【全6回連載】“傷だらけの天才バッ
ター”西岡剛が今だから話せる『過去
・現在・そして僕の未来』《第1回》
アキレス腱断裂の真相
「自分自身、すごく反省すべき点があるんですよ」。
西岡は開口一番、真剣なまなざしの中、こう切り出した。まさに“肩で風を切って”歩いてきたような球界のエリート選手から、まさかこんな話が出てくるとは思いもよらなかった。
「練習はしまくっていました。練習ではなくて、ストレッチやケア。つまり、『体を大事にする』ということです。やっぱり野球の動作に入る前には必ず、体の芯から汗を出してこそ、その日の状態が分かるんですよ。どこが張ってるだとか、どこをもっと繊細にしなくてはいけないとか」
「20代の時って、寝起き状態でもすぐにダッシュできる感覚なんです。だから、今は(それができない年齢となり)ストレッチやウォーミングアップの大事さだったりが分かったので、今は練習している時間よりも、そっちにかける時間の方が多いですね」
「僕はケガばかりしてきて、そのケガを治すために、ずっと闘ってきました。でも、野球選手に関わらずプロアスリートって皆、すぐに『ああ治ったな~』という感覚なんです」
「いや、3年、5年…、10年と経った時、古傷というか『ああ、あの時のケガの影響が、今こんなに響くのか…』と、ずっと後になって初めて分かることなんです。先ほど『闘う』と言いましたが、ケガと闘うのではなく、そのケガと向き合い『どう付き合っていくか』という風に考えと行動を変えてから、カラダの状態が良くなってきました」
「こうやって向き合いだしたのは、この4年くらいです。自分のせいでケガしたものは大したことないんです。(2014年3月、阪神の同僚、福留選手との外野守備衝突などの)事故的なものが一番後遺症として残りますね。肉離れとかはストレッチでカバーできるんです。でも、予測できなくて突然事故したものはすごい衝撃なんです。デッドボールもほとんどが「来る!」と分かっているので力入れられます。そうではない、見えない状態でいきなりくる衝撃は予想をはるかに超えるものなんですよ。特に、僕は首もやっているんで。一般の方は僕らほどトレーニングをしないので、もっとしんどいと思います。(そういう事故にあってしまった人は)一日中、ムズムズしたりとか。それは多分、自律神経に関わっていて、うつ病になったりする人もいると思うんですよ。それをどう克服できるか―というのを自分は今、探っている状態です」
太ももを固めていたら、その影響がいきなりアキレス腱に
-2016年に起こったアキレス腱断裂はどうして起こった?
「あの時はハムストリングス(太もも)を張ってて、肉離れしないようにバンデージで固めていたんです。でも、ここ(ハムストリングス)を固定した分、(負担が)やっぱり下に流れてきて、そこで『ブチッ!』となったと思うんです。プロ野球選手で、痛み止めの注射を打ったり、ボルタレンやロキソニンを飲んだりしている人は今でも多いのですが、そこまでしてやること自体、ナンセンスだと思っているんですよ。プロで何億円も稼いで『今日、この試合だけは!』という時には必要なことかもしれないですけれども…。でも、人生は野球のあとも続くので、そういうのをカバーできるようになるとプロ野球界も変わっていくだろうと思います」
若いうちなら無茶もきくし、とにかく練習を重ねれば試合で結果が出て、それでいいと思っていた。もちろん、練習をすることは間違いではないが、若い時分は親から授かった天賦の才能に溺れ、いつしかケガにつきまとわれるようになっていた。そんな予期せぬ事故にあいながらも、持ち前の向こう気の強さで克服してきた。だが、その“病魔”はいつしか自分を追い詰めていたことを知る。30代となってストレッチやケアの重要性に気づいた西岡。次回はメジャーに行って分かったこと、そして先日引退したイチロー選手のことにも触れる(第2回に続く、敬称略)。
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