【<MUSISION FEST>インタビュー】
Kitri「そのときに左右される感じを
楽しみたいです」

ふわりと柔らかな質感の音に包まれて、硬質で高い音楽性があたりの空気にじわじわと浸透していく。心地よさの奥底には、ひだの狭間に隠されたヒリヒリした想いや日々の機微を漂わせながら、あくまで響き渡らせるのはピースフルでおだやかで、心地よく落ち着いた音世界だ。

音楽好きという両親の元で育まれたMona(モナ)とHina(ヒナ)のピュアな音楽性は、姉妹の間で緩やかな化学反応を起こしながら、控えめな物腰で強い存在感を放つ稀有なユニット像:Kitriを生み出していった。

歌いながら連弾でピアノを奏でるという独自のスタイルは、2019年5月25日に上野恩賜公園で開催される<MUSISION FEST 2019>で、どのような景色を描き出すのだろう。Kitriのふたりに話を聞いた。

──幼い頃からピアノを弾いていたとのことですが、最初は親の意向?覚えていますか?

Mona:覚えてはいないんですけど、私は音楽がすごく好きだったそうで、テレビの前で歌番組を見ながら歌ったり踊ったり。

Hina:私は覚えています。姉が先にピアノを始めていたので、それを横で見ていてすごく憧れて、母に「私もやりたい」と言って始めました。

──曲作りはどのように?
▲Mona

Mona:自然に始めていました。子どもの頃から、メロディ作りや作詞をしていたのですが、その後音楽の理論も勉強したことで作るノウハウが分かりだして、受験の合間とかに作っていたのが段々歌ものに変わっていった感じです(笑)。歌える曲を作ったほうが楽しいなあと思って、受験中クラシックピアノの練習をする合間にこっそり作っていました。

──ピアノもさることながら、歌うことも好きだったんですね。

Mona:はい。よくふたりで自然にハモってました(笑)。いつでも一緒に歌うっていう。

──周りを気にせずに音を出したり歌を歌えるような環境だったんですか?

Mona:小学校のとき、ピアノを買ってもらった際に防音室を設置しようと。で、設置してもらって。

──え、それはすごい。練習し放題だ。

Mona:それでも一応、夜遅くとか朝早くは時間を気にしながらやっていました。

Hina:私が幼い頃は防音室がない中で姉がずっと練習していたので、テレビを見るときにはヘッドホンをしてみる事もありました(笑)。
▲Hina

──そんなふたりが姉妹で活動することになったのは、どういうきっかけですか?

Mona:子どもの頃にクラシックの曲をふたりで連弾した経験があったので、それを思い出して「Hinaとふたりだったら何か面白いことができる気がするな」と誘った形です。

──で、すぐにオリジナルを?

Mona:はい。結成する前、受験中に書き始めていたオリジナルをHinaが聞いてくれて「いいね」って。「できたら一緒にユニットをやりたい」と言って、お互いのタイミングが合った時から一緒に活動を始めました。

──ひとりでのピアノ弾き語りと連弾との最大の違いは、どういうところですか?

Mona:やっぱり…息を合わせる必要があるところですね。ふたりが合わないとハーモニーにはならないので。

──なるほど、ひとりならそれは不要ですもんね。

Hina:ひとりだと精神的な面で心細いですけど、ふたり一緒に座っていると安心感もあります(笑)。

──ユニットを組む時点で、すでに今の形は構想されていたようですね。
Mona:最初っから「ふたりの歌声のハーモニーを聞かせる連弾ユニット」をやりたいと思っていました。今のスタイルを想定して、マイクを2本立ててふたりで弾きながらコーラスをハモったら見たことのない景色が見えるんじゃないかと、なんとなく想像していて。実際にやってみたら意外とうまくいって、今に繋がっています。

──曲も連弾を想定したアレンジになるわけですよね?

Mona:はい。最初は連弾の曲の作り方も分からないので、クラシックの連弾曲の楽譜を見ながら研究したり(笑)。どういうパート分けになってるんだろうとか、低音の人がベース/リズムを作って高音の人が装飾だったりピアノソロだったりをやるんだなあ…っていうのをなんとなく学びながら、自分もトライするというか。

──もどかしさや難しさにぶつかることもありますか?

Mona:なんというか、混雑します(笑)。手が混み合うというか、ぶつかってしまうんです。譜面に書いてみたものの、実際に連弾してみると「全然不可能」ってこともあったりして。

Hina:指が重なって弾けないんです(笑)。

──ヒナさんはギターやカホンもプレイしますよね。

Hina:「ピアノ連弾以外の音もあったら面白いかな」と、採り入れるようになりました。ギターは小学生の時に弾き始めたんです。「ギターできたらかっこいいな、できたらいいな」と思って、誕生日にギターを買ってもらって。父が趣味でギターをやっていたので、教えてもらいながら楽しんでやっていました。

──お姉さんはそれをどう見ていたんですか?

Mona:私にできない技を身につけていると「すごい」と思っていました(笑)。

──まさかKitriで活かされるとは。

Hina:はい。まったく思っていなかったので使えて良かったです。やっといて良かった(笑)。

──順調に音楽人生を歩んでいるように見えますが、挫折や苦悩はありませんでした?

Mona:ありました。ユニットを始める前はクラシックでピアノを勉強していましたが「何のために弾いてるんだっけ?」「受験があるのは分かるんだけど、音楽って何のためにやるんだったっけ?」って振り返るようになって、毎日苦しくて。

──分かる気もします。

Mona:経験がある方もいるかもしれませんが「自分はピアノだけではやっていけないかもしれない」「自分はこの道じゃないのかも」とか、受験中なのにそんな風に感じてしまう苦しさとか。

──18歳の頃ですね。

Mona:そうです。自分の中では「クラシックでやっていくのは…無理かもしれない」と挫折を感じたり。そこで「歌」というものを発見したというか、曲を作ってみようと思い、今のKitriに繋がるんです。受験中「いつかユニットを組みたい」という想いが強くなってしまって。

──そんな苦悩は全く知らず、Hinaさんは高校生活を楽しんでいた(笑)?

Hina:はい(笑)。でも、高校3年生のときに姉から「ユニットやってみたい」って聞いて「あ、そんなこと考えてたんだ、面白そう、賛成」ってことで。

──才能豊かな人は音楽仲間や周りの友達にいたであろうところで、なぜ白羽の矢を妹に立てたのでしょう。
Mona:パートナーがどんなに上手な人でも自分を出せないような気がしてしまったんです。Hinaだったら何でも言えるし、演奏も合うことは分かっていたし、価値観も近いのもわかっていたので、Hinaならプラスになるって信頼して。そもそも私自身ひとりで作業したり練習したりするのが好きなので、一緒にいられるのはHina以外考えられないんです。

──音楽の肌触りはフワッとしていますけど、ミュージシャン気質としては頑固なんですかね。

Mona:頑固かな?

Hina:音に対してはすごくこだわりをもって作っているので「自分がこうしたい」というのは常にもっていて、そういうのは頑固というか(笑)。

Mona:自分のやりたいことが表現できなければ、ひとりでやるほうがいいですよね。自分にとってプラスになるのはHinaとの連弾/コーラスですし、「ひとりでやるよりふたりでやったほうがいいな」って思って、相手がHinaなんです。

──Hinaさんへの信頼は絶大ですね。

Hina:私は、昔から音楽に関して姉をすごく尊敬していたので、「私でよければ」っていう。姉妹っていう強みがあるので、一緒にできたらいいなって思いました。

──<MUSISION FES 2019>もとても楽しみです。今からワクワクします。

Mona:屋外ってあまりやったことがないんですけど、天気だったり時間帯だったり、風を感じながら演奏できるのは家やライブハウスではできないことなので、すごく楽しみなんです。そのときに左右される感じを楽しみたいです。

Hina:場所によって音の響きも全然違うので、そういうのを感じるのが毎回面白いなあと思っています。

──5月の野外は気持ちいいですよ。

Mona:それこそ室内では体験できない音の広がり…しかも皆さん風を受けながらリラックスした状態で連弾やハーモニーを目を閉じて聞いてもらってもいいですし、心地よいライブにできたらと思います。

──まだまだこれからも楽しみですね。

Mona:いろんな楽器がありますし、何かできることがあれば試しながらどんどん採り入れていきたいなと。

──7月にリリースされる『Secondo』からの新曲披露も期待しています。

Mona:1月にメジャー・ファーストEPとして出させていただいた『Primo』は、初めましてという気持ちを込めた作品だったんですけど、2作目は次に繋げるための挑戦というか、いろんな楽器もアレンジして歌詞/メロディ/構成も演ったことのないことを採り入れたり、『Primo』で知って頂いたKitriとは違う、さらに進化したKitriが『Secondo』にあると思います。

──とても楽しみです。

Mona:人間的にも成長しながら、音楽もそのたびに変わっていくのを受け止めて、楽しみながら過ごしていきたいです。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
Kitri 2nd EP『Secondo』

2019年7月24日(水)
COCB-54286 1,800円+税
1.矛盾律
2.目醒
3.Dear
4.終わりのつづき
5.矛盾律 -naked-

<Kitri Live Tour 2019「キトリの音楽
会#2」>

10月5日(土)大阪
10月12日(土)札幌
10月19日(土)福岡
10月26日(土)名古屋
11月1日(金)東京
11月4日(月)仙台
<MUSISION FEST 2019>
2019年5月25日(土)
@上野恩賜公園(うえのおんしこうえん)
自由席 4,000円(税込)・当日4,500円(税別)
【ローソンチケット】 TEL:0570-084-003 Lコード:71721(

【チケットぴあ】 TEL:0570-02-9999 Pコード:147-382(

【e+】https://eplus.jp/musisionfest
開場/開演:12:00/13:00
出演(順不同):The Cheserasera音速ライン浅草ジンタ、浜端ヨウヘイ、関取花、kitri、フラチナリズム、MAISON“SEEK”

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着