aiko

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【aiko リコメンド】
メロディーの源泉を
再確認できる作品集

aikoの楽曲の面白さは
その視点、観察眼、思考、哲学

 aikoナンバーの時代を超えた普遍性。その秘訣は、これはもう歌の旋律にあることは言うまでもない。彼女のメロディーに確固たるオリジナリティーがあり、それが相当な強度を備えているからこそ、流行に左右されないのである。そして、ファンならばご存知の通り、彼女は歌詞先行で楽曲を作るタイプなので、メロディーの源泉は物語であり、言葉にある。つまり、aikoの楽曲の面白さは、彼女が持つ視点、観察眼、思考、哲学といったものに他ならない。『aikoの詩。』にはこれだけの楽曲が収録されているので、それも再確認もできる。例えば──細かく説明するのは粋じゃないことを承知で書くけれども、「花火」の《夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして》という有名なフレーズや、「ストロー」の《延長戦を繰り返してやっと見えた本当の痛みは/出会った頃より悲しくて寂しくて大切で》も然り。改めて言うまでもなく、その作風はとてもユニークだ。また、「ボーイフレンド」や「カブトムシ」などとは逆に、「アンドロメダ」や「恋のスーパーボール」や「三国駅」といった、タイトルにある言葉が歌詞に一切出て来ないことでリスナーの想像力を掻き立てるナンバーがあったりするのだが、この辺がDisc.3にまとまっているのも興味深いところだ。

 カップリング曲をチョイスしたDisc.4はさすがに他3枚とは若干趣が異なる。「陽と陰」や「Do you think about me?」、あるいは「ココア」といった、ライトユーザーがイメージする、所謂aikoらしさから少しかけ離れた世界観の(それゆえにコアなファンから支持されているとも聞く)歌詞も見受けられるし、サウンド面でもハードロックかプログレかという「舌打ち」や、サイケデリックサウンドが突出しているかのように思われる「甘い絨毯」などが収録されていて、彼女のアーティストとしての懐の深さと言おうか、シングルの表題作にはない魅力を垣間見ることができる内容である。

 ちなみにその「甘い絨毯」には、オリジナルアルバムへ入れることを予定していたものの、この楽曲自体が長尺であることや他に適当なバラードがあったことで収録を断念せざるを得なかったというエピソードもあるそうで、そう思うと、Disc.4にはこれまで埋もれていた楽曲に陽の目を見せる意味合いもあるのだろうし、ファン向けのカルトな側面もあろう。しかしながら、これまでシングル以外のaikoの楽曲をほとんど触れたことがないリスナーがDisc.4を聴いて、そこに気になる楽曲が発見できたとしたら、aikoの楽曲を深掘りする、即ちオリジナルアルバムを聴く動機付けにもなるだろう。その可能性は決して低くないと思う。

 そんな4枚のディスクで構成された『aikoの詩。』。全56曲で初回限定盤4,000円、通常盤3,500円(共に税抜)とコスパもいいので(初回限定盤には「aiko はじめてのスタジオライブ」が収録されたDVDが付属)、ファンならずとも──いや、むしろ、これまでそれほど熱心にaikoを聴いて来なかったリスナーにこそ、手に取ってほしいところである。

文:帆苅智之

アルバム『aikoの詩。』2019年6月5日発売 PONY CANYON
    • 【初回限定盤(4CD+DVD)】
    • PCCA-15020X ¥4,000(税抜)
    • ※カラートレイ仕様
    • 【通常盤(4CD)】
    • PCCA-15020 ¥3,500(税抜)
■『aikoの詩。』特設ページ(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/b?node=6938589051&tag=okmusic-22
aiko プロフィール

アイコ:1975年、大阪生まれのシンガーソングライター。98年にシングル「あした」でメジャーデビュー。3rdシングル「花火」が大ヒットを記録し、全国区で注目の存在に。等身大の目線と心情で描かれた恋愛における微妙な女心が多くのリスナーの共感を呼んでいる。aiko オフィシャルHP

アルバム『aikoの詩。』
芦田愛菜ちゃん篇 60秒CM

OKMusic編集部

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