※大手レコード会社の洋楽部門での豊富な経験を持つ筆者によるブログ「洋楽天国」提供記事をお届けします。
歌手がいる。レコード会社と契約をする。CDが1枚売れたらアーティスト印税がいくら貰えるかを決める。レコードの権利である原盤(マスター)の権利は当然レコード会社が持つ。そうでなかったらレコード会社は成り立たない。
テイラー・スウィフトはそれが気に入らなかった。
6月30日(土曜日)の朝7時10分(東部標準時)、経済新聞ウォール・ストリート・ジャーナルがテイラー・スウィフトが過去に在籍していたビッグ・マシーン・レーベル・グループの売却をスクープする。テイラー・スウィフトは間髪をいれずにタンブラー(Tumblr)に投稿した。
「長い間私は、ビッグ・マシーン・レコードに対し、レコードの原盤権を私にくださいとお願いしてきた。寝室の床で曲を書き、バーで歌い、クラブで歌い、アリーナで歌い、スタジアムで歌ったお金でプロモーション・ビデオを作った。今日のニュースでビッグ・マシーンのスコット・ボルチェッタは私のマスターをスクーター・ブラウン(ジャスティン・ビーバーのマネージャーで実業家)に売った。私はここ数年、スクーター・ブラウンから絶え間のない、しかけられたいじめを受けてきた。これは最低なシナリオ」
テイラー・スウィフトがウォール・ストリート・ジャーナルで知ったわけではない。6月28日、ビッグ・マシーン・レーベル・グループの大株主を集めた会議が開かれ、3対2で売却が決まった。土曜日(6月29日)の夜21時6分、スコット・ボルチェッタはテイラー・スウィフトに売却の件をメールした。
「親愛なるテイラーへ、明日の朝(6月30日)、経済新聞ウォール・ストリート・ジャーナルにビッグ・マシーンの売却の記事が掲載される」
音楽業界関係者はテイラー・スウィフトが一人で犠牲者ぶっているとみる。
テイラー・スウィフトがビッグ・マシーンとの再契約で提案していた事は業界関係者も驚いた。テイラー・スウィフトは「アルバム1枚を作ったら、過去の私のアルバムを1枚を返せ。全部で6枚作るので、過去の6枚全部を返せ」と提案したそうだ。弁護士は業界最強力のドナルド・パスマン。結局この無謀な話は壊れた。
ユニバーサルミュージック(リパブリック・レコード)との契約は恐らく以下のような事だろう。
「私(テイラー・スウィフト・プロダクション)が原盤を制作する。リパブリック・レコードはマーケティングや宣伝を行う。親会社のユニバーサルミュージックが配給を担当する」
このくらいの力技はテイラー・スウィフトじゃなきゃ出来ないだろう。しかし一人の力でスーパー・スターになれたわけじゃない。ニュー・アルバム『Lover』は8月23日に発売される。吉と出るか凶と出るか。業界関係者は固唾をのんで見ている。
>>2019年6月27日「洋楽天国」より

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