【ライブレポート】R指定、「君たち
の青春時代や居場所を守りたい」

R指定が6月6日(木)東京・恵比寿 LIQUIDROOM公演にて、ニューシングル「フラッシュバック」を引っ提げた全国ツアー<フラッシュバック御礼暴行>の最終日を迎えた。
今回のツアーはメンバーが行きたい場所を選んだのだが、ツアー初日、マモ(Vo)が選んだ大分・宇佐 音小屋REBOOTは「自分が生まれた地であり実家もある故郷で一度ライヴをやってみたかったから」という選出理由も面白い(公式ホームページよりコメント抜粋)。

ほかにも、3年前に行われた<日本八十八箇所巡礼>ツアーで盛り上がりを見せたところを選ぶなど、それぞれに思い出が強い場所を挙げていった。今回、ツアー最終日に選ばれたLIQUIDROOMはというと、七星(B)が「ココでやれたら売れたっしょ!と勝手に思っていた場所。初めてワンマンが出来た時、凄く嬉しかった」とコメントを残している。
さかのぼること7年前、R指定は2ndフルアルバム『日本沈没』をリリースした後であり、全国七大都市単独公演ツアーを順調に廻っていた。そのファイナル公演として用意されたのがこの場所だった。当時の彼らは、活動拠点としていた九州から東京へと上京し、異例ともいえるスピードでLIQUIDワンマンまで駆け上がってきたのだが、そのときの様子を筆者は運良くレポートしていた。

某音楽雑誌に掲載された記事を改めて見てみると、MCでマモがファンに向けて皮肉を言っていることが書かれており、今と何ら変わっていないじゃないかと思わずクスリと笑ってしまったのだが、レポートの最後で、彼らの行く末についてこのように締め括っていた。『どうなるか今はまだ想像もつかないが、言える事がただ1つ。ここから先、R指定は我々が思っている以上に化けるに違いない』と。
あれから7年の時を経て、彼らはバンドとして見事に大化けしてくれた。だからこそ、この場所を選んで<フラッシュバック御礼暴行>ツアーファイナルをやったことは非常に価値があったと思う。冒頭を飾った新曲の「フラッシュバック」から場内の熱量は高く、メンバーとファンがいかにライヴが好きかということが観ていて伝わってくる。

またこの日は平日であったにも関わらず、会場は人で溢れていた。昨今の音楽シーンは平日だと思ったような集客が見込めないため、土日祝日にイベントを入れることが多いのだが、彼らはそんな嫌なジンクスを一蹴するかのように平日にライヴをぶち込んできた。平日だろうが、土日祝日だろうが、好きなもののためならどこまでもついていく、それがR指定のファンだ。ちなみに、彼らは自分たちのファンのことを“指定女子”と呼んでいるのだが、この日は女子だけでなく男子が多かったのも嬉しい光景であった。
ステージでは、揃いの衣装に身を包んだメンバーが一様に同じ動きを見せるのではなく、それぞれ見せ方に変化をつけている。青髪にリニューアルしたマモは「フラッシュバック」の世界観を表すかのようにサビの部分で手首を何度も擦りながら歌い、Z(G)と楓(G)の両ギタリストは、異なるアプローチで曲に華を添えていく。それにしても、このツアーで楽器陣の音と動きが格段に良くなった気がした。さすがはライヴバンドR指定、1ツアーでここまで飛躍的に伸びるとは恐ろしいものだ。

本日最初のMCは、マモが「東京、もっと声出んだろ、 もっといけんだろ! あと10倍や!」と荒い口調で煽っていく。「今日、別にファイナルじゃねぇから。ファイナルじゃなく最終日なだけなんでいつもどおりやろうと思ってるんで、お前らもいつもどおりぶっ壊れてこい、いいか! その調子で最後までついて来て下さい!」と展開を進めていく。
「あのこ」からの「殺したいくらい愛してる」の流れは指定女子の深層心理をうまく突いており、そこから「ぼくらのアブノーマル」へと繋げる辺り、まさに狙いどおりといったところだろうか。ここでは、暴力的とも取れる狂気に満ちたサウンドに合わせて拡声器越しに歌声が広がっていく。このときのマモときたら、顔を少し斜め上に傾けてフロアにいる指定女子を見下すかのような眼付きで挑発していた。こうした些細なパフォーマンスがあってこそ、ライヴはより盛り上がる。

SEを挟んだ後に演奏されたのは、「カナリア」。宏崇(Dr)の叩くドラムは他の曲に比べて音数が少ないのだが、雰囲気で見せることに長けているために圧倒的な存在感を残す。これは単体で聴いても素晴らしい曲だが、続く「月が綺麗ですね。」を引き立てる良きアイテムになったことは言うまでもない。
この後のMCでは、今日が七星Dayというだけあって、七星(B)がフロアに気合いを入れる場面も見られた。本編後半では「予言」も演奏されたのだが、この曲は広い会場で先に聴いていたこともあって、LEDといった類の演出がない分、シンプルな構成で聴けたことに感動した。テンポが一筋縄ではいかない曲こそ、このようにごまかしの効かない会場で演奏と歌のみでフロアを引き込んでいくのは難しいのだが、リリースからしばらく経って彼らは完全にこの曲を自分たちのものにした。音源はライヴを通して完成するというのを、この瞬間にまざまざと見せつけられた気がする。

そこからの「-死刑-」は、曲のタイトルに相応しく、過激とも取れるノリがフロアに横行した。そしてアンコールは七星のベースソロからスタートするという新しい趣向が用意されていた。このまま激しい曲を並べるのかと思いきや、彼らはバラード曲の「-青春-」を持ってきたのだった。この曲の歌詞はバンドを追いかけている女の子が主人公となっている。それだけに、マモは「まさに皆さんのことだと思います」と言う。
「誰しも中学校や高校で青春時代があるわけではなく、今バンドを追いかけているときが青春だって人もいます。俺はそれですごくいいと思うんですよ。何才になっても、青春は青春だし。だから、君たちの青春時代や居場所を守りたいといいますか。言い方悪いかもしれないけど、低迷しているヴィジュアル系を選んでくれて、その中でも俺たちを選んでくれて、そういうみんなのことがすごく大事だし、宝物なんで。ついてきてくれる分、返していこうと思うので、今後も一緒に青春できたらいいなって」と想いを吐き出す。

フロアは見守るようにその言葉を受け止めていたのだが、この曲を演奏しているときの彼らは本当にキラキラしていた。青春時代が十代に限るものなら、R指定はもれなく当てはまらない。だが音楽がある限り、彼らは何才になってもステージ上で青春を味わえる。年齢を気にして好きなものにブレーキをかけることなんてない、そのことを指定女子と一緒にこの曲で証明してくれた。もちろん、この後には激しい曲もあったり、まさかのダブルアンコールがあったりと、R指定らしいライヴ展開を見せてくれたのだが、やはり、今日の最大の見せ場は「-青春-」だったと言えよう。

夏にはイベントライヴ、9月からはR指定十周年記念47都道府県単独記念ツアー<CLIMAX47>が待っている。ツアー最終日は、東京・両国国技館。その大きな舞台に立つまで何が起こるかなんて誰にもわからない。それでも今の彼らなら良い結果を残してくれるはずだ。だからこそ最後にこの言葉をもう1度言いたいと思う。『どうなるか今はまだ想像もつかないが、言える事がただ1つ。ここから先、R指定は我々が思っている以上に化けるに違いない』。

取材・文◎水谷エリ
写真◎Miki Fujiwara

<十周年記念47都道府県単独公演ツアー
『CLIMAX47』>

9月21日(土)埼玉県:HEAVEN'S ROCK さいたま新都⼼VJ-3
9月23日(月)山梨県:甲府CONVICTION
9月27日(金)茨城県:⽔⼾ライトハウス
9月28日(土)栃木県:HEAVEN'S ROCK 宇都宮VJ-2
10月01日(火)静岡県:LiveHouse浜松窓枠
10月03日(木)和歌山県:和歌⼭GATE
10月5日(土)山口県:周南LIVE rise
10月8日(火)佐賀県:佐賀GEILS
10月9日(水)長崎県:⻑崎DRUM Be-7
10月11日(金)大分県:⼤分DRUM Be-0
10月13日(日)宮崎県:宮崎SR BOX
10月14日(月)鹿児島県:⿅児島CAPARVO HALL
10月16日(水)熊本県:熊本B.9 V1
10月17日(木)福岡県:福岡DRUM Be-1
10月19日(土)島根県:松江AZTiC canova
10月20日(日)鳥取県:⽶⼦AZTiC laughs
10月22日(火)愛媛県:松⼭サロンキティ
10月23日(水)徳島県:徳島GRIND HOUSE
10月25日(金)愛知県:名古屋E.L.L
10月29日(火)神奈川県:F.A.D YOKOHAMA
10月30日(水)群馬県:⾼崎club FLEEZ

11月01日(金)新潟県:新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11月02日(土)長野県:⻑野CLUB JUNK BOX
11月04日(月)福井県:福井CHOP
11月05日(火)石川県:⾦沢AZ
11月06日(水)富山県:富⼭Soul Power
11月10日(日)沖縄県:沖縄桜坂セントラル
11月14日(木)宮城県:仙台Rensa
11月15日(金)岩手県:盛岡CLUB CHANGE WAVE
11月17日(日)秋田県:秋⽥Club SWINDLE
11月19日(火)北海道:札幌PENNY LANE24
11月21日(木)青森県:⻘森QUARTER
11月23日(土)山形県:⼭形ミュージック昭和Session
11月24日(日)福島県:郡⼭CLUB #9
11月27日(水)千葉県:本八幡 Route Fourteen
11月30日(土)三重県:松阪M'AXA

12月01日(日)京都府:KYOTO FANJ
12月02日(月)奈良県:奈良NEVER LAND
12月04日(水)広島県:広島セカンドクラッチ
12月05日(木)岡山県:岡⼭IMAGE
12月07日(土)高知県:⾼知X-pt.
12月08日(日)香川県:⾼松MONSTER
12月10日(火)兵庫県:神⼾VARIT.
12月11日(水)大阪府:⼤阪BIGCAT
12月13日(金)滋賀県:滋賀U☆STONE
12月14日(土)岐阜県:岐⾩club-G

TOUR FINAL
12月29日(日)東京都:両国国技館

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