第2期BiS完結!9人の生きざまを刻ん
だラストステージ

第2期BiS解散ライブはマイナビBLITZ赤坂

凄絶な最後だった。ノンストップでの2時間、文字どおり魂をここに置いていくような鬼気迫るパフォーマンスは、第2期BiSという存在を葬り去る明確な意思が伝わってくるものだった。
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2019年5月11日、第2期BiSの解散ライブとなる『Are you ready to go? TOUR』FiNAL公演。
研究員(BiSファンの名称)で埋め尽くされたマイナビBLITZ赤坂のフロアは、開始前から沸騰寸前のテンション。十字架のフラッグが掲げられたステージに9人が登場して1曲目は「BiSBiS」。
ミュークラブからゴ・ジーラへのマイクリレーに会場がわき返る。
お立ち台で声を張り上げるのはキカ・フロント・フロンタール。のっけからフルスロットルで投げつけると、会場からも塊のようなエネルギーが投げ返される。
「Did not」、「TiME OVER」と続けて「NOT the END」ではムロパナコからYUiNA EMPiRE、アヤ・エイトプリンスそしてペリ・ウブが次々にボーカルを取る。複雑な思いを抱いて今日この場所に立ったメンバーもいただろう。しかし、残りのエネルギーのすべてをぶつけるかのようなパフォーマンスに、集まった研究員たちも全力コールでこたえていた。
コール&レスポンスでスタートした「CHANGE the WORLD」。「世界を変える」を合言葉に活動してきた第2期BiS。数珠つなぎの連結ポーズから会場も一緒になってヘッドバンギングする。客席に飛び込み、立ったままの姿勢で歌うパン・ルナリーフィとそれを支える研究生たち。ファンとの絆を象徴する場面だった。
最強のロックボーカル・コレクティヴ
テンションが上がりきった会場は真空状態に突入する。V字形のフォーメーションから「gives」を熱唱するトリアエズ・ハナ。「YPP」ではキカがドライヴ感のあるボーカルを聴かせる。
アニメ声からエモいシャウトまで変幻自在なゴ・ジーラや直線的で推進力のあるペリ・ウブなど、それぞれのビート感を内蔵している9人。最終形態の第2期BiSは最強のロックボーカル・コレクティヴに進化を遂げていた。
反アイドル的美学を貫いた第1期BiSという、ある意味でパーフェクトな存在を超える使命を課された第2期BiSだが、その活動期間中には数々の名曲が誕生。斜め一列の隊形を左右交互に入れかえて歌う「Happy Birthday」に続いて、高速スカパンク「Never Starting Song」、BPM高めの超攻撃的なアレンジによる「ミステリアスホール」とアルバム『Re:STUPiD』収録ナンバーを連続投入する。
「SOCiALiSM」のイントロが鳴った瞬間、会場のあちこちにモッシュピットが発生!汗まみれになって踊りまくるメンバーと、この瞬間を永久に焼きつけようとする研究生たち。すごい数のこぶしがいっせいに波のように動く。初期衝動を生み出しているのはステージ上の9人だ。「I can’t say NO!!!!!!!」、気づくと客席にゴ・ジーラがダイブしている。何のためらいもなく客席に向かって身を投げ出すとマイクに向かって咆哮を発した。
エモーションの最大瞬間風速を維持したまま「WHOLE LOTTA LOVE」、「Don’t miss it!!」に侵攻。ステージを所せましと駆け回るペリ・ウブ。自らにデス・ペナルティーを科す、あるいはブラックホールに向かって猛スピードで突撃するかのようなすさまじいパフォーマンス。喜びや悲しみ、苦しかったことや後悔、それらすべてが熱狂の渦に飲み込まれていく。
涙をこらえて歌う「アゲンストザペイン」
ヴァニシング・ポイント(消失点)を目指して進行するBiSのラストパレードは会場も一体となってさらに加速。「ぎぶみあちょこれいと」に続いて、シアトリカルな「Human after all」では、ムロパナコを囲んでおどける一幕も。
あらゆるロックのギミックをアイドルに持ち込んだ先駆者といえるBiS。デスコアなイントロからはじまる「Not Special」、ゴ・ジーラ作詞による「SAY YES」では、この日最高のジャンプが会場のそこかしこで見られた。
ダイヤモンド型に9人が並ぶ「ロミオの心臓」、キカ歌い出しの「明日が来るなら」とセットが進むにつれて、会場にも次第に別れの予感が漂い出す。それをふり切るように「イツカヤラレルゾ」、「FLY」を続けざまに放つと「twisted grunge」へ。
このメンバーでこの曲を聴けるのも今日が最後と思うと感慨がこみ上げる。「NAKODUB」をはさんで、ラストはアヤの「たくさんのすてきな景色をありがとうございました」というアナウンスからの「アゲンストザペイン」。
BiS.LEAGUEの日々、戦力外通告、そして2019年3月30日『WACK EXHiBiTiON』での解散発表。顔をゆがめ涙をこらえながら、最後の力をふり絞って歌いあげると高々と両手を掲げて去って行った。
「楽曲と私たちの生きざまで世界を変えたい」
心肺蘇生のようなコールに呼び戻された9人。それぞれステージ上から最後の言葉を伝える。
「愛がすごくあふれている場所にいたことは、明日から生きていくための大きな糧になる」(ムロパナコ)。
「BiSは私にとって第一の人生」、「これからも楽曲と私たちの生きざまで世界を変えたい」(パン・ルナリーフィ)。
「もっと夢を見ていたかったという悔しい気持ちもあるけど、新しい夢に向かって進んでいく」(キカ・フロント・フロンタール)。
「BiSのすべてになった生活はすごく楽しくて幸せだった」、「これからもBiSをよろしくお願いします」(ゴ・ジーラ)。
「私は本当はBiSが大好きだったんだと思った」(アヤ・エイトプリンス)。
「(私にとってのBiSは)大切な居場所。解散しても大切な仲間であることは変わらない」(YUiNA EMPiRE)。
「歌姫になれたかはわからないけど、BiSの曲たちにはずっと輝き続けてほしい」(トリアエズ・ハナ)。
「私をBiSにしてくれて心の底からありがとうございます」(ペリ・ウブ)。
「みんなからもらったたくさんの愛をこれからのパワーにしていきます。ザマーミロー!!!」(ミュークラブ)。
第2期BiSの刻印
アンコールで披露されたのは第2期BiSを永遠に封印する棺のような「Are you ready?」。子守歌をモチーフにしたシンフォニーからEDMポップ、デスメタルへ天国と地獄を行き来する集大成といえる1曲を渾身の力で歌い上げ、その場に倒れ込む。解放のカタルシスを全身で表現しきった9人の表情はすがすがしかった。
終演後、WACK・渡辺淳之介代表からメンバーの進路が発表された。ゴ・ジーラとキカ・フロント・フロンタールは事務所との契約を即時解除し、それぞれの道へ。パン・ルナリーフィ、ムロパナコ、YUiNA EMPiREはWACKとの契約を継続。そして、アヤ・エイトプリンス、ミュークラブ、トリアエズ・ハナ、ペリ・ウブの4人は即刻契約解除し“FA宣言”。移籍金、契約金、人的補償なしで移籍先を探すことになった。解散の理由についてあえて多くを語らなかった渡辺代表だが、「いつの日か、この解散が良かったと思えますように」と願いを込めてステージを後にした。
2年8ヵ月の活動期間を通じて数々のドラマと波乱を見せつけてきた第2期BiS。ラストもまた生やさしいものではなく、最後の瞬間まで全速力で走り抜くとそのままの勢いで焼き切れた。すでに第3期メンバーのオーディションがはじまっている。第2期BiSの存在した時間が戻ってくることはないが、いまは焼け野原のように見えるその場所で、いつかまた豊穣な実りを目にする日が来ることを信じたい。
TEXT 石河コウヘイ

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