【インタビュー】榊原ゆい、初のアコ
ースティック盤完成「“せーの”で録
った奇跡のサウンド」

榊原ゆいが4月24日、初のアコースティックアルバム『LOVE×Acoustic Vol.1』をリリースする。同アルバムは2018年のバースデーライブ<Happy★LOVE×Live2018>でアコースティック披露した「片翼のイカロス」「ボクノセカイ」「STAR LEGEND」をはじめとする楽曲をスタジオ・アコースティック・ヴァージョンで新録したものだ。当日のライヴでは演奏されなかった楽曲も追加された全11曲(ボーナストラック含む)が収録された。
そのレコーディングはメンバー全員が“せーの!”で行った一発録り。ノンクリックにして、ほとんどダビングをしなかったというサウンドに溢れる生身の息づかいを堪能できる仕上がりだ。バラエティーに富んだ『LOVE×Acoustic Vol.1』について、榊原ゆいにじっくり訊いたロングインタビューをお届けしたい。なお、バンドメンバーのコメントも併せて掲載する。

   ◆   ◆   ◆

■一発でいいものが録れると信頼できたから
■私のヴォーカルもほぼ1曲通しの一発録音

──榊原さんがアコースティックアルバムを作るのは初めてだと思うのですが。

榊原:はい、初めてです(笑)。

──この企画はどういうところから始まったのですか?

榊原:昨年(2018年10月13日)のバースデーライブ<Happy★LOVE×Live2018>で、第1部をアコースティックライブ、第2部をいつものダンスライブという構成でやったんですが、そのアコースティックパートのリハーサルを進めていく中で、「これ、いいね!」って話がメンバーで出ていたんです。実際にライブ当日も好評で、ライブのMCでお客さんに「アコースティックのCDを出すとしたらどうする?」って訊いたら、「買う!」って反応が大きかったんですね。買ってくれるなら作っちゃうかっていうことになって……。なので、CDにすることを決めたのはライブのステージ上だったんです(笑)。

──『LOVE×Acoustic Vol.1』収録曲はライブのセットリストと同じなのですが、ライブ前にアコースティックCDを出す予定ではなかったんですね?

榊原:予定はまったくなかったです(笑)。リハーサルで「こういうのもいいよね」「これからもやってみてもいいかも」みたいな話はしていたんですが、本当にライブのMCで決めました。

──そんなきっかけになったライブですが、ではなぜ第1部をアコースティックにしようと思われたんですか?

榊原:実は<Happy★LOVE×Live2018>の日はギネスライブを計画していたんです。何曲歌えるかっていう。ところが調べたらインドに5,000曲なんていう記録があって、それはさすがに無理だし、なんかそういうのじゃないと(笑)。でもせっかく会場は押さえてあるし、ちょうど誕生日だしってことで、バースデーライブに企画を変更したんです。ただ、当初はギネスライブを企画していたので、長時間になるのを見越して、椅子席で、いつもよりキャパも少ない会場にしていたんです。いつもはスタンディングだけど今回は椅子席の会場。ならばじっくり聴いてもらうパートを長くやるのもいいかもしれない、ということで第1部をアコースティックパートにしてみました。

──“好評だった”ということですが、会場の反応はどうだったのでしょうか?

榊原:私のライブというと“ダンスを魅せる”というのがメインなんですが、ファンからは「バラードも歌ってほしい」という声もあるんですよね。そんなバラードだったり、歌い上げるタイプの曲だったり、そういう楽曲をじっくり聴きたいという方には特に好評でした。

──では、アコースティックパートの選曲はそういった部分を意識したわけですね。

榊原:アコースティックで映える曲や、アコースティックにすることで新しい魅力を引き出せる曲。そこを考えながら選曲しました。結果、どれも“神曲”になりましたね。

──アコースティックアレンジは、どのようにされたのですか?

榊原:そこはバンドメンバーに任せました。楽しんでアレンジしてくれましたねえ。ライブで弾いたアレンジとCD用のアレンジは、どちらも生ものなので全く同じにはなっていません。もちろんアレンジの方向性は一緒なんですけどね。ライブを聴いてくれた方には、そのあたりも楽しんでもらえるかも。

──アレンジ以外の部分で、『LOVE×Acoustic Vol.1』で楽しんでほしいところはありますか?

榊原:実はこのアルバムのレコーディング、それぞれのパートを別々に録っているのではなく、一斉にライブレコーディングしているんですよ。だからほぼ一発録りなんですね。しかもそれぞれの楽器の音が影響してはいけないので、各々別のレコーディングブースに入っての一斉録音なんです。何となくテンポだけを合わせて、あとは「せーのっ」で(笑)。実は最初はガイドクリックを聴きながらレコーディングもしてみたんですけど、そうするとなんだかライブらしい雰囲気が出てこなかったんですよね。なので、全曲クリックを使わず、そして目も合わすことができない状況で、ヘッドフォンから伝わってくるお互いの息を感じ取りながらのレコーディングになりました。

──それで各楽器が合わせられるものなんですか?

榊原:もちろんライブで演奏したというのもあるんでしょうけど、それができるのはバンドメンバーみんながプロだからだと思います。機械に頼らず、お互いの息を合わせることで演奏できる技術を持っていて、一発でいいものが録れると信頼できたからこそ。なので、ライブ感をすごく感じられる音に仕上がっていますよ。目を合わせられるライブよりすごいことをしていますが(笑)。

──そのお話を聞いてから聴きなおすと、また違った印象を受けそうです。

榊原:そうなんですよね。私も出来上がった曲を聴いて、「ここ、なんでこんなにきれいに揃ってるんだ!?」って、思わず爆笑しちゃうくらいスゴイ(笑)。なのに、ライブ感もいっぱいで。私のヴォーカルもほぼ一発レコーディングの1曲通しのフルで録りっぱなしでした。

──ヴォーカルも一発録音というのもびっくりです。

榊原:“CDにするのにその声だとちょっと問題あるかな?”とか、“のどがガラちゃったな”ってところを少しだけ録音し直しましたけど、全く直してない曲もあります。実はバンドメンバーも、ヴォーカルだけは後から録音すると思っていたらしくて驚いていました(笑)。でも、今回の曲は何度も歌ってきたから、自分では「一発でいけるでしょ」って(笑)。そのほうが時間も短縮できるし(笑)。実際、レコーディングは2日に分けたんですけど、初日に7曲も録音できたんです(笑)。これもライブっぽいですよね。

──一応スタジオ録音ですが、ライブレコーディングCDと言っても過言ではないんですね。

榊原:バンドメンバーもライブ感にこだわっていたので、本来CDにするために音を整えたりするんですけど、私のヴォーカルもそれはせず、できるだけレコーディングした声のニュアンスのままで音を仕上げました。そのあたりが『LOVE×Acoustic Vol.1』の一番のこだわりですね。
■歌えたのは、役者としての引き出しが
■自分にあったからかもしれません

──それでは収録楽曲それぞれについてもお聞かせください。まずは1曲目の「Love☆Jet!」です。

榊原:私、実はこの曲が一番のお気に入りなんです。自分のヴォーカルが入っていないのに(笑)。ヒーリングミュージックみたいですよね。“このCDいったい何が始まったんだ!?”って。これはライブの出囃子でおなじみの曲なので、アコースティックの出囃子曲にしたらどうなるのかな?って思いながら「好きにやっちゃってください」とお願いしたんです。最初に聴いたときは「さすが!」って思いました。心地よすぎて、ずっと家でかけておきたいくらいですね(笑)。それと、ヴォーカルが入っていないでアルバムが始まるというのが、いかにも『LOVE×Acoustic Vol.1』らしいなって思います。その意味でも、この曲があってよかったなって思っています。

──2曲目は「Honey」。<Happy★LOVE×Live2018>では歌われなかった曲ですね。

榊原:1曲はライブでやっていない曲を入れようと思って、“じゃあ何にするか?”って考えたんです。その時に、直感で2ndアルバム表題曲の「Honey」かなと。これも「好きにアレンジしてください」ってお渡ししました。そしたらギターの藤井さんが「ボサノヴァっぽくしてみよう」っておっしゃって。それでレコーディング初日に、一度練習がてら演奏して歌ってみようってことになったんですが、これがとてもいい感じで、2日目のレコーディングがとても楽しみだったのを覚えています。

──榊原さんの歌うボサノヴァ、とても新鮮に感じました。今までにない歌い方でしたよね。

榊原:そうですね。結局、そういう楽曲のオファーがこないと、歌うことはできないし、ボサノヴァな楽曲が来るなんて可能性、ほぼないじゃないですか(笑)。だからこういう機会じゃないと歌えないし、榊原ゆいの新しい一面を知ってもらえるという意味でも『LOVE×Acoustic Vol.1』を聴いてほしいと思います。

──3曲目は「Aqua Voice」ですね。

榊原:「Aqua Voice」はあまり楽曲の雰囲気を変えず、そのままアコースティックでやってみたいという要望をアレンジするときに伝えました。でも音の鳴り方やテンポが変わることで、新しい魅力が出てくるんですよね。後ろで鳴っているサウンドがアコースティックということで、歌い方も自然と変わってくるというか。その意味では、この曲はバンドの演奏に曲の新しい魅力をうまく引き出してもらったなあっていうところがあります。

──続いては「ボクノセカイ」です。

榊原:この曲はライブでも好評だったんですよね。ギターが情熱的なアレンジで、「こう来るかっ!?」って思いました。ライブにいらっしゃらなかった方がこのアルバムを聴いた時に、一番「おぉ!」っと思う曲かもしれません。でもアレンジに歌詞やメロディがちゃんとハマっていて、アコースティックアレンジにすることでさらに熱量が高まったというか、より聴かせる1曲になったと思っています。

──そして「移りゆく花のように」。

榊原:もともとバラードなので、アコースティックで映えると思っていました。なので、楽曲の雰囲気はそのままで、でもピアノがとても印象的なアレンジになっています。ピアノに乗せて歌っていく心地よさがありましたねえ。もともとすごくいい曲なのですが、先ほども言ったようにライブではあまり歌えないバラードなんです。しかもゲームの挿入歌なので、そのシーンと併せて印象に残っていらっしゃる方もいらっしゃると思うんですよ。なので、<Happy★LOVE×Live2018>ではじっくり聴いてもらおうと思いました。

──続く「星影灯」もバラードで、しかも『処女はお姉さまに恋してる』シリーズの楽曲です。やはりライブでは……。

榊原:なかなか歌えなくて……私、バラード大好きなんですけどねえ(笑)。これもライブ当日に心地よく歌えた曲です。この曲をアレンジするときに、バンドメンバーから「途中、アカペラで歌うのはどう?」って言われたんですよ。それでアカペラパートを入れたんですけど、タイミングやテンポを気にせず、自分の思うとおりに歌って、それからまた曲に戻るっていう構成なんです。一度音が全部止まって、そこから自由に歌い出す──これは本来難しいし、とてもデリケートなんですけど、でもむちゃくちゃ心地よくて。楽しんで歌えたのは、役者としての引き出しが自分にあったからかもしれません。ここは『LOVE×Acoustic Vol.1』のなかでも一番の聴き所だと思います。ライブを聴いた方にも「鳥肌が立った」と言っていただけました。

──そういえば、先ほど「レコーディングは全員異なるブースで一斉に録音した」とおっしゃられてましたが……。

榊原:もちろん「星影灯」もです。ぜひアカペラからバンドが戻ってくるところにも注目してほしいです。お互いの息遣いだけで、そこまで合わせられるというのは、本当に感動しますよ。

──やはり「移りゆく花のように」と「星影灯」は、このアルバムのハイライトですね。

榊原:そのひとつですねえ。アコースティックアレンジにすることで、元曲の良さがさらにグッと出てくるバラードだなと思って選曲しましたから。特に今回のアルバムの中で、アコースティックであり、ライブでありって感じられる2曲だと思うんですよ。“商品”を作るためにレコーディングしているのではなく、音を楽しんでレコーディングしているなっていうのが伝わるんじゃないかなって思っています。

──そして続きましては、「SAYONARAじゃない。」です。

榊原:この楽曲は元曲が3バージョンありまして、そのバラードバージョンをもとにアレンジしました。歌い方もちょっと変えまして、ソウルっぽさを入れたりして、熱量多めの仕上がりになりました。もともとグッとくる曲なんですが、その元曲の顔を残しながら、新しい楽曲になったという感じですねえ。「Honey」ほど遊んではいないんですが、ちゃんと別の顔になったなあ、と。

──そして、ここで「奇跡の絆」が来るのですが、これはちょっと驚きでした。

榊原:アコースティックが絶対映える曲なので。みんなが「奇跡の絆」を大好きなのはもちろん知りつつ、今回はより聴かせるバージョンでお届けしたいな、と。いつもは情熱的に聴いてもらう曲ですが、アコースティックということでテンポも下がって、しっとり染み入るような楽曲になりましたよね。ヴォーカルもちょっとためたり、ずらしたりという歌い方をして。これはアコースティックアレンジだからこそ出てきた歌い方でしたね。通常バージョンとは違う、新しい魅力を感じてもらえる「奇跡の絆」になったんじゃないかな、と。原曲と違うところがあっても、むしろそこを心地よく聴いてもらえると思います。
■イメージは“ピアノを弾く榊原ゆい”
■実は私、ピアノ弾けないんですけど(笑)

──続いて「STAR LEGEND」です。

榊原:これはメンバーが一番苦戦した楽曲です。もともと音数の多い楽曲なので、それをアコースティックアレンジするのがとても難しかったんですよね。でも、この曲に関しては、私がどうしてもアコースティックでやりたかったんですよ。ライブの定番曲だからこそ、というのもありますし、「この曲をアコースティックで演奏するの!?」と驚いてほしかったですし。なのでそこはメンバーの腕に任せました。「これ、やりたいですけど~」って投げっぱなしで(笑)。

──定番曲をアコースティック。なかなか冒険ですねえ。

榊原:でも、やっぱり楽しかったですよ。歌いなれているからこそ、新しいアレンジで歌うというのはチャレンジだし、ライブの醍醐味でもあるし。ダンス曲を踊らずに音だけで楽しんでもらうというのは新鮮でしたし、新しい「STAR LEGEND」を作り出せた楽しさもありましたね。アコースティックがドンピシャでハマりましたし、ライブでも皆さんに驚きと楽しさを感じてもらえました。原曲とは違う、生の音を味わう楽しさがちゃんと生まれたなって思いました。

──そして「片翼のイカロス」が最後の曲です。

榊原:これは欲しいでしょう(笑)。私の代表曲でもあるし、みんな大好きだし。しかもアコースティックが映える曲だし! だから入れないという選択肢はありませんでしたね。実は4年前のツアーの東京公演で、「片翼のイカロス」をアコースティックっぽいアレンジで演奏したんです。その時の演奏はもちろん、私が口笛を吹いたのもむちゃくちゃ好評だったんですが(笑)。その時から、「アコースティックバージョンをCDに残したい」とはずっと思っていたんです。なので、この機会にレコーディングしよう、となりました。もちろん私の口笛も入っています(笑)。

──榊原さんの口笛はプロレベルと言われていますから(笑)。

榊原:それを見つけてくれたのもバンドメンバーなんです。それまでは特技というか、人より吹けるかな?ってくらいにしか思ってなかったんです(笑)。でも「片翼のイカロス」をアコースティックでやるときに、鳴り物が足りないってなって……。バンドメンバーがパーカッションの田中さんに「オカリナ吹けないの?」「吹けないよ!」ってやり取りを見ていて、私が「口笛なら吹けるよ」ってサンプル音源を送ったら、「これは世界大会に行けるレベルだ!」となってバンドメンバー全員から大絶賛(笑)。それが今回のアルバムで音源として残すことができました。まあ、そんなこんなで、「片翼のイカロス」はなくちゃダメでしょ!ということですね(笑)。

──そんな「片翼のイカロス」のエピソードをお聞きした後に、ボーナストラックの「Honey」なのですが、こちらは“Acoustic Yui Whistle Ver.”とありますね(笑)。

榊原:これ、レコーディング2日目に偶然生まれたんです。レコーディング中にパーカッションの田中さんの機材が壊れるというアクシデントがあって、待ち時間ができたんですよね。「だったら、「Honey」の口笛バージョンとか録っちゃいます?」ということで、チャチャっと録音したのを、ボーナストラックとして収録しました。本来はボーナストラックを入れる予定はなかったので、リリース情報の修正やらポスター印刷の修正やらを急いでしてもらいました(笑)。この「Honey」が気に入った方は、パーカッションの田中さんに感謝してください(笑)。

──ボーナストラックまでを含めて11曲。かなり聴きごたえのあるアルバムになっています。

榊原:じっくりと、音を楽しみながら聴いてもらう。そんなアルバムになっていると思います。今回、私もメンバーもめちゃくちゃこのCDが気に入っているんですよ。全員とにかくレコーディングが楽しかったみたいで。やっぱり音楽をみんなに楽しんでもらうには、まずは演奏する側が楽しまなくてはダメだと思うんです。それが伝わるといいな、と思っています。

──ライブに近い形でのレコーディングというのも、魅力になっていますよね。

榊原:そこもレコーディングが楽しかったところですから。みんなで「せーのっ!」で録った奇跡のサウンドを、ぜひぜひ聴いてほしいんですよ。生っぽい良さをすごく感じてもらえると思います。

──これまでも榊原さんの歌声をゲームやアニメの主題歌なので聴いているからかもしれませんが、榊原さんのヴォーカルも、とてもアコースティックサウンドに合っているように思いました。

榊原:新曲をレコーディングするときは、テイクを重ねて完成度を高めていくのですが、『LOVE×Acoustic Vol.1』では何度も歌ってきているからこそ、スッと歌うことができたんです。もちろん「そうしよう」って言ったのは自分なんですが、実際にやってみて「想像していたものよりもいいものができた!」って思いました。これまでずーっとライブを重ねてきたこともあるし、歌が好きで、20年以上歌い続けてきて、様々な経験を重ねてきて、それがあるからこそこの形でできたアルバムなんだなと感じています。

──そんな中で、『LOVE×Acoustic Vol.1』のレコーディングで気を付けた部分を教えてください。

榊原:私はブレスも歌の大事な要素だと考えているので、普段から気を使ってレコーディングしているのですが、『LOVE×Acoustic Vol.1』ではいつも以上に気を遣いました。生っぽさという雰囲気を大事にしたかったので、楽曲の雰囲気を壊すようなブレスが入って、そこに手を加えるようなことはしたくなかったんです。なので楽しみながらも、耳障りなブレスが入らないように、ブレスが入った時はちゃんと意味のある息であるように、息遣いも音として気を付けています。聴いた人に心地よく聴いてもらえるように、と。今回は音数が少ないしできるだけ生な音で届けたかったからからこそ、特に気を付けました。実は口笛の時もブレスの音が入りすぎないように、ほぼ音を入れずに息を吸っています(笑)。そんなこだわりがたくさん詰まっているので、しっかりと音に浸ってもらえるアルバムになっていると思います。

──そして榊原さんのアルバムと言えばジャケットのアートワークです。今回はどのようなイメージなのですか?

榊原:“ピアノを弾く榊原ゆい”──実は私、ピアノ弾けないんですけどね(笑)。これまでと雰囲気が違うのはロングドレスですね。私は踊るので、なかなかロングドレスって着られないんですよ。でも、今回はアコースティックだから踊らないし、ロングドレスを着よう、と。そのときイメージに合ったのが『美女と野獣』で……。私、大好きなんですよ(笑)! なので「『美女と野獣』のイメージにしたい!」と思って、黄色のシンプルなドレスにしました。黄色っていうのも今まであまり使わなかったメインカラーなんですよね。だからこれまでのジャケットとは、またイメージの違うものができました。発表したときに、ファンの方からはとてもいい評判をいただいたので、嬉しかったですね。

──では、『LOVE×Acoustic Vol.1』アルバムのイメージと、榊原さんの趣味の融合なんですね。

榊原:そうですね(笑)。「ドレスを着て、ピアノを弾いている雰囲気で」というイメージありきでスタジオも探しました。そしたらとても雰囲気のいい、レトロな感じのアップライトピアノがあるスタジオがあったんです。まさに私のイメージした通りのジャケットになりました。

──そしてこのアルバム、“Vol.1”と入っていますよね?

榊原:バンドメンバーにも、そこを突っ込まれました(笑)。これは直感で付けました。きっと聴いた方が「ほかの曲もアコースティックで聴いてみたい」と思ってくれるCDになると思ったし、バンドメンバーとのレコーディングも楽しかったし。そういう手ごたえがあったので、「“Vol.2”を出せればいいな」という思いも込めて、“Vol.1”とつけました。

──期待しています。それでは最後に、ファンにメッセージをお願いします。

榊原:メンバー全員で同時録音した、生の音を楽しんでもらえたらいいなって思っています。ライブのフィーリングを大事にしているアルバムなので、ちょっと音を外した程度のところは、あえて直さず、残していたりもするんです。そういうところも含めて、アコースティックならではの味わいを楽しんでもらえたら嬉しいです。

──ライブにも期待してしまいます。

榊原:このアルバムを楽しんでいただいた皆さんからリクエストがあれば、ライブでもまたアコースティックをやりたいですね。みなさん、ぜひ今回のアルバムを楽しんで聴いてください!
【バンドメンバーのコメント】

「すごい挑戦をするなーと思ってましたが、闇雲に始まったわりにはなんとなく着地点が見えてて、挑戦しがいがあるなーと思いました。そう思った裏付けには田中んのパーカションと川越さんのピアノならみんなで良いもんができるんじゃないかと、個々の技量を信頼してました。
どうせならと、あんまり人のやらないノンクリック、ダビングもほとんどなし、あえて言うならスタジオライブみたいな、その場の瞬間を捉えることに重きを置きました。
まさか歌まで同時に1発録りするとは思わなかった(笑)。
「榊原、ハンパねぇ、」「一番直し少ないじゃないの!」
コンプレッサーも極力なしフェーダーもあんまり上げ下げしない。無添加の新鮮んな生歌です。
すげーよ、こんな挑戦にとことん付き合ってくれたZIZZの磯江氏にも大感謝。
ぱねぇ、榊原さんを堪能してください。口笛もね(笑)」──藤井陽一(G)

   ◆   ◆   ◆

「今回は本当に楽しかったです!
せ~のでレコーディングするのは久しぶりですが、本当に生演奏感がたくさん出ていて、自分としてもすごく特別なアルバムになりました!
この編成ならば…と、ピアノは低音部分を意識して演奏しました。ライブのように行くときは行って落とすところは落とすことも考えて表現したつもりです。その辺りもちょっとだけ含めて、リスナーさんがまるでライブを聴いているかのように楽しんで頂ければ、うれしいです!
またボーナストラックのゆいさんにも是非注目下さい!」──川越好博(Key / ZIZZ STUDIO)

   ◆   ◆   ◆

「褒めちぎるトコしか見当たりませんコレ。
ゆいさん、藤井さん、川越さん、磯江さんらとのレコーディングは、ステキな作品を生み出そうとする熱量が心地良く、あーこのまま500曲位やりてーなんて思った事を思い出しています。
こだわりと言えば、ベースが居ないから各々で宜しくーという暗黙の空気でしょうか(笑)。
察して…いるー!ほら、やっぱり!達人の集まりはスゲーなーという印象。
パーカッションの機材トラブルで四苦八苦していたところ、見かねたゆいさんが急遽口笛吹くぜ!と録音したHONEY…ほら、やっぱり!なんちゅうクオリティ!この為に機材ブッ壊れたようなもんです。嘘です。ごめんなさい。
新しい音世界の扉を開く、掛け替えのない瞬間を、是非一緒に体験しましょう\(^o^)/」──田中まさよし(Per)

   ◆   ◆   ◆

「楽しいメンツで同時録音ができるなんて、なんと楽しい企画でしょうか!
1日10曲録る勢いで、スタジオライブ的なイメージかと思いきや、本気のアレンジメントとレコーディング。
包容力があって、きらきら空間を展開する田中さんの超絶パーカッション。
凛として、表情豊かな川越さんの素敵ピアノ。
隅々まで気持ちが入って、いつまでも聴いていたい、スーパー心地良い藤井さんのアコギ。
そして、この物凄い手練れたちを前に、一歩も引かないどころか、時に圧倒するパフォーマンスと声量で、矢継ぎ早に(いやほんと)、曲に魂を吹き込んでいく、榊原ゆいさん。
もともと素敵な曲揃いですが、これまた絶品アコースティックサウンドに生まれ変わり、楽曲も喜んでいるよ。
同時録音のために、藤井さんをアンプルームという名の小部屋に押し込めてしまい、胸が痛みました。ギタートラックに時折入るブレスが、過酷さを物語ります。
これ、またやりましょう!持ち曲全部。シリーズにしよう!」──磯江俊道 (RecEngineer / ZIZZ STUDIO)

   ◆   ◆   ◆

取材・文◎今俊郎

■初アコースティックアルバム『LOVE×Acoustic Vol.1』

2019年4月24日(水)発売
01. Love☆Jet! (Live Short Ver.)
02. HONEY (新録アコースティック Ver.)
03. Aqua Voice (PCゲーム『朝凪のアクアノーツ』OP曲)
04. ボクノセカイ (PCゲーム『あるぺじお』OP曲)
05. 移りゆく花のように (PCゲーム『処女はお姉さまに恋してる2~2人のエルダー~』挿入歌)
06. 星影灯 (PCゲーム『処女はお姉さまに恋してる 2つのきら星』挿入歌)
07. SAYONARAじゃない。 (PCゲーム『Fateタイガーころしあむ』ED曲)
08. 奇跡の絆 (PCゲーム『めぐり、ひとひら。』主題歌)
09. STAR LEGEND (PCゲーム『77~And.two stars meet again~』 OP曲)
10. 片翼のイカロス (TVアニメ『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-』OP曲)
<ボーナストラック>
11. HONEY (Acoustic Yui Whistle Ver.)

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