【ライブレポート】[ALEXANDROS]と「
Your Song」

6月16日、埼玉・さいたまスーパーアリーナで行なわれた[ALEXANDROS]による全国ツアー<Sleepless in Japan Tour>のファイナル公演を観た。12月からスタートした今回のツアーは最新アルバム『Sleepless in Brooklyn』を携えたもの。事前にアルバムを聴き込んだなかで、特に惹かれたのは「Your Song」だった。
同曲の主人公は、川上洋平(Vo&G)によって産み出された“とある歌”だ。
歌詞では「適当なコードで紡がれ、透明な姿に産まれた」と自己紹介し、“君”に届いた今、“とある歌”は自らを“君の歌”だと称する。そして“君の歌”は「世界中の誰もが敵でも、僕は味方さ」と優しく語りかけ、「いつか僕に飽きても、時々口ずさんでね」と健気にしめくくる。
ライブでは「Your Song」とともに映像が上映された。物語の軸となるのは『Sleepless in Brooklyn』本体に顔と手足がついたキャラクターと少女。CDを再生した少女が曲に出会い、ともに日々を過ごすも、両者の関係はいつしか疎遠になり、大人になった少女が就職活動に失敗し落ち込んでいるとき“君の歌”に再会し励まされるという、ストーリー仕立ての作品だった。

“君”に再び会えた“君の歌”が身体を鳴らして音を届ける姿を見て、私は涙をこらえることができなかった。辛いときに支えてくれた曲、不安なときに背中をおしてくれた曲、悲しいときに一緒に落ち込んでくれた曲。私の隣にも、たくさんの“君の歌”がいた。そのどれもが大切で何度も何度も繰り返して聴いてきたのに、存在を忘れてしまっていたことに気づき、泣いた。これまでずっと、音楽に助けられてきたというのに。

「Your Song」を歌ったあと、川上はこう宣言した。

「何があっても[ALEXANDROS]は進み続けます! クソジジイになっても、死ぬまで続けます! お前らがついてこなくなっても続けます!」

このMCからは、前向きな気持ちと忘れられてしまうことへの不安の両方が感じられ、「Your Song」とそれが結びついた。ツアーはアリーナ規模、フェスではヘッドライナーを務め、映画・ドラマ主題歌、CMソングにも数多く起用されるなど、順風満帆に見える[ALEXANDROS]にも憂いがあるのだと。

しかし、そのあとに川上は「必ずうちらは一番になります! 見ててください! 必ず証明します」と続けた。スタイリッシュでクール、そんなイメージが強いバンドだが、ファンの前で強さも弱さもさらけ出したことに驚いたし、人間味を感じることができてなんだか嬉しかった。

忘れられてしまった曲と、[ALEXANDROS]を重ね合わせたような「Your Song」を聴きながら、こんなことを考えていた。

今度心揺さぶる曲に出会えたら、私は「Your Song」を思い出すだろう。“いつまでも大切にしよう”という決意とともに。
取材・文◎高橋ひとみ(BARKS)
撮影◎ハタサトシ(1, 3, 5, 6枚目)、河本悠貴(2枚目)、山川哲矢(4枚目)

■セットリスト

[ALEXANDROS]
Sleepless in Japan Tour
さいたまスーパーアリーナ DAY2
01 LAST MINUTE
02 Starrrrrrr
03 I Don't Believe In You
04 Follow Me
05 spit!
06 Girl A
07 Come Closer
08 PARTY IS OVER
09 SNOW SOUND
10 Kaiju
11 MILK
12 Mosquito Bite
13 Kick&Spin
14 You're So Sweet & I Love You(サブステージ)
15 明日、また
16 NEW WALL
17 FISH TACOS PARTY
18 Your Song
19 Adventure
20 アルペジオ

ENCORE
SE Burger Queen
EN1 Dracula La
EN2 月色ホライズン ※新曲 
EN3 Pray(サブステージ)
EN4 ワタリドリ

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