DJ HACKs Club Interview_ujita_b

DJ HACKs Club Interview_ujita_b

昭和~平成~令和とクラブを見てきた
レジェンドDJ 宇治田みのる にインタ
ビュー<後編>

日本のナイトクラブシーンで活躍するキーパーソンにフォーカスするインタビュー企画「DJ HACKs NIGHTCLUB INTERVIEW」。DJやパフォーマーをはじめとする表で活躍してる出役の人から裏方として活躍しているプロデューサーや演出家まで、ナイトクラブ (以下:クラブ) に大きく貢献している人が今何を考え、何に取り組んでいるのかを掘り下げて聞いていきます。

今回は、昭和~平成~令和と3つの時代でクラブを見てきたレジェンドDJで、サーファー、芸能タレントとして幅広く活動されてきた宇治田みのる (Minoru Ujita)さんにインタビューしてみました<後編>。

宇治田みのるさんインタビュー記事前編
・昭和~平成~令和とクラブを見てきたレジェンドDJ 宇治田みのる にインタビュー
昭和~平成~令和、クラブの歴史を知り尽くす現役DJにインタビュー
SHOTA「みのるさんが初めてクラブに行ったのは何歳の時でしたっけ?」
宇治田「中学3年の時にお母さんに連れて行ってもらったのが一番最初だから… 40年ぐらい前かな。いま55歳だから。当時はクラブじゃなくてディスコだったけどね。」
SHOTA「40年間クラブを見てきて、一番楽しかった時代っていつですか?」
宇治田「どの時代も楽しかったね。ディスコ時代も、クラブ黎明期も、クラブ繁栄期も、そして今も。基本的にはいつでも楽しかったです。ただ世の中が一番キラキラしてたなって思うのは、やっぱりバブル期のディスコ時代。今を生きてる人たちに見せてあげたいぐらいあの頃はすべてがキラキラしてた、逆に言うとおかしかったね。むちゃくちゃだった(笑)冗談みたいな、マンガみたいなことが平気で起こってました。」
バブル時代はとにかくハチャメチャだった
SHOTA「たとえばどんな出来事ですか?」
宇治田「マハラジャに行った時にトイレに行ったらドーナッツが置いてあって「なんでこんなところにドーナッツがあるんだろ?」ってよく見たらそれはドーナッツじゃなくて、誰かが置き忘れたのか一万円札の束を輪ゴムで丸めた状態で置かれてあったり。あと、DJしてる時にお客さんがリクエストしにきて、曲名を聞いてかけてあげたら「ありがとう!」って言ってぽんと10万円を渡されたり。知り合いがマンションを買いたいって言ってたから不動産屋の友達を紹介したら、あとでカフェでいきなり札束の入った封筒を渡されて。しかもその知り合いはマンションを2つ買ったみたいで、そのお礼になんと300万円ですよ?ただ不動産屋の電話番号を教えただけで300万円もらいました。これが一番衝撃だったかな、20歳ぐらいの時。それが個人的にはバブルだな~って話。そんなのが、日常茶飯事で起きてました。女性も高級ドレスを着飾っていて、クラブだったりディスコに遊びに行ってて、とにかくあの頃は華やかさがありましたね。」
SHOTA「本当にそんなことがあったんですね!たしかに今クラブに遊びに行く人たちって、デートに行く時、友達と食事に行く時、クラブに行く時も、特に格好に差はない気がしますね。」
クラブ=特別なおしゃれをして行く場所 だったけど今は…
宇治田「僕がクラブに遊びに行くんだったら、まず行く前に絶対家に帰って、それがたとえユニクロでもいいから、自分なりの特別なオシャレをして遊びに行ってたんです。でも今の世代の人たちはいつでもどこでも同じような格好。やっぱりクラブに行く時って、バブル世代の人たちは気合を入れてた。僕も学生の頃はお金がなかったけど、カードを12回払いしたり、丸井の赤いカードで30回ローンを組んだりして一生懸命洋服を買ってたね。DCブランドブームの時はデニムが一本5,6万とかする時代だったからね。そういうのを買って、自分なりのオシャレをして、勝負をしてた。そういうのは今の時代にはなくなったよね。」
SHOTA「どうしてそのおしゃれする習慣がなくなっちゃったんでしょう… いつ頃から世の中が変わったと思いますか?」
宇治田「世の中がすべてにおいてコンビニエント (便利) になっちゃったからかな。コンビニが増えていったのと一緒で、人間もコンビニエントに頼るようになったというか。昔のバブル期は湾岸エリアにクラブがあって、みんなそこに通ってた。GOLDもそうだし、ジュリアナ東京もそうだし、O’BAR 2218もそうだし、MZA ARIAKEもそう。周りに何もないのにみんながオシャレをして通ってた。今はそんなところにクラブを作っても誰も来てくれない。あったらあったで逆にカッコいいのかもしれないけど、今のクラブはどちらかというとアクセスがいいところに集まるからね。」
SHOTA「世の中が便利になっていくのはうれしいことですが、気づかないところでそういう問題も膨らんでしまっていたとは… たしかに繁華街にあるクラブがいい?それともちょっと遠いけど隠れ家的なクラブがいい?と二択で言われたら前者をとってしまうかもしれません。でも中には行きづらい方がお忍び感あって価値がある、と思う人もいるだろうし。」
今勢いのあるクラブの立地はアクセス良好が条件
宇治田「今って、六本木のクラブが全体的に元気ないよね。でも渋谷のクラブは勢いがスゴいよね。だって渋谷から電車一本で、どこにでも行けるじゃん?埼玉も千葉も神奈川も、なんだったら群馬や栃木だって行けちゃう。そういう意味では渋谷のクラブが行きやすくなってるから人が集まるっていうのはあるかと。もっと気合を入れてクラブに遊びに行くお客さんが増えたらおもしろくなると思いますけどね。」
SHOTA「ある意味、ハードルがあった方が良いということですかね?」
宇治田「お客さんもそうだし、演出する側も、もうちょっと突っ張るところは突っ張ってもいいと思うけどね。ドレスコードみたいなのはあっても良いし。たまにびっくりする事あるもんね。”よくその格好で入れたね!”みたいな人、たまに見かけるもんね(笑)T.P.Oをわきまえるって言うか、近所のコンビニに買い物に行く時と同じ格好でクラブにくるんじゃなくて、自分なりのオシャレをして、”よし!クラブに行くぞ!”みたいな感じでクラブに向かうくらいの気合は必要だよ。」
DJとして生き抜くために必要なこと
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minoruujitaさん(@djminoru.u)がシェアした投稿 – 2019年 5月月19日午後5時01分PDT


SHOTA「長いキャリアを持つみのるさんだからこそ伺いたいのですが、長く活躍し続ける秘訣って何だと思いますか?」
宇治田「さっきの不動産屋の友達の話に戻るけど、そいつはバブル崩壊の後に連絡が取れなくなっちゃって、どこにいるのか、生きているのかすらもわからない。その時代から生き残って今もシーンにいる人っていうのは、やっぱりいつの時代も真面目に取り組んできた人だと思うんです。その友達も真面目じゃなかったわけではないけど、バブルに浮かれて派手にやっちゃったんだと思う。その時はよかったけど、調子に乗りすぎて、バブルが弾けていなくなる、っていう人を何人も見てきたね。自分の中で1つプライドがあって、僕は東京生まれ東京育ちなんだけど、いくつになっても東京に二本足で立っていたい。「あの人、消えちゃったよね」って言われるのだけはやめようと思ってる。それは、DJとしてもサーファーとしても。」
SHOTA「DJをやっていると世の中の音楽の流行りに常に敏感でいなきゃいけないと思うんですけど、DJとして今まで大事にしてきたことはありますか?」
宇治田「学校の先生みたいなこと言っちゃうけど、音楽は“音を、楽しむ”って書くじゃないですか。僕は音楽が大好きなので、音を楽しむことを常にしている。だからジャンルレスで、ロックを聴けばR&BやHIPHOPも聴くし、最近のEDMもなんでも聴く。音楽に対して食わず嫌いはしないかな、それが自分自身DJとしてのポリシーですね。」
DJとして長く生きていく秘訣: 「音」を「楽」しむべし
SHOTA「今の若い世代は好きなジャンルしか聴かないって人が多いと思います。今は音楽の情報があふれているので、自分の好きなもの以外触れない、スマホがどんどん好きなものを選んで表示してくるから、自動的にそれが見れないようになっているというのもあるとは思いますが…」
宇治田「僕が思うDJっていうのは、例えばEDMが好きな人に「HOUSEでこんなに気持ち良い曲があるんだよ」って教えてあげたりだとか、HOUSEが好きな人に「実はR&Bにこんなムードのいい曲があるんだよ」とか、レゲエしか聴かない人には「実はProgressive Houseにこんな気持ちいい曲あるんだよ」とか、そういういろんな曲を教えてあげるのがDJの仕事だと思ってます。ということは、プロのDJはいろんなジャンルの曲を知っていないといけない。逆に言えば、ジャンルに特化していないからこそ、あるジャンルに特化してるDJとそのジャンルだけで比べたら浅いかもしれない。例えばEDMを極めてるDJより、僕はEDMの知識が浅いかもしれない。でもオールジャンルで音楽を聴くようにして、それをみんなにお伝えするのがプロのDJだと思っているので。ATOM TOKYOのメインフロアでDJさせてもらうときは本当にそういう気持ちでやってるから、普段のATOM TOKYOで他のDJがかかけないような曲をかけたりするとかはしてますね。」
SHOTA「あるジャンルに特化したDJが洗練されててかっこいいように見える時代が僕にもありましたが、結局そのジャンルの音楽が好きな人しか沸かせることができなかったり、盛り上げられる層がかなり限られてしまいますよね。今日たまたまクラブに初めて遊びに来たっていうクラブ初心者さえも盛り上げられるようにするのがプロDJだよなって今は思います。」
宇治田「あと季節に合った曲を必ずかけるようにしていますね。その時にしかかけられないような曲をかけるようにしている。あとは時事的なネタも意識してる。例えば安室ちゃんの引退報道があったときはATOM TOKYOのメインフロアでも安室ちゃんの曲を1曲挟んでみたり。9.11の時にはジョンレノンのイマジンのREMIXをかけてみたり。そういうのが“音を楽しむ”=“DJを楽しむ”ってことだと思うし、”音楽で何かを伝える”ってことなんです。いろんなジャンルを引き出しとして持っていれば、より楽しみやすいし。それをお客さんに伝えるのがDJの使命だと思っているので、そのスタイルを大事にしてきました。」
今のクラブシーンに対して思うこと
SHOTA「昭和、平成、令和と時代が移り変わっていきますが、今のクラブシーンに対してどう思いますか?」
宇治田「難しい質問だけど、良い時代になったなとは思いますね。たとえば、僕らがDJを始めたディスコの時代は“DJは不良だ、遊び人だ、変なことやってるんじゃないか”とか、そういう悪いイメージがつきまとってたんだけど、いまや風営法からダンスの項目が外れたことによって、商業地域の特定遊興ではクラブが朝まで営業できるようになっていて。もともと風営法に縛られていたから特区でも1時までしか営業できなかったからね、環境は今の方が間違いなく良いです。」
SHOTA「たしかに風営法改正は、クラブという場所がグレーゾーンからホワイトに転じる歴史的な出来事でしたね。」
宇治田「クラブは環境が良くなったからこそ、クオリティの面(サウンド、照明、営業スタイル)も上げていってほしいなと思う。ただ人が入ればいいんじゃなくて、クラブって音楽を楽しむ場所なんだから、それを第一の目的として来てくれるお客さんを増やしましょうよっていう。ディスコの世代からナンパやお酒とかクラブに遊びに行く目的はいっぱいあったけど、何よりまずは良い音楽を求めに来て、次にナンパやお酒て感じだったけど、その順番が今は逆になっちゃってるね。本当に音楽が好きで遊びに来ている人が今はどれぐらいいるか疑問に思うこともあるしね。」
クラブに遊びに行く目的が第一に音楽じゃなくなってきている!?
SHOTA「本来のクラブの在り方が変わりつつある… 最近はさらにそれが加速してしまっているような気がします。クラブが大衆的な場所になって人が増えていいことでもあるんですけどね。」
宇治田「クラブやDJ側のお客さんに対する教育にも問題があると思うんだけどね。たとえばDJがお客さんに寄せすぎて新譜をかけない(=選曲的な挑戦をしない)とか、お客さんがわかりやすい曲ばかりかけているとか、そういうのもダメだと思う。あとたとえば、寒い季節に真夏の曲かけちゃうとか。盛り上がればええやんって人もいるわけじゃん。そういうのが、クラブのクオリティを下げちゃってる気がする。クラブやDJはもっともっと襟を正して、自分たちの“プレイヤー”としての環境を整えるべきなんじゃないかなと強く思うよね。」
SHOTA「たしかに今の環境が当たり前だと思ってる人からしたらもしかしたらこの話は理解するのが難しいかもしれない、けど以前のクラブが置かれていた環境を知る方の意見はとても貴重だと思います。僕も風営法が変わる前のクラブを知っているので、そこは下の世代のDJたちに語り継いでいかなければいけないなと感じますね。」
自分のかけたい曲をチャレンジする方法
宇治田「ただ、DJのクオリティを上げようと言って「これが今ヨーロッパやニューヨークで流行ってます」って、そんなことばっかりやっててもダメなんだよね。ここは日本だから。そこを上手くやるのがプロのDJ。僕はね、小さい頃ニンジンが食べれませんでした。でもある時お母さんがオムライスを作ってくれて、ペロっと食べたらお母さんが「すごいわね~嫌いなニンジンを半分も食べたのね」って。オムライスにニンジンを細かく刻んで入れてくれてたんだよね。それでニンジンが食べられるようになった。それと同じで、DJが「これは世界で流行ってます」って言ってずっと単調にかけてたら、お客さんもわからないものはわからないままで。お母さんがオムライスにニンジンをこっそり入れてくれたように、お客さんがわかりやすい曲の間に自分の推したい、挑戦したい曲を入れていけば、全然ウケなかった曲がだんだんウケるようになってくる。」
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