ロックの進化にも
多大な貢献を果たした
キング・カーティスの
『ライヴ・アット・
フィルモア・ウエスト』

本作『ライヴ・アット・
フィルモア・ウエスト』

このアルバムは、以前このコーナーで紹介したアレサ・フランクリンの『ライヴ・アット・フィルモア』と同じセッションである。1971年3月5日〜7日まで3日間にわたって行なわれたライヴの模様を収録したもので、カーティスとキングピンズはアレサの前座とバックを務めている。なお、ホーンセクションで参加しているのは、南部ソウルやスワンプロックのバックでも知られるメンフィス・ホーンズ。同年8月にカーティスは自宅近くで刺殺されてしまうので、本作は遺作となってしまった。彼も彼のグループも脂の乗り切った時であっただけに残念でならない。

オリジナル盤に収録されているのは9曲。前述した鳥肌モノの「Memphis Soul Stew」が1曲目に収められており、7分以上の白熱したプレイが聴ける。特にジェリー・ジェモットとバーナード・パーディーのリズム隊が素晴らしいが、ゲストのビリー・プレストン(ビートルズのレコーディングでもお馴染み)のオルガンとコーネル・デュプリー(カーティスと同じくテキサス出身。後に結成されるスタッフのメンバーで、スタジオミュージシャンとしてロック作品への参加も多い)の荒削りのギターも素晴らしい。

他の収録曲はプロコル・ハルムの大ヒット「青い影(原題:A Whiter Shade Of Pale)」、同じくレッド・ツェッペリンの大ヒット「胸いっぱいの愛を(原題:Whole Lotta Love)」、カントリーシンガーのボビー・ジェントリーの「オッド・トゥ・ビリー・ジョー」、フォークシンガー(現在はカントリーシンガー)として知られるジェリー・ジェフ・ウォーカーの「ミスター・ボージャングルズ」、スティービー・ワンダーの「涙をとどけて(原題:Signed, Sealed, Delivered I’m Yours)」など、アメリカーナ志向の選曲がなされている。

当時、黒人のアーティストがカントリーやロックの曲を演奏すること自体、かなり珍しかったわけだが、そのおかげで多くのリスナーがこのアルバムを聴くことになり、彼らの音楽が結果的に広い影響を与えることになったのである。スタッフ、TOTO、クルセイダーズなどのように直接的な影響を受けたグループの他、現代のロック、ソウル、ブルース、ジャズといったポピュラー音楽の根底に彼らの音楽は根付いているのだ。

もし、このアルバムを聴いたことがないなら、この機会にぜひ聴いてみてほしい。きっと今までにない新しい体験ができると思います。

TEXT:河崎直人

アルバム『LIVE AT FILLMORE WEST』1971年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. メンフィス・ソウル・ステュー/MEMPHIS SOUL STEW
    • 2. 青い影/A WHITER SHADE OF PALE
    • 3. 胸いっぱいの愛を/WHOLE LOTTA LOVE
    • 4. アイ・スタンド・アキューズド/I STAND ACCUSED
    • 5. チェンジズ/CHANGES
    • 6. ビリー・ジョーの歌/ODE TO BILLIE JOE
    • 7. ミスター・ボージャングル/MR. BOJANGLES
    • 8. 涙をとどけて/SIGNED SEALED DELIVERED I'M YOURS
    • 9. ソウル・セレネイド/SOUL SERENADE
『LIVE AT FILLMORE WEST』(’71)/King Curtis

OKMusic編集部

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