大きな舞台でも変わらず音楽を無邪気
に楽しむ、chelmicoの今とこれから

「胸を張ってやってることを言えるよう
になった」いま確かに芽生えた自信

chelmicoというガールズラップユニットを知ったのは、まだ結成して間もない頃。ライブ経験も浅く、戯れ合うようにラップをしていた少女たちは、瞬く間にメジャーデビューを発表し、国民的飲料水のCMソング、そして今回バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』(わたぬきさんちの) のオープニングテーマに抜擢。お茶の間へと活躍の幅を広げるも、当の本人たちは出会った頃と何も変わらず、ピュアに音楽を、ラップすることを楽しんでいる。時代が平成から令和に変わる前日、chelmicoの今とこれからについて話をしてもらった。

Photography_Yuki Aizawa
Interview & Text_Sota Nagashima
Edit_Alex Shu Nissen
(ドラマ『四月一日さん家の』オープニング映像)

初のオープニングテーマに抜擢されたの
は、個性派ドラマ

――バーチャルYouTuberが出演する初のTVドラマ『四月一日さん家の』。そのオープニングテーマに二人の新曲「switch」がなっているわけですが、すごく画期的な番組ですよね。

Rachel : すごいですよね、毎週観てる! Twitterなどで検索すると、知らないでテレビをつけてた人なんかがびっくりしてるのをよく見ます。これはアニメなのか、ドラマなのかというような。

Mamiko : 曲を作るので放送前に番組を観させてもらったのですが、想像してたものと違って面白かったです。

Rachel : ほのぼの系でアニメっぽい感じなのかなと思っていたのですが、やり取りがしっかりしていて。脚本書いている人が芸人さんだったりもするから、ドラマとしてあまり違和感なく観れる。笑い声が効果音として入っているのなんかも、馴染んでいて面白いんですよね。

Mamiko : 「フルハウス」みたいなね!

――監督やスタイリスト、音楽と関わっているスタッフ全員かなり豪華ですよね。そんな中でオープニングテーマに抜擢されたのが、chelmico。

Rachel : そうなんですよ!結構大胆なオファーだなと思います(笑)。

――最初オファーが来た時どう思いました?

Mamiko : シンプルに嬉しかったですね、テレ東ドラマのオープニングかぁと思って。だけど、VTuberのドラマと言われ、初めはどんな曲にすればいいか悩みました。明るくパンチがある曲にして欲しいというオーダーがあったのですが、chelmicoって意外と明るい曲ないかもと思って(笑)
(chelmico『switch』MV)

――でも、その結果オープニングを飾るに相応しい、かなりアップテンポなパーティチューンに仕上がっていると思います。パーティソングにして欲しいという要望があった訳ではなく、chelmicoが本作を解釈した上での提案だったんですか?

Mamiko : 最初にみんなで歌えるものにしたいね、って話していて。だから、サビに関しては耳障り口触りを意識した言葉選びにしている部分もあります。今回の作品が家の中で完結する三姉妹のお話で、例えば両親を亡くしてしまっていたりするけれど、それでも楽しくいこうというようなオンとオフの切り替えもテーマにしていますね。

――それで曲名を「switch」に?

Rachel : さっき、まみちゃん(Mamiko)も言ってたけど、同じ部屋での生活の中で切り替えって難しいよねって話していて。気合い入れるっしょという時と、ゆっくりしようという時の切り替えをラップの歌詞でも、1番と2番のフロウの違いなどで表現しています。最初は「Nintendo Switch」が流行っていたからという理由もあるんですけど(笑)。

――なるほど。『四月一日さん家の』の三姉妹の様に、chelmicoの2人が一緒に暮らした時のこととか考えたことってありますか?

Rachel : あるある!

Mamiko : え?

――Mamikoさんは意外そうですね(笑)

Mamiko : 人と住むこととか考えたことあんまり無かったから(笑)。

Rachel : まみちゃんは結構パーソナルスペースを大事にするよね。逆に私は誰とでも住めるタイプで、初対面の人とも住めるかも(笑)。でも、まみちゃんと一緒に住むわけじゃないけど、1つ部屋を借りてそこに集まって制作できたら良いねと話したことはあるよね。楽だし、秘密基地みたいなのがあったらいいな。

ようやく世間に顔向けできるようになり
ました

――最近の活動について聞きたいのですが、爽健美茶のCMソングだったり、依頼を受けて書き下ろすことも増えて来てますよね。実際に作ってみていかがですか?

Rachel : 縛りがあると、それはそれでおもしろいですね。今まで基本的にはディレクター、トラックメーカーと私たち二人の中で完結しちゃうから。クライアントっていう存在がいると、これはダメなんだ、これは良いんだというようなバランス感が刺激的だったりもする。

Mamiko : 爽健美茶のときも難しくて苦労もしたんだけど、終わってみたらいい曲だなぁって。

Rachel : 今回の「switch」は、番組プロデューサーの方が私たちのことを理解して全肯定という感じだったので、意外とすんなり進んでいきましたね。

――昨年メジャーデビューし、このように活動の幅が広がってきていると思いますが、環境の変化はありますか?

Mamiko : 「あ、爽健美茶!」とかって、イジられたり(笑)。あれ聴いたよ観たよ、という報告されることが増えましたね。
(chelmico『Sokenbicha No Rap』)

Rachel : こういうことをやっているお陰でようやく世間に顔向けできるようになりました。お母さんにも心配されていたので。何してるの、大丈夫なの、ラッパーって何?みたいな(笑)。胸を張ってやってることを言えるようになった。お医者さん行く時も職業にラッパーって書いてる。

Mamiko : ラッパーって書いてるの?(笑)

Rachel : 書いてる書いてる(笑)。喉を診てもらう時とかに職業が自営業だと、喉を使う仕事だと伝わらないから。

――歌手じゃないんですか?(笑)

Rachel : 歌手は恥ずかしいです。歌手っていうと、浜崎あゆみさんとか八代亜紀さんみたいなイメージがあるので恐れ多い(笑)。あと、やっぱりラッパーって響きはカッコイイし、言いたいです。でも、それも最近の活動のお陰で自信を持てました。

――先程、Rachelさんは両親が心配してたと言ってましたけど、Mamikoさんはそういうことはなかった?

Mamiko : いや、母親はすごい心配してました。最初は反対されていたので。頑張ってるねと喜んでました。父親は曲調が明る過ぎるんじゃないか、もっと暗い曲やれとか言ってました(笑)。たぶん私の暗い曲調のものが好きなんでしょうね。逆に母親は「良いね〜明るくて」って(笑)。

Rachel : 良いコンビだね(笑)。

chelmicoが今後挑戦したいこと

――時代は平成から令和へ変わりますが(取材日は平成最後の日)、何か想うことなどありますか?

Rachel : 振り返りも良いけど、終わったことばかり言ってても仕方がないですしね。

Mamiko : 終わった後に、切なくなるのかな。今はお祭り状態だし。

Rachel : 終わって10年後ぐらいに切なくなるかもね。あの時楽しかったなぁみたいな。

――chelmicoの曲は日常的なことを歌っていることが多い分、例えば「LINE」とかその時代を象徴するキーワードも自然と含まれている。今言ったように10年後とかに聴き返しても、また別の煌びやかな魅力が出ると個人的には思っています。

Rachel : 確かに。泣いちゃうかも(笑)。

Mamiko : 結構グッと来ると思います。
――では、そんな未来に向けて今後挑戦したいことなどはありますか?

Rachel : バンドセットをやりたいですね。結構前に1度やったことがあるんですが、今は曲も増えていますし、色んなミュージシャンの方と制作したりもしているので、また違うアプローチもできるんじゃないかなと思います。バンドセットでツアーとかできたら、楽しいですよね!

Mamiko : 楽しそうだねぇ。

――お二人共、生粋のヒップホップ育ちというイメージではないので、バンドという表現と親和性も高そうですよね。

Mamiko : ライブは自分たち自身もあがるよね。

Rachel : うん、盛り上がると思う。安心感も高揚感もあって。

――今までバンドを組もうと思った経験は?

Mamiko : ピアノはやっていたけど、バンドはやったことないです。レイチェルはあるよね?

Rachel : 高校生の時コピーバンドをやったりはしてました。オリジナルをやるバンドをやりたかったのですが、趣味が合う友達がいなくて出来なかった(笑)。下手なので、今またギターを一から練習してます。

――では、行く行くはバンドセットにギターを持ったRachelさんが入る、なんてことも?(笑)

Rachel : じゃあ、それも挑戦したいことに追加で!(笑)でも、まみちゃんはバンドとかやってないのに勘がいい。初めてドラム触っても、すぐ8ビートとか叩けちゃうし。

Mamiko : いやぁ、叩けてないよ。でも、2人でやってたらカッコイイね。ホワイトストライプスみたいで。じゃあそれも追加で(笑)

Rachel : とりあえずは今、ニューアルバムを絶賛制作中なのでそれを楽しみに待っててください!

作品情報

chelmico – Single
『switch』
05.17 release

https://itunes.apple.com/jp/album/switch-single/1459357047?app=itunes


chelmico オフィシャルサイト
chelmico Twitter

大きな舞台でも変わらず音楽を無邪気に楽しむ、chelmicoの今とこれからはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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