ出ている。春に発売されることや15周年のアニバーサリーの最初にリリースされるというタイミング、また滝 善充(ギター)のライブへの復帰。バンドをめぐるさまざまな出来事ががっちりとかみ合い、明るく輝く未来へと向かっていける楽曲が誕生した。すがすがしく胸高鳴るこの新曲について、また4月に東京と大阪で開催されるフリーライブに関してフロントマンの菅原卓郎に話を訊いた。
――「名もなきヒーロー」は9mm Parabellum Bulletらしい音の迫力や厚みを感じる一方で、胸のすくような爽快感やこれまで感じていたものとはまた違った解放感がありました。
曲を作っている時は、もともとのアイディアを自分たちが思っている以上により良い形で届けられるようにしようということに一番集中しているんですね。なので、サウンド面で特に解放感にある感じにしようとかは特に気にしていなくて。『名もなきヒーロー』ってタイトルは、もともと滝が曲を作っている時に「これはヒーローものみたいな曲だな」というイメージがあったらしくて。
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) 撮影=森好弘
――ヒーローものと言うと?
戦隊ものとか仮面ライダーとか(笑)。
――週末のお楽しみの。
そう。なので、歌詞もそれに合わせて「ヒーロー」って言葉を入れようかなと。この曲って、最初はギターソロみたいに始まるんですけど、サビまでくると、「ああ、あのイントロのギターはサビだったのか」ってなりますよね。そのギターが鳴っている感じがすごくヒーローっぽいというか、ヒーロー感を感じるんですよ。もしかしたらそれがオープンな感じというか、解放感みたいに感じられたのかもしれませんね。だって、ひたすら暗いヒーローものってイヤですからね(笑)。
――歌詞に「来週もまた会いましょう」と出てきますね。
遊びというか、「来週も見てね」みたいな感じのことを入れたいなって。明日だけじゃなく、来週も会いましょうというのがポジティブなメッセージにできたなと思います。
--たとえば「反逆のマーチ」の「愛でも勇気でも思い出させてやるよ」という一節だったり、一聴すると突き放しているように聴こえるフレーズからも力をもらえることはあって。ただ、今回の「名もなきヒーロー」は、今言われたようにポジティブさがダイレクトに受け取れます。
「反逆のマーチ」でもまったく同じことを言っていて、Cメロで「たとえば正義のヒーローじゃなくても 闘ってるんだろ おれたちは誰でも」と書いている。同じメッセージだなとは思ったんですけど、「名もなきヒーロー」は、その数行をもっと広げて書いたような歌詞なんですね。発売が4月で季節的にも春だし、新生活で元気が出るような勇気が湧いてくるような言葉を入れたらどうかなという提案もあって。確かに、新しい環境でこれから闘いに行く人もいる。ただ、もうすでにみんな充分闘っているよねというふうにも思うんですよね。お母さんだってお父さんだって、先生でも学生でも誰だっていいんですけど、みんな闘っている。で、そういう人たちは「なんとかレンジャー」でも「なんとかライダー」でもなく、名もなきヒーローたちなわけですよね。もちろん自分もそのうちの一人だと思ってる。でも、名もなきヒーローたちにはテーマソングがないから、必要だなと思って、みんなのテーマソングにしてくださいというつもりで勝手に書きました(笑)。だから、応援ソングとは謳っていますけど、「頑張れ」って呼びかけているものではなくて。
――なるほど、みんなのテーマソングなんですね。歌詞の「守りたいものにいつも 守られているんだね」は、自分に当てはめると子供がそういう存在で、大人として守りたい存在でありながら、守られているように思います。特に響く一節でした。
聴く人によってそれぞれ変わってくるんでしょうね。9mm Parabellum Bulletのひとりとしては、ファンの存在が大きいなと思うんですね。ファンのみんなとどういう関係を作ってきたかというと、ここ数年で滝がライブステージを降りた時とか、そういうちょっとヘヴィな時でもお客さんや仲間が助けてくれたんですよね。お互いに盛り上げているところもあるし、守りたいものに自分も守られてこの場所を作っているなと思う。聴く人それぞれが置かれている状況によって、その歌詞からイメージするものも変わるだろうし、そういう言葉を入れられてよかったと思っています。
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) 撮影=森好弘
――たとえばその守りたいものが、特定の誰かではなく自分を支えてくれる物理的なものであったとしても、それがあることで自分が前を向けたり穏やかになれたりする。そういう関係性があることの温かさのようなものを感じる一節でもありました。目に見えないつながりの大切さとか。
そうですね。歌詞の中では、「頑張れ」とか「頑張ろうぜ」という言葉は使ってないけど、もちろん「頑張れ」と言いたいから応援ソングと謳っているわけですよね。たとえばものすごく落ち込んで、もしかしたら何かの間違いで生きるのを辞めちゃうかもしれないぐらいの人たちに「頑張れ」という気持ちを伝えるにはどうすればいいのかなと考えた時に、「また明日会いましょう」だったら、次の日も結果的に頑張ることができるのかなと思ったんですね。普通の応援ソングで「生きのびて会いましょう」なんて歌ったら、いくらヒーローとはいえ大げさなことを言っているなと思われるかもしれないけど、誰にとっても毎日が闘いと言えば闘いですから。そういう意味を込めています。
――ライブのMCも彷彿とさせます。「また会おう」の一言も、それは明日からまた生きのびてライブの場で会おうということですし、あの場にしかないものを思い出します。
そう。ステージ上からそう言っている気持ちももちろん込めていますし、たとえばMCで「明日また会いましょう」って言ったところで「明日は名古屋でライブだろ?」って言われたらそれまでなんだけど(笑)、気持ちとしては「明日もまた!」ということなんですよね。それを、MCじゃなく歌の中に入れられたのは自分にとってもうれしいし、良い言葉はMCで言うだけじゃなく、歌で言えばいいじゃんって気持ちですね(笑)。
――ただ、9mm Parabellum Bulletが応援ソングを歌うということにちょっとした驚きもありました。作ろうと思い立ったきっかけのようなものがあったんでしょうか?
「勇気が湧いてくるような、力になるような歌詞にしてみたら」と周りが提案してくれたことを、すんなり受け止めることができたのが大きかったなと思っていて。「応援ソングを作ろう」と意気込んで作るのはちょっと違うかなと思うし、周りの意見と自分が自然とかみ合ったことで、肩ひじを張って「応援ソングを作るんだ!」という感じでもなかったし、「応援するということは、頑張れと言わなきゃいけないのか?」とかも考えたけど、それとは違うなって。自分の中から自然に出てくる言葉じゃなきゃダメだし、いくらきれいな言葉でも、その言葉を歌う時に、「そりゃあないだろ」と自分が思っていたら誰も応援されないし、その言葉は歌えないと思うんですね。
――そうですね。
もともと音楽を聴いて励まされてきた人間だし、聴く人、好きな人にとってはどんなスタイルの音楽でも、存在しているだけで聴く人を応援しているわけじゃないですか? 童謡だって、ヘヴィメタルだって、聴く人を生かしているという点では応援しているんですよね。でも、この15周年のタイミングに改めてメッセージすることができたのは、自分たちにとっても今がそういう時期だったのかなって。いろんな時期を経たから書けたんだなと思います。それか、単純に年を取ったとか(笑)。
――(笑)。
もともとは、自分のことなんか歌っても面白くないじゃんと思っていたし、歌うほどのこともないよと思っていて。自分もBLANKEY JET CITYが好きで、彼らの音楽は架空の街=ジェットシティの話ですよね。そういうふうに物語を通して、そこに聴く人なりの現実を見つけていくというやり方がいいなとも思っていたんですけど、今回は、歌詞で歌っている人が自分と同一人物というか、僕が語りかけている言葉と変わんないっていう。4月にシングルを出すということが決まってなかったらこうならなかっただろうし、不思議なめぐりあわせですね。
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) 撮影=森好弘
――《新しい季節だから 何もかも眩しいね》という一節は特に素敵です。一瞬にして目の前が開けるようで。
歌入れの日に見た景色が、実際すごく眩しかったんですよ。自転車でスタジオに向かっていて、すごく天気の良い日で、1月だけどちょっと暖かくて。新しい季節だから眩しくていいなって。
――菅原さんの言葉がそのまま歌詞になっている(笑)。
本当にそう。「新しい季節は眩しいもんな」って思ったそのままを(笑)。
――リリース後には、「~15th Anniversary~『東西フリーライブ』」と題したライブが4月14日(日)は東京日比谷野外音楽堂で、4月21日(日)は大阪城野外音楽堂で行われます。
2016年6月の日比谷野音のライブで滝がステージを降りて、1年は間が空いたけど去年の野音(2018年5月)ではサポートメンバーを含めた現在のやり方でアンコールまで滝も一緒にやれて、バンドとして一つ大きく進めた実感があったんですね。15周年の今年の野音はフリーで、東京だけじゃなく大阪でもやって東西の拠点にみんなに集まってもらってみんなでお祝いし合う場にしようと思っています。遠くから来てくれる人もいると思うんだけど、今回は交通費だけでいいからねって(笑)。
――お祝いの気持ちととともに期待に胸を膨らませて集まってくると思います。どんな内容になりそうですか。
滝は『BABEL』のツアーに参加してなかったからこの2年ぐらいで演奏していない曲もあって、それをやりたいと本人も言っていて。去年のツアーではファンのみんなに投票してもらった曲でセットリストを組んで、それをみんながすごく喜んでくれたんですね。今回は票を募るわけじゃないんだけど、みんなが聴きたいと思ってる曲や、これまでライブで一回もやってない曲とかあまり日が当たってない曲もあるので(笑)、そういうものも交えてお祭りができたらいいなと思っています。
――アルバム『BABEL』は、今でも聴くたびにガッと目が開くような作品です。アルバムに込められたメッセージや、刺さったまま抜けていないものもありますが、そこからもらうエネルギーとはまた別の力を「名もなきヒーロー」から受け取りました。
『BABEL』はタイトル通りバベルの塔を作るみたいな、ダークでヘヴィで内容もすごくシリアスなものを作ったので、その後にどんな曲を作るかということをあの後すぐには考えられなかったんですね。けど今作っている曲たちは、今の自分たちが置かれている状況とか15周年とか、いろんなことが合わさって自然に出てきているものなので、今回のシングルだけじゃなくこれから先もっとたくさん聴いてもらえる曲を楽しみにしていてほしいですね。
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) 撮影=森好弘
――9mm Parabellum Bullet以外でも、ソロや滝さんとのキツネツキ、他バンドのメンバーとのユニットなど菅原さん自身が自由度の高い活動をされていて、そのすべてがバンドに返ってくるのだろうなと思います。
そうですね。さっきの「新しい季節だから 何もかも眩しいね」っていう歌詞の書き方もそうなんですが、キツネツキのアルバムに『まなつのなみだ』という曲があって、それはちょうど夏に録音していたから「じゃあ夏の歌詞にする?」「そうだね」っていうことで書いたんですね。そのくらいの軽やかさというか、パッとひらめいてそこにあるものを使って作るようなことが楽しかった。キツネツキは9mm Parabellum Bulletとは違うただ楽しいロックンロールをやっていて、9mm Parabellum Bulletはすごく構築された音楽だと思っていたんだけど、良い意味でそれを壊しに行けるようなマインドを持てたところもあって。自分がこれまでやったことには全部意味があるなと思っていますね。
取材・文=梶原有紀子 撮影=森好弘

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