スザンヌ・ヴェガの
ジャーナリスティックな
視点が光る『孤独(ひとり)』
生誕100周年のピート・シーガー
本作『孤独(ひとり)』について
前作同様、本作はイギリスで大ヒット、全英チャートでは2位になっている。全米チャートでも11位となり、文句なしのヒット作となった。内容はもちろん良い。収録曲は全部で11曲、デビュー前の『ファスト・フォーク』時代に書かれた曲が多い。冒頭の印象的な「Tom’s Diner」の初出『ファスト・フォーク』の記念すべき1巻1号(1984年発行)で取り上げられている。この曲も「Luka」と並ぶ彼女の代表曲で、カバーが多い。彼女の最大のヒット曲で代表曲の「ルカ」はシンセも加えたポップなナンバーに仕上げてはいるのだが、歌われているのはショッキングな幼児虐待の内容で、彼女がジャーナリスティックな視点を持っていることがよく分かる。「Gypsy」は彼女が18歳の時に書いたもの。「Night Vision」と「Calypso」はどちらも文学についての解釈である。他にもダウンタウンの街の様子を歌ったものや他人とのコミュニケーションの困難さについてなど、誰しもが日常で感じている身近な題材を文学的な表現で歌っている。
今聴くと、本作で使われているシンセの音にチープさを感じるのは確かだが、そんなことが気にならないぐらい彼女の存在感のある歌声に引き込まれる。もし彼女に音楽を聴いたことがなければ、これを機会に聴いてみてください。きっと新しい発見があると思うよ♪
TEXT:河崎直人