Fuki

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【Fuki インタビュー】
全てが自分の思い描く
通りのものになった

このアルバムを出せたなら
もう悔いはない

ヴォーカルスタイルという部分では、「神様はきっと」も新鮮でした。ここまで声を張らずに、伸びやかな歌声で聴かせるバラードというのは、今までになかったので。

そうですね。この曲は2月に出したシングルなんで、レコーディングしたのは去年だったんですけど、これまでに歌ってきた曲の中でも一番難しかったです。話し声よりも小さい声で歌ったんですよ。オケが静かな中での繊細な表現という部分での経験値はまだまだ低いので、すごく時間が掛かりましたね。「神様はきっと」は女の子の歌だから、ただやさしいだけじゃなくて、ちゃんと女の子らしいところも出したいというところで、かなり試行錯誤した覚えがあります。

この曲に続く「子供のように」なのですが、こちらはアコースティックサウンドで、「神様はきっと」とは違うやさしさがありますね。

この曲は大人びたやさしさというか、子供の頃を懐かしく振り返るような…CHAGE&ASKAさんの「On Your Mark」のような郷愁漂うノスタルジックな曲にしたくて、歌詞を書いていったんです。昔を懐かしんで寂しくなるんじゃなくて、いい意味で“あの頃は良かったな”と浸っているような曲なので、やさしい歌声を意識しました。子供の合唱を入れてもらったりして、そういうのは初の試みでもあったし、すごくいい曲になりましたね。

ファルセットも聴けるのですが、ファルセットって珍しいのでは?

珍しいですね。キーがめちゃくちゃ高くて、ファルセットじゃないと絶対に出ないんですよ。今回は他の曲でもファルセットを結構使っているので、苦手意識を克服できてきたかもしれないです。

そんな「子供のように」の歌詞は…

あまりひねくれてないですよね(笑)。

言葉を選んで言おうと思ったのですが、そうなんですよ(笑)。

そうだと思いますから(笑)。《落ちた手袋》とか具体的なワードを入れるのもASKAさんの歌詞の特徴なんですよ。抽象的なものではなく、具体的に物の名称を入れたりとか、そういうASKA節というのを自分なりの解釈で入れたくて。“誰にも覚えがあることを入れる”とか意識していましたね。

小石を蹴って家まで帰ったりね。

それって小学生の頃、誰もがやったことがあるじゃないですか。そういうポピュラーな言葉で表現したいと思って。たなかさんってアニメ『ポケットモンスター(以下、ポケモン)』の曲を書かれている方なので、『ポケモン』の映画のエンディングになったらいいなという気持ちで歌詞を書いていきましたね。

たなかさんには何かリクエストしました?

レーベルの方のご紹介だったのですが、メタル要素の強いアルバムならないように『ポケモン』の主題歌っぽいものをお願いしたそうです。でも、たなかさんはメタルを書きたかったみたいで。なので、次回は“ぜひ!”と思ってます(笑)。

では、Tom-H@ckさんの提供曲「絶戒のJuliet」は?

Tom-H@ckさんにはシンフォニックで暗い曲調のものをオーダーしました。結果的に「子供のように」も「絶戒のJuliet」もMaoくんの引き出しないものになった…特に「絶戒のJuliet」のようなアダルトでダンサブルなものってMaoくんはあまり書かないと思うので。この曲を初めて聴いた時、女性同士の恋愛の曲だと思ったんですね。メタルではないし、むしろアニソンっぽいと思ったので、歌詞は寿命の差があるもの…人間と人間じゃないものというイメージでした。この曲はあんきものメンバーでもあるJillさんにバイオリンを生で弾いてもらって、MVにも出てもらおうと思って、それを前提に歌詞も書きました。

「Sacred Bones Riot」はシンフォニックメタルに振り切りましたね。

Shuheiさんに曲を書いてもらうっていう時点で、“好きに作って!”という感じでした。ここまで振り切った曲がこのアルバムに入ることで、振り幅がより出たと思いますね。この曲があるとないとでは、メタラーの満足度も変わってくるでしょうし(笑)。

アルバムの最後を飾る「DAYS」はJ-POPですね。

安保さんに曲を書いてもらうことになった時点で、安保さんの得意なJ-POP路線というのは期待してました。この曲、実は歌詞を2時間ぐらいで書いちゃったんですよ。なぜ早く書けたのかって言うと、あまり複雑な言葉遣いはせず、誰が聴いてもいい曲だと思える歌詞にしたかったんです。とても素直な曲だったから、歌詞も飾らずに書こうって。

この曲もかわいい路線の歌声なんですけど、それもJ-POPモード?

J-POPスイッチを入れました(笑)。「魔法」や「青い季節」でもそういう歌い方をしていたんですけど、数年前と今とではスキルの面でも向上しているので、2019年のFukiがJ-POPスイッチを入れるとこうなるっていう感じですね。

今作が完成して、どんなアルバムが作れた実感がありますか?

このアルバムを出せたら、もうソロはやんなくてもいい!ってくらいに満足しています。これだけ自分のやりたいことが叶って…曲調もそうだし、歌詞も書きたいものが書けたし、絵恋ちゃんにも書いてもらえたし、撮りたいと思った曲でMVが作れて、Jillさんにも出てもらえたし、全てが自分の思い描く通りのものになったんですよ。もちろんソロ活動はやめないですけど、このアルバムを出せたなら、もう悔いはないですね。メタラーからすると好きな曲と好みじゃない曲が絶対にあるでしょうし、「神様はきっと」きっかけで聴いてくれた方は「Sacred Bones Riot」でびっくりすると思うんですけど(笑)、Fukiを好きな人なら気に入ってくれるものになったんじゃないかと思います。自分の好きなFukiの歌声がこれだけいろいろ詰まってたらお腹いっぱいになる…Fukiファンである私自身がそう思えるものが作れたので、早くこのアルバムを聴いたファンの方の感想を聞きたいです!

取材:土内 昇

アルバム『Million Scarlets』2019年6月12日発売 FABTONE
    • 【通常盤】
    • FBAC-090 ¥3,000(税抜)
    • 【豪華盤(DVD付)】
    • FBAC-091 ¥3,600(税抜)
Fuki プロフィール

フキ:天外冬黄(テンゲフユキ)名義でUnlucky Morpheusにも所属し、コミックマーケット等でのファンとの交流を2008年より続ける中、11年、LIGHT BRINGERのヴォーカリストとしてメジャーデビュー。群を抜いた声量、突き抜けるハイトーンヴォイスが特長。16年6月には“Fuki Commune”名義でソロアルバム『Welcome!』を、19年6月には2枚目となるソロアルバム『Million Scarlets』をリリース。Fuki オフィシャルHP

「Bloody Rain」MV

「絶戒のJuliet」MV

アルバム『Million Scarlets』
トレーラー

OKMusic編集部

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