毎月テーマを変えて、さまざまな人に選曲をお願いしている「MIXTAPE」企画。
今回のテーマは「官能的。」。「官能」とは、性的な意味に捉えられたりもしますが、「感覚器官の働き」の意味もあります。繊細なピアノの旋律や、荘厳なエレクトロ、ヴォーカルのファルセット…「この音楽のここがたまらないんだよな…」的に感性や感覚をピンポイントで刺激してくれる音楽は人それぞれにあると思います。もちろん性的な感動を覚える音楽もあります。あらゆる解釈のもと、ミックステープをお届けします。

現代的なジャズサウンド、ポリリズム&変拍子を取り入れた複雑ながらも身体に訴えかけるグルーヴ、器楽的なヴォーカリゼーションで“インストゥルメンタル”というジャンルの境界線を越え、その領域を拡大しているVityazzの「官能的。」。

誘惑 / 中田裕二

女心を透かして見られている気がしてくる。言葉ひとつ、声の掠れひとつ、リフひとつ、どこを切り取ってもメロウで扇情的。(嘴音 杏)

Hideaway / Jacob Collier

あたたかに紡がれる楽器と幾重にも折り重なる声の洪水。美しい音の集合体に抱かれ、心の青い部分に一条の光がさす。(嘴音 杏)

Ushp 2 / D+D

メロディのない世界では五感がより研ぎ澄まされ、音に“触れられている”気がしてくる。どこまでも真っ白で自由な想像の国。(嘴音 杏)

悲しみジョニー / UA

むせ返るような、気怠い、暑い夏の匂いがする一曲。湿度の表現が秀逸。(嘴音 杏)

III une barque sur l’océan;Miroi
rs (1905)/ Håkon Austbø

水滴が一粒一粒シルクの上を転がるような感触。水滴が筋に変わり、流れに変わり、波に成っていく。聴覚が存分に悦ぶ、ラヴェルのピアノ曲。(嘴音 杏)

An Intention / Kaitlyn Aurelia Smit
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総じて人間の声は官能を含むと思いますが、人工的なエレクトロサウンドの中でより対比的にその官能性が浮かび上がっています。ループになりがちな打ち込みサウンドの中でも有機的な展開を見せる作曲とサウンドデザインの素晴らしさにも注目です。(中川 能之)

Mojo Pin / Jeff Buckley

ジェフバックリーの声は男性/女性といったジェンダーを越えた響きだけでなく、時に少年のような瑞々しい響きから老人のように死を身近に予感させる響きまでをシームレスに行き来し、その性と生を想起させる声には官能の本質があります。その声をギター弾き語りのライブ録音という形で記録した貴重な音源。(中川 能之)

Nola / Jose James

カバー原曲はビル・リーによるどちらかというと早朝の朝もやを連想させるような清涼感のある曲だが、いわゆる色気というものをストレートかつ多量に含んだホセジェームスの歌声により見事に官能的な曲に仕上がっています。(中川 能之)

When Debbie’s Back From Texas / St
ina Nordenstam

録音、ミックス上での距離感の処理は作用として官能性に直結するものがあります。素朴なアレンジ、歌唱の中に潜在する官能性が録音により引き出された素晴らしい作品だと思います。(中川 能之)

労働 / Peridots

死別を思わせる歌詞とそれに反した爽やかなサウンドとタカハシ コウキの伸びやかな歌唱。生きるということそれ自体が避けがたく持ってしまう官能性の絶望と希望が見事に表されていると思います。(中川 能之)

Vityazz「官能的。」はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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