十三機兵防衛圏を知らずして、2019年
のゲーム業界は語れない
ヴァニラウェア×アトラスの新作。『十
三機兵防衛圏』は買いなのか?
今回のゲームコラムで取り上げるのは、クオリティの高いタイトルを安定して発表する、あるメーカーと彼らの新作について。『ヴァニラウェア』と『十三機兵防衛圏』の名を聞いたことがあるだろうか?
ヴァニラウェア作品の魅力
ヴァニラウェアは、大阪に本社を持つゲームの開発会社。これまでに10作以上のゲーム開発に携わっている。ぼくが同社の作品の魅力に気づいたきっかけは、2011年にPSP(PlayStation Portable)で発売された「グランナイツヒストリー」をプレイしたことだった。
育成パートでは、それぞれのプレイヤーがオフラインプレイによって騎士の見習いを育てていく。訓練や遭遇戦を通じて、キャラクターを成長させる育成システム。限りのある行動ポイント(AP)を、パーティーを構成する4人のキャラクターで共有し、戦闘を進めるバトルシステム。どちらもとてもベーシックなシステムで、シンプルながら深く没頭できるものだった。
戦争パートでは、サーバー同期によって擬似的なオンラインプレイも可能にしていた。先に説明したとおり、このタイトルにおいては、登場する3国から1国を選択する形でゲームがスタートする。すべてのプレイヤーが1国を選択するため、当然、味方となるプレイヤー、敵となるプレイヤーが存在し、そこにオンライン対戦の要素があった。基本的にセッションに参加するだけのオンラインプレイであるため、行動はパーティーの能力任せ。そこにリアルタイムの細かな操作はない。しかし、2011年当時では、画期的とも言えるシステムだった。近年流行するリアルタイムストラテジーの草分け的なゲームだったように思う。
ヴァニラウェア作品は、古き良きゲームシステムをひとつの魅力としている。複雑化するシステムが、プレイヤーにとって必ずしも面白いかと言われればそうではない。古くても良いものは残す。新しいものも良いと判断すれば取り入れる。このあたりの審美眼が、ヴァニラウェアにはある。
また、ヴァニラウェア作品の大きな特徴に、グラフィックやキャラクターデザイン、音楽のクオリティの高さも挙げられる。名作と呼ばれるゲームになくてはならない要素だ。ゲームというカルチャーには、総合芸術的な側面がある。システムが面白いことは前提として、アートとしてもクオリティが高くなければならない。そんな気概をヴァニラウェア作品からは感じ取れる。
『十三機兵防衛圏』とは?
「オーディンスフィア」と「ドラゴンズクラウン」の両タイトルは、どちらもファンタジーの世界を舞台にしたアクションゲームだった。ヴァニラウェアが真骨頂とする、シンプルなゲームシステムと圧倒的なアートの世界。これらが堪能できる名作と呼ばれる作品たちだ。いつしか“ヴァニラウェア作品=ファンタジーアクション”が代名詞となり、発表当時、「十三機兵防衛圏」をそのようなタイトルだと想定する向きもあった。しかし、ゲームフリークたちの予想は、見事に裏切られた。
「じゃあ、新作はロボットアクションか!」その予想もやはり裏切られる。
十三機兵防衛圏は、リアリティを持った13人の主人公たちが織りなすSF群像劇だ。公式サイトにもドラマチックアドベンチャーとジャンルの記載がある。これはヴァニラウェアにとって新しい試みだ。いったいどのような作品となるのか、ヴァニラウェアの審美眼が試される。
『十三機兵防衛圏 プロローグ』をプレ
イして
数あるジャンルの中で、アドベンチャーは最もシステムがシンプルなジャンルだと言える。もともとそのような特徴を売りにするヴァニラウェアが、このジャンルで新たな勝負を仕掛けること。それは極めて自然なことなのではないだろうか。また、アドベンチャーは、映像や音楽のクオリティがより問われるジャンルでもある。“ヴァニラウェアが作るアドベンチャー”という枠組みは、彼らの紡ぐ世界を堪能するのにこれ以上ない舞台と言えるかもしれない。
一方で、アクションを中心に開発してきたヴァニラウェアにとっては、これまでとは違う要素も求められるだろう。それがシナリオのクオリティだ。舞台を、シナリオが最重要事項とされにくいアクションからアドベンチャーへと移行することで、よりゲームの評価に占めるシナリオの比重は高まっていく。「オーディンスフィア」において一定の評価を得たヴァニラウェア作品のシナリオが、10年以上の時を経てどのように昇華されていくのか。この点が「十三機兵防衛圏」の評価の分岐点となっていくはずだ。
『十三機兵防衛圏』公式サイト
十三機兵防衛圏を知らずして、2019年のゲーム業界は語れないはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。