4月12日(金)@東京 STUDIO COAST

4月12日(金)@東京 STUDIO COAST

King Gnu、全国ツアーのファイナルを
新木場STUDIO COASTで開催

King Gnuが3月3日の新木場STUDIO COASTからスタートした初の全国ツアーは、名古屋、福岡、大阪、高松、広島、札幌、仙台を回り、再び新木場STUDIO COASTに舞い戻り、大阪・東京の追加公演を残しつつも、ツアーファイナルを迎えた。また、このLIVEの模様は5月31日にM-ON!にて独占放送が決定している。

2500人キャパの大会場が熱く燃えた本公演。3月から敢行されてきた全国ツアー"Sympa"のファイナル公演。現在のKing Gnuのパワーがいかんなく発揮された、すさまじい夜だった。

オープナーの「Slumberland」からバンドが放つ音の迫力が破格である。この曲で拡声器を持って叫ぶ常田大希を筆頭に、4人それぞれのプレイに磨きがかかっており、それが一体となって生み出される熱量が非常に高い。ヴォーカル&キーボードの井口理は「Vinyl」のイントロで「新木場コースト!踊ろうぜ!」と叫んだが、ただ踊るという感じではない。重いグルーヴによって聴く者の腰をわしづかみにして、その低い重心のまま揺さぶってしまうような感覚。そしてそんな演奏がたたみかけるように連なっていくのである。

へヴィな楽曲が続いた前半の節目に井口が「King Gnuにとって、史上、最もファンキーでゴキゲンな曲をやります」と話し、「白日」が演奏される。その流れに、フロアからは笑いも混じったどよめきが起こった。もちろん多くのオーディエンスが待ち望んでいた曲だが、この前振りがあまりに意外だったからだろう。しかし彼はクリアな声で唄いはじめ、場を一気に透徹の空間へと変えていく。このバンドらしい先へ進んでいくことを唄った言葉、そして怒涛のパフォーマンス! 今夜のハイライトのひとつだった。

その後、ライヴはさらに熱気を増しながら、アルバム『Sympa』の曲をメインに進行していく。美しいバラード、ポップなメロディ、へヴィなグルーヴ…。こうしたKing Gnuのステージは、2人のヴォーカリストの魅力を体感できる空間でもある。リーダーにしてソングライターの常田の声は中低域が主で、エフェクトを通す場面も多い。かたや井口はハイトーンで、ファルセットも響かせるヴォイスには透明感があり、純度が高いのだ。このコントラストが彼らの歌の表現に豊かなダイナミズムをもたらしている。

秀逸なリズム隊についても触れておきたい。この日、髪にきらびやかなメイクをほどこしていたドラムスの勢喜遊が叩きだすビートは強靭にしてタイト。ベースの新井和輝はシックなたたずまいとともにファンキーで野太い音色を奏でている。ストイックで引き締まった演奏を聴かせるこの両名によって、スキのないサウンドが実現されているのだ。また演出面としては、舞台の背景に都市をイメージしたセットが組まれており、そのビル群の影が鮮やかなライティングによって、ある時には熱を帯びたように映え、またある時には無機質な風景にも見える。この演出は、King Gnuの豊潤な音世界を後押ししていた。

アッパーな「Flash!!!」で盛り上がったあとはアコースティック・コーナーが設けられ、「Don't Stop the Clocks」「It's a small world」など、アルバムの深遠部を成す曲が披露された。そして井口が場内を眺めながら「壮観ですね、この景色は…もちろん自分たちが望んだものなんですけど」と話しはじめる。そして「(こうした状況は)立つべき今、という気がします。これからも会場をデカくして、もっともっと大きい景色を見せていきたいと思います!」と力強く語り、会場中から大きな拍手と歓声を受けた。それはまさに「いま最高に期待を集めているバンド」の姿そのものだ。

ただ、ここで興味を惹かれたのは、その瞬間の4人の空気に浮き足だった気配がまるでなかったこと。もちろんライヴというシチュエーションゆえの高揚感はある上だが、彼らは基本的にはつねにクールで、むしろ各々の使命を確実に遂行しているような雰囲気をまとっている。そのムードもこのバンドの独自性を強く感じさせた。後半は、井口が撮影OKを宣言した「Tokyo Rendez-Vous」に始まり、「Prayer X」「あなたは蜃気楼」と連射した流れでフロアは完全にヒートアップ。もっともこうしたハイテンションの中でも、人の繊細な内面や心模様を綴った歌詞が響いた途端に生々しい感触が広がっていくところがKing Gnuの歌のオリジナリティだ。最終曲「The hole」での“愛を守らなくちゃ/あなたを守らなくちゃ”は、とくに深く刺さったフレーズだった。

熱烈なアンコールに応えてプレイされたのは「サマーレイン・ダイバー」。それを終えても拍手はやまず、4人は再度舞台に登場し、一列に並んで礼することでライヴは大団円を迎えた。King Gnuならではのヒューマニズムとインテリジェンス、そしてロマンティシズムがあふれ返った、最高の90分だった。

なお、本ツアーの追加公演は4月15日(月)に大阪のなんばHatch、4月21日(日)に東京のZepp Diver Cityにて行われる予定だが、チケットはいずれもソールドアウト。これ以降も各地のフェスやイベントへの出演が決定しており、メジャー進出からほんの数ヵ月ながら、彼らは早くもフルスロットル状態だ。旋風を巻き起こしながら突き進むKing Gnuの行く末に注目し続けたい。

text by 青木優
photo by 伊藤滉祐、小杉歩

<セットリスト>
M1. Slumberland
M2. Sorrows
M3. Vinyl
M4. McDonald Romanace
M5. ロウラブ
M6. Bedtown
M7. NIGHT POOL
M8. 白日
M9. Sympa
M10. Hitman
M11. Vivid Red
M12. Flash!!!
M13. Don't Stop the Clocks
M14. It's a small world
M15. 破裂
M16. Tokyo Rendez-Vous
M17. Prayer X
M18. あなたは蜃気楼
M19. Teenager forever
M20. The hole
ENCORE サマーレイン・ダイバー

『King Gnu One-Man Live Tour 2019“Sympa”追加公演』

4月15日(月) 大阪・Namba HATCH
4月21日(日) 東京・Zepp DiverCity Toky

4月12日(金)@東京 STUDIO COAST
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photo by 伊藤滉祐、小杉歩

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