【ROLLY インタビュー】
いつかはセルフカバーの
アルバムを出したかった
“あっ、あいつの曲だな”って
一聴しただけで思ってもらいたい
このアルバムは過去に楽曲提供したものをセルフカバーしているわけですが、先方からどんなリクエストがあるのですか?
先方からのリクエストはいろいろありますね。
やはり、曲を作る時は歌う人のことを意識されるんですよね。
例えば「僕等のセンチュリー」だったら、ももいろクローバーZのメンバーを使って撮る映画の監督になったような気持ちで作ってるんです。必ず架空の物語でね。そういう意味では、最初に“こういうテーマで〜”というリクエストはほとんどないんですよ。だいたい僕が曲提供を頼まれる時って“「恋のマジックポーション」みたいな曲”というパターンか、凄まじいロックオペラみたいなものを求められる。
ROLLYさんのカラーが求められているわけですね。
特にKIMERUくんへの「恋してキメル!」はそうでした。彼の今までの曲とガラッと変えてくれと。しかも、グラムの感じって。
ROLLYさんがKIMERUくんに寄るのではなく、KIMERUくんを自分のほうに寄せたと。
でも、だいたい頼まれる時って“ROLLYさん丸出しで”って言われるんですよ。高橋 瞳さんの「鏡の中のフェアリーテール」なんて、“こんなロック、誰が他に作るの?”って。少なくとも聴いたことも観たこともないです、自分の曲以外では。
でも、全部そんな曲ですよ。中でもイヤホンズに提供した「未来泥棒」が壮大なスケールで、一番すごかったです。
この曲は大変でした! 「未来泥棒」の歌詞はね、AIが進歩しすぎて完全に人間の立場になっているんだけど、かつて自分を作り上げた人間の心理に戻りたいと思っているっていう世界観なんですけど…《繰り返す 地球の記憶が ワタシヲイマ 愛という 煌めくダイヤが バグラセテル》という歌詞を書き上げた瞬間に号泣しましたね。で、泣きながら永井ルイに電話して、電話口に読み上げました(笑)。イヤホンズのバージョンはもうやったので、自分のバージョンは違う目線…パラレルワールドっていうかね。同じ曲なんだけど、描いている視点が違う。手塚治虫先生の『火の鳥』もいろんな登場人物の目線になるじゃないですか。音楽でもそういうものを描きたかったんです。だから、イヤホンズのバージョンとは違って、かつては文明が栄えたけど、もう何千年も前に滅んでしまった惑星があって、風がブワ〜って吹き荒む中に透明のドームが建っててね、その中でたったひとり生き残った醜い男がお茶を飲んでいるんですよ。
曲の冒頭に入っている音って、その音だったんですね。
そうなんです。でね、その男は古文書みたいなものを発見したんだけど、なんとそれは僕がこのアルバムを作った時の譜面や歌詞だったという。そういうところから曲が始まるんです! で、また最後に譜面や歌詞を見ているんだけど、“ジャングルブッダ”と言って終わるのね。その“ジャングルブッダ”というのは、23年前に『Rolly's Rockrolly』を出して、すぐにレコード会社をクビになった時、すぐあとに“あいつのやってることは悪くない! 面白いんだ!”ってシンパの人が言ってくれて、「恋のトレモロマジックダーリン」を提供している元東京パフォーマンスドールの八木田麻衣さんと永井ルイさんと僕との3人で作ったユニットの名前なんですよ。アルバムを1枚作ったんだけど、それがまた凄まじいアルバムで、「魚の少年」というインディーズ時代のすかんちの曲も入っているんです。そうやって自分の中で今の作品と過去の作品がパラレルワールドみたいになっている…己のファンタジーの世界に入り込んで、完全にイカれてしまってる(笑)。よく“これは誰に聴いてほしいですか?”みたいな質問があるじゃないですか。もう分からないです! 誰が喜ぶんだろう? まぁ、自分が一番喜んでますけどね。
いやいや、圧巻です! カントリーからロックンロール、QUEENのような様式美サウンドやプログレ、さらには昭和歌謡といろんなエッセンスを持ったサウンドが詰まっていて、誰かのために書いた曲なのに、ROLLYさんじゃないと作り得ないアルバムになってますから。
僕はね、一聴しただけで“あっ、あいつの曲だな”って思ってもらいたいんですよ。吉田拓郎さんってそうじゃないですか。聴けば、拓郎さんの曲だと分かる。キャンディーズの「やさしい悪魔」なんて、まさにそうだし。その当時の拓郎さんってアイドルとかにいろいろ曲を提供してて、僕が中学生の時に『ぷらいべえと』というアルバムを出したんですよ。
まさに提供曲をセルフカバーしたアルバムですよね。
そう! それのつもりだったの。だからね、大昔からアイドルとかに楽曲提供を頼まれたら、いつかはセルフカバーアルバムを出したかったんですよ。それが出せました!
取材:土内 昇