開幕直前! 橘ケンチ演じる京極堂に
よる“憑物落とし”に感情が揺さぶら
れる 舞台『魍魎の匣』稽古場レポー

2019年6月21日(金)より東京・天王洲 銀河劇場にて上演される舞台『魍魎の匣』。京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」の中でも最高傑作の呼び声が高い同名小説を原作に、橘ケンチ(EXILE/EXILE THE SECOND)ら豪華キャストが集結し話題を集めている。開幕を目前に控えた稽古場を取材した。
神主にして陰陽師でもあり、“憑物落とし”を副業にする古書店「京極堂」の店主・中禅寺秋彦(橘)が、次々に舞い込む事件を解決していくミステリー。民俗学や論理学、妖怪など様々な分野のうんちくがぎっしりと詰め込まれた不思議な世界観で描かれる。
稽古場を訪れたのは公演初日が間近に迫った6月中旬。足を踏み入れた瞬間、まるで本棚にしまい込んでいた愛読書を久しぶりに開いたときのような感覚だった。すでにセットの原型が組まれており、階段でつながった上段部分は見上げるほど高い。
取材日に公開されたのは通し稽古。本番さながら、衣裳とメイクを纏ったキャストたちが準備を進めていた。本番3分前のアナウンスが入ると、稽古場の空気がガラリと変わった。談笑や発声練習が止み、静かに暗転の時を待っていた。
物語は関口巽(高橋良輔)が久保竣公(吉川純広)と出会う場面からスタート。電車のボックス席を表した箱の上に腰掛けている。すでに不穏でいびつな空気が流れ始めた。以降、箱は幾度となく舞台装置として現れる。ある時は椅子代わりに、ある時は文字通り箱として、ある時は箱を模した巨大な空間として――。
場面は切り替わり、女学生の楠本頼子(平川結月)と柚木加菜子(井上音生)の世界へ。強く惹かれ合っていた二人だったが、加菜子が列車に轢かれる事故が起こる。本番同様に効果音が加えられており、激しいブレーキ音と衝撃音が痛々しく響き渡った。

事故現場に偶然居合わせた刑事の木場修太郎(内田朝陽)の元に、増岡則之(津田幹土)や雨宮典匡(田口涼)ら関係者が次々に押し掛けるなか、加菜子の母という元女優・美波絹子こと柚木陽子(紫吹淳)が美馬坂幸四郎(西岡德馬)の研究所へ娘を転院させる。
一方、小説家の関口は三流雑誌の記者・鳥口守彦(高橋健介)と大手出版社社員・中禅寺敦子(加藤里保菜)と共にバラバラ殺人事件を取材することに。その途中でとある箱のような建物に遭遇することで、冒頭にいくつも引かれた線がやがて“京極堂”へと集まっていく。探偵・榎木津礼二郎(北園涼)も合流し、各々が事件を調べて行くこととなる。
稽古開始前、演出の松崎史也から「心地よいスピード感を大事に」と声がかかった通り、冒頭からラストまではやる気持ちのまま本のページをめくっているような高揚感が止まらない。コミカルに展開されるシーンにも伏線は張られており、一瞬たりとも気を抜いてはならない。
中禅寺秋彦は屋号にちなみ“京極堂”と呼ばれる。優れた洞察力ゆえにすべてを見透かしたような瞳の力が強い。終盤、セリフ量の多さを物ともせず、畳みかけるように迫力ある弁舌を振るう様が実に鮮やかだった。出番以外の場面では自席に戻り、正面から共演者の熱演を見守っている橘の姿も印象的だった。
登場人物が一堂に会する様は圧巻。京極堂による“憑物落とし”の際には、観客側の感情の“匣”が揺さぶられるだろう。“魍魎”、“匣”といったキーワードはもちろん、人間関係の細部に至るまでも目が離せない。天王洲 銀河劇場、神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeという“匣”のなかでぜひ体感してほしい。何度も「ほう」と感嘆を吐くだろう。
取材・文・撮影=潮田茗

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