【インタビュー】DENIMS、ハイセンス
なソウルやヒップホップ・フィーリン
グ、ロックビート、心地よいポップな
メロディを自在に操る2ndアルバム『
makuake』

デニム生地のようにカジュアルに、日常の喜怒哀楽に寄り添い、聴けば聴くほど肌に馴染む音がある。ハイ・センスなソウルやヒップホップのフィーリング、熱くて激しいロックのビート、心地よいポップなメロディを自在に操る大阪出身4人組、その名はDENIMS。名作1stアルバム『DENIMS』からおよそ1年半、2ndアルバム『makuake』では、さらに進化したサウンドで全てのグッド・ミュージック・ファンを魅了しにかかる。一体DENIMSとは何者か? メンバー4人に直接聞いてみよう。

■自分を救えるのは自分が良い音楽を作った時しかないなと
■溜めたアイディアをちゃんと曲にしてまとめました

――1stアルバム『DENIMS』がすごく良くて、去年、ライブを見に行ったんですね。そうしたら音源よりも圧が凄いというか、音源だと、お洒落な印象や軽いユーモアみたいなものを感じたんだけど、生はバリバリの音圧と勢いで、そこが良かった。やっぱり音源とライブって違います?

カマチュー(Vo&G):そうですね、ライブでは熱く燃えたいなという気持ちはありますね。

おかゆ(G):単純に、ライブになるとギターの歪みを増したりとか。音源をそのまま再現するというよりは、ライブはもっとハードになっていると思います。

――ざっくり言うと、めちゃめちゃロックじゃんって思いましたね。元からそうですか。

カマチュー:僕とえやまとまっつんがやっていた前のバンドは、もっとファンクっぽくて、ギターを弾きながらラップするようなバンドだったんですけど、ライブしてるうちにいろんなことをやりたくなっちゃって。その後おかゆが加入して、おかゆはロックやパンクが好きやったので、好きな曲を教え合ったりして自然にこうなった感じですね。ジャンルはバラバラでも、僕らがやれば、僕らっぽい音になるやろって。
――元々、ファンクな人ですか。カマチューさんは。

カマチュー:僕はソウル、ファンク、ヒップホップですね。ビート感が好きで、こういうリズムがしたいということから曲を作ることが多いです。

――おかゆさんはロックな人。

おかゆ:完全に。僕以外の3人はブラック・ミュージックが好きだと思うんですけど、僕だけそっち出身というか。最初のほうはけっこう悩みましたけど、僕が入った4人で基本のフォーマットができたと思うので。好き勝手やっても“DENIMSだな”と思ってもらえるぐらい、今はもうできていると思います。

――まっつんは何の人ですか。

まっつん(B):僕は雑食です。モータウンが好きですけどJ-POPもジャニーズも聴きます。モータウンのベーシスト、ジェームス・ジェマーソンがすごく好きで。前のバンドがもっとブラック・ミュージック色が強かったんで、勉強するのにずっと聴いていました。で、おかゆが入って、ビートルズとか聴いたことなかったんですけど、とりあえずそこからロックの教科書を聴いていこうと。好き/嫌いで聴くというよりは、お勉強しようっていう感じです。

――えやまさんは。

えやま(Dr):僕もカマチューに音源をもらってG・ラヴ&スペシャル・ソースを聴いた時に、世の中にはこんな音楽があるのかって衝撃を受けました。そこから洋楽のブラック・ミュージックをいろいろ教えてもらいました。僕は生のドラムを演奏するのが好きなので、ヒップホップは受け付けなかったんですよ。でも前作に入ってる「ゆるりゆらり」を作る時に、カマチューがヒップホップをいろいろ教えてくれて、“めっちゃ面白い!”と思って。体で演奏するドラムでは出てこないようなアイディアやリズムがあるから。今となっては何でも教えてほしいという状態になれましたね。カマチューのおかげです。
▲Gt&Vo : カマチュー

――やりましたね。作戦成功。

カマチュー:良かったです(笑)。僕も元々はパンクから入ったんですけど、当時ミクスチャーも流行っていて。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、スイサイダル・テンデンシーズなどファンク要素のあるほうが好きで、エイトビートよりも16ビートの刻みのほうが好きだったんですね。そこでおかゆは、もっとポップ・パンクとか、そういうほうに行ったんだろうなと。

――ああそうか、ルーツは一緒。そうやって分かれた流れがまた一つになっている。面白いなあ。あと聞きたかったのは、たとえばTENDOUJIドミコとか、よくイベントで一緒になるバンドって、仲間感ってあるんでしょうか?と。音楽性は必ずしも共通しないとは思うんですけどね。

カマチュー:同世代ぐらいで友達で、という感じはありますね。今はジャンルの多様化が普通になってきてるんですけど、2、3年前ぐらいで、しかも僕たち大阪に住んでるからあまりその感じがなくて。東京だったら細分化されていると思うんですけど、大阪は、大きく分けたらロキノン系とメロコアと、みたいな感じだったんですよ。その二大巨頭のジャンルと、それ以外の音楽性をやっている奴がポツポツいて、僕らは完全にポツポツの中にいて(笑)。シンパシーを感じる相手が、音楽的な結びつきじゃなくて気持ち的な結びつきというか、“オリジナリティのあることをやろうぜ”と考えている奴らというか。それが集まった感じのイベントをしたいなと思って、それが“ODD SAFARI”だったんですね。東京だったら、ドミコもTENDOUJIもTempalayもそうだし、大阪だったらナードマグネットとか愛はズボーンとか。今はそれが普通になってきているので、そんなにはぐれ者感はなくなってきてるから、“いい時代になってきてるんやろな”という気はしますね。

――5月25日の“ODD SAFARI vol.2”も、chelmico空きっ腹に酒台風クラブとか。全然違うけど、“わかる”っていう感じがする。

カマチュー:嬉しいです。そういう感じですね。

おかゆ:僕らはどこかの界隈にいるという話ではなくて、いろんなところに仲いい人がいるしツアーにもめっちゃ呼んでもらえるんで。それはありがたいと思いますね。
▲Gt : おかゆ

――ただそこで、良い音楽をやってなければ仲間にも認められないわけで。今度の2ndアルバム『makuake』は、相当気合いを入れて作ったんじゃないかと。

カマチュー:良いものを作りたいなということは、むちゃくちゃ思っていました。1stアルバムを出した頃は、僕があんまり良い精神状態じゃなかったので、自分を救えるのは自分が良い音楽を作った時しかないなと思って。去年はいっぱいライブをしながらアイディアを貯めていました。今年に入ってからライブを減らしてバイトも減らして、がっつり制作期間を設けて、溜めたアイディアをちゃんと曲にしてまとめた感じです。

――1stアルバムと比べてここを強化するとか、そういう方針は?

カマチュー:1stアルバムが思ったより優しい感じに見えてしまったので、そんな感じのバンドやと思われたらちょっと違うなというのは僕らの中でありました。テンポが遅くて、ヒップホップ的なテンション・コードのジャジィな感じと、ロック感というか燃えている感じが相まみえてるのが僕らやろなとずっと思っていたんですけど、1stアルバムはどっちかというと、優しいほうに寄りすぎたかな?というのがあったんで。それより前に出したミニ・アルバム2枚を聴いてる人からしたらわかってもらえると思うんですけど、去年の1stアルバムから聴いた人にそういうバンドに見られることが嫌だったので、本来の僕たちの強みをもっと出していこうというのはあったかもしれないです。
■「さよなら、おまちかね」が作りだした時からリード曲候補
■直球ロックだと思っていて、僕らとしたら新しいかなと

――まっつん。どんなアルバムですか。

まっつん:“聴くぞ!”って構えて聴いてほしくないアルバムです。肩の力を抜いてでも手は抜かずに録りました。テイクもなるべく重ねないように自然な感じで。曲を作る時もファースト・インプレッションを大事にして、フレーズもカマチューが持ってきたものに対して最初にパッと思ったものと、こう弾いてほしいと言われたものを大事にして全曲作りましたね。だから緊張せずに聴いてほしいです。

――特にリズム隊の緻密さとグルーヴの出し方が凄くなったというか、はっきりと進化してますね。やっぱりリズム隊はよく話し合いますか。

まっつん:全然。ほとんど話さないです。

えやま:話さなくても行けるというか。Sundayカミデさんっていう先輩がいて、僕らを見て言ってくれたのが“おまえたちは10年20年やってるベースとドラムぐらいのものがある。練習うんぬんじゃなくて勝手に息が合ってるからもう大丈夫や”って。特に話す必要がないというのは、そういうことなのかもしれないと。なんでかわかんないですけど、特に話すこともなくて……。

――何か照れてますけど。

まっつん:勝手に照れられてますね。

――コクってる感じになってますけどね(笑)。

えやま:そういえばちゃんと話したことないなと思ったら、ちょっと照れちゃいました。
――1曲目「INCREDIBLE」からいきなり凄い。相当複雑なグルーヴだと思いますけどね。こんなのも話さずにやっちゃう。

えやま:カマチューが口頭で“こんな感じ”と言うのを僕がイメージして叩いたものに、まっつんがぴったり合わしてくれる。DENIMSのリズム隊は最高ってよく言われるんですけど、それは俺が凄いんじゃなくて、まっつんがぴったり合わせてくれるから。ほんまにそう思っています。僕がやっていても、“今、よう合わせたな”と思う時があるんで。次は僕が凄くならないとダメかなと思っています。

まっつん:僕は逆だと思っていたんですよ。えやまが何でも合わせられると思っていた。「夜にとけて」とか前のアルバムの「ゆるりゆらり」とか、ちょっとレイド・バックしたリズムを僕は全然認識できないというか、“遅れてる”という気持ちになっちゃうんです。かっこいいというより、ズレたリズムと思っちゃう。だから、逆に僕が均等にやることによって、ちょっと遅れたドラムが際立って、かっこいいリズムになってるんじゃないか?と最近認識してるんですね。ついつい、えやまのドラムに合わせてしまうんですけど、それだとかっこよくならないので、もっと際立たせたいと思うんですね。

カマチュー:合わせんでええのに。

まっつん:合わせなくていいのに、一緒にやっちゃうと合わせちゃうんで、かっこよくならないということをずっと悩んでいて。だから「夜にとけて」のイントロも……。

カマチュー:ベースは均等やけど、ドラムはレイド・バックしてる。

まっつん:ズレているのをもっと際立たせたいので、最終的にドラムを聴かないという手段を選んだという(笑)。

えやま:わかる。俺もたまに選ぶもん。

まっつん:聴こえてるけど意識して聴かない。
▲Ba : まっつん

――グルーヴの極意の話をしていますね。実に興味深い。僕、「Marching Band」が大好きなんですけどね。これはリズム隊だけじゃなくて、ギターのカッティングも含めて全体で強力なグルーヴを作っていく。これってカマチューさんの頭の中に設計図があるわけですか。

カマチュー:これがたぶん一番古くからあったアイディアで、このコード進行とドラム始まりで、ユニゾンのフレーズがあってみんながまとまっていく。そういうイメージはありました。全員が違うリズムを刻んでるけど、最終的に一つのアンサンブルになればいいなと思ってできた曲ですね。このイントロの感じがすごく好きです。

――モータウンっぽさもありますね。ジャクソン5とか、ファンキーでポップな感じ。これがサブ・リード曲。

おかゆ:こっちがリード説もあったんですけどね。

カマチュー:けっこう分かれたんですよ。リード候補が。

――「さよなら、おまちかね」がリードになったのは、全員一致で?

カマチュー:おかゆと僕はこれでしたね。作りだした時からリード候補でした。さっき言ったような“前のアルバムとは違うものを”と考えたらやっぱりこれかなと。僕の中では直球ロックだと思っていて、僕らとしたら新しいかなと。

おかゆ:良い意味で期待を裏切られると言うか。でも、昔から知ってくれてる人は、そろそろこういうのも待ってくれてたかなと思うんですよね。

カマチュー:この曲は特に何らかの音楽性を意識して作ったわけではないんです。ほかの曲はジャンル的にこういうのを意識して、というのがあったんですけど、「さよなら、おまちかね」は一番培ったものがそのまま出た。ジャンルとかじゃなくてコード進行、メロディの乗せ方とかがすごくシンプルに聴こえるんですけど、僕にとっては新しいことに挑戦した曲でもあったりします。

――おかゆさんも曲を書いてますね。「W.S.J.H」が作詞作曲で、「Rocinante」は作詞。

カマチュー:「Rocinante」は分業制がちゃんとできた曲ですね。今回初めて。

おかゆ:ファーストの時に、Aメロだけ僕が書いたりとかはあったんですけど。

カマチュー:今回はメロディを渡して歌詞付けて、というのがこんなにうまいこと行くんやって。良い感じになりましたね。

――ロシナンテってドン・キホーテの?

おかゆ:そうです。馬の名前。

――カマチューの歌詞は感覚派というか、響き重視みたいな歌詞もあるけど、おかゆさんの歌詞は文学的な香りがしますね。

おかゆ:難しい歌詞のほうが好きなんで。「Rocinante」はちょっと童話っぽいというか、難しい言葉はないけどちょっとだけ文学的というか。

――英語の歌詞を翻訳すると、こういう感じの文体ってパンクとかにあるなあと。

おかゆ:和訳感というのはめっちゃありますね。メタル・バンドとか和訳を読んだら意外と詩的やったりするんですよね。

カマチュー:和訳感は言ってたよな。
▲Dr : えやま

――DENIMS、サウンドもいいけど歌詞も面白いですよ。メッセージ性ってあります?

カマチュー:メッセージ性は……何か伝えたいとはあんまり思っていないんですけど、自分の歌詞を考えた時に、“自分頑張れ”みたいなことしか言ってないなと思っています。特に今回は、陰鬱として負けそうになってる人たちのような気持ちが僕にもすごくあったりしたので。希望になるというか、背中を押せるようなものになってたらいいなというか……うまく説明できないですけど。

――伝わりますよ。それとヒップホップ好きだから、フロウの心地よさが大前提としてありますよね。

カマチュー:ラップの書き方かなというのはありますね。リアルというか、本当にあった自分の心境とか思ったことを羅列するみたいな。わかりやすい熱さとか“頑張れよお前たち!”みたいな感じじゃないですし、バンドの音も暑苦しい感じじゃないですけど、ふつふつとした熱さみたいなものが伝わればいいかなと。ライブもそうですし、歌もめっちゃ叫んでるわけじゃないけど、何か“来る”な、という感じが理想なのかなって最近思いました。ゆるいとかお洒落とかって言われたりするんですけど、それも嬉しいっちゃ嬉しいですけど、それだけで片付いたらショックやなというのがある。僕らも努力して、エモーショナルな部分が伝わればいいなと思いますけど。

――それは、ライブを見れば一発でわかると思うので。百聞は一見に如かずですよ。

えやま:そうですね、やっぱりライブではドラムは特に違います。“聴け、俺の音を!”という感じでライブをしているんで、ライブに来てもらわないと話にならない。曲ももちろん聴いて、さらにライブに来るという2つのことをセットにしてほしいなと思います。

まっつん:たぶんYouTubeでビデオを見てライブに来られると思うんですけど、それだけで判断せずちゃんと裏切れるようにしてるつもりなんで。二度楽しめますよという感じで来てもらえたらと思います。

カマチュー:リリース・ツアーも、MONO NO AWARE、おとぎ話、ドミコ、The Cynical Store、-KARMA-、ナードマグネットとか、先輩後輩関係なく、いいバンドが出てくれます。8月の東名阪福はワンマンで、凄くいいライブをするのは間違いないですし、ワンマンも今までは全てソールド・アウトしているので、ぜひ早めにチケットを取って来てほしいです。長い尺でやるので、今までの僕たちの歴史が詰まったライブを体感しに来てほしいですね。そこからまた、昔の音源を掘り下げてもらってもいいですし。何でも大丈夫です。

まっつん:一人でも大丈夫だと思います。

カマチュー:しれーっと見ててくれてもいいし、ワーッとなってくれてもいい。自由に楽しんでもらえれば。

取材・文●宮本英夫
リリース情報

2nd Full Album『makuake』
OSAMI-0004 / ¥2,315 (税抜価格)+税
1. INCREDIBLE
2. Marching Band!!
3. さよなら、おまちかね
4. 夜にとけて
5. Swimmy
6. -Skit-
7. SPACY SURF
8. W.S.J.H
9. Rocinante
10. 虹が架かれば

ライブ・イベント情報

<リリースツアー>
5/25(土)味園ユニバース DENIMS主催フェス"ODD SAFARI"
6/22(土)熊本Django
6/23(日)宮崎SR BOX
6/26(水)札幌COLONY
6/30(日)高松TOONICE
7/12(金)仙台enn 3rd
7/13(土)千葉LOOK
7/21(日)広島 ※会場後日発表
ワンマン
8/1(木)名古屋TOKUZO
8/2(金)東京UNIT
8/12(月祝)福岡INSA
8/18(日)umeda TRAD

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

新着