戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹らが
現代にビートルズを蘇らせる! 舞台
『BACKBEAT』製作発表レポート

舞台『BACKBEAT』の製作発表が、4月15日(月)に東京都内のライブハウスにて行われた。登壇したのは戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹、辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、JUONFUZZY CONTROL)、上口耕平、夏子、鈴木壮麻、尾藤イサオ、石丸さち子(翻訳・演出)の計9名。製作発表ではキャスト挨拶のみならず、バンド生演奏も披露された。
「BACKBEAT」は元々、イギリスの映画監督イアン・ソフトリーによる映画作品(1994年公開)で、後に同監督により舞台化された作品だ。今回の日本初演にあたり、オリジナルミュージカル作品で好評を得ている石丸さち子が演出を、ミュージカル『ボクが死んだ日はハレ』で石丸とタッグを組んだ森大輔が音楽を務める。
イギリスの4人組バンドとしてあまりにも有名なビートルズだが、実は5人目のメンバーがいたのを知っているだろうか。その名はスチュアート・サトクリフ。バンドメンバーの中でもアートと音楽の才能に溢れる人物だったのだが、1962年、メジャーデビュー直前に21歳で夭折する。本作ではそんな彼にスポットを当て、ビートルズがドイツ・ハンブルクで過ごした下積み時代を彼らの青春と共に描く。注目のスチュアート・サトクリフ役は、舞台のみならずドラマや映画でも活躍中の戸塚祥太(A.B.C-Z)、ジョン・レノン役は、アーティスト・俳優として唯一無二の存在感を放つ加藤和樹が演じる。
前列左から上口耕平、辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹、JUON。後列左から石丸さち子、夏子、尾藤イサオ、鈴木壮麻。
『BACKBEAT』はストレートプレイではあるものの、ビートルズの物語を描く故にロックサウンド満載だという。それを裏付けるかのように、製作発表は迫力のバンド生演奏から始まった。ちなみに、作中でデビュー後のビートルズの楽曲が演奏されることはなく、あくまでデビュー前に演奏していた楽曲が中心となるようだ。楽曲披露の場では、創成期のビートルズがよく演奏していたというカバー曲2曲が披露された。演奏が始まる直前、暗闇のステージ上でチューニングをし、メンバー同士で声を掛け合う様子が伺えた。
1曲目は「ロックン・ロール・ミュージック」。黒の革ジャンを身にまとった、若かりしビートルズの登場だ。ひとたび演奏が始まると、5人のメンバーから生み出されるロックサウンドによって会場の熱気が一気に上がるのが感じられた。ギターヴォーカルであるジョン役の加藤は、ちょっぴり気だるげでセクシーな歌声を披露した。これまでにない、新たな加藤の魅力を感じられるだろう。

2曲目は、ビートルズが心から愛し、憧れを抱いていたというエルヴィス・プレスリーのカバー曲「ラブ・ミー・テンダー」。先程とバンド編成が変わり、スチュアート役の戸塚がヴォーカルとなる。基本的に彼はバンドのベーシストなのだが、この曲に限っては恋人アストリッドに向けて歌うためにマイクを握る。作中でも象徴的な曲のひとつだという。

バンド生演奏の後は、まだその熱気が残る中で登壇者たちによる挨拶が行われた。その模様を、一人ずつ以下にまとめてお送りする。
石丸さち子(翻訳・演出)
会見は翻訳・演出を務める石丸の挨拶から始まった。「本編では、ビートルズのカバー曲を中心に20を超える楽曲を生演奏します。これまで、音楽監督の森大輔さんを中心にリハーサルの時間を重ねてまいりました。これからどんどん、音楽だけではなくストレートプレイとしても仕上がっていくと思います。どうぞご期待ください」
映画「BACKBEAT」を繰り返し見てきたという石丸は、本作の魅力について独自の目線で熱の込もった想いを語った。「この作品は皆が知っているビートルズのメンバーではないですし、メンバーが10代だった頃から始まります。ジョンが心の友としてビートルズに引き入れたスチュアートは、青春の全てを分け合ったジョンか、クレバーな才能ある写真家のアストリッドかを、本当に引きちぎれるような心で選んでいく。
そして彼らは毎日6時間、8時間と休みなく演奏するんです。ジョン・レノンが後々に言います。『俺たちを育てたのは、ハンブルクだ』と。ハンブルクには、彼らの青春の全てがあったのだと思います。ものすごくダーティーで、セクシャルで、その中で彼らがどんなピュアさを持って音楽に向き合っていたか。私は何度も「BACKBEAT」という映画を見てきました。それはこの仕事を始めた動機の本当に一番大事な何かがこの作品にあり、その何かを忘れそうになったときに見てきたのだと思います」
戸塚祥太(スチュアート・サトクリフ役)
画家であり創成期のビートルズのベーシストでもあった、本作のキーマンとなるスチュアートを演じる戸塚は、「今日初めてここでバンドとして皆様の前で演奏するという体験をして、今すごく気分が高揚しております。本番でもこんな気持ちになれるのかと思うと楽しみです。
バンド演奏はすごく興奮しました。”バンドマジック”を初体験してしまったな、と感じています。初めてバイクにまたがってエンジンをかけたような、まるで自分の中に新しい命が生まれたような。とにかく、すっごく楽しかったです!」と、終えたばかりのバンド演奏の興奮冷めやらぬ様子で話した。
加藤和樹(ジョン・レノン役)
スチュアートの親友で、ビートルズを立ち上げたジョン・レノン演じる加藤は、「20曲を超える楽曲を我々は舞台上で演奏して、毎日お客様に届けます。このバンドのグルーブ、そしてたぎるような若さ、エネルギッシュなこの作品を多くの人に届けていきたいと思います」と力強く語った。
自身の演奏について質問が及ぶと、「自分のライブでギターを弾くこともありますが、弾きながら歌う経験はあまりなくて。しかも今回は全部英語なので、どちらかというと歌の方が大変ですね。ジョンらしさをいかに出すかというところが、1番苦戦しているところです」と、試行錯誤しながらもジョン・レノンに向き合っている様子が伺えた。
バンドに関して聞かれた加藤は、「ステージに出る前までバンドメンバーは楽屋で一緒なんですけど、まるでずっとバンドをやってきたかのようでして。さっき舞台に出る直前に気合い入れもして、『あ、俺たちバンドなんだな』と。これまでバンドの稽古を重ねてきているにも関わらず、初めて1つになった瞬間を感じました。ここからバンドのグルーブをもっともっと高めていきたいと思います」と意気込んだ。
辰巳雄大(ジョージ・ハリスン役)
ほとんどギターが弾けない状態から始めたという辰巳は、「ギターレッスン初日、皆さんのあのドキドキした顔は忘れられません(笑)ですが、本番はジョージ・ハリスンとして、お客様をドキドキさせます!」と、不安の中にも自信が垣間見えた。
製作発表当日はバンド演奏が始まるまで緊張していたと言いつつ、「始まってしまえばいつもの光景。楽しいという気持ちの方が先行して、まさにロックン・ロールを楽しませていただきました。しっかり味をしめちゃったので、まだ舞台は始まってもいないのですが、『BACKBEAT』が終わってもこのメンバーでライブツアーをやりたいなと思いました」と、バンド演奏を存分に楽しんでいるようだ。
JUON(ポール・マッカートニー役)
左利きのポール・マッカートニーに合わせ、本来は右利きのところを左利きに切り替えて演奏をしているというJUONは、「僕は小さな頃から音楽をやっていて、ビートルズの物語は生活の一部となっていました。石丸さんをはじめ、素敵なキャストのみなさんとこの作品に携われたことがすごく光栄ですし、感謝の気持ちでいっぱいです。セリフがある舞台というのは初挑戦に近いのですが、皆さんと全力でやっていきたいと思います」と、本作に関われることに対し感無量といった様子だ。
上口耕平(ピート・ベスト役)
ドラムの練習を始めた頃に、偶然本作の話をもらったというピート・ベスト役の上口は、「今、皆と一緒に最高の時間を過ごしながら稽古している最中です。ピート・ベストはビートルズ結成当初のリズムを支えてきた男なんですが、今回も皆を後ろからしっかり支えていけたらと思っています。舞台を観に来られた方で、『ピートもビートルズに残ってて良かったんじゃない?』と一人でも思う方がいらっしゃったら、僕は嬉しいです(笑)」と笑いを誘った。
さらに、ドラムというポジションならではのコメントも。「本番を初めて見て、ドラムの席って最高の特等席だなって改めて感じました。お客様の姿も見えて、テンション上がってるメンバーも見えちゃって、『おいおい、いつもよりちょっと走ってるぞ』ということまでわかります(笑)もっとこの時間が増えていくことが、とても楽しみでしょうがないです」
夏子(アストリッド・キルヒヘル役)
スチュアートの恋人であり、才能豊かな写真家でもあるアストリッド役の夏子は、本作が初めての舞台作品となる。「アストリッドはビートルズが愛し、憧れた女性ということで、初舞台の私に務まるのだろうかと不安に思うこともありました。けれど、いざ稽古に入ったら、石丸さんからすごく的確な指示をいただいて、そのとおりにやるとこんなにも自分の体や声が変わるんだということを日々感じています。今はとても楽しくて、残り1ヶ月でどうなれるのか楽しみです」
鈴木壮麻(ブライアン・エプスタイン役 ほか)
後にバンドのマネージャーを務めるようになるレコードショップ経営者のブライアン・エプスタイン役をはじめ、4役を演じ分ける鈴木は、「ビートルズの若者たちの辿った軌跡に寄り添っていきたいと思います。今素敵なライブを聴かせていただき、『この若者たちのプロデュースを俺はするんだ』とひしひしと感じ、すごく嬉しい瞬間でした。何せ今回はキャスト全員が実在の人物なので、この作品の立体感やリアルなところに役者として向き合えるということもとても楽しみにしています」と述べた。本作を通し、役者の醍醐味を味わっているようだ。
『BACKBEAT』の話を最初に聞いた感想としては、「『え? 5人?一人多いだろ』みたいな(笑)原稿を読んでいって、いろいろなことが解き明かされていくんですけれども、まさかハンブルクで下積み時代があったなんて知らなかったですし、とても新鮮な台本だと受け止めました。お客様の中にも、きっとこのストーリーを知らない方がいらっしゃると思うので、一緒に分かち合える立場にいるということを嬉しく思います」と、茶目っ気混じりに観客側に寄り添う姿勢をみせた。
尾藤イサオ(ブルーノ・コシュミダー役 ほか)
ビートルズが来日した際、日本のアーティストとして彼らの前座として実際に出演した経験を持つ尾藤は、「ビートルズがビートルズになる前に、リヴァプールからドイツのハンブルクへ行った。そこで今回の僕の役は、ハンブルクのクラブのオーナー。本当に懐かしい。実は、武道館でビートルズが1番はじめに演奏したのが「ロックン・ロール・ミュージック」なんです。さっき皆さんの「ロックン・ロール・ミュージック」を聴かせてもらいましたけども、グーですね!」と、当時のビートルズへ想いを馳せつつ、情感たっぷりに語った。

さらにビートルズ初来日時のエピソードを聞かれると、「僕の先輩の内田裕也さんもビートルズのコンサートに出演しておりまして、日本のアーティストとして彼らに何か記念に残るものを贈りたいということになりまして。銀座の洋服屋さんに行って、サイズはわからないので1番大きなものを選んで、楽屋に届けて渡そうとしたんです。ただ、残念ながらとにかく警備が厳しくて厳しくて。楽屋まであと1歩のところまで行ったのですが、スタッフに止められて結局会えずに終わってしまいました」と、来日コンサート時の裏話を明かして会場を盛り上げた。
スタッフと言い争う内田裕也のモノマネをしながら、ビートルズ初来日コンサートの裏話を披露する尾藤(写真右端)

最後に、囲み取材で述べられた戸塚からのメッセージを記しておく。
「僕が演じるスチュアート、そして誰もが知っているジョン・レノン。この2人が会ったことがまず運命。ポール、ピート、ジョージ、リンゴ、彼らがビートルズに出会ったことも運命。そして、今回このキャストで『BACKBEAT』ができるということも運命だと思います。本当にいろいろな運命が重なって今があると思います。ビートルズが過ごした青春というものを僕たちなりに丁寧に描いて、熱く演じていきたいと思いますので、皆様ぜひ劇場にお越しください」

『BACKBEAT』は5月25日(土)から東京芸術劇場 プレイハウスで開幕した後に、兵庫、愛知、神奈川にて上演予定だ。彼らが新しい時代にどんなビートルズ旋風を巻き起こしてくれるのか、楽しみにしていよう。

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