BAD HOP『COLD IN SUMMER TOUR』早々
にチケットが完売した東京公演のとん
でもない盛り上がりをレポート

BAD HOP『COLD IN SUMMER TOUR』Final 2019.6.26 Zepp DiverCity TOKYO
昨年11月に開催された伝説の武道館単独公演からわずか半年あまりで、BAD HOPが大きなステージに帰ってきた。今回は『COLD IN SUMMER TOUR』と題された、全国5カ所を回るZeppツアー。中でも、早々にチケットが完売した東京公演は、開場前からオーディエンス達の並々ならぬ熱気が溢れていた。ティーンエイジャーと見受けられるBAD HOPヘッズが多く、開場とともに皆、いち早くゲットしたツアーTシャツを着込んでフロアへと駆け出していく。
あっという間に満杯になったフロアに、最初に現れたのはDJ CHARIとDJ TATSUKIの二人。今回のツアーは、公演ごとにBAD HOPらが直接声を掛け、それぞれフロント・アクトとして気鋭のラッパーらを起用していたことも話題になった。東京公演では、DJ CHARI&DJ TATSUKIのDJプレイに合わせてRy-LaxやKANDYTOWNのGottz&MUDらが参加。ここ近年にみる、国内のヒップホップ・シーンの盛り上がりを凝縮したようなステージに。
BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
そしてもう一組、Normcore Boyzの面々が現れ「Stay Alive」や「Black Parka」といった楽曲を披露。メンバーは全員お台場出身というだけあって、OSAMIの「今日は家から歩いてきた」というトークも印象的だった。
ステージの幕が開いてからちょうど1時間後。セットが変わり、なんと客席には雪が降ってくるという演出が。スクリーンにはツアーのロゴが映し出され、オーディエンスの期待を最高潮に高めながら、まずステージに登場したのはT-Pablow。舞台に組まれたセットの上部に立って「Prologue」をラップする彼の姿は、たった一人であってもとんでもなくデカく見えるほどの存在感を放つ。「YAGI」、「Life Style」など、ソロで披露し、T-Pablowのシグニチャーとも言える楽曲「I Feel Like Goku」ではVingo & G-K.i.d.がステージに現れた。

BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
『COLD IN SUMMER TOUR』最大の特徴は、ソロ活動も盛んなBAD HOPそれぞれのメンバーにしっかりとスポットライトを当てる構成そのものだ。今年に入って、YZERRとTiji Jojoがそれぞれソロ・プロジェクトを発表。VingoとBark、G-K.i.d.もトリオとしてミックステープを発表し、Benjazzyもソロ・シングルをリリースしたばかり。というわけで、T-Pablowからバトンを渡すような形で、Vingo・Bark・G-K.i.d.(通称、VBG)のステージがスタートする。三人にとっての代表曲とも言える「Gucci Scarf」を挟み、トリオ作品『Redrum』からの楽曲も惜しまずに披露。改めてトリオの相性の良さを実感した。次に登場したのはBenjazzy。Vingoとの「2018」から新曲「VVS」、そしてライブでの定番曲「Hands Up」を矢継ぎ早にラップ。緩急ついたBenjazzyのラップ・スキルに呼応するように、随所にオーディエンスの歓声が上がっていた。

BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
続いて、白いTシャツを着込んだTiji Jojoが登壇し、ソロ・チューン「Player1」をパフォーム。五月に同名のソロEPをリリースしたばかりとだけあって、ボリュームも多い気合の入ったステージを楽しませてくれた。おきまりのヒット曲「White T-Shirts」から「House Party」へと続けて披露し、途中、Yellow Patoが参加し、オーディエンスのレスポンスもアツい「Super Car」、そして「3LDK」へと流れる。その後、一旦ステージ上からはメンバーが全て降壇するも客席の熱気も全く冷めぬまま。そして、さらにボルテージを上げていくべく、いよいよYZERRがステージへと現れた。ソロ・ミックステープ『Rich Or Die』からの「INTRO」からスタートし、「No Friends」や「Blah Blah Blah」、「Back Stage」などを立て続けにラップ。
BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
曲の合間、「Zepp五ヶ所は大きなチャレンジだったけど、ちょっとホッとしている。ここまで来るまでには理不尽なこともあったけど、この景色を見ることができて嬉しい」と語る姿が印象的だった。「俺らの生き方は、稼ぐか死ぬかだから」と前置きした「Rich Or Die」を経て、「Ocean View」のイントロとともに他のメンバーも再びステージに現れ、いよいよBAD HOPが全員揃い踏みでのパフォーマンスがスタートした。前回の武道館公演でも非常に印象的だった「Diamond」では、今回も客席のオーディエンス達が自らのスマホのライトを照らし、感動的な一幕に。
BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
続いて「Asian Doll」や「Mobb Life Tour」、「これ以外」などを抜群の安定感で披露していく。最後、T-Pablowが「ツアーが終わっちゃうのは俺たちも寂しい」と切り出し「BAD HOP、来年アリーナ(公演を)やります」と、サプライズ発言が。大いに湧く歓声を浴びながら「成り上がり方は誰よりも最速。何でかって?こいつに跨ってるからだよ!」と、アンセム「Kawasaki Drift」で堂々とステージを締めくくった。
BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
ソロ・タイムをふんだんにフィーチャーした120分間のステージ。もちろん、個々のパフォーマンスも文句無しに盛り上がるのだが、最後、メンバー全員が揃ってステージに立つと、それぞれのピースがピタッとハマり、最高にアツい熱気が会場を包んでいった。そして、今回もスクリーンに映し出される映像やLED、ライトの細部に至るまでBAD HOPの拘りが溢れ、見事なまで高い没入感を演出していた。また、これまで本格的なBAD HOPとしてのキャリアはまだ3年ほどであるにも関わらず、アンセムの多さにもとにかく驚く。それに呼応するオーディエンスの反応(ガヤ部分のレスポンスもバッチリ!)も最高だった。

BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
そして、気づいたオーディエンスもいるかもしれないが、本ツアーの前半、冒頭を飾るのはT-PablowではなくYZERRであった。客席の反応を見ながら、随時、ツアー本編の構成を変えており、札幌公演からT-Pablowで始まり、各メンバーのパートをYZERRで締めるという構成へと変化していった。こうした点にも、彼らの<進化>具合が現れているようにも思える。
すでに来年の大きなステージまで決定しているBAD HOP。前回の武道館公演では「俺たちは本気でこの国の音楽シーンを変えたい」と語っていた彼らが、今後、自身のキャリアをどうやって更新していくのか。記念すべきZeppツアー以降も、前代未聞の道を切り拓き続けていってほしいと思わされた公演だった。
BAD HOP Photo by Cherry Chill Will
取材・文=渡辺志保

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