ロックの進化にも
多大な貢献を果たした
キング・カーティスの
『ライヴ・アット・
フィルモア・ウエスト』
本作『ライヴ・アット・
フィルモア・ウエスト』
オリジナル盤に収録されているのは9曲。前述した鳥肌モノの「Memphis Soul Stew」が1曲目に収められており、7分以上の白熱したプレイが聴ける。特にジェリー・ジェモットとバーナード・パーディーのリズム隊が素晴らしいが、ゲストのビリー・プレストン(ビートルズのレコーディングでもお馴染み)のオルガンとコーネル・デュプリー(カーティスと同じくテキサス出身。後に結成されるスタッフのメンバーで、スタジオミュージシャンとしてロック作品への参加も多い)の荒削りのギターも素晴らしい。
他の収録曲はプロコル・ハルムの大ヒット「青い影(原題:A Whiter Shade Of Pale)」、同じくレッド・ツェッペリンの大ヒット「胸いっぱいの愛を(原題:Whole Lotta Love)」、カントリーシンガーのボビー・ジェントリーの「オッド・トゥ・ビリー・ジョー」、フォークシンガー(現在はカントリーシンガー)として知られるジェリー・ジェフ・ウォーカーの「ミスター・ボージャングルズ」、スティービー・ワンダーの「涙をとどけて(原題:Signed, Sealed, Delivered I’m Yours)」など、アメリカーナ志向の選曲がなされている。
当時、黒人のアーティストがカントリーやロックの曲を演奏すること自体、かなり珍しかったわけだが、そのおかげで多くのリスナーがこのアルバムを聴くことになり、彼らの音楽が結果的に広い影響を与えることになったのである。スタッフ、TOTO、クルセイダーズなどのように直接的な影響を受けたグループの他、現代のロック、ソウル、ブルース、ジャズといったポピュラー音楽の根底に彼らの音楽は根付いているのだ。
もし、このアルバムを聴いたことがないなら、この機会にぜひ聴いてみてほしい。きっと今までにない新しい体験ができると思います。
TEXT:河崎直人