最近電子書籍版が発売となった、「SNSは権力に忠実なバカだらけ」(ロマン優光・著 コア新書)発売元コアマガジン

最近電子書籍版が発売となった、「SNSは権力に忠実なバカだらけ」(ロマン優光・著 コア新書)発売元コアマガジン
TwitterなどSNSでは政治や社会をめぐる議論、というよりも罵り合いが日夜起こり、分断や対立が表面化している。なぜそんな現状になっているか、誰よりも正しいミュージシャン・ロマン優光が解説する。ネトウヨにバカ負け 東日本大震災の後にTwitter上で巻き起こっていた原発に関する議論(というより罵り合い)で顕著に見られていた様々な問題点が、現在も改善されないまま、いや、より改悪された形でTwitter上にはびこっています。

 意図的な捏造。デマを検証しないまま拡散する人々。客観的な事実よりも自分の中の思い込みを真実として優先する人々。内容よりも言葉の印象を重視する人々。不毛な罵倒。足を踏んでしまっただけの人に死刑を宣告してしまうような、相手がやったことに見合わない過剰な攻撃。これ以外にもある様々な問題も、原発を巡る議論において既に雛型として形成されていました。
 あらゆる場所でそういった問題は表れていると思いますが、とくに激しく表れているのは政治的問題に関わる領域においてでしょう。
 反原発運動を左翼的とみなされる人の多くが支持していたため、反左翼という観点からネトウヨとよばれるような人々の一部が原発賛同側についていたり、本来左翼的とは言えないような人が反原発側にいたため前述のようなネトウヨに左翼視され敵視されるという流れもあり、原発を巡る議論から地続きになっている部分も大きいのです。
 本来、ネトウヨという言葉はネット右翼の略称以上の意味を持ってませんでした。それが侮蔑的なニュアンスを持って使われるようになったのは、そういった人たちの一部がやっていた単なるレイシズムの発露でしかないような言動、露骨な歴史修正主義、悪質で差別的なデマや対立陣営(と彼らが思っているもの)に対するデマの拡散、ネット上で暴言コメントを集団で書き込むような行為が反感を買い、そのような意味が付加されてしまったためだと思われます。それはバカにされますよね。
「ネトウヨは差別語だ!」と言い出すネトウヨの人がいますが、「韓国人だから差別しているのではなく、彼らの行いに問題があるから差別しているのだ」というレトリックを使って自己正当化を図っているのだから、ネトウヨが差別語だとしたら「自分たちの行いに問題があると思われているから、そう呼ばれてしまう」ということを受け入れられてはどうでしょうか。
 もし、ちゃんとしてる人なら、右派とか保守とか言われてますよ。左翼のレッテル貼りに過ぎないと言うかもしれませんが、本気で右でも左でもない政治に全く関心のないノンポリの人からネトウヨ認定されてるんだと思いますよ。
 ネトウヨの言動の根幹にあるものの一つとして反左翼というものがあります。ただ、彼らの左翼認識はおかしなものが多いのです。極左というのはあくまで中核や革マルといった新左翼の過激派を指す言葉なのですが、彼らは相手かまわず極左という言葉を使います。すでに意味が決まっている言葉なのだから、いい加減に使いすぎです。
 共産党と中核は仲が悪いし、反レイシズム界隈と中核も仲が悪いんだから、一緒になって北朝鮮の手先になってるとか無理な設定です。
「デモにいく奴は何万円も日当をもらっている」「沖縄で基地反対をやっている奴は何万円も日当をもらっている」と言うのも無理がありすぎます。
 まず、誰がそんなに金を払っているというのですか。北朝鮮ですか? 中国ですか? 日本共産党ですか? 北朝鮮や中国が日本国内で反日的な活動をするなら、ただの民間の日本人には内実がバレないようにやりますよ。日本共産党にそんな金があったら、現状が全然変わってきてると思いますよ。少なくとも、デモの日当に金使うなら別のことに使うはずです。
 高江の反対運動は地元の人たちがやっていたもので、そこに大量の警官を全国から投入したので、色んな界隈から応援が集まったという経緯なわけで、住民主導で始まったものです。外部の左翼が集まって始めたものではないですよ。ネトウヨは基本的に新興宗教に否定的なのに、沖縄に関しては幸福の科学のシンパから出されるデマ情報を信じてるのは変じゃないですか?
 そういえば、高江のヘリパッド建設反対派のテント村に漢和辞典があったことで日本語の勉強をしている外国人がいる可能性、ようするに中国人の関与をほのめかしていた人がいたのですが、漢和辞典でなくて中日辞典じゃないとそういうことには使えないと思います。
「日本政府の意見に逆らうのはおかしい」という理由から外国の手先認定をする人も多いですが、政府の方針に従わないとおかしいという考えがおかしいのです。日本を愛することと、現政権に反対することは矛盾しないのです。
「長いものに巻かれない人間はおかしい、他の長いものに巻かれているに違いない」みたいな考え方は非常に恥ずかしいというか、自分がそうだからといって他人もそうだとは思わない方がいいとしか言いようがないです。
「憲法九条を支持している人間は他国が攻めてきた時にどうするんだ」みたいなことを言う人もいますよね。
 そりゃ普通に自衛戦争するだろうと思ってる人が大半なんでは。私もそう思っています。九条を支持している人の大半は他国へ侵略戦争をおこなうことに反対しているだけで、防衛戦争に反対している人はほとんど存在しないでしょう。なぜ、極端な方に解釈するのか意味がわかりません。自衛隊の位置付けとか人によって色んな考えはあるし、九条を維持したい人が、全ての項目において改憲を認めない人かといえば、そうではないと思います。
 ネトウヨの人がよく言い出すのが「しばき隊」という組織の存在です。正確にいえば、「反レイシズムや反安倍の人間は全て『しばき隊』という組織の人間であり組織だって動いている」という妄想です。「レイシストをしばき隊」というものは存在しましたし、その後継団体と言えるようなC.R.A.C.という反レイシズム団体は存在します。しかし、ネット上でそういう発言をしている人の大半がそこに属していない単なる個人です。ネットの相乗効果で一斉に同じ対象に対して攻撃的なツイートを始めているように見えますが、それは示しあわせているわけではないのです。
 デモも一緒です。あれもネットのオフ会みたいなもんで、主催者はいても、参加者の大半は組織に動員されているわけではなく、個人として参加しているわけです。そういったデモに旧左翼系の団体が動員をかけて参加したりしたこともあると思いますが、大半は関係ないのです。
 しかし、こういったデマをばらまいているネトウヨ(こういう与太話をばらまくからネトウヨとよばれるのですが)の人たちはどこまで信じてるのでしょうか。ネトウヨとよばれる人の中には悪質なデマを意図的に捏造している人もいますが、それを本気で信じているとしか見えない人もいます。
 悪意によってデマを捏造する人は意図がわかりやすいので理解はできるのですが、相互に矛盾するような整合性も現実味もないような話も全て信じているように見える人は理解できなくて怖いです。どっからどこまでがわかってやってる人で、どっからどこまでが本気で信じている人なのかが気になります。人は信じたいものを信じる生き物ですが、それにしたって、あそこまで無心に信じられるのは怖いことです。
左やリベラルの変な人 左やリベラルと言われている人の中にも変な人はいます。
 変な陰謀論を信じていたり、変にスピリチュアルだったりするような人は問題外なので特に言うことはないです。安倍政権を支持している人を誰でもネトウヨやレイシストよばわりする人たちです。選挙というものは、全ての政策を支持して投票する人ばかりではありません。好ましくない政策があったとしても、他にそれを上回るくらい支持できるものがあれば、その政党を支持しても不思議ではありません。
 安倍さんを支持するネトウヨは多いですが、安倍さんを支持する人の全てがネトウヨではありません。そういう人に対して、ネトウヨよばわりするのは理不尽でしかないし、嫌われるだけではないでしょうか。その人に嫌われるだけならまだしも、それを見ていた人からも不快に思われるでしょう。そいつ個人が嫌われるだけならいいですが、彼と似たような主張の人までまとめて反感を買いかねないわけで、非常に迷惑な存在です。敵を増やすことにしかなってないんですよ。
 安倍さんに関わることだけでなく、LGBTの問題でも、フェミニズムの問題でも、ちょっとしたことで相手を差別主義者扱いしたり、ミソジニーの固まりのように扱ったりする人たちがいますが、これも本当によくないと思います。
 罵倒ツイートのたぐいもそうです。結局、世の中、内容以前に言葉使いで判断する人が多いのだから、攻撃的な言葉を使っていたら大勢に支持されることは難しいです。本当は内容で判断されるべきなんですよ。でも、そうはいかないのです。
 対レイシスト相手なら別にいいですよ。安倍政権打倒を目指すなら数が必要なわけで、最初から話を聞いてもらえない状況をつくるようなことをしたら意味がないですよ。
 ネトウヨをからかう人もいますよね。「中国の指令でやってます」「日当をもらいました」みたいな嘘を書いてネトウヨを挑発する人。そういうつぶやきを証拠として喧伝するネトウヨもどうかと思いますが、実際に証拠としてWikipediaとかに載っけられちゃうわけじゃないですか。事情を知らない人で信じちゃう人がいるからやめた方がいいと思うのですよ。
「そんな重要な話、ツイッターみたいなオープンな場所でするわけがない」って普通は思うと考えてたんですけど、意外にそうじゃないみたいなんですよね。そういうつぶやきをしても身内が楽しいだけだし、罵倒系のツイートもそうなんですけど、飲み屋で人の悪口言って盛り上がったりするのと同じで、身内にしか届かないですよ。正論をロジカルに丁寧に言い続けることが大事なのでは。
 結局、Twitter上では互いに対立する陣営の中の異常な人間を見つけては叩いているだけで、お互いに相手の陣営の異常な人間しか見ずに、それを基準に相手を批判するようなことが繰り返されているのです。
 それは政治的な話題だけではありません。批判された方は身に覚えがないことを言われているだけなので、相手に対する反感を募らせていきます。一つのミスがあれば全てを間違っていると認定したり。時間の経過による考えの変化を、嘘をついていると罵ったり。そうやって他人を嘘つきよばわりする人間が、わずかな間隔で矛盾したことを言い出すのを非難されて、考えが変わるのは当たり前と開き直ったり。相手の陣営の不祥事は言い立てるが、自分の陣営の不祥事は黙認したり。「こちらの陣営の不祥事は言い立てるが、自分側の陣営の不祥事は黙認するのか!」と指摘する人間が、やっぱり自分側の人間の不祥事は黙認したり。こんなバカみたいなことが繰り返し起こってるのです。
「深淵を覗くものは……」ではないですが、同レベルでやり合っていくうちに傍からは同じように見えてきてしまいます。  お互いに高いレベルでやり取りできるのが理想ですが、相手がどんなに不快なやり方をしてきても、自分は丁寧な正攻法で対応すべきなのだと思います。
ネトウヨは普通の人 本来、ネトウヨとみなされている人たちは、反中、反朝、反韓、反左翼というだけの人たちで、民族主義でもなければ保守主義でもありません。旧来の右翼的な思想や保守的な思想を踏まえているわけではなく、新しく出てきたものなのです。
 深い思想があるわけでもなく、何かに対する反感で感情的な部分に触発されて動いているものだと思います。
 そういった存在ですから、いなくなることはなくても大幅に増えることはないだろうと思っていたら、第二次安倍内閣誕生以降にどんどん増加しているように感じられ驚きました。以前より保守や右寄りの人が増加しているのだろうというのは理解できましたし、さらに、そういう人が増えてくるだろうなとは思っていました。日本の内外の状況を考えると、そちら側に向く人が増えても不思議ではありません。
 そうではなくて、そういう人たちから見ても当然問題があるような言動を繰り返すような層が、こんなにも増加するとは思ってもみませんでした。
 ネトウヨは貧困で教育レベルの低いオタクな若者が主軸を占めているという見方がありますが、それは事実と違うと思います。
 逆に中年以上のある程度裕福な層、教育もお金もある世間的には成功者としてみなされているような別にオタク趣味でもなんでもない人が増えているのです。そういった層に取材にいくとネトウヨ的な陰謀論や歴史観を語る人が非常に多くなったという話を、年ぐらい前から出版業界の知人づてに聞くようになりました。ネトウヨに批判的な人間が考えていたネトウヨ像とは正反対の人たちです。
 実際、社会的に負け組と言われるような人が鬱憤ばらしのようにネトウヨ的活動に励んでいるのがメインだった時代もあるでしょうし、そういう人は現在もいるでしょう。しかし、今は2ちゃんねるの片隅で少人数が大量に書き込みをしていた時代とは違うのです。もっと幅広い層が参加しています。2ちゃんねるがネトウヨの活動の主軸だったころも、鬼女板(既婚女性板)にネトウヨにかぶれた人が多くいるという話があって、自分は嫁姑の争いを書いてるような創作実話くさいスレをひどい話見たさに覗きにいってたりしたんですけど、確かに唐突にそういうことを言い出す人が多くいた印象はあります。
 暇な時間をもて余したネット慣れしてない主婦が2ちゃんに入り浸っているうちに影響を受けるみたいなことが言われましたが、暇な時間が多いほどネットに触れる時間が増えて影響を受けやすいというのは確かでしょうね。
 以前はネットをやっている人というのは基本的にPCを使える環境にある人でしたが、スマートフォンの普及以降はネットの敷居は格段に下がりました。しかも、どこにでも持ち運びが出来るものですからネットに触れていられる時間も格段に増えます。そうやって新規にネットに参入してきた人はネット慣れしてないので、情報の精査の方法を覚える前に色んなものに影響を受けやすいです。そういうところからネトウヨが増えたというのも考えられますが、それはネトウヨだけに限らない話です。
 社会的に抑圧を受けていると感じている人たちがネトウヨ化するのは、誇れるものが何もないので、日本人は優れているという幻想にすがることで自分を誇っているという風な見方があります。自分は特別だという風に思いたいけど何も持ってないので「中国人や朝鮮人は下等な民族であり、日本人は優れた民族である。だから、日本人である自分は優れている」という思考に頼っているというのです。
 また、「老人、生活保護受給者、マイノリティといった人たちが優遇されることで、自分たちが不当に抑圧され、搾取されている」という思いもあると考えられており、その元凶として左翼に反感を抱いているとも考えられてきました。しかし、最近認識されるようになった社会的成功者でネトウヨであるような人たちにはこれは当てはめようがないでしょう。彼らは強者なのです。彼らがネトウヨ化したのは彼らにとって耳触りがいい意見だからだというのがあると思います。元々選民感、優越感の強い人たちが自分の考えを補強してくれるものとして歓迎したというのはあると思うのです。
 左翼嫌いなのはなんとなくわかりますね。労働者の権利とか商売の邪魔ですものね。生活保護とかも弱者の甘えなので嫌いそうです。ネトウヨに影響を受けてそうなったというよりは、ネトウヨという彼らの考え方に近いものを最近ネットで知って取り入れた感じなのではないでしょうか。
 一般的にネトウヨと呼ばれている人たちのことを、特殊な人で特定の層に存在していると考えがちです。アニメアイコンが多いとか言われてますが、別にネトウヨじゃなくてもアニメアイコンの人はたくさんいるし、単にアニメ好きな人がTwitterに多いだけなのではという気がします。
 少なくとも現在ではネトウヨ的な人たちは年齢・学歴・収入・性別を問わずいるわけで、ネトウヨって今はある意味では普通の人なんですよね。そこを認識しなければいけないのかなと思います。
 気になるのが、ネトウヨは妄想の世界で生きていればいいですけど、安倍さんはネトウヨ的な世界観を共有している部分があるとはいえ、現実の世界の政治家です。対中国、対韓国、対北朝鮮といったところでネトウヨの期待に沿えなくなることだってあります。いや、対アメリカだって現実の姿とネトウヨが語る安倍さんの姿では、一致しているわけではありません。妄想で補完されているだけです。
 安倍信者系の人たちは、理想の安倍さんと違う姿を安倍さんが見せだしたとしたら、そのままついていくのでしょうか? 新しいヒーローを探しにいくのでしょうか?
以上は、コア新書『SNSは権力に忠実なバカだらけ』の第一章の二節目から四節目までです。 電子書籍版は各販売サイトですぐにダウンロードできます。~目次~
第一章 SNSは気持ち悪い
地獄のTwitter空間/ネトウヨにバカ負け/左やリベラルの変な人/ネトウヨは普通の人/水原希子叩きのバカバカしさ/ゲイ・キャラクターを巡るあれこれ
第二章 ゆかいな愛国者たち
百田尚樹先生のバカがとまらない/百田尚樹先生の不毛な戦い/それは『殉愛』から始まる/ケント・ギルバートの本がバカすぎる/右曲がりのお坊ちゃん・高須院長/西原理恵子はリアリスト
第三章 新興宗教との付き合い方
僕とオウム真理教/笑えるワールドメイトと幸福の科学/清水富美加は悪くない!/景山民夫の悲しい最期/創価学会の人間
第四章 松本人志という権威
つまらなくなったと評判の松本人志/あの筋肉のせいなのか/ 『ワイドナショー』での微妙なしゃべり/ウーマンラッシュアワー・村本大輔はなんなのか
第五章 オザケン人気が謎すぎる
僕とフリッパーズ・ギター/フリッパーズ・ギターってそこまですごいか?/渋谷系ってなんだ!?/君は「燃え殻」さんを知ってるか/オザケンは超ポジティブ
第六章 ミスiDと暴力
ミスiDという治外法権/日野皓正のビンタ
◎上記電子書籍「SNSは権力に忠実なバカだらけ」の主要配信先は以下でご確認ください(リンクしないサイトでごらんの方はブラウザにURLをコピペしてください)。
http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_025.html
なお著者・ロマン優光氏の新刊 コア新書「90年代サブカルの呪い」も、紙書籍版が全国書店・ネット書店で発売中です。
http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_027.html

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