稲垣吾郎が歌って踊る、大人のラブコ
メミュージカル『君の輝く夜に』 ビ
ジュアル撮影に潜入&インタビューも
決行

稲垣吾郎がラッパ屋主宰の劇作家・演出家の鈴木聡とタッグを組み、昨夏、京都劇場で上演したミュージカルが新たに『君の輝く夜に ~FREE TIME,SHOW TIME~』とタイトルを改め、待望の東京公演を行う。脚本と演出は鈴木、音楽はジャズピアニストで作曲家の佐山雅弘。これは2012年、2014年、2016年に上演され好評だった稲垣主演の『恋と音楽』シリーズと同じ顔合わせであり、加えて今回は残念ながら昨秋に亡くなった佐山への追悼の意を表した公演となる。そして京都公演同様、稲垣のほか、安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙が出演し、笑って泣けて心に沁みる大人のラブコメディを繰り広げる。しかもこの芸達者な面々により、第一部と第二部との幕間には20分ほどのショータイムがあるというのも、今作の大いに楽しみなところだ。
6月下旬、都内某スタジオにて行われたヴィジュアル撮影の現場を少しだけ見学させてもらった。
今回のヴィジュアルは、撮影を『美女の正体』『ウーマン』などの著書でも知られるカメラマン・下村一喜氏、アートディレクターをCM広告などのほか数々の演劇や映画などの宣伝美術を手がけている手島領氏が担当。稲垣、安寿、北村、中島の4人のいでたちは真っ白い上下で揃え、マニッシュに決めたショーマン風のコーディネート。キラキラ輝くアクセサリーがそれぞれのデザイン、雰囲気に合わせてあしらわれていて、なんともゴージャスだ。
(左から)中島亜梨沙、稲垣吾郎、安寿ミラ、北村岳子

まずは集合写真から撮影スタート。昨年すでに京都公演で、本番だけでも1カ月近い時間を共にしていることもあって、稲垣は“王子”、安寿は“パイセン”と呼ばれるなど、実に和やかな雰囲気がスタジオ内に漂っている。カメラマンの「ハイ、ワン、ツー、ゴー!」という声に合わせて、各自がビシッとポーズ。稲垣の持つハットの位置、安寿の身体の倒し具合、北村のステッキを持つ角度、中島の足の曲げ方、などなど、モニターで細かいところまでディレクターが丁寧にチェックし、それをミリ単位で修正しつつ、さまざまなパターンでシャッターが切られていく。
4人のカットを撮り終えると、続いてソロ、さらにはいろいろな組み合わせで、というようにたっぷり時間をかけて撮影は続いた。BGMには古き良き時代の名作ミュージカルのナンバーが流れていて、それもこのムードづくりに一役買っている様子。
安寿ミラ
北村岳子
中島亜梨沙
スタンバイ中には名曲に合わせてリズムをとったり、口ずさんだりするキャストたちの姿も見ることもでき、自然とこの作品の華やかさ、楽しさが充分に伝わってくる。
撮影した写真はこんなチラシに!

(左から)中島亜梨沙、安寿ミラ、稲垣吾郎、北村岳子
撮影後には作・演出の鈴木聡、および主演の稲垣吾郎に、作品への想いを聞いた。
ーー京都公演で感じた手応え、お客さんの反応はいかがでしたか。
鈴木:お客様には、すごく楽しんでいただけたように思います。僕自身も、イケた! と思いましたよ(笑)。佐山さんは昨年秋に亡くなってしまったんですけれど、この作品のためにも本当に素晴らしい音楽を作ってくださいました。『恋と音楽』シリーズは3作あって、その延長上にあるのがこの『君の輝く夜に』なんです。僕と佐山さんは本当にいいパートナー同士で、お互いにセッションするみたいにして、一緒にアイデアを出し合ったりしながら音楽を作りました。そういった長い積み重ねの上に、この4作目ができたという感触です。今回みたいな、登場人物はたった4人、演奏も少人数のジャズバンドというコンパクトなスタイルのミュージカルというのは、日本人のものづくりの良さを活かせるスタイルであると、『恋と音楽』をやっていた時から思っていたんです。そういう意味では今回、ひとつの完成形ができたような気がしています。
ーージョージという役を稲垣さんに書き下ろす上では、特にどんなことを意識されましたか。
鈴木:ちょっとダメな色男みたいな部分が、この役柄にはまずあって。モテてるつもりなんだけれども、実はモテてないというね(笑)。その点、吾郎くんはすごくロマンティックなこともできるし、ズッコケもできるわけですよ。しかも、そういう姿もファンの人は受け止めてくれるんです。「そんなズッコケ、させないで」とは言わないんだよね。そこはお客さんとの信頼関係が、既にできている。たとえば北村さんとの場面もそう。『恋と音楽』シリーズをやっていくうちに、なんだかお約束のようになってきて。北村さんが毎回モーションをかけるんだけど吾郎くんがいなすという流れになっていて、お客さんは「ああいう場面をもっとやって、もっとやって」って思われているようでしたね。
鈴木聡
ーー稲垣さんは、京都公演の時にはどんな感想を持たれましたか。
稲垣:『恋と音楽』は鈴木さんの脚本、佐山さんの音楽でシリーズ化されていた作品でしたが、それが今回は新しくなって、北村さんはこれまで何度もご一緒させていただいていますが、安寿さん、中島さんが加わり、タイトルも変わっての第1弾で。僕自身も環境が変わったりしたこともあって、京都公演は本当にフレッシュな気持ちで、また一からやらせていただきました。ただ、やはりこれまで『恋と音楽』をやってきたということは、とても大きいことでしたから。今までのものの中でも最強だったというか、一番いい形で出来たようにも思います。お客さんも毎日、満員でね。ファンの方も京都の方だけではなく、東京を始め全国の方が足を運んでくださいました。そういう作品でしたし、せっかくだから東の方でもやりたいな、これで終わらせてしまうのはもったいないなという思いから、今回東京公演が実現することになったわけです。
京都公演の模様 撮影:内池秀人
ーー大勢の方が、待っていらしたと思います。
稲垣:でもね、やっぱり今までの『恋と音楽』とはまた全然違うものではありました。そもそも僕にとって『恋と音楽』は初めてのミュージカルだったんですよ。歌も芝居もずっとやってきましたけど、それがミックスされたものというのはこの時が初めてで。それがすごく楽しかった。僕がやりやすいようにというか、こんな僕でもできるように(笑)、鈴木さんと佐山さんが作ってくださっていたから。周りの共演者の方々もミュージカルのプロ中のプロの方ばかりで、みなさんに引っ張ってもらっていましたし。そのシリーズが今回、またひとつバージョンアップというかアップデートした、新しい形でお贈りすることができたのかなと思います。
稲垣吾郎
ーー鈴木さんは稲垣さんの、舞台役者としての魅力はどういうところに感じられていますか。
鈴木:台本の読み込みというか、言葉の読み込みがものすごく正確な俳優だなという風に思っています。一つひとつのセリフと、全体のドラマ構造をとても早く理解してくれる俳優でもあって。さらにパフォーマーとしての経験量が非常に豊富で、それは舞台だけでなくドラマもバラエティーも、コントみたいなことやMCまでやられてきましたからね。経験値がやはりすごいんです。そうなると今回も芝居の中で、ちょっとコントっぽいところもあったり、オーソドックスなラブストーリー的な部分もあったりするんですが、あらゆるものに対応する引き出しを吾郎くんは持っているんです。そして、その引き出しの開け方がすごく上手。ここではこの引き出しを使おう、というチョイスも抜群だと思います。
ーー稲垣さんは、鈴木さんとタッグを組んでものづくりをする時の面白さは、どういうところに感じていますか。
稲垣:鈴木さんとの仕事の時は、なんだか自分の家に帰ってきたようなリラックス感があるんです。でも、家族だから逆に恥ずかしい、という感覚もあるじゃないですか。そのくらいの領域にいっちゃっているというか(笑)。
ーーもはや、親戚みたいな間柄に?
稲垣:ちょっと、お父さんと話をするのって恥ずかしかったりしますよね。
(左から)稲垣吾郎、鈴木聡
鈴木:反発したくなることもあったりして(笑)。
稲垣:そのくらいの気持ちで、勝手にリラックスさせていただいています。もちろん、緊張感も持ちながらやっていきたいと思っていますけど……。ずっと、僕にあてて役を書いてくださっているわけなんですが、それも年々、変化していっているように感じます。僕の世間で思われているイメージであったり、ファンの方が望んでいる姿であったり、そういったものも変化していくじゃないですか。そういう、時代の変化も含めて、新しい稲垣吾郎を作ってくれているというか。それは違和感のある問題でも無理していることでもなく、嘘でもなくて。本当に今の僕ではあるんですね。もちろん、役ではあるんですけど、今回はそれがジョージという役で、毎回設定は変わりますが、これってもう究極のあてがきですよ。その時の稲垣吾郎にあてて書いてくださっているので。
鈴木:吾郎くんの中に、ジョージみたいな人は絶対ちょっとだけ、いる気がするんですよ。
稲垣:でも、それはたとえば28歳の時に、僕が初めて聡さんとやらせていただいた『謎の下宿人~サンセット・アパート~』(2003年)の時にはなかった部分ですよね。そういう変化が出て来ていることもお互いに楽しめるし、そこをファンの方も楽しんでくれるんだと思います。
鈴木:そこは、お客さんとの共有部分でもあるよね。『謎の~』の頃は、吾郎くんの一番のイメージがミステリアスなところだったし。
鈴木聡
稲垣:当時の役柄とか、メンバーの中でのポジションとか、いろいろものが影響するんだとは思うんだけど。でも、こうやって世間とか時代とか、ファンの方々の気持ちをこれほどまでに考えて書いてくれる作家さんというのは、鈴木さんしかいない(笑)。もはや、ただのプロデューサーではないですよね。今、稲垣吾郎にこれをやらせたら面白いな、くらいではない。ファンの人の「本当にそこを見たかったんだ!」というところをね。
ーーその肝の部分をちゃんと選んで。
稲垣:そう、やってくださっているんです。だから僕のこともきっとすごく観察してくれているはずなので、うれしいですよ(笑)。そういう、時代を見る目の話とかを鈴木さんから聞くのも面白くて。以前、鈴木さんはコピーライターとして大きな企業相手に働いていらしたから、そういう面もよく感じます。
京都公演の模様 撮影:内池秀人

京都公演の模様 撮影:内池秀人

鈴木:そういうことを考えるのが、もともと好きなんだろうね。今、世の中はどうなっているか、とか。
稲垣:こういうものが流行っている、とか。
鈴木:最近これが売れているということは、お客さんの気持ちはこうで、とか。そういうことを考えているのが好きなんです。
稲垣:ごはんとか一緒に行っている時に、芝居の話以外にそういう話をしてくれたりすると、すごく社会勉強にもなるし。他の人とは、あまりそういう話はしないので。だからなんだか、僕のセルフプロデュースを助けてくださっているような気さえします。今回も、東京公演の稽古でどんな話が聞けるのか、今から楽しみです。
(左から)稲垣吾郎、鈴木聡
ーーそして、幕間にショータイムがあるのもこの舞台の特徴でもあります。また、そのコーナーが今回はちょっと変わるかもしれないとのことですが。
鈴木:おそらく京都で観て、また東京でも観てくださるお客さんもいらっしゃるでしょうし。何か、新しいことをちょっと取り入れようとは思っています。前回は20分弱だったんですが、実は京都でやった時は長さにも気を遣っていたんですよ。みなさんが新幹線に乗り遅れないようにと(笑)。それで他にも考えていたナンバーが何曲かあったんですけど。
ーーでは、今回はその曲が追加されるかも?
鈴木:去年の段階で佐山さんから曲の候補がもっと出ていたので、やれなかった曲が実は残っているんです。そういうものも含めて、ちょっとこれから検討します(笑)。より、盛りだくさんのショーになると思いますので、どうぞお楽しみに。
取材・文=田中里津子 撮影=敷地沙織

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着